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「私説・大磯百景 撮影録」
九月

夏と秋の間、九月は第二の梅雨とも言える長雨の季節だ。間もなく来るあの色鮮やかな、そして澄んだ空気の本格的秋の前に、この短い季節の狭間を楽しみたいものです。

レンズを交換していろんな画角の写真を撮る。レンズを変えると何が起こるかというということを考えてみると、もちろん画角、つまり写る範囲が変わる。同じところに立っていれば、対象物は望遠で撮れば大きくなるし広角で撮れば小さくなる。そして望遠レンズや広角レンズの特徴的な描写の効果が変わる。望遠は背後がボケるし、広角はパンフォーカスにしやすいということもある。それらを生かしたいためにレンズを変えるわけだが、もう一歩踏み込んで考えてみると、いや今日言いたいことをさっさと言うと、「レンズを変えたからといって、自分が動かなくてもいいということにはならない。」という話をしたいわけです。

例えば人物を撮るとき、望遠でアップ、ワイドで風景の中の全身、というのは自分はあまり動かずに写真に変化を与えようとしていますね。望遠でもずっと離れれば大風景の中に立つ印象的な全身が撮れる。ワイドでもぐっと寄って撮れば、ちゃんとアップが撮れる。望遠で撮るアップと広角で撮るアップは表現できるものが違います。それをやるには写真を撮る者が大きく動かなくてはいけない。被写体の人物との距離がものすごく変化します。すると、ここが今日言いたいキモですが、写真を撮る者と撮られる者の、精神的な距離も大きく変化します。それが写真に写る。写真には気持ちが写ります。レンズを変えて自分が動く。そうして気持ちのバリエーションを増やしていってください。

動くということはとても大切なことです。楽をしてはいけませんw。自分が動かずに世界が動き出すのを待っていても、なかなかそうはいかない。自分が動けば世界も動きます。そのきっかけにレンズ交換をしてみるのもいいんじゃないでしょうか。ズームの方も同じですよ。

風景でもスナップでも、被写体との精神的距離を考えてみましょう。その変化のためにレンズを変える。ということも試してください。

「高麗山の霧雲」

大磯町の東の端、平塚との境に高麗山(こまやま)がある。讃岐で見るようなポコリンとしたお椀を伏せたような小山が二つ重なり、そこに雲が湧いて雨の日の小さなスペクタルが見られた。二つの山とその間の谷に湧く霧雲を中望遠で少し圧縮し、ちょっと畏敬を持って見上げる感じ、距離感を持って愛おしむ感じ、が出るといいなと思って撮影した。雨の日なのでレインウエアとツバの広い撥水帽子をかぶっています。

α7R Summilax-M 75mm 1.4 1/800sec F 5.6 ISO 200

「国府本郷・驟雨」

もうこれはザンザン降り。驟雨(しゅうう)というのは一時的に降る大雨のことで、いまでいうゲリラ豪雨の小規模版みたいなものですね。夕立なんかも驟雨と言っていいでしょう。大磯駅前を離れて旧国府村である国府本郷あたりの旧東海道。急に降り出した大粒の雨におばあさんはビニール傘を取り出して家から出てきました。走って行って写真を撮らせてほしいと頼んでもいいが、むしろ街道全体を入れてピントも雨に合わせ(バックが暗い部分の雨。そこが雨粒がよく見える)、おばあさんは少しぼかして、つまり個性を少し消してどこにでもいる、ということは誰が見ても感情移入しやすいくらいに抽象化して撮ることにした。雨の情感を撮るためにした一瞬の判断です。望遠での引きの絵の情感ですね。

α7R Tele-Elmar-M 135mm 1/3200sec F 5.6 ISO 800

「長者町・東海道線と高麗山」

超広角で撮る引きの絵。一点透視法のような中心に収束する放射状の方向性が生まれ、その消失点に東海道線のこの区間の特徴である二階建てグリーン車を置いた。高麗山の霧雲と雲が動いていく空の様子、夏に生い茂った草やツタ、車のいない一号線に一人の人、というところに、この日この時の情感がある。たくさんのことが伝えられるワイドの世界ではそんなことに気を配っています。

α7R SWH 15mm 1/320sec F 8 ISO 800

「高麗山と学生たち」

高麗山は安藤広重が東海道五十三次の平塚宿として描いた山。高麗山は大磯宿なんだけど、当時は違ったのか、それとも広重の勘違いか。大磯と平塚の間を流れる花水川の橋のたもとに広重の絵と逸話を書いた絵看板がある。花水川は氾濫しやすい川で何度も川筋が変わっていたようだ、宿の境も変化していたのに違いない。広重の絵には湿地帯をいく小道とそこを歩く人たちが描かれている。その絵と高麗山そのものを入れた写真を撮ろうと超広角を。雨具で身を固めた学生たちがやってくるのが目の端に見えた。一瞬の勝負で画面に入れる。絵も山も彼らで隠れないように。しかし彼らも生き生きとするように。ワイドで寄る、という撮り方です。

α7R SWH 15mm 1/320sec F 8 ISO 800

「雨と高麗山」

今月も最後は少し造形的な写真で。望遠によるアップでは単純な構成になることが多いので画面を落ち着かせたいのか、動きを予感させたいのか、ちょっと不思議な感じにしたいのかなど、画面構成に気をつけたい。この場合はつまり枝ぶりですね。いっぱいある木や枝の中からどこをどう切り取るか。それとやはり背景のボケ方に気を使っています。それから大きくすると葉っぱ一枚一枚からしたたる雨の雫たち。

70-200mm F2.8 G 1/500 sec F 4 ISO 200

今月はここまで、また来月まで、楽しく写真しましょう。

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