BRAVIA
新世代画質への扉、BRAVIA S series / V series 日本定着型新発想リアプロ、BRAVIA E シリーズ 映像表現の頂点へ、BRAVIA X シリーズ
9月14日に発表され、この秋冬商戦に投入されるBRAVIAのラインナップは、全部で4シリーズ・8モデル。新次元の映像世界を切り拓くXシリーズ、小型・省スペースを追求したSシリーズ、クール&モダンデザインでリビングを美しく演出するVシリーズ、期待の新世代・液晶プロジェクションテレビのEシリーズである。
BRAVIAは、これまでの液晶テレビや液晶プロジェクションテレビとどこが違うのか。本稿ではこれから三回に渡り、商品企画担当者のインタビューを交えながら、この4シリーズの魅力と特徴を、徹底的に分析していく。第一回目である今回は、ラインナップ最大のボリュームゾーンと目されるSシリーズとVシリーズについてお伝えする。
似て非なるシリーズ、SとV

佐久間大二郎氏01SとVシリーズは、ある意味兄弟モデルとも言える関係にある。デザイン的には全く異なるが、映像部分では両者とも同じ作りとなっているからだ。Sシリーズはこれまでの液晶テレビのイメージを継承したデザインで、幅広い層に受け入れられやすい。一方のVシリーズはブラックを基調にしたシックなデザインで、今までテレビになかった「若さ」を感じさせる。
まずは特徴的であるVシリーズのデザインコンセプトについて、企画担当のテレビ事業本部・FTV商品企画課の佐久間大二郎氏にお話しを伺った。

「今までテレビというのはシルバーのものが多く、液晶=シルバーというイメージの商品が多くなっています。その背景というのは、テレビは元々大きいものだから、部屋の中でなるべくその存在感を消したいという意向からどんどん明るい色になっていったところもあります。ですが最近多くの人の生活スタイルの中で、自分の部屋のインテリアや、色を意識し始めている。その中で存在感を消すシルバーよりも、敢えてテレビの存在感、所有者の個性やこだわりという部分を表現できるようなテレビを、と考えたんです。」

Vシリーズ:ブラックフェイスVシリーズのブラックフェイスは、単純な黒ではない。青色の顔料や微細なガラス粉末を混ぜることで、非常に深みのある、主張する黒なのだ。そして回りを柔らかくシルバーで囲むという手法は、QUALIA 005に通じるものがある。
だが、闇雲に目立とうとするわけではない。何を主張し、何を主張しないか。その選択をシビアに行なうからこそ、ソニーデザインなのだ。

「画面下にあるシルバーのラインがアクセントになっているわけですが、リモコン受光部など"こちらの都合"の部分は、極力その存在をなくしました。通常この部分は黒い穴になったりするわけですが、それではこのデザインが台無しになってしまいます。ですからシルバーのラインに合わせて、白いパネルを透過するような構造にしました。」

確かに手前から見ると、テレビの都合で付けられた「穴」がほとんど見えない。すっきりしたシルバーのラインとスタンド部のシルバーが一体となって、重心が低く落ち着いたイメージがある。

「実はスピーカー部の構造も、Sシリーズとは大きく違っています。これまでのアンダースピーカーって、出っ張ったり膨らんだりして存在感たっぷりじゃないですか。ですがVシリーズでは、逆にスピーカー部を薄くすることで、存在感をなくしているわけです。」

Vシリーズ:スピーカー部詳しくは実機を見ていただきたいのだが、Vシリーズのスピーカー部は、若干上向きに角度が付けられている。これは音の出方が、アンダースピーカーであるということを意識せず、画面のセンターで音を感じさせるための工夫だという。また表面のパンチングメタル部も極小穴で開口率を上げ、スピーカーもグリル面より奥に離して設置することで、グリル全体から音が放出されるように工夫されている。

「シックでありながら重くない。細かいデザインセンスをVシリーズで感じていただければと思います。」

Sシリーズのデザインも見ていこう。Vが黒で主張するモデルとするならば、シルバーを基調としたSは、オーソドックスなエントリーモデルとなる。

「Sシリーズはハッピーベガのデザインを継承して、若い方から高齢の方まで、どの部屋でもマッチするような製品にしました。下部にあった黒いラインを廃して全体的に明るくまとめて、画面に集中できるような方向ですね。」

Sシリーズは、40V型モデルでも横幅999ミリという、幅をとらないテレビでもある。4:3のブラウン管テレビから16:9が主流の液晶テレビへの買い換えを考えると気になるのは横幅である。Sシリーズの40V型モデルならブラウン管テレビの29型のスペースにすっきり収まる。

「しかし本体だけをいくら薄くしてもダメで、問題は足の奥行き。本体の重心が低ければ、足を前後に長くしなくても転倒しにくくなります。ここまでスタンドの奥行きをコンパクトにできたというのは、本体設計で重心をなるべく低くしたからなんです。」

スタンドの奥行きが短ければ、テレビの置き場所も部屋の角ではなく、部屋の壁にくっつけて配置することができる。薄型テレビに買い換えるということは、単にテレビを交換するのでなく、インテリアも含めて部屋の使い方を根本から見直す、1つのチャンスでもあるわけだ。

新開発「ソニーパネル」3つの柱

テレビの基本性能はやはり、その映像表現能力である。BRAVIAの心臓部とも言える「ソニーパネル」の出来は、誰しも気になるところだろう。Sシリーズ、Vシリーズ共通で採用されたソニーパネルの特徴は3つ。高コントラスト、広視野角、高応答速度である。
コントラスト比 [1,300:1]
ソニーパネルの搭載によりSとVシリーズにおいて、1,300:1という高いコントラスト比を達成している。その秘密は、暗部へのこだわりにある。

佐久間大二郎氏02「この暗部の再現性にはパネルの構造も関係あるんですが、シャッター部分での外光の影響と、自身のライトの光漏れを従来品の2/3ぐらいまで押さえることができました。これによって、輝度の下のほうまでしっかり表現できるようになったわけです。もちろん輝度の高い方も性能が上がっていますので、その比率として1,300:1というコントラスト比が実現できたんです。」

これまで液晶パネルは、暗部の階調表現が弱いことが指摘されてきた。そのため各社とも、様々な工夫を凝らして改善に取り組んできており、昨今では暗部階調もテレビ選びの1つのキーワードになっている。
ソニーはこれまで、パネルドライバも含めた「ベガエンジン」や「高集積ハイビジョンビデオプロセッサー」のチューニングでこの暗部表現に挑んできたが、今回は更にパネル自体の特性で暗部階調を改善した。単純に明るい方向へ伸びただけではない深淵なコントラスト表現が、ソニーパネルにはある。

視野角 [178度]
業界最高水準となる上下左右178度の広視野角を実現しているのは、従来の液晶でいう1つのピクセルに特性の異なる2つのサブピクセルを持たせて、それぞれ独立のトランジスタで制御しているからだという。
この2つのサブピクセルは、光の特性が若干違う。1つはピーク輝度に達するのが速いタイプ、もう一つは中間部分が非常にゆっくり上がっていって、途中から加速してピークまで上がるような"クセ"を持ったタイプだ。今回のソニーパネルは、この2つのサブピクセルで1つの画素を表現している。

「SとVに搭載されたソニーパネルでは、横から見ても色味の変化が非常に少ない。視野角という表現は、JEITA基準でコントラストが正常値の10:1に落ちるところと規定されており、ソニーパネルはこの基準に照らすと視野角178度。もう少しで180度だ。真横になったらもう画面が見えないわけだから、さすがにここまで視野角があれば通常使用では特に問題ないだろう。皆さんも店頭でご覧になるときは、是非横から見たり上から覗いたりして、ソニーパネルの不思議を体感してみて欲しい。 」

パネル応答速度 [8msec]
液晶の弱点として早くから指摘されてきたのが、応答速度である。これは液晶分子が縦になったり横になったりする物理現象なので、速くしようと思っても自ずから限界があった。これまでは各社とも、そのあたりを視覚特性を利用した映像処理やパネルドライバの工夫で乗り切ってきたわけだが、今回のソニーパネルは、パネルの駆動のタイミング制御部分で応答速度を速めることができたという。

「これは我々の間では"プリチルト"と呼んでいるんですが、現在表示中の次のフィールドを先に読んで、素子を動かし始める準備をしておくという技術です。例えば人間がダッシュするときも、普通に立っている状態から走り始めるのと、クラウチングスタートみたいに半身乗り出した状態から走り始めるのとでは、ダッシュのスピードが違いますよね。これとおなじようなことを、液晶分子にやらせているわけです。」

一般的な液晶パネルと比べてプリチルトで応答速度を約10%程度改善できるという。説明されればああなるほど、と思える技術だが、まさに100m走の如き速さ競争には恐れ入った。

レベルの高いエントリーモデル

佐久間大二郎氏03だが最後にもう一点、おそらく多くの人が気にしている点を聞いておくべきだろう。この秋から各社の売りは、「フルHDパネル」である。つまり1920×1080ピクセルの大画面テレビが主力になろうとしている。もちろんBRAVIAでも最高モデルのXシリーズがフルHDパネルだが、SとVは1366×768のワイドXGA、いわゆる旧来の「ハイビジョンパネル」だ。このあたりの戦略について、佐久間氏はこんな風に話してくれた。

「液晶テレビの価格が下がり値ごろ感が出始め、さらに地上デジタル放送がこれからするという流れから考えても、今はまだ1台目が欲しいという時期ですよね。まずは買ってみたいという人にいきなりHDのフルスペックの高価格モデルというのは躊躇してしまうと思うのです。まず液晶テレビ、薄型テレビを手にしてその魅力を楽しんで貰いたいんです。、まず液晶テレビ、薄型テレビを楽しんで貰いたいんです。そう言った意味では、選択肢は多い方がいいということで、お値段も含めてエントリーはここから、と。サイズはワイドXGAですが、ソニーパネルならいい絵が出ますし、十分デジタル放送をお楽しみ頂けます。」

確かにSやVシリーズはフルHDパネルではないが、ソニーパネルのスペックにプラスして、デザイン性や買いやすさに魅力がある。そう言う意味で両シリーズは、 「ハッピー<ベガ>」からフルHDパネルまでのギャップを埋める製品群と言えるのかもしれない。

「今回ソニーパネルでここまでできたということは、基礎体力が上がったと思ってるんです。ですから、ここからやれることっていっぱいあるんですね。回路上でもいろいろできますし、設計の自由度が増すんです。ここからまた、いろいろ面白いことがやっていけるな、と思っています。」

強いソニーの復活は、テレビの復活にかかっている。そしてその命題を背負うBRAVIAのラインナップは、ハイエンドしかスゴくないテレビ群とは違う。S・Vシリーズのようなエントリーモデルのレベルの高さこそが、BRAVIAの強みなのだ。

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*ソニーパネルはS-LCD社製です。


[聞き手]
E SERIES
小寺信良

映像アナリスト/コラムニスト。
テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、94年にフリーランスとして独立。以降放送および映像関連の執筆活動を行なう。主な著書に「できるVAIO」シリーズ(インプレス)、「デジタルビデオ標準ガイド
ブック」(MdN)、「DVD&動画ファイル逆引き便利読本」(技術評論社)など。WEBではインプレス AV WatchITmedia +D)にて週刊コラム好評連載中。作り手側とユーザー側両方の立場から分析する切り口で、IT家電分野ではもっとも信頼の置けるライターとして注目されている。