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「私説・大磯百景 撮影録」
十二月

日常と言うことを考えている。TVや新聞で事件や災害のニュースを見ない日はない。「犬が人を噛んでもニュースじゃない。人が犬を噛んだらそれがニュースだ。」という謂いがある。人に見てもらおう、驚いてもらおうとするなら、一理ある考え方だ。しかし、勿論、本質はそこにはない。この言葉はニュースを商売として考えているだけだからだ。

TV に酷い出来事が映る。だが事件や災害がどのように特別に悲惨であったかよりも、その出来事がその人達から大切な日常というものを奪い去ってしまった事。いかに日常と言うものが大切だったかということ。そこに人間として考えるキモがあることを忘れてはいけない。古来ひとは95%以上の日常とほんの数パーセントの非日常と一緒に暮らしてきた。非日常には”ハレ”とも言える良い非日常と、"ケ”とも言える悪い非日常がある。この良悪をわける線引きは簡単だ。好きな時に日常に帰ってこられるのが良い非日常。もう戻って来られないのが悪い非日常。当たり前の事だが、だとすれば人は無意識にせよ、日常の方を基準に生きているのだ。

報道に限らない。ものを作ってみせると言うのは、ひとまず、めずらしいものを見せた方がインパクトがある。しかしより重いのは普通の日常である。日常に繋がった所に答えに近いものがある。そのことを忘れないでいたい。 特殊な立場にたって、別世界に行ってしまって、恐ろしく変わったものを造り出そうと、オザワは思っていない。そういうすばらしい作家達もいるが、そうなりたくない。John Lennon と言う人がいる。この人が、「imagine」と歌うとき。「A Day In The Life」と歌うとき、これだけの大アーチストの歌声から、特別な人だけに解る特別変わった色合いを感じない。このひとは偉大に日常を歌える。あるいは僕たちの日常のあくまでも延長線上に夢を(音楽的にも思想的にも)歌える人なのだ。それでいて私小説にはならない。なんだか分不相応にすごい人を引き合いに出してしまったが、まあそんなことも考えながら、写真を撮っています。

大磯の北浜で毎年左義長が催される。左義長は一年の厄を落とし、新年の幸を呼び込む行事で、旧年のお札や神棚の飾り物などを大きな焚き火で焼く。どんど焼きとかサイト焼きとか言い方はいろいろあるようだ。今月は12月ですがこの写真を載せます。年が明けて1月14日にこの左義長があるので、見に来たい人もいるかもしれないので紹介も兼ねて。最晩年の島崎藤村はこの左義長を見て、大磯に終の住処を求めたと言われています。

「北浜・左義長の宵-1」

大磯漁港の北側、北浜にいくつものサイトが作られている。人々が持ち寄ったしめ縄やダルマさんや、神棚のお札や飾り物がその周りに積み上げられている。まだ日が暮れないうちから人々は集まり始めるが、サイトに火がつくのは真っ暗になってから。写真屋としては本当はね、まだ夕暮れの残照が残っているうちに火をつけてもらいたいところだが、何しろ神事なので文句を言うわけにはいかない。真っ暗になる前に夕暮れの情緒だけは押さえておきたいところだ。提灯で囲われたゲートができていてそこを幾人もの人影が通る。黄昏時(タソガレドキ)というのは、「誰ぞ彼」が訛ったものだ。ろくな照明もない昔は、夕暮れには人を判別することもできなかったのだ。

α7R Elmarit-M 21mm 1/100 sec F 8 ISO 200

「北浜・左義長の宵-2」

左義長のサイトに火が入ると、集まった人々から歓声が上がる。真ん中に建てられた大きな竹の木が強い炎の上昇気流に踊る。ひとしきり燃え盛ると竹の木ごとサイト全体が燃え崩れ落ちる。その時が左義長の絶頂だ。歓声がまた大きく上がりどよめきが続く。大磯の左義長の由来が町のHPに書いてある。 「大磯の左義長はセエノカミサン(道祖神)の火祭りで、セエトバレエ、ドンドヤキなどとも呼ばれています。由来は、昔この辺りで目一つ小僧と呼ばれる厄神が、村人のおこないを帳面に書いてまわっていたところ、夜が明けてしまい慌てて帳面をセエノカミサンに預け、そのまま帰ってしまい、帳面を預かったセエノカミサンは困り果て、自分の家とともに帳面を燃やしてしまいました。これがセエトバレエ(左義長)の始まりと言われています。」

α7R FE 24-70mm F4 ZA OSS 1.3sec F 4 ISO 400

「北浜左義長・炎」

由来や逸話はどうあれ、また島崎藤村がなぜこれに惹かれたかもわからないけれども、厳寒の真っ暗な浜に燃え上がる、この生の巨大な炎の魅力は、人の心の何か奥底を揺さぶらずにはおかない。その炎の正体を今のカメラなら撮れるのじゃないかとしばらく頑張ってみた。70mmではそんなに離れることもできず、前髪やカメラを持つ手が焦げるかと思うような熱さを受けつつ、高速度シャッターを切り続ける。あちこちで歓声が上がる。サイトが倒れる方角をコントロールしようとして係りの人がロープを持って走り回る。炎は10m以上も立ち上がり様々な姿を見せる。圧迫された状況の中、何枚か炎の正体が撮れた気がした。

α7R FE 24-70mm F4 ZA OSS 1/1000sec F 4 ISO 400

「漁師町の夜」

これも左義長の夜。漁師町には小さな祠がたくさんある。カメラがα7Rになってこんな暗がりでも克明な写真が撮れるようになった。路地裏の猫になったつもりで、超ローアングルで露地を見てみた。左義長の喧騒がかすかに聞こえてくる。少し待っていると老夫婦が浜から帰ってきた。寒い晩だけれどもどこか温かい感じがする漁師町の夜が更けていく。

α7R FE 24-70mm F4 ZA OSS 0.6 sec F 4 ISO 400

「兜岩 けあらし」

けあらし、というのは海面を這うように起きる蒸気のことで、元は北海道の方言だそうだが、放射冷却の晴れた朝、内陸からの冷たい空気が比較的暖かい水上に流れ込んだ時に起きる現象だ。気温と海水の温度差が15℃以上、風のない早朝に見られる。大磯北浜の沖に浮かぶ兜岩。真冬には浜から見てその岩の真後ろから朝日が昇る。東京から一時間の大磯でもこんな北の国のような光景が見られる。寒い朝に早起きすればの話だが、皆さんカメラがあれば出かけられますよね。^^ カメラは元気をくれます。

α7R Tele-Elmar-M 135mm 1/8000sec F 5.6 ISO 200

さて今月はこれでおしまい。次はまた来年ですね。楽しく写真しましょう。

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