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MANUFACTURE 開発者インタビュー

h.ear go ワイヤレスポータブルスピーカー SRS-HG1 h.ear go ワイヤレスポータブルスピーカー SRS-HG1

利用シーンに合わせたモードを搭載

音響設計 真壁 佳也

──スピーカーユニットと筺体ができあがったら、ここからの音響設計はどのように進んでいくのでしょうか?

真壁 佳也[音響設計]

もともとh.ear goはハイレゾ対応製品というコンセプトですから、素直な音作りにすることがベースにあります。そこで、私の役割としては、まずは前田や石澤からでき上がったものを聴くところからスタートしています。やはり初期段階においてはユニットから異音がしたり、スピーカーが揺れることによる風でノイズがおこったり、エッジのゴムの材質により、音にゴム臭さが出ていたり……といろいろな問題がありました。

──そうした問題点はどのように解決していくのですか?

真壁 佳也[音響設計]

たとえば使っている接着剤一つによっても、音の硬さが変わってきます。そこでボンドの種類を見直すなど、細かなことの積み重ねですね。またハイレゾにおいては空間性も非常に重要になってきます。小さなボディーだけに音が箱の中から飛び出してこないので、上方向への広がりや奥行きを出すため、筐体の響きをクッションなどで微調整していきます。その際、音が変に広がらないよう、音同士がキャンセルし合わないように、詰めていきました。


信号処理開発 高橋 洋介

──ハイレゾにマッチした素直な音作りがベースだとは思いますが、一方で利用シーン別のモード設定というのは何をしているのでしょうか?

高橋 洋介[信号処理開発]

今回の製品は、個性を大切にする20代、30代といった世代の人たちを主なターゲットしているだけに、彼らのニーズにマッチした音作りをする、というのも重要なテーマでした。その意味ではEDMやヒップホップといったサウンドをどのように表現するか、特に低域の出し方が大切になってくるわけですが、ベースの強調を内部構造だけで行うのには無理があります。そこでDSPを用いた信号処理を行っています。シーン別に、「FLAT」「BGM」「Extra Bass」「Outdoor」という4つのプリセットEQが選べるようにしました。

──4つのEQは、それぞれどんな意味を持ち、どんなことを行っているのでしょうか?

信号処理開発 高橋 洋介

高橋 洋介[信号処理開発]

ハイレゾ再生においては、「FLAT」を推奨しておりますが、極力加工せず出力するという方針で設計しており、さらにどの音量でもハイレゾ感を損なわないような調整を行っています。「BGM」は、ベッドサイドでの利用や読書、ネットサーフィンをしている際に邪魔にならない音作りをしており、低域、高域が出過ぎない、中域メインの調整を行っています。それに対し、「Extra Bass」に関しては、この筐体サイズの音を超えた重低音再生を実現するために、倍音効果やDRC(ダイナミック・レンジ・コントロール)を活用して、最近のトレンドである低域の強い音楽をより楽しく聞けるような音作りを行っています。ここで活用したDRCや倍音生成アルゴリズムは新規開発したものですが、よりクリアで立ち上がりが良く、また大音量においても低歪な音作りを実現できました。そして「Outdoor」は、BBQや海辺、キャンプ時の使用を考慮した音作りであり、大音圧が出せるのと、外で音楽を楽しむ上で最適な音作りをしました。

──この小さなスピーカーを屋外でも、それなりの音量で聴かせるのは難しそうですね?

高橋 洋介[信号処理開発]

その通りです。外で使用すると、超低域は体感しづらいのに多くの電力を使用します。そこで不必要な電池消耗を抑えながら、音楽が楽しく聴けるよう、低域のアタックと中高域のメリハリに注力した音作りを行っています。これにより、屋外でも、かなり迫力のあるサウンドが楽しめるようになっています。


電気設計 宮本 謙一

──ところで、アンプなどを含めた電気回路というのは、どうなっているのですか?

宮本 謙一[電気設計]

「このサイズで進めます」ということで手元に来たときには、電気回路に許されたのは基板がやっと1枚入るだけのスペースでした。熱処理なども含め、どのようにしていこうかとメカ設計とミリ単位で打ち合わせをしながら詰めていきました。音質に関してはスピーカーがフルレンジなので、広帯域にドライブすると、どうしても干渉が起きますが、今回電気回路でどこまで聴感上の改善が図れるかを徹底的に検討しました。電源やアンプなどすべての部品を見直した結果、大きく改善しました。アンプで何ができるのか、再認識できたほどです。また、今回アンプはモノラルのものを2つ用意することで、ステレオ分離もよくできています。

──電源やアンプのほかにも先ほどのDSPを含めデジタル系の回路もありますよね?

宮本 謙一[電気設計]

それらも含め、すべて1枚の基板にまとめています。ここで大きく役立ったのが社内開発チームで作った新しいSoCです。1チップでWi-Fi機能とハイレゾ処理のDSP機能の両方を実現でき、省スペース化、省電力化に大きく寄与しています。結果的にはスピーカー部分の容積に割り振ることができたわけです。みんなで本当に細かなことを積み上げていった結果、これだけサウンドが出せるスピーカーを実現できたのです。