法人のお客様ラージセンサーカメラ 事例紹介 オリジナル連続ドラマ「螻蛄(けら) (疫病神シリーズ)」

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オリジナル連続ドラマ「螻蛄(けら) (疫病神シリーズ)」2016年8月掲載

スカパーJSAT株式会社 様/株式会社 ロボット 様/株式会社 東通 様

PMW-F55による4K HDR/SDR同時制作。テレビドラマ制作における新境地を開く。

スカパーJSAT株式会社様は、2015年に連続ドラマ・「破門(疫病神シリーズ)」を制作し、「BSスカパー」でオンエアして好評を得ました。そして今回、第2弾として「螻蛄(疫病神シリーズ)」(全5話、各60分)では4K制作を行い、「スカパー4K総合」では4Kスタンダードダイナミックレンジ(以下、SDR)で、「BSスカパー」ではHD SDRで同時放送しました。それに加えて4Kハイダイナミックレンジ(以下、HDR)制作にもチャレンジされました。

同社 放送事業本部 チャンネル運営部 BSスカパー運営チーム アシスタントマネージャー 清野正一郎様と株式会社 ロボット プロデューサー 長谷川晴彦様、4K HDR/SDR制作をサポートされた株式会社 東通 営業本部 営業部 部長 沼波圭介様、第1技術本部 ビデオセンター事業部 CG部 部長 山崎 悟様、同事業部 編集部 部長 兼 技師長室 担当部長 野村光宏様に、主に4K HDR制作の目的、ワークフロー、成果などについて伺いました。なお、記事は2016年4月中旬に取材した内容を、弊社にてまとめたものです。

固定観念にとらわれない視点で4K HDRという可能性に挑戦

スカパーJSATでは、2015年3月の「スカパー4K総合」チャンネルの開局に合わせて4K制作に積極的に取り組み、スポーツやライブステージ中継などの多彩な4K番組を視聴者に提供しています。今回、連続ドラマ・疫病神シリーズ第2弾「螻蛄」を4Kで制作することになったのも、4K制作への積極的な取り組みの一環でした。さらに、4K SDRだけでなく、新たなチャレンジとして4K HDR制作も同時に行うことにしました。

もちろん、4K HDRの放送規格はまだ固まっていないことや、高輝度部がキラキラと明るい映像というイメージがあるHDRが果たしてドラマに向いているのか、しかも連続ドラマで効率的な制作が可能か、といった懸念はありました。

しかし、私たちが制作するのはあくまでドラマの作品世界なのであって、HDR映像を創ることが目的ではありません。HDRの映像イメージという固定観念にとらわれるのではなく、ドラマの魅力を伝える上で欠かせない表現や構成にどんな可能性をもたらしてくれるのか、その一つの手段としてHDRで制作しようと考えたのが今回の取り組みの目的です。

テレビドラマでの、しかも全5話の連続ドラマでの4K HDR制作は初めてのトライアルになります。限られた時間の中で4K HDR/SDR制作を同時に行わなければなりませんので、効率的なワークフローの構築、オペレーションを実現する必要がありました。

そこで、制作チーム内にプロジェクトを立ち上げ、ディレクター、カメラマン、エディターなどの意見、要望を集約する形でシステムを構築し、オペレーション体制を整えることで、こうした問題をクリアしてドラマでの4K HDR/SDR制作を無事に終えることができました。

ドラマ制作における4K HDR/SDR同時制作のワークフローを構築

今回の事例における大きなポイントが、4K HDR/SDRのドラマ制作を同時に行うという点になりますが、短い期間のなかでこの目的に向けて制作を効率的に進めるには、撮影、収録、編集をスピーディーに進める手法を考える必要がありました。

そこで、4K制作においてハンドリングがしやすいXAVCフォーマットをベースに、SDRによる収録とHDR制作を同時に行えるワークフローを構築しました。撮影にはCineAlta

4KカメラPMW-F55を2式使用、VEベースにLUT(ルックアップテーブル)が適用可能なイメージプロセッシングシステムを4台用意し、PMW-F55出力のS-Log信号に対してオンセットグレーディングを行えるようにしました。S-Logの表現力を生かしつつも、現地でおおむねのトーンを決定することができたことで、4K SDR向けのポストプロダクション編集時間を大幅に短縮することができました。HDR用の信号監視の際にはLUTをOFFしてバイパスすることでS-Log3の信号レベルそのものを見て確認しました。

S-Log信号に対し現地で色調整。後工程の作業時間を短縮。

PMW-F55本体ではLUTの適用されていないS-Log3/S-Gamut3でXAVC 4Kを収録していましたので、こちらをHDR制作用の素材としました。4K編集に対応したポストプロダクションに持ち込んで、グレーディングの作業により4K HDR版の制作を進めました。

HDRグレーディングの作業においては30型4K有機ELマスターモニターBVM-X300を使用し、S-Log3に対するEOTFを適用しながら作業を行いました。S-Log3を通常のモニターで見るだけではわからない点も、BVM-X300側では輝度が忠実に再現されるので、進めることができました。

今回の一連の制作を経て、PMW-F55は大判ならではの表現力に加え、リモートでのアイリスコントロールなど、ドラマ制作で必須な機能を備えており、またHDR/SDRの制作をサポートしてくれる存在であると実感できました。

PMW-F55 2式を活用したマルチカメラ収録。三脚やステディカムなど、 シーンに応じて撮影スタイルを選択した。

4K HDRはドラマ制作でも威力を発揮してくれると実感

今回、HDRによるドラマ制作を行った結果、バイオレンスアクションドラマでもHDRは有効な表現手法であることを実感できました。特に、夜間のシーンや役者さんたちの顔の陰影で恐怖感を強調する表現で、黒を含めた色域の広さや再現性の高さが威力を発揮しています。たとえば、顔のアップを撮る際に、あえて上から照明を当てることで顔の表情、陰影などをフィルムタッチで描き出すことができました。また、暗い中で目がキラっと光ったシーンや夜間のバトルシーンでの緊迫感や迫力、暗闇に隠れ潜む姿などでも従来感じ得なかった臨場感と迫力に溢れ、恐怖感を存分に味わうことができる映像になっています。ドラマの作品世界を表現するという意味でも大きく貢献してくれたと思っています。HDRだからこうしなければならないということではなく、あくまでドラマの魅力を視聴者に伝える一つの手段としてHDRを活用すべきだとの思いは間違ってはいなかったと感じています。

当初は高精細な4K SDRで十分ではないかと考えていたスタッフもいましたが、3話ぐらいまで進むとHDRの魅力を実感するようになり、その可能性の大きさに注目するようになりました。編集や仕上げの工程では、いろいろな作業を行う中で得た知識やノウハウを編集済みの1話、2話に戻って再度グレーディングや編集に生かすといったことも行いました。HDRでないとできない映像表現が、ドラマの世界を映像で伝える上で有効に使えると判断、評価してもらえるようになったのではないかと思います。

今回のドラマでの4K制作は、今後の可能性についても多くの成果と知識を得ることができましたし、HDR/SDR同時制作のベンチマークとなったのではないかと思います。今後も、さまざまな番組コンテンツの魅力、楽しさを伝える手段としてHDRを活用していきたいと考えています。

ソニーには、これまで同様の4K制作をサポートするシステムラインアップの拡充、強化とともに、より効率的なHDR制作、HDR/SDR同時制作を実現できるソリューションを提供し続けて欲しいと期待しています。

  • スカパーJSAT株式会社 放送事業本部 チャンネル運営部 BSスカパー運営 チーム アシスタントマネージャー 清野正一郎 様
    スカパーJSAT株式会社
    放送事業本部
    チャンネル運営部
    BSスカパー運営チーム
    アシスタントマネージャー
    清野正一郎 様
  • 株式会社 ロボット プロデューサー 長谷川晴彦 様
    株式会社 ロボット
    プロデューサー
    長谷川晴彦 様
  • 株式会社 東通 営業本部 営業部 部長 沼波圭介 様
    株式会社 東通
    営業本部
    営業部 部長
    沼波圭介 様
  • 第1技術本部 ビデオセンター事業部 CG部 部長 山崎悟 様
    株式会社 東通
    第1技術本部
    ビデオセンター事業部
    CG部 部長
    山崎悟 様
  • 第1技術本部 ビデオセンター事業部 編集部 部長 兼 技師長室 担当部長 野村光宏 様
    株式会社 東通
    第1技術本部
    ビデオセンター事業部
    編集部 部長
    兼 技師長室 担当部長
    野村光宏 様
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