SONY

α

α6300

Impression

Yoshito Yanagida

“ AFがガンガン追いかける。
仕事で使えると直感した ”

α6300 Impression - スノーボードフォトグラファー 柳田 由人 -

厳しくも美しい雪山でスノーボーダーを撮り続けるプロカメラマン 柳田由人氏に、
エクストリームスノーボーディングの撮影でα6300を使った感想をお聞きしました。

スノーボードフォトグラファー 柳田 由人 プロフィール
01

カメラに求める条件

“ 世の中小さくなって
良くなるものが沢山ある。
カメラも例外じゃない。”
スノーボードフォトグラファー 柳田 由人

柳田さんはスノーボードの撮影を軸として、幅広い分野で活動されていますが、スノーボードカメラマンとしてスタートしたきっかけは何ですか?

もともと、父の家業だった写真屋を継ぐために日本芸術専門学校へ行っていたのですが、好きだったスノーボードでプロを目指したくなり、25歳までスノーボーダーとして活動していました。26歳になった頃、真剣にスノーボーダーとして活動していくか考えている時に、競馬や自動車の撮影を始め、郡大二郎先生に師事し、アシスタントとしてスタートしました。本格的にスノーボードを撮り始めたのは、知り合いになっていたスノーボード雑誌社から撮影を頼まれたことがあり、やってみたら、案外できてしまったのです。それが、スノーボードカメラマンとしてスタートしたきっかけになりました。

スノーボードの撮影では、
普段はどのようなスタイルで撮られていますか?

スノーボードの撮影には、ジャンプ台があるゲレンデなどでの撮影のほかに、深い雪山に入って行く「バックカントリー」と言われる場所での撮影もあります。私はどちらの場所でも撮影しますが、エクストリームスノーボーディングと言われる、激しくダイナミックなジャンプやターンなどを撮影する場合、やっぱり大自然の中で撮りたいのでバックカントリーで撮影することが多々あります。

バックカントリー

バックカントリーでの撮影は過酷だと思いますが、その中でどんなカメラを使っていたのでしょうか。

スノーボードフォトグラファー 柳田 由人 バックカントリーで撮影するときの装備

バックカントリーで撮影するときの装備

バックカントリーでの撮影は過酷だと思いますが、
その中でどんなカメラを使っていたのでしょうか。

私自身は、これまで一眼レフで撮影していました。カメラとレンズ、フラッシュなどを詰めこんだ上で、当然それ以外にも、スノーシューなどの雪山で移動するための装備も詰め込むことになるので、装重量15〜20kgにもなる大きなリュックを背負って移動することになります。誰も踏み入れていない、深い雪山に入って撮影する訳ですから、少しでも装備は軽いほうが助かるんです。でも、エクストリームスノーボーディングを撮影する場合、激しく動く被写体を捉えるオートフォーカスの性能と、カメラ自体の堅牢性は譲ることができません。そして、そうした撮影に対応できるのは一眼レフしかないから仕方ないし、当たり前のことだと思っていました。

スノーボードの撮影に使うカメラに
求める要素はなんでしょうか。

私がスノーボードの撮影で、カメラに求める条件は大きく分けて4つあります。それは、オートフォーカス性能・連写性能・堅牢さ・軽さです。エクストリームスノーボーディングでは、スノーボーダー(以下、ライダー)が非常に激しく動くので、それをしっかり捉えるオートフォーカスの速さと、連写追従性が必要です。と同時に、カメラマンたるもの、どんな時でもその場にいて、撮ることが何より大事な一面もあります。だからこそ、重いからといってカメラを持っていなかったり、妥協してオートフォーカスの余り信頼できないカメラを持って行って、結果撮れなかったら、全く意味がない。だからこそ、自分の体力で持っていける範囲で、最大限信頼のおけるカメラを選ぶと、一眼レフのシステムだったわけです。

そんな柳田さんは、ミラーレスのカメラをどう感じていましたか?

ミラーレスのシステムにも興味はありました。だって、世の中小さくなって良くなったものって沢山ありますよね。オーディオも携帯電話も、時代の流れの中で小さくなって信じられないくらい良くなったものって沢山あります。カメラだけがいつまでも例外では無いんじゃないか、と思って、試してみたいと思っていました。そんな中で、今回α6300を試す機会をいただきました。

02

ミラーレスの
印象を変えるAF

“ AFエリアが
緻密に画面全域に広がっていて、
ガンガン追いかける。”
α6300 + E 10-18mm F4 OSS 1/1250秒 F6.3 ISO100

α6300 + E 10-18mm F4 OSS 1/1250秒 F6.3 ISO100

今回、α6300でエクストリームスノーボーディングを
撮影してみて、どうでしたか?

最初は正直大丈夫かな?という不安はありました。ミラーレスの一眼システムに興味があった、とは言ってもあくまでサブシステムとして、いつでも持ち運べる小ささ、軽さが魅力だと思っていましたので。そのミラーレスで激しく動く被写体を捉えることができるのか、不安でした。そこで、α6300を借りる前にα6000を借りて使用してみたところ、その不安が吹き飛んだのです。

具体的にどのような点に驚かれたのでしょうか?

α6300 + E 10-18mm F4 OSS 1/1250秒 F6.3 ISO100

α6300 + E 10-18mm F4 OSS 1/1250秒 F6.3 ISO100

まず驚いたのはオートフォーカスエリアの広さですね。この写真を見てください。これはα6300で撮影した写真ですが、メインの被写体となるライダーが画面の端にいることが分かると思います。この写真は、キッカーと言われるジャンプ台の真下に座って、ジャンプしているライダーを下から広角レンズ、E10-18mm F4 OSSを使って撮りました。
 普通、こうした撮影では、ライダーが一番格好よく見える技を決めているところを、高さ感をもって表現してあげるために画面の端のほうにレイアウトします。その場合、普通の一眼レフだとこの位置にはオートフォーカスポイントがありません。だから、僕たちカメラマンは、ライダーが頂点に達する位置を経験から予測して、その位置に置きピンにして撮影するんです。
 それが、α6000、そしてα6300では、フォーカスエリアを「ゾーン」にして、ライダーの飛んでくる画面の上半分にして、フォーカスモードをAF-Cにすると、連写中、画面の端までしっかり追従して撮れてしまいました。α6000もそうだったので、初めて使ったときは驚きでしたが、AFエリアが画面全域に広がっていて、ガンガン追いかける。しかも、このモデルは更にオートフォーカスが緻密になっているので、しっかり追いかけているのが分かるのです。だから、安心して撮れました。
 これを体験して、それまでのミラーレスに対するイメージが一変しましたね。仕事で使える、と直感しました。

なるほど、オートフォーカスエリアの広さに驚かれたのですね。
その他に驚いたことはありましたか?

α6300 約11コマ/秒の高速連写

なるほど、オートフォーカスエリアの広さに驚かれたのですね。その他に驚いたことはありましたか?

そうですね。もう一つ驚いたのは連写性能ですね。
 この写真は、先ほどの写真と同じ場所でジャンプしてもらったシーケンスを、連写で捉えたものです。連写は相当速いな、と思って調べたら、秒間11コマも撮れてしまう。しかもオートフォーカス追従です。一昔前であれば、秒間10コマを超える連写は本当のプロ用の一眼レフにしか出来ない領域でした。これには驚きました。そしてその時の反応と、感触が非常に心地よかったです。

α6300は非常に連写が速いですが、11コマ/秒の連写速度は、撮影に必要なのでしょうか?

これは自信を持って必要だと言えますね。
 例えば、これが5コマ/秒だと、単純にジャンプやターンの時の撮影枚数が半分になってしまいます。その連写枚数で撮っているといい瞬間を撮り逃すことが多いですから、必然的に連写をせずに、一番いい瞬間を狙って撮影する、というスタイルになってしまいます。一方、6〜8コマ/秒位だと、撮れないことはないですが、連写のシーケンスのコマ同士の間が少し開いているので、ライダーのトリックやターンが決まっている瞬間がちょうど撮影できていないことがあるんです。これが10コマ/秒を超えて、11コマ/秒になると安心感がぐっと増しますね。

03

一眼レフに近いEVFの見え

α6300 + FE 70-200mm F4 G OSS 1/1600秒 F5.6 ISO800

α6300 + FE 70-200mm F4 G OSS 1/1600秒 F5.6 ISO800

“ 一眼レフに近い見え方で
ライダーをフレーミングするのが
非常に楽でした。”

普段一眼レフを使用されていて、いきなり電子ビューファインダーでスノーボード撮影をして、戸惑うところはなかったのでしょうか?

あまりありませんでしたね。連写枚数が11コマ/秒くらいに増えてくると、連写中も結構滑らかに見えるので動いているものを追いかけるのはそれほど難しくないんです。ただ、この写真のように、猛スピードで横方向に移動しているライダーを追いかける場合、こちらもカメラを大きく横に振りながら追いかけるため、電子ビューファインダーだと、慣れないとどうしても追うのがワンテンポ遅れる感じがありました。それが、8コマ/秒の連写(※高速ライブビュー連写)の場合、タイムラグが余り感じられず、普段使用していた一眼レフに近い見え方でした。大きくカメラを横に振りながらの撮影ですが、ライダーをフレーミングするのが非常に楽でした。

α6300 約8コマ/秒の高速ライブビュー連写

約8コマ/秒の
高速ライブビュー連写

その他、重視されていた、オートフォーカスの俊敏さはどうでしたか?

α6300 + FE 70-200mm F4 G OSS 1/3200秒 F4 ISO100

α6300 + FE 70-200mm F4 G OSS 1/3200秒 F4 ISO100

その他、重視されていた、
オートフォーカスの俊敏さはどうでしたか?

この写真を見てください。これは、SEL70200Gを装着して、猛スピードでターンしてくるライダーを捉えたものです。画面の左側に、雪が舞っているのがわかると思います。実はこれは、S字にターンしてきたライダーの、前のターンの時に舞い上がった雪なんです。その雪が、雪面に落ちる前に次のターンに入ってきている、それ位早いスピードでターンしてきているんです。この、相当速い動きをしているライダーを、200mmの望遠端でしっかり捉えることができました。

04

仕事で使えるという実感

α6300 + FE 70-200mm F4 G OSS 1/3200秒 F4 ISO100

α6300 + FE 70-200mm F4 G OSS 1/3200秒 F4 ISO100

“ AFの歩留まり、
画質、信頼性まで、
α6300はプロの仕事で使える。”

その他に、撮影していて、
印象的だったことはありますか?

印象的だったのは、やっぱりオートフォーカスの緻密さです。画面全体で425点もオートフォーカスエリアがあるんですけど、これは一眼レフでは考えられなかった密度と細かさです。
 この写真は、新潟県のかぐらバックカントリーを登っていたときに撮ったんですが、2000mを超えたあたりで、霧を抜けて晴れました。せっかくの青空だったので、山の頂上の方にある一本木の下でターンしてもらって、舞い上がる雪煙と風景を一緒に収めたかったんです。そうすると、必然的にライダーは米粒程の大きさになります。この時は拡張フレキシブルスポットを使って、ライダーの位置あたりにAFポイントを設定して連写しましたが、非常に細かいAFポイントが被写体の上に合焦している様子が見えるんです。これだけ小さな被写体を捉えている、というのが伝わってくるのは、信頼感がありましたね。

α6300 画面のほぼ全域を425点のAFポイントがカバー

画面のほぼ全域を425点の
AFポイントがカバー

α6300 拡張フレキシブルスポット

拡張フレキシブルスポット

α6300の画質についてはいかがですか。

α6300 + Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS <br>1/4000秒 F9 ISO100

α6300 + Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS 
1/4000秒 F9 ISO100

α6300の画質についてはいかがですか。

こちらは逆光の中で撮影したカットですが、後ろから光を浴びて、舞い上がる雪煙の質感がよく出ています。それでいて、太陽の近くの空も白飛びせずに階調が残っている。
 こういう構図では、露出を抑え目にして白飛びしないように気をつけて撮影はしますが、α6300で実際に撮れた写真を見ると、明るめの絵のなかに非常に多くの階調が残っていて、雪煙の質感がしっかりと伝わる描写をしてくれました。こんなに小さくても、一眼レフと同じかそれ以上の描写力がある、ということは強い武器だと思います。デジタルカメラになってから、小さいカメラは小さいセンサーで、画質にも限界がある、と思っていましたから。

スノーボードフォトグラファー 柳田 由人

最後に、今後も柳田さんの仕事の現場でα6300を使用されますか?

今回、α6300を使ってみて、エクストリームスノーボーディングの撮影においては、「仕事で使える」と実感しました。それは、撮影した写真の仕上がりはもちろんですが、バックカントリーを巡る撮影中、雪山で厳しい寒さの中で度々濡れながらも、一度の故障もなく撮影を続けられたからです。
 バックカントリーでは理想的な環境で撮影できるチャンスはそう多くありません。天気が変わりやすく、晴れていても一瞬で霧に包まれてしまうこともあります。また、ライダーが上げる雪煙も、新雪が降ったあとの午前中しか綺麗に撮れません。午後になると、太陽で雪の表面が溶けて硬くなり、綺麗に舞わなくなってしまうからです。
 そうした一瞬一瞬を、確実にものにしていくためには、まずカメラが故障しないこと。これにつきます。どんなに性能のいいオートフォーカスも、画質のいいカメラでも、動かなかったら撮れませんから。だからこそ、カメラの堅牢性は非常に重要です。α6300は、そんな僕の期待に答えてくれました。進化を続ける、ソニーのαから目が離せなくなりました。

スノーボードフォトグラファー 柳田 由人
スノーボードフォトグラファー 柳田 由人 Yoshito Yanagida

PROFILE
1973年兵庫県生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。自らもスノーボードプレイヤーとして活躍しながら、カメラマンである父と同じ写真の道を志し、写真家 郡大二郎(こおりだいじろう)氏に師事。1999年スノーボードカメラマンとして活動開始。スノーボード専門誌の取材ではソルトレイクオリンピック、バン クーバーオリンピック、ソチオリンピックと撮影を行う。現在は雪山での撮影やスノーボードブランドのカタログ撮影といったスノーボードカメラマンとしての 活動を軸に据え、他の競技にも展開するスポーツブランド、ファッション誌などでタレント、モデルも撮影。自動車専門誌などにも活躍の場を広げながら、常に アスリートを“格好よく”表現することを追求している。

4Dフォーカスシステム搭載

α6300

α6300