“α” Owners' Magazine Vol.2

開発者が語るαの真価V

美しいぼけと階調が織りなす、極上の質感表現

被写体を際立たせるピントからのなめらかなぼけ味。
まさに美しいポートレートを撮るために生まれた究極のレンズとも言えるPlanar T* 85mm F1.4 ZA。
さらにポートレートで重要となる肌の色再現、階調表現にこだわりぬいたというα99。
各開発者がポートレートへの熱い想いを語った。

最高のポートレートのためのPlanarであり、それを存分に生かせるのがα99である

秀逸なポートレートを描写するPlanar 85mm。その開発はどのように始まったのか

もともと“α”というカメラはポートレートやネイチャー系の写真に強いというのもあり、最高のポートレートレンズを是非ともつくりたいというのは当初からありました。また85mmという数字に象徴されるポートレートレンズがαレンズのラインアップには必要不可欠だったというのも企画した理由のひとつです。(白石)

カールツァイスレンズの開発では、PlanarやSonnarというレンズに対するカールツァイスの思想を、設計の初期段階から我々も意識しながら取り組んでいます。そこからさらにカールツァイスと議論を重ね、常に開発しているレンズの方向性を確認し合いながら進めていきます。Planar T* 85mm F1.4 ZA(以下Planar 85mm)の場合は、そのプロセスでソニー側のレンズに対する想いと、カールツァイス側のレンズに対する思想が見事に合致したレンズでした。そういう意味では、Planar 85mmというレンズは、最高のポートレートレンズをつくりたいという想いがまさに結実して生まれたレンズだと思います。(大竹)

α99ではポートレートについてどのような設計思想をもっているのだろうか

ポートレートで重要となる色再現に関しては、α900時代からお客様に高い評価をいただいていたので、基本的にはα99でも方針を変えることはしていません。もちろん何もしていないわけではなく、露出やホワイトバランスのアルゴリズムに関しては状況に応じてより良くなるように改善しています。特に肌色、空色、緑色のいわゆる記憶色と呼ばれるものは色再現上はずせないポイントなので、ホワイトバランスも露出もかなり重点を置いて設計しました。さらに肌色の再現については顔認識技術を使って、色の基準をどこに持っていくか、露出はどうするかということを複雑なマトリックスを組んで細かく制御しています。
 また肌の質感をしっかり表現するために、「Dレンジオプティマイザー」による階調表現も見直しをかけています。肌色は均一色に近いので、ここを間違えると質感のないフラットな仕上がりになってしまいます。ですから顔の明るさや色、微妙な階調がきちんと保たれるようにα99をお使いになるお客様を想定した最適化が図られています。(花田)

シーンに応じて階調補正量を最適化しているという話はDistagonでもしましたが、ポートレート撮影時には、最も重要な肌の質感に関わる階調表現部分だけでなく、中間階調やシャープネス設計を含めて最適化しています。(漆戸)

α99はノイズを潰すのではなく、テクスチャーを残しながら、うまくノイズと付き合う

ポートレートで重要な質感表現と低ノイズ化について、ボディ開発者が語った

今回α99の高感度での画づくりには明確な方針がありました。たとえば、A3プリント程度の鑑賞サイズで見栄えが整うように主要な輪郭を際立たせ、暗部のテクスチャーはノイズと共に潰してしまうという考え方もありますが、その様にノイズを完全に取りきってしまうと被写体の持つ微妙な質感やその場の空気感を表現できません。それこそ、Planarレンズという宝の持ち腐れになってしまいます。レンズの持つポテンシャルを最大限引き出し、あらゆる鑑賞サイズにおいて臨場感のある写真表現を目指すなら、ノイズの存在(意図的に残すもの)は重要なエッセンスになります。そこで我々が目指したのは、ノイズの存在を消すことに重きを置くのではなく、被写体情報を極力忠実に保つ手段としてノイズの存在をうまく生かすというものでした。この方針を基に画づくりの最終的なチューニングをしつつ、今まで以上の高感度設計にトライしたのがα99です。(花田)

実際に、室内のポートレート撮影ではISO1600で撮ってもまったく問題がないほどに、α99の高感度の描写力は向上しています。この高感度でのノイズ低減化を実現できた理由のひとつに、イメージセンサーそのものの進化があります。同じ24メガのイメージセンサーでもα99では一画素あたりの電子の量「飽和信号量」が従来に比べて倍以上に増えています。つまり、情報量が圧倒的に増えているので、全体的にノイズが薄まってみえるのです。そしてもう一つ、高速フロントエンドLSIとBIONZ(ビオンズ)での信号処理も大きく寄与しています。ここでエリア分割ノイズリダクションなどの信号処理をかけることで、ISO1600よりも高感度側での質感表現とノイズ低減の両立が図られています。ただこれらの大前提として、イメージセンサーにどれだけいい情報を届けられるかが大きなポイントにはなるので、Planar 85mmを使うことはα99の高感度性能を引き出す意味でもとても有効だと思います。(漆戸)

MTFに現れない部分のこだわりがPlanarの美しいぼけを生んだ

Planarの美しいぼけ味、それはどのように生まれたのだろうか

コントラストにこだわるのがカールツァイスレンズですが、我々ソニーとしては「コントラストが高い=いいレンズ」なのかという議論を重ねていました。もちろんコントラストの高さは維持していますが、それだけではなく、特にポートレートにおいては“ぼけ”にもこだわるべきだという考えが、このPlanar 85mmには現れていると思います。MTFというのはピントが合っているところの数値を表しているのですが、ぼけについてはグラフでは表現できません。しかし設計サイドとしてはお客様に使っていただく以上、被写体を引き立たせるためにピントの合っていないところの写りも重視したい。それはつまりMTFのグラフに現れない部分も徹底的にこだわるということ。写真はピントの合っているところだけがすべてじゃない、というこだわりが我々のPlanar 85mmに対する想いなんだと思います。
 もしコントラストをばりばりにしてSonnarと同じ方針で設計してしまっていたら、全然違うものになっていたと思います。そうしたらおそらく、今みたいな評価はもらえていなかったのではないでしょうか。Sonnarとの設計方針の違いはお客様にも感じてもらえているところだと思いますし、Planar 85mmを多くの方に使っていただけている理由もそこにあると思っています。ピントの合っていないところに対して、なめらかにぼけていく。この背景描写がざわつかないように意図してつくった写りの部分を、ユーザーの皆さんに「レンズの味」という風に言っていただけるならうれしいですね。(大竹)

Planar 85mmとα99でポートレートを撮る喜びとは

Planar 85mmのぼけ味を存分に生かしてポートレート撮影を楽しんでいただくためにも、α99の有機ELファインダーはぜひ生かしてほしいですね。光学ファインダーの場合ピントの合わせやすさとぼけ像の確認を両立させることは困難です。そのため奇麗な円形のぼけを狙って調整してもファインダーで確認することはできません。しかし有機ELファインダーならポートレートの背景ぼけも、本当に撮影される状態に近いものがファインダーの中で確認できます。こんな感じでぼけるだろうというのをしっかり確認してから撮れますから、Planar 85mmを使ってポートレートの隅々まで作品づくりにこだわりたい方には最適だと思います。(漆戸)

またα99は当然Planar 85mmに対しても、レンズ収差補正についての補正量を個別にチューニングしています。他のαレンズ同様、レンズが持っている味が損なわれることはありません。今回、ポートレートという撮影ジャンルにおいてもボディ開発陣は注力して最適設計しているので、最高のポートレートレンズの実力をぜひα99で体感していただきたいですね。(花田)

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