SONY

BE MOVED RX cyber-shot

Engineer's Voice 開発者の想い

有効約4240万画素、拡張感度102400。目指したのは臨場感のある「自然な描写」。

― CMOSイメージセンサーや画像処理エンジンが新しくなって、
画質が大幅に向上したことが大きな特徴ですね。これらの開発についてお話しください。

若月雅史(プロジェクトリーダー)

若月(プロジェクトリーダー)
関係者を集め、RX1の新機種についてコンセプトの議論をはじめたのは、RX1Rが出てから少し経ったころです。かなり時間をかけてカメラの形を固め、設計と評価を進めてきました。RX1の発表時には世の中に35mmフルサイズセンサーのコンパクトカメラは存在しなかったので、どうすれば市場に受け入れられるかを模索する状態でしたが、RX1R IIは、明確な先例があるのが大きな違いです。
RX1とRX1Rに関するユーザーの皆さまからフィードバックを取り入れて、技術的に可能なものは極力実現していく。そのうえでよりお客様に新しい驚きをもたらし、受け入れていただくものを、どういった形で表現できるか。サイバーショットのフラッグシップモデルとしてふさわしいものはどんなものなのかを、考えていきました。
レンズに関しては、RX1から変わっていません。35mmF2という仕様は、RX1を初めて世に出すときに、風景もポートレートも撮れて、スナップにも使いやすいバランスの取れたレンズを使っていただきたいという議論から選択されたもので、今回もその提案は変えるつもりはありませんでした。このレンズは非常にポテンシャルが高くて、RX1の2400万画素フルサイズ以上の解像力があることはずっと認識していたので、このレンズを変えるのではなく、より高画素のセンサーと組み合わせてさらなる解像感を提供しようというアプローチにしたのです。センサーは、有効約4240万画素と、前回より極端に画素数がアップし、それを処理する画像処理エンジンはBIONZ Xという新しいものになりました。

宮下訓(イメージセンサー開発担当)

宮下(イメージセンサー開発)
イメージセンサーのトップ企業としての技術を生かし、大きな進化をさせたいというのが、このCMOSセンサー開発の出発点です。これはソニーのデジタル一眼カメラα7R IIで使われているものと同じですが、当初からRX1R IIにも搭載することを予定して開発したものです。RX1は、このコンパクトさのなかにフルサイズを入れるため、センサーにとっても、入る光の角度など、光学的に厳しい条件が要求されます。そういうことを最初から意識して、イメージセンサー事業部、ソニーセミコンダクタ九州と綿密に連携を取り、仕様や特性を確保できるように開発してきました。
具体的には、35mm判で初めての裏面照射型を採用したことで、光を入れられる角度が広くなり、また配線をセンサーの裏側に配置することで機能的な回路を仕込んだり、処理速度を上げたりというように、最適化が可能になっています。画素の数が増え、一つの画素のサイズは小さくなっていますが、裏面照射によりできるだけ光を集めるとともに、イメージセンサーの上にあるマイクロレンズを、無駄なく光をかき集められるような形状にしました。

吉田卓司(画像処理開発担当)

吉田(画像処理開発)
センサー画素数が増えると、画像処理エンジンの能力もいわゆる馬力が求められます。BIONZ Xになって能力が高まったことによって、この42メガという画素も処理できるようになりました。高度な画像処理もやっています。
たとえば代表的な画像処理にディテールリプロダクション技術があります。どんな画像処理エンジンでも、エッジを強調してよりシャープに見せるという処理は入っていますが、デジタル処理なのでどうしても不自然に見えたりしがちです。強調によって黒い縁や白い縁が出がちですが、これを自然な高解像度に見せるという技術です。また、BIONZ Xには小絞りぼけを補正する回折低減処理も入っています。ノイズリダクションの技術も進化して、暗所でも明るい場所でも、先代のBIONZより高画質な画像を得られるように改善しました。
α7R IIに似ている部分はあるものの、RX1R IIならではのチューニングも数多くあります。やはり、RX1R IIにはレンズ一体型という特長があるので、そのレンズに合わせた画質設計が可能だからです。画質設計は、数値的に色やノイズの評価もするのですが、やはり官能的に目で見て評価する部分というのを大事にしています。実際にプリントしたりモニターで見たり、お客様が見られる環境を想定しながら同じ条件で画像を見て、もっとこうしたほうがいいなどと判断しながら絵作りをしています。目指したのは、作りすぎず、しかし臨場感がある、あくまで自然な画像です。物であったら素材感と、風景であれば臨場感や空気感です。実際に、非常に自然な描写の画像が撮影できるカメラに仕上がっていると自負しています。

若月(プロジェクトリーダー)
自然な画絵作りを実現するためには、デジタル部分以外に、アナログ部分にも技術的な大変さがあるんです。カメラのなかには、電気的、磁気的なノイズを発生する部品がもあり、イメージセンサーはそれらの影響を受けます。基板の設計、部品の配置などを最適化しないと、ノイズが取り除けません。特にこのカメラは非常に小さく、制約の強いカメラなので、いかにノイズを減らすかは、とても難易度の高い課題だったと感じています。

吉田(画像処理開発)
ソニーは小型のカメラを作り続けていますから、そのノウハウは蓄積されています。ただし、どんな場合でも常に新しい現象は起きてきます。そのたびにどんどん課題の解決を繰り返し、蓄積していくという感じです。今回は拡張ISO10万2400と感度がRX1Rよりもさらに上がっていますので、ちょっとしたノイズがより目立ってしまうところですが、今回は画素数を2倍近く上げつつ感度も上げています。解像度も上がりつつ感度も上がっているのが、このセンサーのすごいところです。

宮下(イメージセンサー開発)
開発をはじめた当初はノイズに非常に苦労しましたね。吉田にもいろいろ怒られました(笑)。

吉田(画像処理開発)
画質確認をして、お互いにこんな現象があるということを連絡して、解決してもらって、それをまたもらってという繰り返しです。

宮下(イメージセンサー開発)
ただし、すぐに解決して返せるわけではありません。光が入ってきてそれを電気に変えて処理して、高速に伝送して送るのがイメージセンサーで、光学的なもの、電気的なもの、いろいろな機能がある。他の部品による電気ノイズもある。お客様は厳しい条件で使われる方が多くなっていますから、こちらもどれだけ突き詰められるか勝負どころです。基盤の実装も併せて作り込んできて、実際はISO10万でもしっかりお使いいただけるレベルに持ってこられたと思います。これだけの画素数を入れて夜景を撮っても、すっきりとして自然な画が撮れるというところが、一番結果を出せた部分だと思っています。