機能美と人にとって心地よいバランスの追求のもとに
“イーゼルスタンド”は生まれた。
そのコンセプトと、誕生秘話について、デザイナー・藤井本人が語る。
多様化するユーザーのライフスタイルに、どう気持ち良く溶けこむか。〈ブラビア〉の新たな可能性を追求し、誕生した“イーゼルスタンド”は、スタンドにテレビを立てかけるという今までにないスタイルだ。シンプルなその姿は、重さを感じさせず、自然と部屋に調和していく。
デザインをする時は常に、空間にきちんと溶けこみ、生活になじんでくるようなデザインを意識しています。今回の“イーゼルスタンド”も、家電製品というよりも、ユーザーの方に心地よく使っていただくインテリアのひとつとして、デザインしました。特に、テレビは一日の中で接する時間が長いものですし、大きさもありますから、部屋に置いた時に存在感がありますよね。だからこそ、テレビを置く空間との調和は、非常に重要視したポイントです。
もともとソニーのテレビは、できるだけ低く構えた、人に圧迫感を与えないデザインを追求しています。中でも“イーゼルスタンド”は、テレビがスタンドの上に立てかけられた形状になっていて、まるで絵画のように映像を飾るスタイルが特徴です。それによって、テレビ本体の薄さや狭額フレームが際立ち、軽やかさが生まれました。
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“イーゼルスタンド”の開発は、2010年にソニーが提示した、〈ブラビア〉のモノリシック・デザインの魅力を、さらに多くのユーザーに拡げていこうというところからスタートした。今回は、これまで比較的ハイエンドモデルに採用されていたモノリシック・デザインを、スタンダードモデルにも引き継いで展開していく。となれば、老若男女、パーソナルユースからファミリーユースまで、あらゆるライフスタイルになじむデザインが必要だ。そこで藤井は新しい〈ブラビア〉の在り方として“軽やかさ”に注目する。何度も試作を重ねるうちに、スタンドはやがて、“立てかける”形へと姿を変えていった。
モノリシック・デザインとは、トレンドに左右されず、空間に溶け込み、満足感が色あせない「本質」の表現を追求して生まれたソニーのデザインコンセプトです。
“イーゼルスタンド”は、その要素の一部である、“素材のコントラスト”と“6度のアップワードスタイル”
を継承しています。
まず、“素材のコントラスト”を引き継ぎ、素材の質感の切り返しの見せ方にこだわりました。表面の質感も、ただの金属よりも少し艶を出した金属感に仕上げているのですが、そうすることで全体的にバランスよくまとめようという狙いがあります。また、画面とフレームの段差を極力少なくすることによって、非常にシンプルなデザインが実現できました。
もうひとつは、テレビ画面を6度上に傾け、テレビを低い位置に設置した際も最適な視聴角度を保つ“6度のアップワードスタイル”の採用。モノリシック・デザインには、“アップワードスタイル”の見せ方として、1枚のガラスをバーに差し込んだような“バータイプ”のスタンドがありますが、今回は、テレビをスタンドに立てかけるようなスタイルになっています。
ご覧の通り、非常にシンプルなパイプの脚になっていますが、シンプルというのは、ソニーデザインのアイデンティティでもあります。余計な加飾は排したミニマムなデザインはひとつのモットーのようなものですので、質感だったり、要素だったりで、決して派手すぎず、かつ品位をきちんと保てるような表現を目指しました。
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“イーゼルスタンド”という、ある種、斬新ともいえるこのデザインを実現するまでの道は 平坦ではなかった。藤井は設計部門のエンジニアと試行錯誤を繰り返し、このデザインにたどりついた。
実際にこの構造自体が新しいものなんです。先に述べたように、テレビが“イーゼルスタンド”の上に乗っているのですが、通常のスタンドの考え方と違っていて、実際はスタンドの上に荷重をかけつつ後ろで支えるという複雑な構造になっています。強度や、安全上の制約などがありますから、その中で決められた「ここは守らなきゃいけない」というところを加味しなければならない。その上で、ベストなバランスを探り出すというプロセスは大変でした。
脚の径にしても、脚2本の間隔にしても、サイズにしても形状にしてもちょっと変えるだけで非常に不自然なものになります。安定性、機能性、そしてデザインが両立するベストな形に仕上げるまでは、細かなバランスの調整が必要でした。何度もディスカッションを重ね、最終的に現在のデザインを導き導き出すのに多くの時間を費やしました。
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この“イーゼルスタンド”は、藤井が「部屋のどの空間においても、どんな部屋でもなじむようなスタイルを目指した」と話すだけあって、軽やかなシルエットだからこそ、部屋のどの場所に置いても違和感なくなじむ親和性がある。緻密な計算から生まれたこの“イーゼルスタンド”がテレビ本体の薄さ、狭幅なフレームを際立たせ、軽やかさをもたらす。その軽やかさは、テレビの映像をONにした時は、まるで映像が浮いているような浮遊感を演出する。
置き場を限定するわけではなく、みんなに使っていただきたいと思っています。若い人にも受け入れられてほしい気持ちもあります。テレビは、ある意味、堅苦しいイメージもありますが、今ではテレビをインターネットに接続してネット動画を楽しんだり、情報を手軽に取得できるようになったりと、テレビと人との関係はどんどん変化していますよね。その中で、様々な人とシーンに調和するような見せ方というのは、非常に重要視したところです。この〈ブラビア〉は、6度のアップワードだけではなく、普通に垂直立ちの使い方もできるようになっています。あらゆるユーザーによる使われ方のストーリーを想定して、より自由なテレビの使い方を提案していきたいですね。それが“イーゼルスタンド”に求めた「軽やかさ」コンセプトの真意でもあります。
このたたずまいが、持つ人それぞれのインテリアのスタイルやライフスタイルに少しでもポジティブに影響してもらえると、デザイナーとして嬉しく思います。
本当に目指すところはユーザーに喜んでもらえる、というのが一番大事だと思っています。そのために私たちはこれを作ったと思っているので。
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