商品情報・ストアコンポーネントオーディオSS-NA5ES 開発者インタビュー

SS-NA5ES 開発者インタビュー

「心地よい音。心に響く豊かな音。何より自然に感じられる音。」そんな想いから生まれた「ESシリーズ」。その「ESシリーズ」に2011年、ブックシェルフ型2ウェイ・スピーカーシステム「SS-NA5ES」が加わりました。その「SS-NA5ES」開発者である加来に話を聞きました。

01 「ARシリーズ」「ESシリーズ」と受け継がれているソニーが追求するスピーカーとは

01 「ARシリーズ」「ESシリーズ」と受け継がれているソニーが追求するスピーカーとは

◎ 大好きな音楽を「心地よい音」で楽しんでもらいたい

質問

最初に、ソニーのハイファイスピーカーが追求しているコンセプトを教えてください。

加来

遡ること2006年に「SS-AR1」を設計しました。これは、当時の最高の技術を使い、最高の音を追求しようと生まれたスピーカーです。我々ソニーにとってのフラッグシップモデルを開発をするにあたって、今後のソニーのハイファイスピーカーにも通じる一貫したコンセプトとして「心地よい音」の具現化を掲げ開発しました。そのため、「SS-AR1」の開発をスタートさせた時点で「ESシリーズ」の企画も考えていました。「ARシリーズ」で「心地よい音」という個性を確立して、それを「ESシリーズ」で普及させていこうという構想をその時点で描いていました。この「SS-AR1」開発の思いである「心地よい音」が今のソニーのハイファイスピーカーのコンセプトになっています。

アコースティックマネージャー | 加来欣志

質問

「心地よい音」を言葉で表現するのは難しいと思いますが、もう少し具体的に聞かせてください。

加来

私は音楽が好きでよくコンサートに行くのですが、「心地よい音」とはコンサートホールで体感できる感覚のことを言っています。もう少し具体的に言うと、ホールに入った瞬間の空気感だったり、演奏者を待つワクワクした感覚だったり、演奏が終わった瞬間の静けさだったりを含めた音楽体験を我々は「心地よい音」と呼んでおり、その体験を家庭で再現したい。「心地よい音」にはそんな想いを込めています。

質問

ソニーのスピーカーは、技術ありきで開発された商品ではないということですか?

加来

物理特性だけを追求した製品をつくることはある意味簡単です。 “新テクノロジー搭載”とか“何KHzまで高域が伸びました”というのは、それ自体、音楽を聴く側にとっては意味のないことです。ですから、私は開発中、特定の音域ということでなく音楽全体を聴きながら時間を掛けてチューニングします。そして結果的に、自分の中の「記憶音」と照らし合わせながら生理的に心地よく感じるという状態にまで持っていくという開発スタイルをとっています。

◎AR、ES初のブックシェルフ型スピーカー

質問

それでは、ブックシェルフを開発しようと思ったきっかけはなんだったのですか?

加来

「ARシリーズ」の時から、音楽の重要な要素を受け持つ2ウェイ部をつくって、足らない低域をウーファーで足しこむ2ウェイ+ウーファー思想で設計をしています。「SS-AR1」は20cmのウーファー2つで足し込む、「SS-AR2」は16cmのウーファー2つを足し込むといった感じです。ブックシェルフ型ならその2ウェイ部分を切り出して「心地よい音」をより実現しやすいのではないかと「SS-NA2ES」の開発時から考えていました。さらにプラスして、「SS-NA2ES」で開発した「I-ARRAY(TM) System」というトゥイーターを活用すれば凄いことが起きるという予感もありました。

アコースティックマネージャー | 加来欣志

質問

「SS-NA5ES」で目指した音について教えてください。

加来

「ESシリーズ」では、「SS-NA2ES」が兄で、「SS-NA5ES」は弟という位置づけになります。兄弟は基本的に似ていますが、それぞれ得意な事、不得意な事があります。弟の「SS-NA5ES」の得意な部分をとことん延ばしてあげようと考えました。1つはバッフル板が小さいためディフラクションの影響を受けづらいので、音像定位(フォーカス感)や空間表現が得意です。「SS-NA2ES」はたくさんのユニットが付いていて、低音を受け持つウーファーも2つ搭載しています。それに対してブックシェルフ型の「SS-NA5ES」は、ウーファーの口径が小さいため物理的な低音再生という点では劣ります。いわゆる「重低音」の再生は得意ではありません。ユニットの数が少なく、ユニット同士の物理的な距離が近くできるので、点音源に近くなります。結果、空間がひじょうにきれいに表現されるとともに、音像定位が明確になってきます。もうひとつは、ウーファーのサイズは小さくなることで俊敏で反応の良い低音が出しやすい点があります。また、全体の筐体が小さいためエンクロージャーの剛性も高くできました。また当然ですが設置性も優れています。

質問

剛性が高くなると、具体的にどういうメリットがあるのでしょうか?

加来

スピーカーは、ユニットからだけでなく、エンクロージャーの表面からも音が出ています。それは、板を叩くと音が出ているのと同じで、エンクロージャーから音(ノイズ)がずっと出続けているため、全体の音を濁してしまうのです。そのため、エンクロージャーの剛性を上げてノイズを抑える必要があります。しかしどんなに剛性を上げてもノイズをゼロにはできません。そこでエンクロージャー表面からのノイズを、人が不愉快に感じないようにうまくコントロールしてあげる必要がありますが、小さいエンクロージャーの方が響きをコントロールしやすいのです。

◎自然な音に聞こえることを追求した

質問

心地よい音を追求する上で、苦労した点について聞かせください。

加来

今言いましたように、小型スピーカーは本質的に低音再生が不得意なわけです。しかし音楽を聴いている時に、低音が多いとか少ないとか、一瞬でもそんなことが頭をよぎったら、もはや音楽を楽しんでいるのではなく、機器の試聴になってしまいます。「SS-NA5ES」ではそうならないように細心の注意をしてつくり込みをしました。おそらく聴かれた方は、ブックシェルフ型だから低音が足らないと感じることはないと思います。このような話をすると低音を重視してつくっていると思う方もいらっしゃるかもしれませんが、あくまでも「自然に聴こえる」ということを追求しています。それは、小さいのにこんなに低音が出ているという話ではありません。そういうことさえも意識させないことが大切だと思っています。

SS-NA5ES

質問

コンサートによく行く理由は、スピーカー開発と関係があるのでしょうか?

加来

コンサートへ行くのは別に仕事だと思っていません。好きなので時間の許す限り足を運んでいます。しかし毎日は行けないので、オーディオ再生で擬似体験をしたいというのが「心地よい音」の原点ですから、プライベートの出来事が仕事にも反映しているのでしょう。コンサートホールで聞いた音楽の記憶を頼りに音造りをします。それを記憶音と呼ぶとすると、記憶音に忠実に再現しようと努めています。誤解を恐れずに言うと、原音忠実再生と言われている音があるとすると、それとは目指しているものが違うのかもしれません。あくまで記憶のなかの音に忠実でありたいと考えています。そして、つくり手が何を語ろうとしているのかに耳を澄まして、共感して心に響く音を探っていく作業です。そのために実体験としてのコンサート通いは心の校正としても必要です。

質問

「記憶音」の再現を目指しているのですね。

加来

あいまいな記憶を元に設計しているのかとお叱りを受けそうですが、そうではありません。設計の初期段階はひたすら物理特性の追及をします。無響室でユニットやフィルターを作っていきます。その間は、ほとんど音を聴きません。ひたすら物理的に問題がないかということを突き詰めていきます。この段階で物理特性の優れたスピーカーが完成します。スピーカーの特性として充分な結果を得られた段階になって、音を聴いての調整に入ります。これは微妙な調整なのですが、「記憶音」を頼りに、違和感のない状態へと持っていきます。この調整の対象にはエンクロージャーの材料や木組みと言った物理特性になかなか表れない、しかし再生音に大きな影響のある項目の設計も入ります。この時期は1日中リスニングルームにこもって一喜一憂しながら少しずつ「記憶音」に近づけていきます。

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