商品情報・ストアヘッドマウントディスプレイ “Personal 3D Viewer”開発者インタビュー
  • ユーザーアンケート
  • 開発者インタビュー

かつてない没入感を実現するために
開発者が語る『HMZ-T2』

HMZ-T2

  • 01 T1からT2へ
  • 02 さらに進化を遂げた画質
  • 03 想像を超えた軽量化の実現
  • 04 映像とバランスする立体音響の追及

01 T1からT2へ
『HMZ-T2』プロジェクトリーダー
蔵 純平

昨年11月に発売したヘッドマウントディスプレイ『HMZ-T1』は、装着するだけで映画館のプレミアムシートから鑑賞しているような没入体験を可能にする新感覚の視聴覚デバイスとして、大きな反響を呼びました。
そして2012年10月、さらなる進化を遂げた新モデル『HMZ-T2』が登場します。
より深い没入感を実現するために開発陣を突き動かした思いとは?
開発のプロジェクトマネージャー 蔵純平が、1号機『HMZ-T1』の開発エピソードを振り返りながら、その思いをお伝えします。

昨年11月に発売したヘッドマウントディスプレイ『HMZ-T1』は、装着するだけで映画館のプレミアムシートから鑑賞しているような没入体験を可能にする新感覚の視聴覚デバイスとして、大きな反響を呼びました。そして2012年10月、さらなる進化を遂げた新モデル『HMZ-T2』が登場します。より深い没入感を実現するために開発陣を突き動かした思いとは?
開発のプロジェクトマネージャー 蔵純平が、1号機『HMZ-T1』の開発エピソードを振り返りながら、その思いをお伝えします。

開発チームの心をつかんだ“没入感”

映像の迫力や臨場感を表わす際に「目の前に迫ってくるような」という言葉がありますよね。ソニーのヘッドマウントディスプレイは、その体験からさらに踏み込んで、「映像やコンテンツの中へと入っていくような」体験を目指しています。私は前モデル『HMZ-T1』の開発から参加しているのですが、『HMZ』という名が付く前の開発初期の試作機を試したときの衝撃を、今でもはっきりと覚えています。それは試作機というより実験機に近いものでした。装着位置を微妙に動かして、手探りで調整しながらやっと見えるレベルのものでしたが、それを試した開発メンバーはみな、映像がしっかりと見えた瞬間、動きを止めて思わず「おおっ!」と声をあげていました。その光景に私は、必ずいい商品にできると確信しました。感動が思わず口をついて出るような体験というものは、そうあることではありませんから。
私たちがあの時体験したのは、一般的なテレビやホームシアターで味わうものとは異なるまったく新しい感覚でした。その作品を鑑賞しているというより、目の前で繰り広げられる作品世界を、その場で経験しているような“没入感”。「この感覚を多くの人に味わってほしい」そう思いました。あの時の感動が今も私たちの原動力になっているのだと思います。

“没入感”の 探求から生まれた、『HMZ』スタイル


ソニーのヘッドマウントディスプレイが映し出す自然な3D映像、そして、映画館クラスの仮想スクリーンは、深い“没入感”を生み出すための重要な要素です。右目と左目にそれぞれ専用の映像を見せることで、自然な3D映像を実現できることは、理論上分っていました。しかし、巨大な仮想スクリーンをつくりだすためには、仮想ではないリアルな巨大スクリーンで実験を行う必要がありました。これが、関係者内で「伝説の大実験」と呼ばれている実験です。2つのプロジェクターで2つの大型スクリーンに投影した左目用と右目用の映像を、鏡を使ってそれぞれの目で見るという、文字通り「大」実験でした(笑)。
幸い『HMZ-T1』をお使いのほぼ半数の方が「映画館クラス」のスクリーンサイズに感じていただいていますが、それは決して机上の理論だけでたどり着いたものではなく、こうした地道な取り組みが実を結んだ結果だと信じています。
また、目の周りをすっぽりと覆う形状も、映像の中に入り込むような“没入感”をつくりだす上で大きな役割を担っています。人間の視野角は最大200度近くあると言われており、通常はどんなに映像に集中しているときでも、無意識のうちに画面の外にある物体や光を認識してしまいます。ソニーのヘッドマウントディスプレイは、視界全体を覆うことで生まれる暗闇が、映画館以上にコンテンツに集中できる仮想空間をつくります。そしてそこに浮かび上がる巨大な仮想スクリーンと、映し出される自然な3D映像が、圧倒的な没入感を感じさせます。この『HMZ』のスタイルは、“没入感”の探求の末にたどり着いた構造なのです。2号機の『HMZ-T2』では、このスタイルを受け継ぎ、さらに進化させました。

もっと軽く、もっと小さく

『HMZ-T2』では、ヘッドホンを外部接続式にするなど、大小さまざま機能アップや改良を加えています。中でも軽量化の実現は『HMZ-T2』開発の大きなテーマのひとつでした。
2号機のベースモデルにたどり着くまで、いくつも試作機を作成しましたが、試作機が軽くなるほどに装着感が良くなり、没入感が高まることが分かりました。ですから開発チームはこぞって軽量化に奔走しました。開発目標だった重量に到達してもなお、「まだ軽くできる!」と声があがるほどで(笑)。結果的には『HMZ-T1』とくらべて、20%以上も軽量化することができました。
軽量化とともに小型化をぎりぎりまで追求した『HMZ-T2』は、パーツの改良や選別などによる些細な変化が、装着感やデザインにまで影響を及ぼすような緻密なバランスで成り立っていました。たとえば、内部回路に小型化のめどがたったときは、一度固まっていたデザインを見直し、回路基板の形に合わせて全体のデザインを再検討することもありました。開発者の思いだけではなく、デザイナーとの根気強い二人三脚の作業がなければ、このプロダクトにたどりつくことは不可能でしたね。軽く、小さくすることは、ただそぎ落とすだけの簡単な作業のように思われがちですが、実はそうではありません。今回は、クオリティーを高めながら、軽量化と小型化を実現できたことが、何よりの喜びであり、新たな開発につながる自信になりました。

装着するハードウェアとしてのこだわり

ヘッドマウントディスプレイは身体に直接装着するハードウェアなので、装着感も“没入感”を大きく左右する要素になります。身につけた時の圧迫感が強すぎると、コンテンツに集中することができません。一方で、ゆったりしたかけ心地だけを追求すると、体を動かすたびに映像がぼけたり、意図せず外れたりすることにもなりかねません。
『HMZ-T2』では、安定感を保ちつつ、いかに装着感を向上させるかが大きな課題でした。装着感の鍵を握る要素の一つが、ヘッドパッドですが、1号機の『HMZ-T1』では、数十種類の素材の中からヘッドパッドのクッション材を選別しました。今回もさまざまな素材を試したうえで、1号機と同じ素材でいくことにしていました。が、素材の変更が可能なギリギリのタイミングで、担当者が新しい素材を見つけきました。その場にいた全員、満場一致で「これはいい!」ということになり、変更することにしました。新素材は、装着したときの柔らかさはそのままに、汗をかいてもすべりにくいホールド性の高さが特長です。メッシュの外観も、スマートなフォルムの『HMZ-T2』によく合っていると思いませんか?

コンテンツの真価を引き出すという使命

私は、コンテンツの真価を引き出すことこそが、AV機器の使命だと思っていますし、ずっとそれを目指してきました。ですから、『HMZ-T1』を購入されたお客さまから「一度見たブルーレイディスクを引っ張り出して、何度も見るようになった」といった声をいただいたときには、「やった!」と心の中で叫びました。それはきっと、それまで隠れていたコンテンツの新たな魅力を、引き出すことができたということですから。
今回『HMZ-T2』には、“パネルドライブモード”や“24p True Cinema”などの機能を新たに搭載することで、コンテンツに合わせてより良くカスタマイズして楽しめるようになりました。ぜひ、色んなコンテンツの世界にどっぷりと浸っていただきたいと思います。

『HMZ』で観るコンテンツとしては、個人的には、自然系、動物系のドキュメンタリー作品がおすすめです。先日は、海洋動物のドキュメンタリー作品を視聴しましたが、海中を進むホホジロザメやアシカとの距離感、大きさがすごくリアル感じられて、目の前に向かって泳いでくるシーンには鳥肌が立ちました。私はスキューバダイビングの経験があるのですが、もし水の中でこの映像を見たら現実と映像が区別できなくなるかも、と感じましたね。

ソニーのヘッドマウントディスプレイは、映像の美しさや音の迫力だけでなく、気がつくと映像世界そのものを目の前で体験しているような“没入感”を味わえる新しいタイプの製品です。1号機からさらに磨きのかかった“没入感”を『HMZ-T2』でぜひ体験してみてください。「これでお気に入りのゲームをプレーしたい!」「思い出の映画をもう一度見てみたい!」と思っていただければ、最高ですね。

02 さらに進化を遂げた画質
『HMZ-T2』画質担当
高橋 巨成

ヘッドマウントディスプレイの高品位な映像は、それまでの映像体験では感じたことのないような深い感動へと体験者を誘います。
2号機としてさらなる進化を遂げた『HMZ-T2』の画質は、どのようにしてつくられたのでしょうか。
画質設計を担当した高橋巨成のこだわりをお伝えします。

ヘッドマウントディスプレイの高品位な映像は、それまでの映像体験では感じたことのないような深い感動へと体験者を誘います。2号機としてさらなる進化を遂げた『HMZ-T2』の画質は、どのようにしてつくられたのでしょうか。画質設計を担当した高橋巨成のこだわりをお伝えします。

理想の映像への試行錯誤の日々

ソニーのヘッドマウントディスプレイは自社で開発した有機ELパネルを採用しています。初号機『HMZ-T1』の開発段階では、さまざまなパネルデバイスを検討しましたが、「これだ!」と直感したのが有機ELパネルでした。開発途上の試作機ですら、深い闇夜のような黒表現から得られるくっきりとしたコントラスト感と、切れの良い動画が表示できたので、このパネルを使えば今までにない臨場感のある映像が実現できると感じました。
有機ELパネルはとても優れた画質特性を持っており、今後もさらに進化する余地があると思います。しかし、画質を追求する技術やノウハウが現時点で十分に確立されているわけではありません。たとえばパネル駆動においては、調整や制御のバランスが狂うとすぐに画質劣化を引き起こすので、繊細な処理が必要です。しかも、ヘッドマウントディスプレイでは左目用と右目用に別々のパネルを使っているので、両方に同じクオリティーで映像を表示しなければなりません。毎日が試行錯誤の連続でした。しかし、有機ELパネルにはアナログ的な要素があって、手をかければかけたぶんだけ理想の映像に近づいていくんです。日々生まれ変わっていく画質が、「腰を据えてやってやろう」という気持ちにさせてくれました。

作品本来の魅力を引き出すための徹底した画づくり

「画質調整をしないほうが作品本来の雰囲気が伝わりやすいのでは?」という疑問を投げかけられることがあります。しかし、映画やアニメなどの映像ソフトやゲームなど、ご家庭で楽しむためのコンテンツは、一般的なテレビやプロジェクターで表示されることを前提に映像そのものが調整されています。『HMZ-T2』では、これを踏まえたうえで、コンテンツ本来の美しさを引き出す画質調整を行いました。たとえば、映画やアニメに適した画質モードでは、コンテンツそのものの色情報や映像の雰囲気に、記憶色に裏付けされた華やかさを加える調整を施しました。また、レンズの光学特性を考慮してFull HDの解像感に近づけるようなフィルターを開発し、14bitリニアRGB 3x3マトリクスを使った色作りを行いました。さらに、時間軸の処理としては、残像感を改善する“パネルドライブモード”や、映画館独特の24コマ映像を正しく表現できる“24p TrueCinema”を搭載して、よりコンテンツに相応しい映像に近づけました。

仮想空間にもっとのめり込める画質モード“ゲーム”

『HMZ-T1』を発売して驚きだったのは、購入者の約半数の方が、PlayStation®3と接続しているという事実でした。しかし、それは当然のことなのかもしれません。自宅で映画館のような迫力のある画面でゲームをプレイする楽しさはヘッドマウントディスプレイならでは。しかも有機ELパネルは応答速度が速いので、動きの速いゲーム映像の表示も得意です。ゲームを楽しむためのデバイスとしては、圧倒的な優位性があると思います。
今回『HMZ-T2』に新搭載した画質モード“ゲーム”では、ほかの画質モードと同じく自然な雰囲気の映像を目指しています。ただ、目指す映像の雰囲気は同じでも、行なった調整は大きく異なります。というのも、ゲームの映像はコンピューターグラフィックス(CG)で作られた仮想空間であって、実写とはその特性がまるで違うからです。ゲームを心地よくプレイし、そして勝つためには、キャラクターやオブジェクト、そして境界線の視認性が重要ですから、CGの太め輪郭線を意識した絵づくりを行いました。たとえば、リングアウトが勝敗を左右する格闘ゲームにおいては、通常だとリングの端が背景に溶け込むような場面でも、くっきりと表現します。また、CGの斜め線などがギザギザに見えてしまうジャギーも、この絵づくりによって軽減することができました。さらに、目の特性に考慮した“パネルドライブモード”を新たに用意することで、体感の動画応答速度を高め、ボケ感を低減しました。
ゲームをプレイする際には、画質モード“ゲーム”を試してみてください。きっと、これまで以上にゲームの仮想世界にのめり込めると思いますよ。

映像世界へと自然に誘う、色温度設定“ナチュラル”

人間の目には、そのときどきの環境に順応して、見え方を自動で調節する機能が備わっています。たとえばトンネルなどの暗がりから明るいところへ急に移ったとき、一瞬まぶしく感じますが、しばらくすれば目が慣れてきますよね。また、デジタルスチルカメラで撮影した画像は、同じ赤色でも蛍光灯の下と電球の下では色の見え方が違います。でも、肉眼で見るとどちらの環境でも同じ赤色に見えてくるから人間の目は不思議です。
ヘッドマウントディスプレイでの映像体験は、外光をほぼ完全に遮断した特殊な環境下での視聴です。そこで『HMZ-T1』では、“暗順応”と呼ばれる目の自動調節機能に合わせて、画面輝度を少しずつ自動で下げていく機能を搭載しました。
『HMZ-T2』ではもう一歩踏み込んで、画面の色温度が時間の経過とともに変化する色温度設定“ナチュラル”モードを追加しました。映画館で上映される映像もそうですが、暗がりで映す映像は色温度が低い、つまり赤みの強い映像のほうが現実感のある自然な印象になります。しかし、目が明るい環境に慣れている状態では、色温度が低めの映像は画面全体が赤っぽく古ぼけた写真のように見えてしまいがちです。こうした現象を防ぐために、『HMZ-T2』では装着後しばらくしたら、自動的に色温度が少しずつ下がっていく仕組みを盛り込みました。暗い環境に目が順応するのに合わせて色温度が徐々に変化することで、意識せず自然に映像世界に入り込むお手伝いをします。

ヘッドマウントディスプレイだからこそ、
「理想の映像」を追求できる

ある時、音質の担当者と話していて想起したことですが、ヘッドマウントディスプレイは、「映像機器におけるヘッドホン」のような存在ではないかと私は思います。スピーカーとヘッドホンとの関係は、テレビとヘッドマウントディスプレイとの関係に似ています。ヘッドマウントディスプレイもヘッドホンも、身につけることで使用する環境を絞り込み、理想の映像と音を追求することができます。
理想の映像と言えば、最新の3D映像はクオリティーもかなり向上してきており、臨場感たっぷりでとても魅力的です。それにも増してお勧めなのが、従来の2D作品、特に名画と呼ばれる古い映画です。最新技術でリマスタリングされてブルーレイディスク化された名画を『HMZ-T2』で見ると、その映像の美しさを再発見し、感動することもしばしばです。実は、『HMZ-T2』では、2D映像に合わせた画質調整にもかなりの時間をかけています。ぜひ、新旧問わず2D作品も楽しんでいただければと思います。

これをご覧になっている皆さまにもぜひ『HMZ-T2』を手にとっていただき、ゲームや映画、アニメ作品など自分が好きな映像コンテンツを思う存分楽しんでいただきたいですね。

03 想像を超えた軽量化の実現
『HMZ-T2』メカニカルマネージャー
楠 俊宏

連続する曲面で構成された『HMZ-T2』のデザインは、未来を可視化したようなシンプルな美しさに加えて、装着のしやすさと、快適な装着感を追求することによって生まれたものです。 
コンテンツを視聴したいときに気軽に装着できて、長時間使用しても疲れにくいかたちは、どのようにして生み出されたのでしょうか。外装の開発や電子回路など内部パーツの実装を担当したメカニカルマネージャー 楠 俊宏が、開発当時を振り返って『HMZ-T2』に代表されるソニーのもの作りへの情熱とこだわりを紹介します。

連続する曲面で構成された『HMZ-T2』のデザインは、未来を可視化したようなシンプルな美しさに加えて、装着のしやすさと、快適な装着感を追求することによって生まれたものです。
コンテンツを視聴したいときに気軽に装着できて、長時間使用しても疲れにくいかたちは、どのようにして生み出されたのでしょうか。外装の開発や電子回路など内部パーツの実装を担当したメカニカルマネージャー 楠 俊宏が、開発当時を振り返って『HMZ-T2』に代表されるソニーのもの作りへの情熱とこだわりを紹介します。

心地よい装着感を追求して生まれた
『HMZ』のユニークなかたち


ヘッドマウントディスプレイは深い没入感とともに、あたかも映像の中に入り込んだかのような体験ができるユニークなAV機器です。しかし、その特別な感覚を味わっていただくためには、ヘッドマウントディスプレイを“装着”しなければなりません。“装着”というプロセスのハードルを可能な限り下げて、没入感のもたらす感動を多くの人に味わってもらいたい。そのためにはヘッドホンのように気軽に装着できて、視聴中は快適であること。同時に、疲れにくくしなければなりません。

単純に装着性だけを追求するのなら頭全体をすっぽりと覆うヘルメット型がベストです。頭にしっかりと固定でき、かつヘッドマウントディスプレイの重量を頭全体で受け止めることで疲れにくくなります。しかし、ヘルメット型のヘッドマウントディスプレイを長時間装着していると、蒸れて汗をかいたり髪型が乱れたりと、手軽さに課題がありました。

そこで手軽さと装着感を両立したデザインとして、ヘッドバンドストラップとヘッドパッドを使った装着方法にたどり着いたのです。バンドであれば長さを変えることで頭の大きさに合わせることが容易ですし、二股に分かれている構造は後頭部の微妙なふくらみに沿うことで、いろいろな頭のかたちに適合させることができます。こうして『HMZ-T1』と『HMZ-T2』に共通する、頭部にしっかりと固定できるヘッドマウントディスプレイの装着方法が誕生しました。

オーバーヘッド型ヘッドホンにも
対応できる新デザインの採用


『HMZ-T2』はヘッドホンを着脱式にすることで、自分にあったヘッドホンの好みの音で深い没入感を追究できるようになりました。あわせてデザインも全体の一体感を高めたスリムなものを採用しました。これは小型軽量化とともに、オーバーヘッド型ヘッドホンに対応するための変更でもありました。

『HMZ-T2』の左右にあるヘッドバンドストラップの収納部分は、内部にストラップの収納スペースを確保しつつ厚みを可能な限り減らしています。オーバーヘッド型ヘッドホンはイヤーパッドが頭に密着できないと、特長のひとつでもある、押し出すような音の圧力が隙間から漏れて、低音の迫力や響きの美しさが損なわれてしまいます。『HMZ-T2』ではヘッドバンドストラップの収納部分をギリギリまで薄くすることで、ヘッドホンのイヤーパッドがスムーズに変形して頭にしっかりと密着するようにしました。

また、『HMZ-T2』では、本体の内側をいかに頭部にフィットさせるかに注力しました。本体サイズは、頭の大きさやかたちを人種や男女の別を問わず計測したデータを元に決定しています。ただ、頭のかたちや大きさはやはり人それぞれです。多くの人の頭に柔軟に対応できるように、ヘッドバンドストラップの収納部分が左右に広がり、締め付け感を抑えてフィットするようにしました。さらに、軟質素材でできたライトシールドを取り付ければ、頭と『HMZ-T2』との間にできる隙間をほぼ完全に埋めて、映像世界に入り込める環境がつくれます。何もない暗闇に画面が浮かび上がるようなヘッドマウントディスプレイならではの没入感は、新デザインによりさらに高められたと思います。

ゆずれないこだわりがあるからこそ、
専門領域を超えて一つになった

『HMZ-T2』は小型軽量化を大きな開発テーマのひとつとしましたが、『HMZ-T1』と較べて20パーセント以上もの軽量化を実現しました。しかし、ヘッドマウントディスプレイは、その製品のユニークさゆえに、多くの困難にぶつかりました。

『HMZ-T2』は、映像、音響のエンジニア、メカ、デザインと全部門が集まって毎週ミーティングをおこない歩調を合わせて開発を進めていました。
ヘッドマウントユニットの内部には有機ELパネルやヘッドホンアンプ、装着用のヘッドバンドストラップとさまざまなデバイスがつまっています。回路の設計変更や小さなパーツ変更も困難な限られたスペースの中で、精細な画質、自然な雰囲気で広がる音を実現しつつ、かつ1号機より小さく軽くと、各部門がそれぞれの理想を実現しようとしていました。たとえば回路で変更があったときには、それが一部分の変更でも、外装のデザイン全体を作り直すことがありました。逆にデザイン性を守るために、ほかの部分の設計を変更することもありました。『HMZ-T2』のデザインは立体的な曲線で構成された三次元形状なので、ふくらみが0.1ミリ増えたり減ったりしただけでも、全体を見直さないと微妙な狂いが生じてしまうんです。

デザイナーもエンジニアも、それぞれの領域で妥協できないこだわりを持っています。だからこそ全体で明確なコンセンサスをとって、一緒に打開策を探しました。専門領域を越えて関係者が一つになれたからこそ、“こだわり”の結集した商品『HMZ-T2』が出来たのだと思います。

『HMZ-T2』開発を支えた"技術屋魂"

苦労と緊張が続いた『HMZ-T2』の開発をやり遂げられたのは、やっぱりメカ設計が好きだからでしょうか(笑)。困難な目標が、工夫とひらめきでかたちになっていくのはなんとも言えない喜びです。不可能に見えるようなことも「どうやって解決しようか」と前向きになって知恵をしぼることで、思いもよらなかった解決策が見いだせます。もちろんひとりでできることには限界があります。三人寄れば文殊の知恵という言葉がありますが、わたしの所属していたメカ設計のチームでも毎日ミーティングをおこなってアイデア出しをしていました。

チームは全員がさまざまな経験やノウハウを持つスペシャリストで、なかには補聴器の設計を手がけた者もいます。彼らの発想はすごく新鮮で、「こういうやり方もあるのか」と驚かされることもしばしばです。さらに社内の友人やかつて開発チームを組んでいた仲間などの“横のつながり”で、チームの外や無関係と思われていた技術から解決の糸口が見つかることもあります。人と人がつながり、技術とノウハウを組み合わせることで、1+1が3や4になるんです。部門にとらわれずに、今までにない新しいものを貪欲に求める“技術屋魂”とでも言うべきものが『HMZ-T2』の開発を支えたのだと思います。

想像し続けること考えることを止めないこと

最初に想像できる範囲で開発を進めると、できあがるものは小さくまとまってしまいがちです。逆に想像することと考えることを止めずに、夢を語りながら開発を進めていくと、誰もが予想しなかったおもしろいものが登場することがあります。『HMZ-T1』や『HMZ-T2』はその代表だと思います。

とくに『HMZ-T2』の開発テーマのひとつでもあった“軽量化”については、目標を上回る20%以上もの軽量化が実現できました。不可能に感じることも考え続けることで、アイデアが新たなアイデアを呼び、予想を超える結果を生み出すことができたのです。新しいことや困難へのチャレンジを恐れずに、技術と情熱を融合させることが革新的なプロダクトを生み出す源になったのではないでしょうか。

04 映像とバランスする立体音響の追求
『HMZ-T2』音響設計担当
西尾 文孝

『HMZ-T2』はヘッドホンが脱着可能になっただけではなく、お好みのヘッドホンで5.1chバーチャルサラウンドを楽しむことができます。
『HMZ-T2』の音響設計とバーチャルサラウンド技術の開発に携わった西尾文孝が、音響設計の心得とともに、『HMZ-T2』がもたらす没入感と立体音響の関係やバーチャルサラウンド技術の仕組みについてお伝えします。

『HMZ-T2』はヘッドホンが脱着可能になっただけではなく、お好みのヘッドホンで5.1chバーチャルサラウンドを楽しむことができます。
『HMZ-T2』の音響設計とバーチャルサラウンド技術の開発に携わった西尾文孝が、音響設計の心得とともに、『HMZ-T2』がもたらす没入感と立体音響の関係やバーチャルサラウンド技術の仕組みについてお伝えします。

没入感を高めるためのバーチャルサラウンド技術


5.1chバーチャルサラウンドの効果(イメージ)
5.1chバーチャルサラウンドの効果(イメージ)

初めてヘッドマウントディスプレイの映像に触れたとき、思わず手を伸ばしたくなる3D映像の迫力に驚くと同時に2D作品の奥行き感のすばらしさに圧倒されました。そのとき「この立体感のある映像にサラウンドの音声を組み合わせたらすごい体験になる」と感じました。逆に、目の前の立体感のある光景に対して音が左右にしか広がらなければ、映像と音の体験レベルがバラバラで、コンテンツに入り込むのは難しいと思いました。映画やゲームはほとんどの場合、映像と音が切っても切れない関係にあります。映像と音がそれぞれふさわしいクオリティでバランスすることで、コンテンツに入り込む感覚、没入感が生まれます。

『HMZ-T2』は立体感のある音の再現のために5.1chバーチャルサラウンド技術(Virtual Phones Technology)を採用しています。人間は左右の耳に聞こえてくる音の違いで、音がどこから聞こえてくるのかを判断しています。音は音源からの距離や自分の頭や耳、壁や床といった周囲の物体に反響したり吸収されたりして、左右の耳に届くころにはそれぞれ異なる音(周波数)に変化しています。バーチャルサラウンド技術はこの左右の耳がとらえる周波数の違いを再現することで音の立体感を表現します。


5.1chバーチャルサラウンドの効果(イメージ)

『HMZ-T2』は再生するコンテンツの内容や雰囲気に合わせて4種類のサラウンドモードを備えています。たとえば“シネマ”モードは天井が高く前後に長い独特な空間である映画館の音の響きを再現しています。“ゲーム”モードではソニー・コンピュータエンタテインメントのサウンドエンジニアの監修のもと、音が聞こえてくる方向をしっかりと表現することで、背後から迫ってくる足音などゲームの緊張感を耳からも体感することができます。

ヘッドホン交換対応にあわせた新たなサウンドモード


『HMZ-T2』ではヘッドホンを着脱式に変更しています。『HMZ-T1』では固定式のヘッドホンを用意していましたが、映像と音のクオリティをさらに高い次元でバランスさせるには、ヘッドホンを交換できるようにすることがベターではないかと考えました。また、『HMZ-T1』を購入された方から「自分の好きなヘッドホンを使用したい」という声も届いていました。映像と音のクオリティのバランスは人それぞれ感覚が異なります。音質についても、低音が豊かに響くほうが好きな方もいれば高音のヌケのよさを重視する方もいらっしゃいます。『HMZ-T2』では、ヘッドホンがもともと持っている音の個性を素直に引き出せる基礎を作った上で、好みの音へカスタマイズできるように、ヘッドホンを交換可能にしました。

もちろん、付属のインナーイヤー型ヘッドホンでも、高いクオリティの音で楽しめます。MDR-EX300SLをベースにケーブル長をカスタマイズしたもので、直径13.5mmドライバーユニットを備えた密閉型バーティカル・イン・ザ・イヤー方式を採用しています。コンパクトで装着しやすく、低音から高音までバランスよく音が響くことが特長です。また、イヤーピースが耳に密着することで外部の音に対しての遮音性も高く、装着するだけで映像へと自然に没入することができます。

また、ヘッドホンを着脱式に変更したので、“インナーイヤー”タイプと“オーバーヘッド”タイプの2種類のヘッドホンタイプ選択メニューを新たに用意しました。音が耳に届くまでをシミュレートするバーチャルサラウンド技術は、ヘッドホンのドライバーユニットと耳の鼓膜との距離にサラウンド感が大きく左右されます。ドライバーユニットの位置の違いは十数ミリほどですが、自然なサラウンドを実現するには見過ごせない差なんです。映像と音をマッチングさせるためにも、ヘッドホンを交換したときはぜひヘッドホンタイプも変更してください。

人間の耳の感覚がいい音をつくりだす

音というものは空気の振動によってある程度は計算ができますが、聞いていて心地のよい音や臨場感のある音の再現には人の感覚が必要になります。測定機器を使って音を周波数特性で判断したり、それをもとにチューニングを追い込むといったことは当然おこないますが、数値として正しくても実際に聞いてみると音に不自然さを感じるときもあります。音質チューニングは最終的に人間の感覚、つまり自分の耳でとにかく“聞くこと”が基本になります。ただ、耳で知った音の変化、響きや空間の不自然さはなにが原因になっているのか。これを探し出すのはまさに手探りの作業です。ノイズの輻射が影響しているのか、それとも電源まわりに問題があるのか。ひとつずつパーツや回路をチェックして原因を探っていくしかありません。

『HMZ-T2』では微細な部品が限られた体積に密集しているので、音響部分以外の変更でも音が変化することはよくありました。そのたびに変化を聞き分けて問題を発見し、解決策を施すということを開発中に繰り返しおこないました。ただ、なかには音とは直接関係のない部分の改良で、予期せず音が良くなることもありました。設計や部品の変更があると、狙いとする音から離れてしまうことがほとんどですから、偶然の産物でハッとさせられるような音を聞いたときは、オーディオ設計の奥深さを感じますね。

コンテンツにあったサラウンドの表現が、
没入感をさらに深める

音楽ソフトなど制作者がこだわりぬいたオリジナルのサラウンドや音響効果を楽しみたいコンテンツでしたら、サラウンドモードを“ミュージック”に合わせてください。“ミュージック”は音響効果の演出や味付けをいっさいなくして、オリジナルのサラウンドをそのまま再現するモードです。音源に忠実な再生は音楽ソフトだけでなく、ドキュメンタリー系の作品にも相性が良く撮影時の息づかいも感じることができるでしょう。

ヘッドホンを使ったバーチャルサラウンド技術は手軽に立体音響を体感できることに注目が集まりがちですが、じつはヘッドホンを使っているときに感じる、頭の後ろから音が聞こえる感覚、“頭内定位”を解消する効果もあります。自然なステレオサウンドを楽しむのにも“ミュージック”モードはおすすめです。

オーディオにはヘッドマウントディスプレイを超える長い歴史がありますが、体験して初めてわかる映像コンテンツへの“没入感”と同じく、音も聞くことで初めてその臨場感を味わうことができます。『HMZ-T2』の自然なサラウンドや、ヘッドホンの交換で音をカスタマイズする楽しさ、そして映像と音のクオリティがバランスすることで深まる没入感を、ぜひ一度体験してみてください。まるでコンテンツの中にいるような感覚を、目だけでなく耳でも味わうことができるはずです。

※ “ウォークマン”はソニー株式会社の登録商標です

  • 01 T1からT2へ
  • 02 さらに進化を 遂げた画質
  • 03 想像を超えた軽量化の実現
  • 04 映像とバランスする立体音響の追及