商品情報・ストア 月刊大人のソニー '14 Vol.21

ハイレゾでつくるコンピはあの頃よりもオトナの響きがする。

大人なら誰しも、胸の奥で響く大切な音があるはずです。あの頃の感動はそのままに、あの頃は聴こえなかったところまで。今、ハイレゾの技術だから味わえる新たな音の体験をソニーから。

ハイレゾでよみがえった名曲から、自分だけのコンピを作ってみよう。

その多くが、1曲ずつでもダウンロード購入できるハイレゾ音源。これまで月刊「大人のソニー」では、音楽の作り手が曲順にまでこだわったアルバムを丸ごと聴く体験を中心に紹介してきたが、今月は少し違った側面からハイレゾ音源をとらえてみたい。自分の好みに応じて、歌手もジャンルも異なる音源を1曲1曲選び、自由に並べて、ハイレゾ対応ウォークマン®の中にオリジナルのコンピレーションアルバムを作ってみようという趣向だ。
こうした音楽の楽しみ方は、1979年に初代ウォークマン®が登場し、カセットテープに録音する形で、80年代の若者たちに親しまれていた。車内や街歩きなど、様々なシチュエーションで聴きたいお気に入りの音楽を1本のカセットに集め、自分だけのパッケージを作る。それを誰かと貸し借りしたり、一緒に聴いたりすることで新しい音楽のコミュニケーションが生まれたのだ。
そんな1980年、ラジオ局に入社し、社内のライブラリーや録音施設を使って実際に自分好みのカセット作りを楽しんでいたと語るのが、『日経エンタテインメント!』初代編集長で、日経BPヒット総合研究所上席研究員の品田英雄氏だ。今回、品田氏がオリジナルコンピレーションテープを作っていた80年代に発売された楽曲のハイレゾ音源から、曲目をチョイス。今改めて、80年代音楽の「ハイレゾ・コンピレーション」を品田氏が作ったとき、その音色は当時とどれだけ違う驚きを与えてくれるのか。ハイレゾ音源をはじめ、様々な音源を高音質でワイヤレスリスニングできるヘッドホン「MDR-1ABT」とハイレゾ対応ウォークマン®「NW-ZX2」で試していただいた。また、数多のハイレゾ化を手掛けてきたソニー・ミュージックダイレクトの鈴木則孝チーフプロデューサーも同席。品田氏の選んだ楽曲に対し、ハイレゾならではの視点で語っていただいた。 「80年代はまだレコードなどの音源が高価で、何枚も買えず、よく友達同士でアルバムを貸し借りしました。それをカセットにまるごと録音するだけでも貴重なこと。ましてやアルバムから1曲を選んで、自分のコンピレーションを作るなんて、ほとんどの人にはできなかったと思います。僕はラジオ局で音楽番組のディレクターをやっていたおかげで、最新の音源や録音機材に触れることができ、恵まれていましたね。僕自身、軽音楽をやったり、ポップスやロックだけでなく、クラシックやジャズ、ラテンミュージックなど、幅広く好きで、いろんな音楽をカセットテープに入れました。例えば、このテープには、『アメリカンヒッツ70年代』と手書きで書いてあります。湯川れい子さんの番組にADでついていたこともあり、番組で紹介されたアルバムとかを、土曜の午後に社内のレコード室から持ち出して、聴いたりしました。日本のロックもたくさん聴きました。こっちはシーナ&ロケッツの曲が入ったカセットですね」。(品田氏)

A面は、ハイレゾで、ヴォーカルの息遣いを味わう5曲。

特徴的なヴォーカル、それぞれの声質、歌のテクニックに、耳をすませる。
1曲目:山口百恵	『秋桜』〜奥行きのある歌声が、より強く、より鮮やかに〜 2曲目:南佳孝『プールサイド』〜突き抜けた歌が、記憶の扉をノックする〜 3曲目:松田聖子『青い珊瑚礁』〜作られていない、素の魅力に酔いしれる〜
"特徴的なヴォーカル、それぞれの声質、歌のテクニックに、耳をすませる。"
1曲目: 山口百恵『秋桜』〜奥行きのある歌声が、より強く、より鮮やかに〜
2曲目: 南佳孝『プールサイド』〜突き抜けた歌が、記憶の扉をノックする〜
3曲目: 松田聖子『青い珊瑚礁』〜作られていない、素の魅力に酔いしれる〜

山口百恵
『ゴールデン☆アイドル 山口百恵』

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南 佳孝
『SOUTH OF THE BORDER』

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松田聖子
『Pineapple』

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80年代の音楽業界に精通する品田氏が選ぶコンピのトップを飾るのは、まさに80年、惜しまれながら引退した山口百恵さんの楽曲から『秋桜』。
「この『秋桜』をハイレゾで聴いてみて、印象的だったのが「こんな小春日和の」という有名なサビの部分。ビブラートを含め、奥行きがあって、根太い、そんな百恵さんの声がより一層、伝わってきます。一方で、私が頭の中で思い描いていた『秋桜』の記憶とは違う発見もありました。百恵さんの楽曲は、もっと生音に近い印象があったんですが、実はすごく作り込まれていたんだなと」。(品田氏)「冒頭でフィンガーシンバルが使われているわずかな音が、ハイレゾで聴くと分かりますよね。山口百恵、さだまさしのコラボのすごさが、ハイレゾでより感じられます」。(鈴木チーフプロデューサー)
ハイレゾで聴くと、強いヴォーカルが、細かなところまで作り込んだ音と一緒に押し寄せてくる。そんな1曲目の流れを受けて、同じく強いヴォーカルと作り込んだ音を、次は男性アーティストで確かめてみたい。そこで、品田氏が選んだのが、南佳孝さんだ。また、南佳孝さんの楽曲の中でもハイレゾによって頭の中に映像が浮かびやすい『プールサイド』を聴くのが面白いのだと笑う。ハイレゾは高い没入感を得られるため、音が鳴った瞬間、その曲の世界へと飛んでいけることを体験できるだろう。
「ハイレゾで聴いて感激して、ぜひ私のコンピレーションの2曲目に入れたいのは、南佳孝さんの『プールサイド』。細野晴臣さんらYMOのメンバーとコラボしたり、スタジオミュージシャンがとにかくすごかったんです。南佳孝さんの音楽は、突き抜けていて、いい意味で、国籍とか、生活感がないんです。...あれはデートの日でした。辻堂に向かう134号線を、カーステレオで聴きながら車で走った記憶がよみがえります。ちょっと大人になった気分を味わいましたね。「泳いでるきみ幻のよう」というところ、ダ・ダ・ダとギターを弾く音、これを聴くだけで、もう戻れないあの若かった日を思い出して、ちょっと悲しい気分にもなったり...。ハイレゾって、シーンがはっきり浮かんでくるんですよね。やっぱり、舞台は、海岸沿いの高級ホテルのプールサイドでしょ(笑)。ジャケットは池田満寿夫さんですけど、気分はイラストレーターの鈴木英人さんが描くような、日本にはない世界。水着について「トカゲ色みたい光をはじいて」と歌う部分を聴くだけで、プールサイドを水着の若者が歩いている画(え)が浮かんでくるから、ハイレゾってすごいなと思います」。(品田氏)
音楽の世界観に浸った次は、空気感に浸れる曲を。『プールサイド』と同じく夏を感じさせる名曲で、当時を知る者なら、誰もがキュンとしてしまうあの歌声。1曲目、2曲目と、世界観は違えどスローテンポな曲が続いたので、そろそろアップテンポな曲が欲しくなるところに、アイドルの明るく楽しい曲。でもハイレゾなら、それだけでは終わらない魅力を再認識できる。
「1曲目で百恵さんをチョイスしましたが、百恵さんが引退した80年の4月、キラ星のごとく登場したのが松田聖子さん。その聖子さんの楽曲から『青い珊瑚礁』を。7月に三浦海岸のラジオの公開放送に出演して、デビュー直後なのに1万人も集めたのを覚えています。ハイレゾでの1曲は、『青い珊瑚礁』。ハイレゾで聴いた感想は、一言、"愛らしい"ですね。アイドルとして出てきた聖子さんが、歌手として成長していく途中がハイレゾで分かります。サビの部分とか、まだ声を張らないで歌っている。ともすれば、もっと声を出すように指導されるところかもしれません。でも、この力の抜けている感じがまるで語っているようで。それが、聖子さんが生まれ持った魅力なんだと」。(品田氏)「語っているような歌い方でも、曲に溶け込んでいるのが聖子さんの力量です。「MDR-1ABT」と「NW-ZX2」ならその力が抜けている感じ、心地よい空気感に浸れますね(「NW-ZX2」が繊細な空気感をリアルに再現できる技術についてはこち)」。(鈴木チーフプロデューサー)

男らしいシャウトも、甘いささやきも、ハイレゾで増幅される
4曲目:佐野元春『SOMEDAY』〜あの頃の声そのままに、それ以上まで聴こえる〜5曲目:工藤静香『MUGO・ん...色っぽい』〜まるで自分に話しかけているような錯覚に陥る〜
"男らしいシャウトも、甘いささやきも、ハイレゾで増幅される"
4曲目: 佐野元春『SOMEDAY』〜あの頃の声そのままに、それ以上まで聴こえる〜
5曲目: 工藤静香『MUGO・ん...色っぽい』〜まるで自分に話しかけているような錯覚に陥る〜

佐野元春
『NO Damage』

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工藤静香
『My Treasure Best
-中島みゆき×後藤次利コレクション-』

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百恵さん、南さん、聖子さんと聴いてきての4曲目。「ここでロックを聴きたいですね」と品田氏。ハイレゾの音にも慣れてきたところで、ヴォーカルのシャウトやギターの音は、どのように響くのか。一般的に、クラシックやジャズなどの方がハイレゾの良さが分かりやすいとも言われるが、ロックの熱がハイレゾで伝わるか、興味深い。コンピも中盤にさしかかって、品田氏が特に思い入れのある佐野元春さんを選んだ。
「通勤するときにウォークマン®で聴いていた曲で印象深いのは、佐野元春さんの歌です。佐野さんと僕はほぼ同年代。若者が就職のために伸ばしていた髪を切るような時代に、傷ついた気持ちを佐野さんの歌は元気づけてくれた。僕が担当していたレコード会社提供の音楽番組にもゲストでいらっしゃって...。歌詞や曲の魅力ももちろんなんですけど、佐野さんの声が僕は大好きで。まず驚くのは、ハイレゾで聴くと、当時の佐野さんの声が、100%、僕が記憶していたそのまま聴こえることです」。(品田氏)「おっしゃる通りで、今回のハイレゾ音源は、佐野さん自ら手掛けられているんですよ」。(鈴木チーフプロデューサー)「なるほど、だからなんですね。佐野さんの、何とも音符にできない、温かみのある声質とか、もうそのまんまなので感激です。あと、歌詞が、ハイレゾだと僕に"刺さってくる"感じがしました。例えば、中盤、「Happiness & Rest 約束してくれた君」と、自分でコーラスを重ねるところとか。この「MDR-1ABT」と「NW-ZX2」の組み合わせで聴いてみて、実は、手前も、後ろも、音の奥行きが何段階もあったんだなと(「MDR-1ABT」が低域から高域まで広帯域を再生できる技術についてはこち)。それはカセットで聴いているときには分からなかったですから。「他に、ハイレゾで感じた佐野さんの声の魅力というと、「時の流れも感じないまま」と歌ったときのシャウトとか、「SOMEDAY」と歌う「デイ」の語尾を抜く感じ、あと、「口笛で答えていた あの頃」とかの語尾が、ちょっとフラットする感じ、そういう"佐野節"が、ハイレゾだと存分に聴こえてくるんですよね」。(品田氏)
次で、A面としては最後のアーティスト。ヴォーカルで選ぶ80年代を締めくくるのは、現代の流行に通じるアーティストがいいのではないか。そんな考えから選ばれたのが、工藤静香さん。佐野さんの男っぽさから一転、女性らしいかわいらしさ全開の曲だ。この曲を含めた5曲で、ハイレゾがあらゆるタイプのヴォーカルの魅力を引き出してくれることを、実感できるだろう。
「工藤静香さんの『MUGO・ん...色っぽい』。秋元康さんが、次々とソロデビューさせていった、おニャン子クラブが全盛の時代。さすが、アイドルをこういう形に乗せるのも、無理がないというか、当時から、秋元さんは、その人の魅力、良さを引き出すのがうまくて、今のAKBグループにつながっているんだなと。80年代は、アイドルが自分を持ち始めた時代の走りだったと感じます。また、この歌の作詞・作曲は中島みゆき、後藤次利のコンビですが、後藤さんはアイドルをかわいく歌わせるのが上手な人。改めて、歌をハイレゾで聴くと、工藤静香さんって、こんなに歌がうまくて、かわいい声の人だったんだと感じました。「おしゃべりだわ」の「だ・わ」を甘く歌う、そして「目と目で」と歌いかけられると、まるで自分に話しかけているような錯覚に陥る。ハイレゾだと、それが余計にダイレクトに来るので、聴いているとそのアーティストのファンになるんですよね」。(品田氏)

B面は、ハイレゾで、バンドの個性を見つける4曲。

A面では、ハイレゾ初心者の方にもハイレゾで聴く醍醐味(だいごみ)が分かりやすいヴォーカル曲を紹介してきた。B面では、そこから1歩進んで、音作りの工夫を探っていくという狙いのもと、REBECCA、TM NETWORK、THE BOOM、爆風スランプという80年代を彩ったそうそうたるバンドの楽曲からセレクトしていくこととなった。
「これらのバンドが登場した80年代は、CDというメディアが出てきて、CDセールスで音楽業界が盛り上がった全盛期です。みんな、いかにCDで最高の音を提供するかを競い合っていた時代だから、ある意味、CDで聴くのが完成形とも言えます。それを今回、ハイレゾで初めて聴いてみたんですが、当時、CDセールスというベクトルでひとつの方向に見えていた各バンドが、実は、それぞれ違う個性を持っていたんだと発見できました。僕はもう業界側の人間だったのと、どちらかというとロックバンドは洋楽が好きなので、日本のロックバンドは、さほど熱心に聴き込んでこなかった。それがハイレゾで聴いてみると、思い入れのある曲より、久しぶりに聴いた曲の方が自分のイメージが大きく覆されて、新鮮な感動がありますね」。(品田氏)

ドンシャリの向こう、デジタルの内側、ハイレゾで音の本質に迫る。
6曲目:REBECCA『フレンズ』〜20年前のデコレーションが取れて、音の本質に近づいた〜 7曲目:TM NETWORK『Be Together』〜デジタルの中に潜んだ、人間らしさに出会う〜
"ドンシャリの向こう、デジタルの内側、ハイレゾで音の本質に迫る。"
6曲目: REBECCA『フレンズ』〜20年前のデコレーションが取れて、音の本質に近づいた〜
7曲目: TM NETWORK『Be Together』〜デジタルの中に潜んだ、人間らしさに出会う〜

REBECCA
『REBECCA-revive-』

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TM NETWORK
『humansystem』

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B面のトップは、品田氏が「80年代にはやった"ドンシャリ"サウンドのイメージ」と記憶していた人気バンドの曲から。ハイレゾによって、こんな音だったという思い込みが取れるというのは、ハイレゾで聴くバンドサウンドの始まりに何ともふさわしいのではないか。
「REBECCAの『フレンズ』。冒頭から、スネアドラムをこんなに入れるっていうのが、"らしい"感じですよね。"ドンシャリ"というか、高音と低音を強調するのが、僕はちょっと、わざとらしいと思い込んでいたんだけど、ハイレゾで聴いたら真逆の感想でした。ボーカルのNOKKOさんの歌声がキュートで好きになったんです。わざとらしさがないと感じたのは、ハイレゾで聴くことで、どこか演奏が柔らかく、優しくなって、華美なデコレーションが取れた感じ。本質に近づいた感じがするからです。例えば、「指をつないだら oh フレンズ」といった、サビの部分などでも、NOKKOさんのヴォーカルが、後ろ側から聴こえるんだけど、奥まらずに、明瞭(めいりょう)に、聴こえます。当時は"ドンシャリ感"が僕には強すぎて刺さらなかったヴォーカルの声が、ボリュームが大きいという意味ではなく、ハイレゾで僕まで届くようになった。その近さは、バンドのリハーサルに立ち会っている感覚に近いかもしれません」。(品田氏)※ハイレゾ音源は「フレンズ-revive-」として、2014年Goh HotodaさんによりREMIXされております。
ハイレゾによって、華美なデコレーションが取れる。ハイレゾの効果のひとつに、一音一音がきちんと分離して粒立って聴こえる、というものがある。"ドンシャリ"といった塊ではなく、ヴォーカルも、スネアドラムの音も、明瞭(めいりょう)に聴こえるからこそ、バンドとして合わさった力も素直に受け取ることができるのかもしれない。この曲で感じた、音を分解する楽しみをより掘り下げられるバンドとして、品田氏が「このバンドしかない!」と選んだのがTM NETWORKだ。ハイレゾとデジタルサウンドとの相性は果たして...。
「TM NETWORKは、デジタルから攻めてもこんなに人間的な音作りができるんだ、というのを証明したグループですね。単に"ドン"という音を鳴らすだけでなく、その一拍の中にも強弱があって、その強さが前に行くか、後ろ目に下げるか、その違いまで表現してデジタルで人間味を出しました。それがライブでは映像も相まって来ますので、それまでになかった音楽でした。聴いたのは『Be Together』。すごいの一言ですね。音の厚み、全体のビート感、グルーヴのダイナミックさ...。アップテンポなダンスミュージックなのに、まるで"壁"のような、厚みを感じます」。(品田氏)「ハイレゾで聴くと、「Be Together」というサビの部分で、ヴォーカルの後ろから、音がヴォーカルを押し上げていく感覚がする。それが品田さんの言う"壁"ですね。TM NETWORK以前のバンドがキーボードでは作れなかった、シンセサイザーの中音部の音色が充実していて、音の"重なり"がはっきり分かります」。(鈴木チーフプロデューサー)「その中音部の音までハイレゾでは聴こえるので、改めて、TM NETWORKは、低音と高音だけを強調する"ドンシャリ"な音ではないのだと。中音部もきちんと作って厚みも出していたんだと、発見しました。もちろん、以前からこの厚みはあったんだけど、テープやCDではそこまで際立たなかったんでしょうね」。(品田氏)

バンドそれぞれの音作りを発見した先で、リアルに浮かんでくる姿。
8曲目: THE BOOM『星のラブレター』〜音符のひとつひとつまで、手に取るように〜<br>9曲目: 爆風スランプ『大きな玉ねぎの下で』〜音の広がりで、名曲がさらに名曲に化ける〜
"バンドそれぞれの音作りを発見した先で、リアルに浮かんでくる姿。"
8曲目: THE BOOM『星のラブレター』〜音符のひとつひとつまで、手に取るように〜
9曲目: 爆風スランプ『大きな玉ねぎの下で』〜音の広がりで、名曲がさらに名曲に化ける〜

THE BOOM
『THE BOOM Singles Collection 1989〜1996』

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爆風スランプ
『GOLDEN☆BEST/爆風スランプ ALL SINGLES』

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ハイレゾで聴けば、TM NETWORKがデジタルの中に潜ませた人間味を、音のプロでなくともきっと発見できる。TM NETWORKに続いて聴きたいバンドは、デジタルで作り込んだ音とは反対のアコースティックサウンド。A面のヴォーカル曲でも感じたが、B面でも、多種多様なバンドの音に呼応するように、ハイレゾがその力の発揮の仕方を変えていく様子に注目したい。
「THE BOOMの『星のラブレター』を聴きましょう。ハイレゾで聴くと、使われている楽器や音符の1つ1つまでよく聴き取れるので、音楽好きなら、楽譜まで浮かんでくるんじゃないでしょうか。冒頭、ハーモニカで始まるアコースティックな感じ、ベースの指使いまで見えるようです」。(品田氏)「極めて作り込みがない楽曲だからこそ、まるで"音が見える"感じになるのでしょう。アコースティックな楽曲をハイレゾで聴く良さのひとつでしょうね」。(鈴木チーフプロデューサー)
いよいよ、品田氏が選ぶコンピのラスト。アコースティックの素朴な音作りを真っすぐに見つめた後は、思いっきりドラマチックに...。80年代の名曲の中でもラストにぴったりな曲であり、「ハイレゾによる壮大な広がり感にどっぷり陶酔できるのはこれでしょう!」と、爆風スランプが選ばれた。
「爆風スランプの『大きな玉ねぎの下で』。ロックをやるグループだと思っていましたが、ハイレゾで聴くと、これはロックを超えて名曲ですね。ストリングスが広がっている感じも、まるでホールで歌っているみたい。全体的にリバーブが効いていますよね。コンサートホールの1階の真ん中ちょっと後ろに座って聴いているようで、「MDR-1ABT」を着けて目を閉じると、舞台に当たる照明のスポットまで想像できるようです(「MDR-1ABT」が広がりのある自然な音質を実現できる技術についてはこち)」。(品田氏)「空間の広がりを計算して、音作りがなされていますね。ストリングスの包み込まれるような音色も、ハイレゾで聴くのにとても向いています」。(鈴木チーフプロデューサー)

「9曲通してハイレゾで聴いてみても、耳が疲れることなく、ずっと聴いていられました。テープの時代は、電車の中とか、街で、いつも音楽がそばにいる。それだけで満足だった。でも時代は変わって、そばにいてくれるだけじゃなく、驚きまで与えてくれる。そんな喜びがハイレゾにあると思いますので、僕が選んだように、皆さんもハイレゾでのコンピレーション作りを楽しんでいただけたらと思います」。(品田氏)
若い頃に音楽を聴き込んだ人ほど、音楽に対してもう新鮮な感動は起きないと思ってはいないだろうか。ハイレゾという機会がなければ、二度と聴かない音楽がたくさんありそうだ。大人のために音楽との素晴らしい再会を演出するのも、ハイレゾが持つ役割なのかもしれない。カセットにお気に入りの曲を集めたあの頃のように、今度はハイレゾで積極的に音楽にアプローチしてもらえたら、月刊「大人のソニー」編集部はとてもうれしい。

  • MDR-1ABT 商品詳細はこちらから
  • NW-ZX2 商品詳細はこちらから

2014年4月〜2015年3月にご紹介した商品です。ご紹介商品がすでに生産完了の場合もございます。
商品について詳しくは、ソニー商品サイトをご確認ください。

品田 英雄

日経BPヒット総合研究所上席研究員/日経エンタテインメント!編集委員
1957年生まれ。80年学習院大学法学部卒業。ラジオ関東(現ラジオ日本)入社、音楽番組を担当。87年日経マグロウヒル(現日経BP社)入社。エンタテインメント業界向けの週刊誌「日経エンタテインメント」記者、開発室などを経て、97年一般読者向けのエンタテインメント総合誌「日経エンタテインメント!」を創刊、編集長に就任。2003年同誌発行人に就任。2007年同誌編集委員に就任。2013年から日経BPヒット総合研究所上席研究員を兼任。エンタテインメントビジネス、流行、若者文化などを専門に、新聞、インターネット、ラジオ、テレビ、講演等に活躍の場を広げる。

鈴木 則孝

(株)ソニー・ミュージックダイレクト 制作2部/ACルーム チーフプロデューサー。ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル プロデューサー。1989年入社。インストゥルメンタル作品を多く企画、プロデュース。

文/日経エンタテインメント!編集部

ハイレゾ音源とは?

一般的にオーディオ用のデジタル信号は、原音となるアナログ信号を一定時間ごとに標本化(サンプリング)し、それを量子化することで作られます。サンプリング周波数とは、1秒間に何回標本化作業を行うのかを表すもので、単位は「Hz」です。サンプリング周波数が高いほど得られる情報が多くなり精度は上がります。

サンプリングされた時点でのアナログ信号レベルをデジタルデータで表現することを量子化と言いますが、どれくらいの精度で読み取るのかをビット数で表しており、単位は「bit」です。bit数が高いほど、原音からより忠実に変換することが可能となります。

サンプリング周波数とbit数それぞれの数値が大きくなるほど、原音の再現性に優れ、微細な音の変化や音の余韻までも表現することが可能となります。ハイレゾ音源では、CDの「44.1kHz/16bit」規格を超えるものを指し、「96kHz/24bit」と「192kHz/24bit」が主流になっています。

従来から配信している圧縮音源では伝えきれなかったレコーディング現場の空気感やライブの臨場感を、ビット数の高さにより、楽器や声の生々しさや艶(つや)などのディテールに触れてより感動的に体感できます。

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