商品情報・ストアICレコーダー/集音器 JAZZ JAPAN AWARD LIVE ソニー リニアPCMレコーダーで楽しむハイレゾ録音

JAZZ JAPAN AWARD LIVE ソニー リニアPCMレコーダーで楽しむハイレゾ録音 文=古賀義朗

Jazz Vol.56号掲載記事より

小沼ようすけ渾身のプレイを原音のままにライヴ・レコーディング

2月21日日産グローバル本社ギャラリーにて開催されたジャズジャパン・アワードセレモニー&ライヴにおける小沼ようすけのステージ・ショット。手前に写るのがこのライヴの模様をDSD録音したPCM-D100。風切り音や雑音を防止するためオプションのウインドスクリーンを装着している。

ジャズジャパン・アワード2014においてアルバム・オブ・ザ・イヤー《高音質ソフト部門》に輝いた『GNJ』をリリースした小沼ようすけが本誌アワード セレモニー&ライヴに登場,そのオーガニックなサウンドとダイナミックなプレイで観衆を大いに魅了したが,今回はそれだけでは終わらない。ソニーのリニアPCMレコーダー 「PCM-D100」によりこのライヴの模様をレコーディングし,録音された音を小沼自身が試聴,その音質や使用感を評価してもらうという新たな試みを行なったのだ。はたしてDSD方式によるハイレゾ音質でレコーディングされたその音は,ギターのナチュラルな響きに徹底的にこだわる彼の耳を満足させることができるのか?

《高音質ソフト部門》に輝いた小沼ようすけの生音を録る

去る2月21日,ニッサン・プレゼンツ・ジャズジャパン・アワード2014のセレモニー&ライヴが行われた。会場の日産グローバル本社ギャラリーは,今年も満員御礼の状況だった。今回アルバム・オブ・ザ・イヤー《高音質ソフト部門》に輝いた小沼ようすけ(g)も受賞後にライヴ演奏を披露した。まずは仙道さおり(per)とのデュオで受賞アルバム『GNJ』より〈エクスブローラー〉,ついでベースの金澤英明も加わったトリオで〈インプレッションズ〉を演奏。その模様は客席最前列に設置されたソニーのリニアPCMレコーダー 「PCM-D100」によりDSD方式※のハイレゾ音質で録音された。小沼とスタンドに設置されたレコーダーとの距離は3m弱といったところだろうか。

「PCM-D100」をステージの前に設置して録音を実施。小沼との距離は約3m。

写真のように「PCM-D100」をステージの前に設置して録音を実施,小沼との距離は約3mだ。

視聴はヘッドホンで

※PCで視聴される場合は、リニアPCM[48kHz/16bit]に変換されて再生されます。

そしてライヴから2日後,その録音を小沼ようすけと共に東京・大崎にあるソニーの試聴室で聴いてみた。

まず驚かされたのは,眼前に広がるライヴ感である。演奏会場であるギャラリーの広がり,天井の高さが感じられる空間に,ギターとパーカッションの響きが広がっていくのがわかる。もちろん,左寄りのギターと右側のパーカッションはステージにおける配置がよくわかる。比較的ピンポイントに感じられる小沼のアコースティックギターに対し,仙道のパーカッションはそれなりの大きさがあって,多くのユニットで構成されることもあり,音が出てくる場所の微妙な差異も再現されていた。マルチ・マイク録音で再構成された鮮やかに過ぎる楽器の定位とは異なり,空間の中での自然な定位を聴き取ることができる。

「凄いですね,演奏している位置が凄くはっきりとわかります。お客さんの中の子供の声もリアルに録音されていますね。まさに,客席の最前列で聴いているような聞こえ方です」

客席の最前列のイメージがきちんと伝わっているというのは,アーティストの耳だからわかるのだろうか。私にはクリアーであることと定位感の良さ,フォーカス感の良さはすぐに感じられたが,この客席最前列という距離感までは思いが至らなかった。ただ会場で聴いた距離感に近い感触は得られた。

「すごくナマっぽくて,しかもこだわっているところがはっきり聞こえて,聴いていて嬉しくなりました。周囲の音も拾っていますから,ライヴ感が凄いですね。弦に自分の身体が触れているという感覚が感じられます」

小沼ようすけは演奏にピックを使わない。フィンガリングである。時々指の腹を引っかけたりはするというが,タッチ音の少ない柔らかなギターの音が持ち味である。「ベーシストが弾くようなニュアンスでギターを弾いているのかもしれない」と小沼はいうが,奏法や出てくる音へのこだわりがこの演奏になっているのだろう。そのこだわりをこの録音で聴くことができたからこそ,聴いていて嬉しくなるのだ。

ベースの金澤英明が加わったトリオ演奏〈インプレッションズ〉では,演奏の厚みが増して押し出しが一段とよくなる。小沼もギターをセミアコに持ち替え,アコースティックギターとはまた違った気持ち良い音を聴かせる。セミアコもアコースティックギターのように弾きたいと語る小沼だが,サステインの違いからフレーズが違ってくるとも語る。もちろん曲調も違うのだが,音のエッジを強調しない柔らかな音は実に気持ちよい。

録音したばかり音を早速楽しむ小沼。

録音したばかり音を早速楽しむ小沼。そのリアルな音と,いとも簡単にハイレゾ音質のDSD録音ができる高い機能性に思わず笑顔がこぼれる。

2本の内蔵マイクの方向を変えながら音の違いを楽しむ

日産グローバル本社ギャラリーでの録音は,PCM-D100の内蔵マイクの方向を、Lchを小沼の,特にギターアンプの方に向け,Rchで仙道のパーカッションも狙えるように向けて録音されている。そう,「PCM-D100」のマイクはL/Rそれぞれの向きを自由に変えられるのだ。ソロや2〜3人のセッションを近距離から録音するのに適した,マイクを内側(90°)向きにしたX-Yポジション。大編成のオーケストラや広がりのある録音に適した,マイクを外側(120°)に向けるワイドステレオ・ポジション,その中間でマイクを平行に向けるA-Bポジションを基本に,状況に合わせてマイクの向きを自由に設定できる。

そこで,試聴室でマイクの向きを変えながら,その音の違いを聴いてみることになった。小沼は持参したアコースティックギターを取り出し,マイクの向きを変えながら録音。すぐに「PCM-D100」で再生して聴いてみた。因みに小沼愛用のアコースティックギターは山梨のギタービルダーの作品だという。その音にも小沼のこだわりがあるのだろうと訊いてみた。

「これは不思議なギターで,弾き心地がいいんです。作りはクラシックギターっぽくはないのですが,ネックもクラシックギターのようにしっかりとしていて,リズム感のあるジャズやラテン系に合います。ストロークも上品になりすぎず,ちょっとした荒さがある。そこが好きです。低音がリッチでいろんなギターの良いところ取りのような気がする。気持ちによく反応してくれるギターです」

短い曲なのだが,アコースティックな音が伸びやかで気持ちよく,適度に切れ味の鋭さも感じられる。優しい音だ。

「X-Yポジションの方がフォーカス感がありますね。ソロの録音に向いているというのはわかる気がします。A-Bポジションの方が耳で聴いている感覚に近いのかな」

耳はアタマの両側にあるのだから,その通りなのだろう。本体に内蔵されたステレオ・マイクを使いながらも,音源状況に合わせた1クラス上の録音ができそうである。聞くと,小沼は自身のツアーでこの「PCM-D100」を使ってみたという。そこでその様子を訊いてみた。

「ツアーで,サックスとのデュオを録ってみました。ナマっぽくて,空間の響きにも立体感があって,よかったですね。会場はそんなに広くないギャラリーだったんですが,これだけでいいライヴ録音ができますね」

取材時にはアコースティックギターにて生演奏を録音。小沼との距離は約1m。

取材時にはアコースティックギターにて生演奏を録音,指弾きによる美しい音色にその場に居合わせた関係者全員が息を呑んだ。小沼は「PCM-D100」のL/R2本のマイクの向きによる音の違いに興味津々の様子で,セッティングを変えては何度もプレイし,好みをセッティングを確認していた。因みに「PCM-D100」先端部にあるマイクの向きはソロを近距離から録音するのに適した,マイクを内側(90°)向きにしたX-Yポジション。小沼との距離は約1m。

視聴はヘッドホンで

※PCで視聴される場合は、リニアPCM[48kHz/16bit]に変換されて再生されます。

よりアナログライクな録音・再生が魅力のDSD録音

「PCM-D100」は最大192kHz/24bitのリニアPCMと,2.8MHz/1bitのDSDで録音できる。今回の録音はDSD方式で,これはSACDに使われる記録方式。

CDなどで使われるPCM方式は,たとえばCDの44.1kHz/16bitの場合には1秒間に44,100回解析し,それを2の16乗の階調で表す。96kHz/24bitの場合は96,000回の解析で2の24乗の階調ということだ。CDやDATの48kHz/16bitよりも大きなサンプリング周波数や量子化ビット数でデジタル化した音源をハイレゾ音源と呼び,96kHz/24bitや192kHz/24bitの音源も今日では少なくない。

これに対してDSDは,2.8MHzでサンプリングし,それを1bitで量子化する。リニアPCMの“パルス符号変調方式”に対して,DSDは“パルス密度変調方式”と呼ばれる。サンプリング周波数はCDの44.1kHzに対して64倍ときめ細かく,よりアナログライクな録音・再生ができるとされる。実際に音源を聴き比べても,DSDでは演奏空間や楽器の位置関係など,演奏空間の表現力が高い。左右だけでなく前後を含めた立体的な空間が表現されるのだ。ツアーでもDSDで録音したという小沼はこうも語った。

「ツアーで録音したときも,演奏中に入ってきたお客さんの様子,小声でしゃべっているその声まで,どのあたりにいたかがわかるほど,全部入っていますね。」

日産グローバル本社ギャラリーでの「PCM-D100」を使ったライヴ録音。スタジオ録音との違いを訊いてみた。

「やはりライヴはライヴ,自分自身の緊張の仕方の違いを感じます。変わらないことが自分にとっては理想なんですが,ライヴで,お客さんの期待感に溢れるエネルギーが降り注いでいるところで演奏するのと,スタジオでシリアスにミュージシャンたちとだけ向き合って演奏するのとでは,やはり自然と違ってきますね。作品を残そうというのと,音楽をお客さんと一緒に楽しもうという違いでしょうか」

その緊張感を楽しんでいるような小沼の演奏が,今回の取材でもう一歩深く楽しめそうな気がしてきた。最後に小沼は語ってくれた。

「チャンスがあれば,この『PCM-D100』でライヴを録音していきたいですね。」

DSD Direct Stream Digital

※ DSD(Direct Stream Digital)とは: 音声信号の大小を1bitのデジタルパルスの濃度で表現する方式。デジタルでありながら、アナログに極めて近い記録ができるため,より原音に忠実な音が再現される。スーパーオーディオCD(SACD)にもこの方式が採用されている。

[ワイドステレオポジション][X-Yポジション]

写真のようにPCM-D100のマイクは可動式で,ソロや2〜3人のセッションを近距離から録音するのに適した,マイクを内側(90°)向きにしたX-Yポジション(写真右),大編成のオーケストラや広がりのある録音に適した,マイクを外側(120°)に向けるワイドステレオ・ポジション(写真左),その中間でマイクを平行に向けるA-Bポジションなど状況に合わせてマイクの向きを自由に設定できる。

PCM-D100

リニアPCMレコーダー PCM-D100

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