“α” Owners' Magazine Vol.1

写真家 萩原 史郎 SPECIAL INTERVIEW 1

有機ELファインダーの先に広がる、新たな風景

冷たく澄みわたる空のもと、雪に覆われた銀世界が広がる。
その凍てついた大地で、雪と氷が織りなす冬景色を作品に収める中で実感した α99とSonnar T* 135mm F1.8 ZAのポテンシャルの高さについて、写真家の視点で語ってもらった。

EVFを使えば使うほど、背面のモニターだけではできないことがあるんだと実感しています

1/2000秒 F2

最初から感情論で話すのも恐縮ですが、正直僕はSonnar T* 135mm F1.8 ZA(以下Sonnar)にぞっこんですね。135mm F2.8[T4.5]STFも気に入っていますが、SonnarとSTFとではできることが全くちがうので両方持っても良いと思います。Sonnarは極薄ピントでの解像感と、そこからのなめらかなぼけがいいですよね。この写真も吹雪いた雪が舞ってぼけているわけではなく、本当に自然にぼけているだけなんですよ。カメラを低く構えて手前のところをふわっとぼかすようにして撮りましたが、信じられないくらいにきれいにぼけています。これを撮るときのポイントはピントの位置なのですが、α99の有機ELファインダーは拡大表示できるのでとても分かりやすかったです。この辺で大丈夫だろうというレベルではなくて、どこにピントを合わせているのかがちゃんと分かりますから、Sonnarを使うときは特に便利だと感じました。もちろん背面の液晶モニターで拡大表示できるものはありますが、こういう日中の明るい環境下ではモニターを見てもわかりづらかったりします。だから僕はファインダー上で拡大して撮ったのですが、これができるかできないかで明るい環境下での撮影は全然ちがってきます。EVFを使っていると、背面の液晶モニターだけではできないこともあるんだと感じますね。

被写界深度が浅いSonnarも、α99のEVFなら拡大してジャスピンが読み切れる

1/4000秒 F2

これもEVFで拡大して撮っています。拡大しているからこそ、垂れ下がっている小さな氷の滴にジャスピンがくるんです。光学ファインダーだけでは、もしかしたら読み切れないくらいの精度かもしれません。それをしっかり見て確認できるのはEVFならでは。さらにここまで正確に撮れるのは、α99の明るく高精細な有機ELファインダーの為せる技だと思いますね。そしてもうひとつ、実はこの写真は手持ち撮影しています。もし三脚が使えればライブビューで拡大して、なんとか撮影することも可能だったと思いますが、絶対三脚が使えないシチュエーションだったので相当無理な態勢でEVFを覗きながら撮影しました(笑)。でも手持ち撮影でここまでしっかり撮れるというのは正直驚きましたし、α99への安心感が強まりましたね。

EVFは使い慣れてくると撮影テクニックでいろいろなアイディアが出てきます

1/640秒 F8

Sonnarは解像力があるからやっぱり風景も撮りやすいんですよね。自然の風景を撮っているとコントラストの高いシーンに出会うことが多いのですが、そんなときもEVFならではの良さを感じます。たとえば暗い場所にピントを合わせたいときは、やっぱり暗いままだとどこに合っているか見えません。でもEVFで+側に露出補正していくと当然明るく見えますよね。そうしてピントを合わせてからもう一度露出を元に戻して撮るのですが、こういう使い方を僕はEVFで何度もやっています。これも撮影テクニックですよね。こんなことは光学ファインダーでは絶対できませんから思わぬところでEVFの良さを発見しました。使い慣れてくるといろいろなアイディアが出てくる感じですね。

人間の目では感じることのできない風景表現をできるのがSonnarというレンズです

Sonnarを使い始めたときは、あまりのぼけの良さにびっくりしました。大きくぼけることで風景がこんな風に表現できるのかと。さらにフルサイズのα99ならば本来のぼけをもっと生かせると思います。いわゆる風景写真はパンフォーカスで撮るものだと頭ががちがちになっている方も多いと思いますが、ぼけを生かした風景の表現というものが見直されてもいいのかなという気がしています。もちろん絞っていい風景がありますが、絞らずに表現できる風景もまたあるんですよね。人間の目は基本的に絞っているので、そうすると見た通りなわけです。人間の目で感じられない風景表現ができるというのは、ぼかしたときなんですね。それがSonnarのF1.8というのはもっと強烈にぼけるので、人間の目では感じられないような風景、恐らく人間が体験できないような風景表現ができる。それができるのがSonnarというレンズなんです。また、Sonnarはピントのきたところのキレと、ぼけとの落差が大きいですよね。それでも絞っていけば落差を縮めることもできます。ということは、自分が表現できる領域がとことん広がるということにもなりますよね。

これから撮れるものがそのまま見えている、まさに完結するファインダーですね

1/200秒・F8

光学ファインダーだとどうしてもファインダーでの見た目と撮った後のものに差があります。ぼけについては特に顕著なので、こんなぼけじゃなかったのにということはよくありますよね。でもEVFだとファインダーの見えと写ったものがほぼイコールになる。これほどありがたいものはないですね。特にSonnarのようにぼけ味を生かして撮れるレンズの場合は、死活問題になってきます。写真は風景に限らず一期一会。その瞬間を大切に撮るものだったりするので、それこそ見ているものと撮れたものが違ってしまうと大変です。でもα99の有機ELファインダーはこれから撮れるものがそのまま見えている。その意味では、まさに完結するファインダーですよね。
 僕はもともと色をテーマに普段から撮影しているので色彩は重視しているのですが、Sonnarを使ってからはぼけに対しても自分の好みが強くはっきりしてきました。ぼけの入れ方にはその人のセンスが宿ると思います。つまり風景写真のなかに自分の意志を込めることができるんです。そしてそれができるのもSonnarの持ち味なんだと思っています。だからこそ、Sonnarを魅力を存分に楽しめるα99は最高の組み合わせだと思います。ぜひ試してほしいですね。

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