萩原史郎 関東/信州 もうひとつの風景

風景写真をパンフォーカスで撮ることは、一つのセオリーといえる。人の目で見たままに写すならば確かにそれでいい。しかし一方で、写真はぼけるもの。だとすれば、いかにして自分の表現のなかにぼけを組み込むかを考えなければいけない。それは風景写真でも変わらないはずだ。もっといえば、ぼけは常に主役の引き立て役とは限らない。ぼけに込められた色彩やニュアンス、ぼけそのものの美しさなど、ぼけ表現は実に多彩であり、時に主役以上に雄弁にもなる。それを意識すれば、風景写真の幅は格段に広がる。もちろんぼけに限らず、露光時間や構図などの工夫も忘れてはならない。本作品から風景写真のさらなる可能性をぜひ見いだしてほしい。

写真家 萩原史郎