白石:前モデルの70-400mm F4-5.6 G SSMは逆光時の抜けが良く、黒が締まった写りで画質という点では好評をいただいたレンズでした。ただ、ボディと組み合わせた時のAF性能という点では、動きの速い動体撮影だと難しい点もありました。しかし、望遠のGレンズと中級機のαがある以上、やはりスポーツなどのジャンルもαで楽しんでほしいという思いがありました。そこで、もともと定評のあった写りにさらに磨きをかけ、動体追尾性能を格段に向上させた動きものに強いレンズをつくるという狙いで開発されたのが70-400mm F4-5.6 G SSM IIです。
大竹:動体追尾性能を高めるために70-400mm F4-5.6 G SSM IIは、レンズ処理LSIを高速化しています。これにより従来よりもきめ細やかな制御が可能となり、AFの速度と精度が飛躍的に向上。結果、動体追尾性能は従来の約4倍に上がっています。その上で、α77IIは79点の多点AFセンサーの搭載でAFの食いつきが良くなっているので、70-400mm F4-5.6 G SSM IIとの相性はすごくいいと思います。特にAPS-Cセンサーだと105mmから600mmまでと35mm判換算の焦点距離が長くなるので、スポーツや野鳥、飛行機の撮影など、より望遠で狙いたい動きもののシーンに非常に強い組み合わせになりますね。
大竹:写りに関しては、ナノARコーティングの採用が大きなポイントです。完成したレンズの写りを最初に見た時は驚きました。ナノARコーティングの効果には期待していましたが、もともと良かった抜けの良さや黒の締まりがここまで劇的に上がるとは正直思っていませんでしたね。カメラの性能でダイナミックレンジの広さは重視されますが、そこにはレンズの性能も大きく影響します。ダイナミックレンジを落とす要因として、レンズの内面反射によるフレアやゴーストの影響が少なからずあるからです。ナノARコーティングはそうした内面反射を大幅に低減できるので、黒がすごく締まって見えます。
写真を見ていただくと分かりますが、太陽をこのようなところに入れると黒が浮いてしまったり、太陽の反対側にゴーストが出たりします。しかし、全くゴーストが出ていませんし、黒も浮いていません。そこにこのレンズの実力が現れています。もともとポテンシャルの高いレンズでしたが、ナノARコーティングで写りはさらに良くなったので、逆光という条件で動体を狙う難しいシーンも、ぜひα77IIとの組み合わせで攻めてみてください。
白石:ミノルタ時代につくられたGレンズの70-200mm F2.8 Gは、そのぼけ味や柔らかい描写が特長のレンズでした。しかしフィルム時代に設計されたこともあって、イメージセンサー面との間でゴーストやフレアが少しでてしまうことがありました。70-200mm F2.8 G SSM IIでは、その部分をナノARコーティングの採用も含めて改善することで、より解像感を高め、デジタルに最適化しました。
大竹:レンズ構成図を見ると、前モデルから何も変わっていないと思われた方もいるかもしれません。しかし光学設計は一から見直し、レンズの曲率や屈折率、硝材などを変更しながら、最適なバランスを模索してつくったので全く別のレンズに生まれ変わっています。具体的には、イメージセンサーの高画素化を考慮して、高解像度仕様にしています。また、画面の中心からの距離が10mmから16mmくらいの中間部分の描写性能が向上しているので、APS-Cセンサーのα77IIなら、より高い結像性能を発揮できると思います。
白石:70-400mm F4-5.6 G SSM IIと悩む方もいるかもしれませんが、70-200mm F2.8 G SSM IIはF2.8通しなので、200mm以上(35mm判換算300mm)の望遠をあまり使わない方はこちらをおすすめします。α77IIはAFセンサーの中心にF2.8対応センサーを設置しているので、シビアなピント精度が求められるシーンにもこのレンズでしっかり対応できますから。これは余談ですが、もし200mm以上の望遠が必要な場合、この70-200mm F2.8 G SSM IIに2倍テレコンバーターを装着するよりは70-400mm F4-5.6 G SSM IIを使用した方が描写的にはいいですね。
大竹:レンズの駆動系に関しても70-400mm F4-5.6 G SSM IIと同じものを採用しているので、高速AFでスポーツシーンもどんどん狙っていけると思います。このレンズに限らず、300mm F2.8 G SSM II、500mm F4 G SSMも実は同じ駆動系を採用しており、追尾性能が格段に向上しています。これらの望遠系Gレンズならα77IIのAFの性能を十分発揮できるので、スポーツシーンをはじめこれまで撮ってこなかったようなシーンに、Gレンズとの組み合わせでどんどん挑戦してもらえればと思います。
白石:50mmはフルフレームの標準として昔からあるレンズで、ポートレートからスナップまでいろいろなシーンで活躍できる万能レンズです。だからこそ、最高の標準レンズをつくりたいという思いがありました。古いレンズは開放では甘く、絞るとしゃきっとする描写のものが多かったのですが、せっかくの大口径単焦点なので開放から安心して使えないと意味がありません。やはり開放での背景の写りや、被写界深度の浅い写りを楽しみたいというお客様も増えてきたので、そういう声にもお応えして生まれたのがPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSM(以下Planar 50mm)です。
大竹:αレンズにはこれまでも50mmのものはありましたが、Planar 50mmはそれとは明らかにレベルの違う写りを目指しています。同じPlanarでは85mmがありますが、これはどちらかというとぼけを重視しながらコントラストとの両立を図ったレンズ。しかしAPS-Cで2430万画素との組み合わせを考えると、やや柔らかすぎる写りになることも実際にはあります。カールツァイスとの協議を重ねるなかでも、50mmはコントラストの高いものにしようという話になりました。他社から出ているどのレンズよりも高いコントラストと高い解像感を実現することが目標でした。
大竹:また一般的な標準レンズは中心と周辺の性能のバランスが、絞り値によって変化しがちですが、このPlanar 50mmはほとんど変わりません。ちょっと絞ったF2.8の写真でも、中心部から端の方までぴしっとピントが合った状態がキープできているのが分かると思います。髪の毛も一本一本シャープに写っているし、金属の光沢感もある。α77IIはディテールリプロダクション技術で高い質感描写が可能なので、そういう写りの面でも相性はいいと思います。さらにF5.6まで絞った写真も、中心から周辺までしっかりピントが合っている。絞りが変わっても平坦性が変わらないのがこのレンズの魅力でもあります。
白石:このレンズなら、コントラストを意識した風景を切り取るのにも使えますし、α77IIに装着することで画角が75mmとなりポートレートに使ってもいい。解像感を突き詰めて撮りたいときにぜひ使ってほしいレンズですね。
白石:Distagon T* 24mm F2 ZA SSM(以下Distagon 24mm)は、フルフレーム用に風景に最適なレンズを目指してつくったものです。しかしα77IIはAPS-Cなので、画角が35mmの標準寄りになる。スナップにも最適なレンズになると思います。このレンズはSSM(超音波モーター)を採用しているので、静かで高速なAFが可能です。α77IIも多点でAFカバーエリアが広がっているので、このレンズと組み合わせてスナップで瞬間的にシーンを切り取るのに向いていると思います。
大竹:最短撮影距離が0.19mと短いのも特長のひとつです。撮影倍率が0.29倍なので、APS-Cだと約0.45倍でほぼハーフマクロくらいになる。マクロ的な使い方も面白いと思いますね。またα77IIは高感度性能が向上しているので、F値が明るいこのレンズで夜景を撮るのもいいと思います。さらにα77IIには回折低減処理が搭載されているのもうれしいところ。実はF8くらいまで絞ると回折現象でMTF曲線が少し落ち始めるのですが、回折低減処理でそこが持ち上げられるので、絞って風景を撮りたいときにもおすすめです。
Gレンズもツァイスレンズも、描写性能としては何年も先の写りを目指してつくっています。さらに駆動系も更新し、α77IIのように高いAF性能にも対応できる余裕を持たせています。そういう意味で今回紹介したレンズは、どれも長く使っていただけるものばかりなので、ぜひα77IIと一緒に楽しんでみてください。
α77IIはカスタマイズ機能が格段に向上している。11のボタンに53項目の機能が割り当てられるので、自分の撮影スタイルに合わせて事前にカスタマイズしておくと便利だ。そこで、ここではボタンカスタマイズの仕方を簡単におさらいしておこう。
手順はいたってシンプル。[MENU]ボタンから[カスタム設定6]を選び、[カスタムキー設定]を選択。あとは設定可能なボタンの一覧が表示されるので、設定したいボタンを選択し、続いて割り当てたい機能を選べば完了。初期設定のままでも十分使いやすいが、自分がよく使う機能を割り当てておくと操作性は格段に高まる。たとえばカスタム可能なボタンのひとつに「フォーカスホールド」を設定しておくと、フォーカスホールドボタンの無いレンズでも任意のタイミングでピントを固定でき、動画撮影などにも便利。自分専用のセッティングができれば、α77IIで撮る楽しさはさらに深まるはずだ。
ボタンカスタマイズ機能は操作性を向上させるひとつの手段だが、撮影シーンがある程度固定されており良く使う設定がある場合は「登録呼び出し(MR)モード」を利用すると、より快適に撮影を楽しめる。絞りやISO感度、ホワイトバランスはもちろん、クリエイティブスタイルなども合わせて3セットまで登録できるので、風景撮影用や動体撮影用などのセットを登録しておくと便利だ。