“α” Owners' Magazine Vol.1

写真家 萩原 史郎 SPECIAL INTERVIEW 2

見る者を美しい世界へと誘う、圧倒的なリアリティー

冷たく澄みわたる空のもとに、雪に覆われた東北の山並みが広がる。
その凍てついた大地で、雪と氷が織りなす冬景色を作品に収める中で実感した α99とDistagon T* 24mm F2.0 ZA SSMのポテンシャルの高さについて写真家の視点で語ってもらった。

微妙なハイライトやシャドー部分までα99ならしっかり解像してくれますね

1/2000秒 F5.6

24mmという画角のレンズは風景を撮るのにもっとも適したレンズです。加えてDistagon T* 24mm F2.0 ZA SSM(以下Distagon)は、解像感が非常に高いので、広い風景でも安心して撮影できます。雪山のハイライトの微妙なところや、影になった樹の幹の部分までしっかり解像しています。朝日が樹々に反射して、とてもコントラストが高いシーンなのですが、「Dレンジオプティマイザー」を使うことで、暗部がつぶれることなくきれいに画が出ますね。画面のすみずみまで解像してくれるDistagon、そして高コントラストの画をそのまま描写できるα99、その両方があって僕らは安心してカメラを構えられる。
 もともとフィルムの時代はコントラストが高いと、雪の部分が白飛びしたり、暗部がつぶれたりで非常に悩まされたんです。でもデジタルになって「Dレンジオプティマイザー」といった機能が出てきて、こういうシーンも余裕で撮れてしまう。風景写真家からすると夢のような機能です。実際フィルムを使っている方は、今でもNDフィルターを使って輝度差を埋めたりしているのですが、それでもきれいに写せない。そういうのを「Dレンジオプティマイザー」なら簡単に再現できてしまいます。暗部を上げるとノイズも一緒に増えると思われるかもしれませんが、α99では目に見えてノイズがのるということは、今までの経験上ありません。もともとα99の高感度設計が優れているのだと思いますが、デジタルならではの機能によって表現できる風景の領域が格段に広がりました。

ハイエストライトまで描写してくれる α99の圧倒的なダイナミックレンジの広さに驚いた

1/100秒 F11

この写真は樹氷林の向こうに太陽が落ちはじめて、地表を覆った雪を立体的に見せた瞬間です。F11くらいまで絞り込んで、光状がきれいに出てくるように小刻みに自分の位置を移動しながら撮りました。驚いたのは、雪面に反射するハイエストライト部分まで飛ばずにしっかり残っていることです。α99はダイナミックレンジが圧倒的に広くなっていて、こういうコントラストの強い雪景色でも撮れてしまうんです。加えてDistagonがしっかりと雪の質感を表現して、白のニュアンスまで捕まえてくれている。このハイエストライトの部分は、これまでならすべて白飛びしてしまって絶対に撮れなかったのですが、α99とDistagonのポテンシャルの高さを改めて実感しました。ボディがしっかりしているからこそレンズが生きてくるし、レンズの良さを引き出せるボディがないと、こういう写真を撮るきっかけも生まれないと思います。

これまで絶対に解像できないような枝の先に付いた雪の質感まで再現されている

1/100秒 F8

このときは強烈な吹雪で、カメラを三脚にすえて撮れるような状態ではなかったので、手持ちで撮影しました。実は実験的に撮影にチャレンジしてみたのですが、撮ってみて驚いたのは、枝先まで黒は黒として、白は白としてしっかり再現されている。普通こういう写真を撮ると全体が白っぽくなってカメラが解像してくれないのですが、この写真は細かな枝のところまでピントがきていて、ビタっと見事に解像している。しかも「エリア分割ノイズリダクション」が効いてるから、エッジが欲しいなと思っているところにシャープネスがかかって、ピっと解像しているし、雪の質感を再現したいところは適度になめらかに見えている。本来なら解像しないようなところまで、α99はピリピリっとシャープに結像してくれます。

フットワークを生かすことで、あたかも20mmや16mmレンズのように使える

1/200秒 F11

単焦点レンズはフットワークを生かすことが基本ですが、そういうことができさえすれば、Distagonは非常にワイドな風景も撮れます。遠近感をつけるときに一歩でも近づいて撮りなさいとよく言いますが、こういう木立ではちょっと引いて見上げるようにして撮ると、強めにパースがついてくるんですね。主役を強調するときはぐっと寄ってあげることも大事ですが、寄り過ぎてしまうと逆にワイド感が出にくくなる。だから、ちょっと引いて画面の端に木を入れてあげる。そうすると、24mmの画角をあたかも20mmや16mmくらいに感じさせることができます。

Distagonは引きでも寄りでも両方いけるハイブリッドなレンズ

1/125秒 F11

Distagonは、遠くから風景を撮ったときの解像感も抜群ですが、こういうマクロのような画も撮れます。僕らは24mmのレンズを、主に風景の王道のように使いますが、Distagonならワイドマクロのようなハイブリッドレンズとしても使えてしまう。24mmでワイドマクロ的に撮れるこういうレンズは、実はなかなかないんです。特に僕はマクロ側が好きなので、風景を引きで撮りつつ、なおかつマクロの目で寄れるのは、とても大きなメリット。風景を見るような視点で、マクロ表現を楽しめますからね。Distagonというレンズは、自分が寄ってあげたり、引いてあげたりすることで、世界観をガラッと変えることができるポテンシャルを持っています。雪山に入るときに、重たいレンズをいっぱいバッグに詰め込んでいくと命の危険すらある(笑)。だからもし、レンズを一本しか持っていかないとしたら、広い風景を撮りつつも、マクロの目で被写体を見ることもできるこのDistagonを間違いなくおすすめしますね。

いい写真を撮りたいのなら レンズの最高の性能を引き出せるボディを使って欲しい

特に風景撮影の場合は、立ち位置が限られてしまうことが多いので、ズームレンズはとても便利です。トリミングもしないで完結できるのでかなり重宝します。ただ、Distagonには単焦点レンズでもマクロのように寄れるとか、解像感が高いとか、ズームレンズ以上のメリットがある。ズームレンズと単焦点レンズの両方を持っているαユーザーは多いと思いますが、風景撮影はズームレンズで撮るだけでなく、画角がこれだと決まっているのであれば、やはりDistagonのような単焦点レンズを可能な限り使って欲しいですね。そして、単焦点レンズの味を知ったうえで、それを生かせるボディを使うということが大事です。ボディとレンズの双方が良くないといい写真は生まれてきませんが、特にデジタルになってからそれが顕著になりました。だから、持っているレンズの最高性能を引き出すボディを使って欲しいし、逆にα99を使っているならば、やはり最高のレンズを組み合わせて表現して欲しいと思います。

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