ソニーが生み出したコンデンサーマイクロホン「C-38B」。この四角い銀色のマイクをテレビ番組で目にしたことがあるという方は多いのではないだろうか。たとえば、漫才コンビの中央に位置する「センターマイク」、あるいは落語の高座に置かれ、鮮やかな話芸を伝える道具として。
この「C-38B」の初代機である「C-38」が発売されたのは1965年のこと。名機と呼ばれた真空管マイクロホン「C-37A」の音響回路をベースにしてつくられた。その年の紅白歌合戦のメインマイクロホンに採用された「C-38」シリーズは、今もなお“サンパチ”の通称で放送業界を中心に高い信頼を得ている。国内では「サンパチを知らないサウンドエンジニアはいない」と言われるほどだ。現場で長く使用され、40年前に販売されたものがメンテナンスのため工場に送られてきたこともあるという。
その特長は、クオリティーと利便性を高いレベルで両立させていること。繊細な音に特長がある和楽器やボーカルなどに適した音質を提供すると同時に、前述のように漫才や落語に携わる人間の言葉(台詞)の力強さもクリアに表現する。それまでの真空管マイクロホンではスイッチを入れてから動作が安定するまでに30分から40分かかっていたが、「C-38」はすぐに立ち上がり、1分ほどで実働可能になる。乾電池を使用することでAC電源が不要になった。
また、コンデンサーマイクロホンは従来、スタジオなどの安定した環境で使用されるのが一般的だった。だが「C-38」は屋外をはじめ、さまざまな環境に耐えうるタフさを持つ。幅広く、安心して使えることで、「C-38」シリーズは業務用のマイクロホンのロングセラーになったのだ。
「C-38」から始まって「C-38A」、「C-38B」と進化を繰り返してきたこのシリーズだが、基本コンセプトは同様である。心臓部であるマイクカプセルの音響構造や構成部品は初代「C-38」から変わっていない。それだけのクオリティーを、初めから備えていたのである。


