Vol.15 supercell

前作のアルバム『Today Is A Beautiful Day』から約2年半。ゲスト・ボーカルとしてこゑだを迎えてからのシングル楽曲を多数収録した、supercellのアルバム『ZIGAEXPERIENTIA』がこの度リリースされる。既存曲は疾走感があるものや穏やかな風景を想起させるものなど、1曲ごとにタイプの違ったものであったが、新録曲となるのは突き抜けたギター・サウンドをメインに、社会のあり方に躊躇なく切り込んだものが中心。一見かけ離れているようにみえて、聴き進めていくと、耳馴染みのある楽曲もまた新しく聴こえ、総じてとてもコンセプチュアルな内容に仕上がった。まるで人の時間の流れを浮かびあがらせるような、現実感あるストーリーを感じさせられてしまうから不思議だ。そんなsupercellのコンポーザーである、ryoに登場していただいた本インタビュー。アルバムのことはもちろん、自身も普段から様々な音楽サービスに触れているということで、Music Unlimitedの体験してもらった感想から定額制音楽配信サービスの可能性までをじっくり訊いた。

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meet「Music Unlimited」

meet「Music Unlimited」

本当に無限に音楽があるので、自分から能動的に動くんじゃなくて、配信されるものをランダムに流したり、聴こうとしないでも聴くようになりたいな、と思います。

———Music Unlimited のような定額制の音楽配信サービスについて、どんなイメージを持たれていましたか?

こういうサービスって海外では流行っているのに、日本だと撤退してしまったり、お金がかかる印象があって。でも、Music Unlimitedは30日間980円ですし、だいぶ安くなった気がしました。それはすごく嬉しいですね。

———ユーザー目線だとすれば、どういう風に使いたいなと思われましたか?

本当に無限に音楽があるので、自分から能動的に動くんじゃなくて、配信されるものをランダムに流したり、聴こうとしないでも聴くようになりたいな、と思います。「このアルバムのこの曲が聴きたいからCDを買って」という前のめりな感じじゃないというか。あと、Music Unlimitedはランダム再生の記録が残るのも良いですよね。ラジオをよく聴くんですけど、ラジオって今どのアーティストの曲がプレイしていて、何時何分に誰々の曲が配信されています、というのが出るじゃないですか? そういう風に「3つ前の曲、やっぱりカッコ良かった」と思い立った時でも探せるのが便利だなと。出先でメモれるようになると良いんですけどね。あ、そっか、履歴を見れば良いのか。

———スマートフォンとかで、気に入った曲をそのまま自分のプレイリストに入れることもできます。

あぁ、そうなんですね。移動中やどこかスタジオに行った時とかにふと流れたもので、「あ、これカッコいいな」と思ったら、いつも「SoundHound」を使って調べていくんです。そこから聴いていって、CDを買って「これ良かったな」とか「全然ダメだったな……」という感じで。でも、「SoundHound」って、(iPhoneを)解除します、起動します、キャッチしますと、3回触らなきゃいけないんですよ。それが一手間でできたら良いなと思っていて。でも、Music Unlimitedだと、おっしゃっていただいたようにプレイリストにも入れられたり、履歴にも残ってくれるので、順番に聴いていけばすぐ思い出せますよね。そういう聴き方ってより時間のロスがないというか。たまにラジオとかでも、良い曲だけどまだ情報がないとかもありますし。で、この曲いつ出るんだろう?と思いながらCDを取り寄せたら、「納期に2ヶ月かかります」みたいな時があって。忘れた頃に届いて、この曲の何が良かったんだっけ?と考えることもあるんです(笑)。その点Music Unlimitedはすぐ聴けるので、そういうのはないですよね。

———日々のふとした中でひっかかった曲を聴く、ということが多いんですね。

そうですね。ラーメン屋さんとかでかかっていて、「うわぁ、カッコいい」となったら調べて、という感じです。でも、聴いて調べて、という二手間がもう聴いて調べられているという状態に変わるという。ラジオより音も良いでしょうし、ガンガン活用していきたいな、という感じがします。

今後Music Unlimitedを使ったDJイべントとかもあるといいですよね。

———Music Unlimited内には、オススメプレイリストという特定のトピックに沿って選曲されたページもあって。もし、ご自身が作るとなると、どういうものを作りたいですか?

自分だったらやっぱりロック系というか、バンドものを色々と集めたいなと。でも、作るよりかは人が作ったものを聴いてみたいな、という方が強いかもしれないですね。ラジオとかは番組ごとで特徴がありますし、“こういう色”と印象をつけられる方……「ニコニコ動画」でいう配信実況主みたいな有名な人が出てきたら、ラジオ局の代わりになるんじゃないのかな?と思います。

———そうなるとより楽しみ方も増えますよね。ご自身が作るとなると、バンド編成のもの、ということですが、一番初めを振り返ると、どういうところからバンドものを聴くようになったか覚えていますか?

最初に洋楽のCDを買ったのは、中学生の時で、スヌープ・ドギー・ドッグというヒップ・ホップの人でしたね。何で買ったか?というと、友達が「これ良いよ、今流行っているから」と言っていたからで。でも、当時はあまり良さが分からなかったんですよ(笑)。歌詞カードを見ても、言っている意味が分からなくて。その後に、「これ聴きやすいから」と言われたのがディープ・パープルというハード・ロック系でしたね。実際聴いてみたら、「これはすごく分かるわ」となって。もっと前というと、「ドラゴン・クエスト」のサントラになるんですけどね。そこから入って、今言ったような洋楽のCDを買ったという感じです。で、「TSUTAYA」というサービスができて、買うだけじゃなくレンタルも……という感じだった気がします。

———最近だと、どういうアーティストのCDを買ったり、聴いたりしていましたか?

最近買ったのは……ジャスティン・ティンバーレイクロビン・シックの新譜とかですね。ロバート・グラスパーの『ブラック・レディオ2』とかも。「あ、カッコいい」と思ったものを、ネットですぐ買ったりしています。流行りがその都度違うんですよね。ヒップ・ホップというものに関しても、初めて触れた後も色々と聴いてきたので、それなりに理解は示せるようになりましたし。中学生の時はまったく理解できなかったですけど(笑)。

———イベントがすごく手軽に。

ですよね。もう自動作曲くらいの勢いで、簡単にできそうなので。

———(笑)Music Unlimitedはデバイスのカテゴリーが13個と幅広くあって、「PlayStation®」でもできますし、ゲームをよくやられるryoさんにとってそれも魅力的なのかな?と。

「PlayStation®3」だと同時に起動できないと思うんですけど、裏でバックグラウンド再生しながらできればよりいいですよね。それこそ、今、「グランド・セフト・オート」というゲームをやっているんですけど、ゲーム内アプリみたいな感じでプレイヤーが車に乗ると、ラジオ番組のようないろんな有線放送が流れてくるんですよ。ロックとかゲームの世界観と関係ないカントリーが流れたり、ギャングスタラップだったりと、曲を選べるんですよね。そんな感覚で他のゲーム内でも連携してくれたりすると良いなと。「PlayStation®4」になると同時起動できるんじゃないですか?という。最近、何かしながら他の作業をするのが普通になっているから、それだけするというよりは……。

———「PlayStation®3」にはない機能なんですけど、PCの方だとオススメプレイリストという機能がありまして。そこに「グランド・セプト・オート」のラジオチャンネルごとのセットリストがあって、流れていた曲をお楽しみいただくこともできます。

知り合いの人が「グランド・セプト・オート」のチャンネルだけ使ったセットでDJをしていたので、今後Music Unlimitedを使ったDJイべントとかもあるといいですよね。

会員数がより増えれば、いろんなサービスに繋がっていくと思うので、多くの人に使ってほしいですね。

———他にはどんなことができればいいな、と思われますか?

Music Unlimitedと連動して、ミュージック・ビデオも動いてくれると面白いかな?と思います。実際、「MixerBox」という「YouTube」と自動で繋がってくれるアプリがあって。再生しておくと、画面上にミュージック・ビデオが流れながら、下には情報が出るみたいな感じなんです。しかも、起動した瞬間から音が鳴るので、複雑じゃないんですよ。人ってガマンできるのがクリック2回までだなと思っていて。3回は……めんどくさいかなと。

———確かに。できればワンクリックでいけるのが理想ですよね。普段からいろんなツールを使って音楽を聴いているんですね。

音楽が好きな分、そういうサービスが出ると、真っ先にチェックするようになったんですよね。同じ曲数買うとなると、お金がどれだけあっても足りない気がしますけど(笑)。今後、Music Unlimitedがあくまでメジャーどころの曲と、専門性の高いサイトにあるような曲とを集めて、1つに統一してくれたら嬉しいです。

———海外インディーズはもう結構入っていて。日本のインディーズはまだまだこれからなんですけど、今後もっと細かいところまで掘り起こしていけるといいな、と思っています。

「ニコニコ動画」とかでも、ボカロ音楽ってあるじゃないですか? 24時間ランキングが出るんですよね。そういうのもMusic Unlimited内に組み込まれると、また面白いのかなと。会員数がより増えれば、いろんなサービスに繋がっていくと思うので、多くの人に使ってほしいですね。

———すごく根本のお話になるんですけど、音楽をご自身で作る前と今とでは音楽の聴き方として変わった部分というのはありますか?

聴き方はあまり変わっていないです。その都度好きなものに対して、「あぁ、これはカッコいいな」という感じで。でも、前程は偏っていないかな?と。以前は自分の中の印象として60点ぐらいだったら、絶対飛ばして聴いていたんですけど、「こういうジャンルはこういう良さもあるよね」と、今は一応聴いておこうというのがあって。昔はこういう配信サービスもなかったから、1曲のありがたみというのが全然違ったと思うんですよね。それこそ日本のCDだと、3000円で十何曲しか入っていないから、外すわけにはいかないじゃないですか。だから、多くある中で「すごく良い」と思うCDしか買わなかったんですけど。今は手軽に聴ける分、60点でも「ちゃんと音楽だよね」と認められる素養が出てきているかなと思います。ただ、自分みたいな聴き方をしてくると、どうしてもお金を払うにはこれくらいの衝撃で、いろんなギミックが入っていないと嫌だな、みたいになっちゃうところもあって。でも、海外ってもっと緩くやっていると思うので、作る側も聴く側もそうなれば、良い意味で緩い感じの音楽がいっぱい出てくるだろうし。そういうのが流行って出てきてくれたら良いなと思います。

Music Style

「自分とは何者か?」と自我体験して生きていく。そのテーマ感が今回のアルバムに結果としてなりましたね。

———前作『Today Is A Beautiful Day』から約2年半ぶりのアルバムで。改めて、これまでの期間はどんな日々だったのかな?というところから伺いたいなと。

前のアルバムの時は、まだEGOISTがなかったので、supercellだけを考えている時間が多くあったんです。なので、ここ最近を振り返ると、色々なことを進めていてとにかく忙しかった、という感じで。で、ここ半年くらいでようやくアルバムが作れる感じになって、4月くらいから制作を始めたんですよ。その中で今まではピアノで曲を制作していたけど、ギターだとどうなるんだろう?と思って作ったものも結構あって。元々、ちょこちょこギターでも作っていましたけど、メインでガンガンというわけではなかったんです。でも、ちょっと時間が空いたらギターのサウンドの研究をしていて。「こうやるとこの音が出るんだ」と知ると、やっぱり応用したくなるじゃないですか。そうやって2年半の間でいろんなものを吸収できたと思うんですけど、今回のアルバムで一気にまとめて出せたかな?という感じがあります。

———今回はシングルの楽曲も多数収録されていて。テーマ曲でもあるアニメ作品に寄り添ったものもありながら、1枚で通して聴くととてもコンセプチュアルな仕上がりになっているなと。それがすごく面白くて。なので、アルバム制作にあたって、どういう構想が浮かんだんだろう?と気になっていました。

最初の構想の前に、シングルが多いから「これどういうアルバムになるんだろう?」というのはまずやっぱりあったんです。それとは別に今言ったような「ギターで作る」と思ったところからできていった曲があって。ギターって風刺的というか、不満じゃないけど、そういう負の感情みたいなものを、ストレートに乗っけられる楽器なんだな、と改めて感じたりして。だから、アルバムもそういう方向に乗っけていったというか。ギターで作った曲がアルバムの軸に繋がっている感じがありますね。組み立てていった結果、だんだんコンセプチュアルになっていったんですよ。アルバムの1曲目から物語がスタートしていく感じは、「不思議の国のアリス」の現代版をイメージしています。小学生くらいの時って……夕飯のカレーで喜んで食べて、そのままテレビでお笑い観て。で、「おやすみなさい」と言って寝て、次の日また学校に行く、みたいな流れじゃないですか。自分が小学生の時とか、特に悩みがなかった印象があって。そんなイメージの1曲目からいつしか深い眠りに落ちてしまって……起きたら深海で、自分も深海魚みたいになっている。首からはナンバーをぶら下げられ、大ボスみたいな魚に常に命令されて毎日働かされて……という感じが2曲目になっています。そうすると、「いや、俺こういうことがやりたかったわけじゃないし」という感じになると思うんです。でも、1年、2年過ぎていくうちに、そういうことを言うのも面倒くさくなってしまう。自分に蓋をして諦めるという感情を表現したのが3曲目と、繋がっていく様を作っています。この3曲ができた時点で、なんとなくアルバムのイメージが決まったという感じでしたね。

———そこからタイトルにもつながって……という感じだったんですか?

実はタイトルに関しては最後でしたね。まずは15曲入れようと思って全部作っていって、できた時点でいろんなタイトルを考えたんです。最終的に様々な人生経験を経ての自分探しじゃないですけど、“自分を体験する”という部分に視点を当てて。「自分とは何者か?」という問いに達する状態を、自我体験というらしいんですけど、英語版が“Egoexiperience”という単語だったので、その“EXPERIENCE”と“ZIGA”を足して。

———「自分とは何者か?」という疑問は、生きていく中で、節目節目で感じているような気がします。

自分というものは何なのか?と定義した時に、「あなたはこういう人ですよね?」と言われても、そうかもしれないけど、「違う」と感じる時があると思うんです。でも、逆に自分でさえも分かっていない自分がいたりして。そもそも自分って、誰が定義したら自分なのか?みたいなところもあるし。で、色々考えて思ったのが「1つじゃなくて良い」ということで。傷付けられたり、傷付ける自分がいても、そういうのも相まって自分ですし、弱い自分もいれば、強い自分もいるし、上手くいく自分も失敗する自分もいる。もっと言うと、生きていること自体、別にそんなに意味がないから。でも、それって逆に言うと、すべてに意味があるというか。というようなことを15曲目の『We’re Still Here』で書いているんですけど。自分というものを定義する必要がそもそもあるのか?ないのか?というところも含めて、1つに決めなくて良い、そのままあるだけで生きている、という。とはいえ、この曲が終わって1曲目に戻ると、「それでも現実は変わらない」という感じになるように作っていて。だから、今日もナンバーをぶら下げて、強制労働じゃないですけど、みんなと一緒に右へならえしながら生きていくしかない、というような、“本当は怖い話”になるようにしたんです。童謡とかでも「実は……」みたいなのってあるじゃないですか? ああいう印象になるように、裏テーマとしてそうしてみたんです。朝起きて、寝て、リセットされてという繰り返しが人生でもありますし。良い曲で止めれば「良いアルバムだったな」で終わりますけど、ちょっとダークな曲で止めればダークなアルバムになるというか。「自分とは何者か?」と自我体験して生きていく。そのテーマ感が今回のアルバムに結果としてなりましたね。

いつも曲の中で一番求められているものを、最大限に出そうとしていて。だから、歌詞もめちゃめちゃ長いものもあれば、すごく短いものもあったりするんですよ。

———新録曲は全体的に世の中のあり方に切り込んでいく感じがあって、これまでと詞の言葉のチョイスも違うような気がしました。ギターで作っていくことで、普段あまり使わないような言葉も出てくる感じはありましたか?

そうですね。ギターで作ると、何の違和感もなく出てくる言葉があるというか。今まで選んでいたものが全然合わないわけじゃないんですけど、自分が「良い」と思う言葉じゃなくなっていく感覚があって。音楽だから、サウンドと言葉の相性ってありますけど、そういう面白さを改めて実感しましたね。

———どの曲も声とフィットしているのはもちろん、こゑださんが持つ10代の尖っている部分というか、そういうのも相まって曲の緊迫感が高まっているようなところもあって。

最初の頃って、こゑだちゃんはまだ15歳とかだったんですよね。今は17歳で、やっぱり声が変わっていっているんです。ちょっと低くなっているというか。それに本人も最初は歌うことがただ楽しいだけだったんですけど、supercellというものに入ってから、「前のボーカルの方が良かった」とかネットで叩かれることも増えてしまって、「歌っていて良いのかな?」と悩むことも多くあったって聞いて。というところを経て、もう一度戻ってきたという。その感じが人間的にこゑだちゃんを一回り成長させているのかな?と思います。昔の自分も認めて、それでも私は歌を歌いたい、というところもありながら、他の人からだとどう聴こえるか?という歌い方を意識するようになっていて。今の歌い方ってどうなんだろう?と、歌い終わった後に考えるようになったんですよ。

———すごく俯瞰しているだけに、振り幅がどれだけ広くともどの曲も違和感なくするっと入ってくるのかもしれないですね。そして、さっきおっしゃった1曲目から3曲目のストーリーに続く、中盤の楽曲、例えば、「従属人間」はどういうところから作られたんですか?

「レミングス」というネズミを陸地まで導いてあげるゲームがあるんですけど、あれを人間でやるとどうなるんだろう?みたいなイメージから作っていきました。ゲーム内の途中で壁とかがあるんですけど、そうすると一匹のレミングスに爆弾を持たせて爆発させたりして、他のレミングスの出口を作るんです。その爆弾を持たされたレミングスの視点というか。「爆弾持って。今から脱出するから」と言われたら、「え?」となると思いますけど、プレイヤーからすると、「命令だから」という感じなんですよね。プログラムされたことは絶対に変わらないので。そのどうしようもなさというのが現代に通じるな、と。だから、逆説的にそうならないために人を蹴落として生きていこうぜ、と書くことで現代社会のいびつな構造を風刺してみました。

———この曲の詞の言葉数、張り詰めた感情を表すかのごとくすごく多いですよね。ゆったりしたものもあれば、この曲のように最大限まで振り切っている真逆のようなものもあったりして。

めちゃめちゃ早口ですよね。たぶん、こゑだちゃんの早口できる言葉の限界の原本でもあるんじゃないかな?と。いつも曲の中で一番求められているものを、最大限に出そうとしていて。だから、歌詞もめちゃめちゃ長いものもあれば、すごく短いものもあったりするんですよ。

———6曲目の「ホワイト製薬」はどのような感じだったんですか?

これは新型うつ病をテーマにしています。現代病というか、そもそも「それって病気なの?」というようなものというか。例えば、仕事中は「体調大丈夫?」と言われるのに、終わった瞬間、いきなり元気になる人っているじゃないですか。あとは、会社に電話して「すみません、ちょっと体調悪くて」みたいなこと言いながら、休みが取れたら「ラッキー」と遊びに行ったりとか。サボっているだけじゃん、と思うんですけど、仮にそういう人ばかりになってしまったとしたらこういう商売する人でてきそうだなと。でも実際問題黒も白と言っちゃうというか。社会問題にすれば本当は黒なのに、白とみんなが認識するから。すごくダメなことでも、みんなで情報を共有することによって、「大丈夫でしょ」というイメージがついてヤバさが軽減されることって最近多いですよね。

———もうそれに慣れちゃって、ということは本当に身近に多いな、と思います。良い悪いの境界線も曖昧ですし。

結局、みんなが認めちゃえば、受け入れられるという。罪の意識もほとんどないんですよね。そういう社会の縮図感というか。きっと、何事も一部の人だけが違和感を抱えているとは思うんです。でも、もし正しい感じの人が1人出てきたとしても、総叩きになると思うんですよ。というところで、良いとか悪いとかじゃなく、みんな一緒の方が良いんだなという。自分もそうですし。そのシステムは大きく間違っているんですけど、最大限に利用して社長になってみようと思って作った曲ですね。

———この曲は途中で台詞も入っていて、それがまた現実感を増す感じがあるというか。

こゑだちゃんにヘリウムガスを吸ってもらって、いろんな台詞を言ってもらっています。その場で「この声でこう言ったら面白くない?」みたいな感じで。

———コーラス含め、すべてが上手くかみ合ったこの立体感がとても良いなと思いました。あと、14曲目の「時間列車」はアルバムの中で際立ってアレンジが変わっているというか。

あまりサビで歌っていないんですよね。エレクトロ手法というか。4つ打ちの曲って、平歌はAメロ、Bメロとしておいて、サビはもう4つ打ちだけという感じなんですよね。日本的じゃないかもしれないですけど、こういうやり方の曲も今後増やしていきたいなと。サウンドは試行錯誤した曲ではありますね。

———試行錯誤した曲と、スッとスムーズにできた曲と、結構分かれたものだったんですか?

他の曲は大体ギターだから、そんなに言ってもやれることがないんですけど、今回この曲に関しては楽器の点数がめちゃめちゃ多かったので、どう配置したら良いのか?というところで悩みましたね。打ち込みのサウンドに混ぜると、やっぱり生楽器って弱く聴こえるので、打ち込みに負けないようなサウンドを生でやるにはどうしたら良いか?という、指標を持って作っていったんです。結構意識を変えないと、全然違うものになっちゃうので。音を作っている時は、「これチャラいよね」と言っていたんですけど、そのチャラい感じにならないように仕上げていった感じです。

———軽さなんてものは感じず、イントロから最後まで1音も聞き逃したくない、と思えるような感じがありました。実際、今、そうやってアルバムが完成したばかりではありますが、次への意欲というといかがですか?

最初の初音ミクのアルバムで、今でもちょっと恥ずかしいな、というくらいかわいらしい歌詞を作って。で、その後は女の子らしい感じになったんですよね。今回は中性的というかどっちが歌っても大丈夫、というところにきて。なので、次は男にしか歌えない歌詞を作ってみたいなと。自分自身もまだ全然想像できないですけど、自分が男なだけに書けないはずがないので。できるでしょ、と思いながら……。想像できないからこそやってみたい、というのもありますよね。それを知りたいというか。作ってみたいですね。

TEXT:松坂 愛

ARTIST情報

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    ZIGAEXPERIENTIA

    supercell、約2年半ぶりとなる待望のニューアルバム「ZIGAEXPERIENTIA」リリース。 ヒットアルバム「Today Is A Beautiful Day」から約2年半、待望のフルアルバムが遂に完成! 人気TVアニメとのタイアップ曲を中心に、学校法人・専門学校 HALのCMソングとして話題沸騰中の新曲「Yeah Oh Ahhh Oh !」など計15曲を収録した超大作。

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