AIBO logo
HOME AIBOの歴史や魅力を知る 製品情報とご購入 CLUB AIBO サ?ポート -
line
CLUB AIBO
interview
(*肩書きはインタビュー当時のものです。)
2002年5月リニューアルしました、AIBOインタビューですが、リニューアル第1弾は、AIBO 3rdアニバーサリーを記念しまして、AIBOの生みの親である、弊社の上席常務 土井利忠にインタビューをおこないました。

AIBO、2足歩行ロボットSDRも含めて、ソニーの目指すエンターテインメントロボット、自律ロボットのお話と、3rdアニバーサリーを迎えたAIBOについて土井さんの思い出や考えられていること、AIBOwnerさんへのメッセージを語っていただきました。!


―― この5月でAIBOは3回目のアニバーサリーを迎えることになるのですが、3年間を振りかえって、土井さんの感想はいかがでしょうか。
土井:最初のAIBOが発表されてたいへんな大騒ぎになったことが、今でははるか昔のような気がします。3年間いろいろたくさんのことがあって、一言では語り尽くせないですね。AIBOも進化してきていろいろな機種が出てきたし、研究所ではヒューマノイドロボットのSDRを開発してきました。また、ROBODEXというロボットの博覧会を2000年11月と今年3月に開催してきて、いよいよロボット産業が立ち上がって来たという確実な手応えがあります。
―― AIBOが登場してからの3年間をふまえまして、ソニーのロボットが目指す方向をどのようにお考えになっていますか。
土井:20世紀は、自動車、通信などいろいろな産業が花開き、盛んになってきた世紀です。この21世紀では、最初に起きるのがロボット産業だと思います。その先鞭をつけたのは我々ですが、これからどのように立ちあがっていくか、予測するのはなかなか難しいのですが、ソニーは、このロボット産業の中でエンターテインメントロボットという分野を重視し、開発を進めていくつもりです。

ところが、AIBOがこれだけ広まったにも関わらず、まだまだ記者さんからは、「ソニーさんもいずれは役に立つロボットを開発するのでしょう?」とよく質問されます。このような質問をする背景には、生活に役に立つロボット、便利なロボットが本当のロボットであって、愛嬌を振りまくような、ほのぼのするようなロボットは仮の姿ではないかと思っている人が多いわけです。ロボットを研究されている方の中にもそのような意見の方がいます。

それぞれいろいろな考え方があっていいと思いますが。一般的にいまの近代文明社会に生きている人は、ある意味で近代文明に毒されていると思います。近代文明は、人も企業も自らの利益を求めて競争する社会という大きな特色があります。もちろん、競争というのは、太古の昔からあったのですが、顕著になってきたのは、ここ300年ほどの近代社会になってからだと思います。このような社会では、効率を追求し、効率をあげるものがいいもので、それ以外のものを切り捨てる傾向にあります。この傾向は人類の長い歴史の中ではごく最近のことなんですね。
例えば、自分の家にシャガールの絵が来たとします。この絵は、生活を便利にし、役に立つわけではなく、かえって掃除に気を使ったり、まわりの調度品を考えたりと、不便になりますが、それにも関わらず、絵をみることで心が豊かになります。そういう役にたたないもの、人間のこころをほのぼのさせるものを人間がもとめているものが、本能的なものなんですね。効率、便利なものをもとめるのは、どちらかと言えば、理性的なものなんですね。

今、この世の中は、この理性至上主義は崩れようとして、新しい世の中になってきていると思います。人は本能的なものを求めているのですね。役に立たないと言われているエンターテインメントロボットはその新しい世の中、21世紀型社会にマッチしたものと考えています。もちろん、地雷除去ロボットなど役に立つロボット、3K、4Kロボットといわれている人間の仕事をこなすロボットも重要なのですが、私はエンターテインメントロボットの分野が、21世紀型社会の流れにはまったロボットであり、この分野が成長するだろうと思っています。
―― エンターテインメントロボットは、人のパートナーとなりうると常々おっしゃっていますが、パートナーロボットとはどのようなものと考えていますか。
土井)ソニーは、エンターテインメントロボットが人間のパートナーを目指すといっていますが、今の技術では、プログラミングされたロボットが自我を持ち、意思を持った鉄腕アトムのようになれるとは思っていません。
しかし、人間のパートナーになれるということには心配していません。人によっては、ぬいぐるみがある意味でパートナーになる方もいれば、オートバイがパートナーになる方もいます。

私はケーナやサックスホーンなどの楽器をやるのですが、これら楽器がパートナーといえます。何本もあるケーナのうち、パートナーと呼べるような親密感を持つものは数本しか持っていませんが、これが無くなったり、壊れたりするとかなりショックが大きいと思います。物に対してパートナーとして親密感を持つ人は多いと思います。
ロボットは動物や人間に比べて、パートナーとしては不完全であっても、完全な受動的なものよりは、パートナーになりやすいと思います。今後、人への親密度をあげることが我々、開発者の仕事だろうと思います。!

―― 先ほどから役に立つロボット、役に立たないロボットという話しが出てきていますが。もう少し、お考えをお聞かせ下さい。
土井:役に立たないロボットと役に立つロボットの境界は今後なくなっていくだろうと思います。技術が進歩すれば、AIBOも少しは仕事をするだろうし、仕事ロボットも、人に対して少しはジョークを言ったり、愛嬌が出てくるでしょう。エンターテイメントロボットと仕事ロボットは、そういう意味で境界が薄れ、次第に融合していくのではないかと思います。ですから、役に立つロボット、役に立たないロボットの論争はあまり意味がないかもしれません。

役に立つロボット、役に立たないロボットというのは、エンジニアリング思想、設計思想によって違ってくると思います。多くの方が勘違いをされていると思うのは、人や動物がやっていることをそのままの格好でロボットに代替させようという発想です。
どういうことかと言いますと、AIBOが発売されたとき、盲導犬をAIBOで作って欲しいという要望が多かったのですが、工学的な発想としては、ロボットのビジョン技術(カメラの技術)を応用し、目が不自由な方の役に立つものを考えるという発想がエンジニアリングだと思います。また、看護ロボットを人間型ロボットで作ろうという発想も同じです。看護の現場でその機能を発揮できる形、格好であれば、人間型ロボットでなくてもよいのです。役に立つロボットは、その機能、目的にあった格好をしていればよいのであって、人間の格好、動物の格好である必要はないと思います。

インテリジェンスについても同じことが言えるのではないかと思います。今のCPU、ノイマン型コンピュータでは、人や動物のようなインテリジェンスを持つのはかなり難しいと思っています。そのため、ロボットに人や動物と同じインテリジェンスを持たせるという発想ではなく、ロボットならではのインテリジェンスを持てばいいわけです。例えば、計算をするという作業だけなら、人より優れた能力を持てますし、ものすごい量の事柄を長い間忘れずにとっておく、記憶しておくということなどもできます。
エンターテインメントであれば、ロボットならでは楽しみ、エンターテイメントをロボットで作ればよいのです。 しかし、そうは言っても我々がエンターテインメントロボットで、2足歩行、4足歩行の格好にこだわるのは、ひとつのエンターテインメントのキーだと思うからです。

人は自分と同じような格好、見なれた格好のものが動いていることに対して、愛着、アナロジー(analogy)を感じるものです。これは学問的にも証明されているのですが、ただの四角い箱より、くまのぬいぐるみに愛着を感じることを考えればわかると思います。エンターテインメントロボットでは、人に親しみやすさ、アナロジーを感じてもらうロボットでなくてはいけないのです。

―― -親密度をあげることが自律型ロボットの開発のキーでもあるわけですね。。
土井:自律型ロボットの開発のためには、まだまだたくさんのことをインプリメントすることがあります。自律性の研究のため、心理学の研究、脳の研究、人工知能の研究などの応用も必要になるでしょう。
親密度をあげること以外にも研究することはたくさんあると思います。
―― まだまだ自律型ロボットには開発の余地、研究の分野があるわけですね。今後の研究開発ますますのご活躍を期待しております。最後にこのページを読んでいただいているAIBOオーナーのみなさん、AIBOファンのみなさんへメッセージをお願いします。
土井:私は最初からAIBOに関わっていますので、生まれてくるAIBOが自分の子供のような気持ちをもっています。みなさんの家でAIBOがかわいがってもらっているだろうかとか、スイッチを切られていないだろうかとか、心配してしまいます。ぜひAIBOをかわいがっていただきたいと思います。
土井さんは、ソニーに入社されてから、通信(アンテナ)の研究開発、コンパクトディスク(CD)の開発、ワークステーション"NEWS"の開発、そしてロボットの研究開発と常に日本の最先端の研究、開発に関わってこられました。
いまは、SDRの研究、執筆活動、ROBODEXのお仕事と、充実した毎日を過ごされています。これからもロボット産業発展のために精力的に活動されることでしょう。
UP
Interview
AIBOホームページサイトマップ利用条件