商品情報・ストア Feature 特集記事 体験を追求したソニーデザイン Good Design Award2016 受賞
体験を追求したプロダクトデザイン Good Design Award2016 受賞

1957年以降、半世紀以上に渡って毎年実施されてきた、“日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨の仕組み”である「グッドデザイン賞」。

その審査対象は、工業製品からビジネスモデル、イベントなどまで幅広く、毎年、100のデザインが「グッドデザイン・ベスト100」に選出。今年も4,000以上の審査対象の中から、時代を象徴する、優れた100のデザインが選ばれています。

そして、うれしいことに、2016年は多くのソニー製品が入選。しかも、そのうち2製品が、“社会の課題に対する取り組みとしての内容、将来に向けた提案性や完成度の高さなど、総合的な観点から、グッドデザイン賞審査委員会が今年度もっとも優れていると評価したデザイン”に贈られる「グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)」の栄誉を賜わりました。

ここでは、今回「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれたなかから2つのソニープロダクトについて、それぞれの担当デザイナーが、そのデザインコンセプトなどを語ります。

ソニー デザインセンターヨーロッパ シニアデザイナー 矢代昇吾

“自然”のルールから
ヒントを見出し、
極上の高音質を実現

グッドデザイン金賞受賞 ハイレゾ対応ステレオヘッドホン
MDR-Z1R

ソニーが長年培ってきたアナログ・デジタル双方の高音質化技術を磨き上げ、「ヘッドホンによる音楽体験を“聴く”から“感じる”領域へ革新する」製品群として投入した「Signature Series」のフラッグシップヘッドホン。本機のために新開発された独自技術により密閉型ヘッドホン装着時に特有の共鳴を限りなく除去し、ハイレゾ音源の繊細な音も余すことなく表現できるようにした。

まずは、MDR-Z1Rがグッドデザイン金賞を受賞した
理由についてどのように分析されましたか?

矢代:この製品ではとにかく「音」のクオリティーを追求したのですが、そのために一番理にかなったデザインとなっていること、デザインの力でさらに音を良くすることができたというのが受賞の決め手になったのではないでしょうか。

もう少し具体的に教えてください。

矢代:まず最も象徴的なのがハウジングのドーム形状です。今回、MDR-Z1Rを開発するにあたり、設計チームがもっとも重視したのが「共鳴音」を排除すること。実は一般的なヘッドホンの内部では、周囲の音が共鳴することで生まれる小さな雑音が常に存在しています。そしてこれが今回目指した120kHzという微細な音を再現する際に邪魔になってくるのです。

そこで、エンジニアが行き着いたのが紙という素材。和室ってものすごく静かじゃないですか。あれはふすまや障子が音を吸収して共鳴を和らげているからなんです。MDR-Z1Rでは、カナダ産の針葉樹を原料に、日本の雪解け地下水ですき上げたパルプを音響レジスターに採用することで共鳴音を最小限に抑えることに成功しました。

そして、その素材をベースに共鳴を排除する上でもっとも理にかなった形状をデザインしました。

実はこれ、庭に干したシーツが風にふかれたときにふわっと膨らむあの形状からヒントを得たんです。それは風の圧力を受けて自然に生まれた形ですが、同じ様に振動板から発せられる音の圧力を無理なく受け入れる形ができないか。そんな発想から、よどみの無い有機的な曲面形状を考案しました。一枚のなめらかな曲面で構成することで振動を抑え、共振を極限まで排することが可能となりました。ちなみに、均等に、シンメトリックにふくらんでいるように見えるのですが、わずかに真ん中がずれています。中心がある形状は太鼓のように音が響きやすくなるので、それを避ける狙いがあるんですよ。

なるほど。この形には
そこまでの意味があったのですね。

矢代:そのほか、目に見えるところでは、ハウジング内側のプロテクターグリルも「デザインの力でさらに音を良くすることができた」ところですね。従来ヘッドホンはデリケートな振動板を保護するため、強度最重視のグリル形状を採用していたのですが、MDR-Z1Rの120kHzという世界では音質面に悪影響がでてしまうことがわかりました。

そこで、強度を維持しつつ、音のヌケを阻害しない形状として提案したのがフィボナッチ数列を元に作りあげた「フィボナッチパターングリル」。

フィボナッチ数列とは自然界に存在し、巻貝の曲線やひまわりの種の配列に見られる数列です。これを応用することで、強度とヌケを両立できることがわかったんです。テスト結果では、従来プロテクターがある周波数帯域で大きな減衰が見られたのに対し、フィボナッチパターングリルではグリルを付けていない状態とほとんど同じ周波数特性をマークしています。

最後に、受賞の喜びを一言でお願いします。

矢代:技術革新が困難な成熟市場において、金賞受賞を成し遂げることができたのは大きな喜びです。今回の受賞はMDR-Z1Rの開発メンバーの力だけではなく、約半世紀に渡って積み上げてきたソニーのオーディオ技術とデザインの歴史の上に成り立っているものだと思います。苦楽を共にした開発メンバーと先人達の財産にあらためて感謝したいと思います。

“自然”のルールからヒントを見出し、極上の高音質を実現に いいね

“アナログ”と、
“デジタル”の融合を表現

ソニー株式会社 クリエイティブセンター デザインマネジャー 八木橋達也

グッドデザイン・ベスト100選出 ステレオレコードプレーヤー
PS-HX500

長い歴史をもつアナログレコードの普遍的価値や上質な音楽体験と、最先端のDSDハイレゾオーディオ録音技術の美点をあわせ持ったレコードプレーヤー。据え置き型プレーヤーとしての高音質設計はもちろんのこと、アナログレコードならではの、音楽CDをはるかに超える豊富な情報量を損なうことなくデジタルデータ化する録音機能も搭載。ウォークマンなどのポータブルプレーヤーなどで気軽に持ち歩けるようにした。

この製品を見て「ソニーが今どきレコードプレーヤー?」と感じる人も多いと思います。まずはその開発の背景について教えていただけますか?

八木橋:おっしゃる通り、レコードプレーヤーはソニーにとっても久しぶりの挑戦です。2008年に『PS-LX300USB』というPCへの音源取り込みを目的とした低価格のプレーヤーを発売し、今でも継続的に販売は好調ですが、ピュアオーディオとしての高い性能を備えたものは長らく作られていませんでした。ただ近年世界的にレコードの売上が伸びていること、ハイレゾの普及も進んできたことから、レコードの音源をハイレゾ品質で取り込むことができれば、新たな音楽体験をお客様に提供できるのではないかという事で開発がスタートしました。

そのデザインコンセプトについて教えてください。

そのデザインコンセプトについて教えてください。

八木橋:レコード再生の “アナログ体験”と、ハイレゾ、DSD録音の “デジタル体験”二つの融合を表現したいと考えました。レコードプレーヤーならではのある種ノスタルジックなアイコンは色濃く残しつつ、先進機能を表わすモダンなたたずまいも与えたい、そこで採用したのが「ネガティブスペース」というコンセプトでした。あらゆる要素を一枚の板に圧縮、凝縮していった際に、機能として必然的に残る余白=ネガティブスペースを力強く表現してあげることで、先進のたたずまいを保持しながらも“オーディオの本質”を浮き彫りにできるのではないかと思いました。

具体的には、ターンテーブルや回転ダイヤル周囲の溝などを意識的に大きく取ることでレコードプレーヤーとしてのアイコンを強調しています。逆にそれ以外の部分は土台となる板に埋め込んでいくことでフラット化し、デザイン的にノイズとなる要素を可能な限り削ぎ落としています。また今回はレコードプレーヤーということもあり、“タイムレス”なデザインを目指しました。シンプルな円と四角で構成されたジオメトリックな形状によって、レコードのように色あせない価値を提示することができたのではないかと思っています。

そうした取り組みの中で、デザイナーとして会心のポイントはどこになりますか?

八木橋:ヘッドシェルのデザインですね。PS-HX500では、アーム部に音を安定してピックアップできる独自のストレートアーム構造を採用しているのですが、針の先端はアームの軸上に、カートリッジ自体は斜めに角度を持って配置されるという、条件としては非常に複雑なものでした。ただ、単純にこの条件をなぞるだけではシンプルとは程遠い、いびつな形状になってしまいます。これをブレイクスルーするアイデアが必要だと考え、デザインを検討していく中で、全体のテーマの一つとなっている円形状を配置したところ、複雑な条件をクリアできるだけでなく、非常にアイコニックなものになりました。この円形状は不要な共振を抑え、高い強度を確保できるという機能的な側面も備え、ソニーデザインの特徴の一つでもある機能美も同時に体現しています。

ヘッドシェル部分はユーザーとプレーヤーをつなぐ重要なインターフェイスでもあると考えていますので、レコード盤と同じく円という象徴的な要素でまとめられたのは非常に良かったのではと思っています。デザインの美しさと共に、レコードに針を落とす瞬間の高揚感やワクワク感を楽しんでいただきたいですね。

あえて今、レコードプレーヤーをデザインすることで、何か「気付き」のようなものはありましたか?

八木橋:今回、レコードプレーヤーのデザインに初挑戦するにあたり、弊社オーディオ部門のレジェンド的存在となっている音響エンジニアの金井隆に教えを請いました。社内で金井部屋と呼ばれている視聴室にこもり、レコードプレーヤーとはどうあるべきかと初手から手ほどきを受けられたのは良い経験でしたね。

金井曰く、プレーヤーとは楽器のようなもので、再生時に振動が少し加わるだけでもそれを敏感に拾ってしまうほど繊細なもの。確かにその通りで、これまで自分が携わってきた製品とは根本的に違っていましたね。その一方で自分の考えた形状や素材がダイレクトに音質に影響するという体験は非常にエキサイティングでもありました。今回デザインだけでなく、音に関しても設計者と共に作り上げていくという作業に関われたのは、自分のキャリアにとっても貴重な経験だったと思います。

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2016年度グッドデザイン賞では、ほか、
多くのソニー製品がいくつもの賞を受賞。
その詳細については
こちらもご覧ください。

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