写真家 小澤忠恭 with α77 これまで数えきれないほどのポートレートを撮影してきた小澤忠恭氏。その小澤氏に“α77”の進化について語ってもらった。

“α77”のファインダーは革命の要素を持っている

135mm F2.8[T4.5]STF・1/50秒・F6.3・+0.3EV・ISO200・WB太陽光

革命というのは「不満」のエネルギーから起こるんですね。写真を撮りたいと思っている人にとって何が不満だろうか考えて、カメラが重たいから小さな「Eマウントカメラ」をつくったり、誰でも写真を失敗しないようにとか、何とか不満を解消しようとしているのがソニーさんだと思います。ユーザーの不満に根ざしているという意味で、“α77”の有機ELファインダーは革命的だと思いますね。
今までのファインダーは、人間の目にどうやって近づけるかを一生懸命に競ってきた、純粋に光学的なものだったんです。収差がないように、目が感じる明るさになるようにと、肉眼に近づけるように開発されてきたんですが、この有機ELファインダーになると、すでに目を超えている。薄暗がりで撮ったときも、こんなに見えるのかと思うときがある。子どもが豆電球で寝ているところを撮ろうとしたときに、肉眼では見えないのに、ファインダーの方がよく見える。つまり、自分の目を拡張してくれるものになっている。そのぐらい強力なファインダーなんです。

ファインダーとは、被写体を見つける場所

135mm F2.8[T4.5]STF・1/160秒・F4.5・+1.0EV・ISO200・WB太陽光

そもそもカメラの種類は、昔からファインダーで分けている。二眼レフ、一眼レフ、レンジファインダー。カメラはいろいろな要素からできているのに、主にファインダーで分類される。そのくらいファインダーはカメラにとって大事なところ。名前がファインダー「FINDER」つまり「見つける」場所ですから。そして、僕らカメラマンにとっても、ファインダーはゆずれないもの。どんないいレンズを持っていたって、いい被写体を見つけられなければこの職業は成り立たない。それが有機ELファインダーになって、暗いところなら完全に僕の目を超える。ぼけもわかるし、色も分かるし、情報がすべて見えている、まるで助手がひとり入っているようなものです。

カメラマンの経験を肩代わりしてくれる性能

Planar T* 85mm F1.4 ZA・1/800秒・F1.6・+1.0EV・ISO200・WB太陽光

“α900”の光学ファインダーは逆で、肉眼で見たときと同じように見えるんです。でも、実際に撮ってみるとそのままは写らない。僕たちは長年の経験で、もう少し絞りを開けようとか、絞ろうとか考えて撮る。光を読みながら、モデルを見ながら、肉眼で見ているものと写真の仕上がりの差を埋める、それが経験と呼ばれるものだった。それは失敗するたびに覚えてきたこと。それが有機ELファインダーになると、見た通りに写るから、カメラマンの経験がもういらなくなる。ソニーさんは、僕らの仕事を奪うことばかりをやっているんだよ(笑)。まさにカメラマンの経験まで肩代わりしてくれる性能を持っていて、撮る人はファインダーに写ったものを見て、いいか悪いか判断するだけでいい。でも反対に、いい写真を見たり、いい絵を見たりして、審美眼を磨く必要もあると思います。もちろん有機ELファインダーは新しいものだから、慣れも必要ですが、慣れるだけの価値があると思いますね。

300mm F2.8 G・1/2500秒・F2.8・ISO200・WB太陽光
写真家 小澤 忠恭

1951年岐阜県郡上八幡生まれ。1972年 日本大学芸術学部映画学科中退後、写真家 篠山紀信氏に師事。1981年「僕のイスタンブル」「ブエノスアイレスの風」でデビュー。以後「作家の貌」などの人物写真、「MOMOCO写真館」などのアイドル写真、旅や料理の写真で、雑誌、CMで活躍。ヌード、ポートレートで定評を得る。女優写真集、アイドル写真集、料理写真集など100冊近い写真集がある。神奈川県大磯町生沢在住。