映像制作機材
カメラ機能活用集
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第8回 フィルムのような質感の映像を撮影する
■はじめに
デジタルビデオカメラを使って映画やドラマを撮影するとき、被写体の色合いが充分に映像で表現されないことがあります。例えば"設定前"の映像では、赤やオレンジの花の色合いが実物よりも色合いが充分ではなく、質感が乏しくなっています。
これは、映像の中輝度部分(最も明るい部分と暗い部分以外)の信号が、人間の眼で見たときに自然に見えるレベルまで出力されていないために起こる現象です。このとき、信号が出力される度合い(GAMMA)を調整すると、よりリアルな映像表現が可能になります。
また、このような映像の色合いの調整は、映像全体の雰囲気を変えることができるため、例えばフィルムで撮影したような、色合いの濃い映像表現なども可能にします。
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■ソニーのカメラの特長
ソニーのカメラは、映像全体の色合いを調整する機能として、 GAMMA(ガンマ)機能を搭載しています。
この機能を使って、出力時の信号を実際にカメラに入力された信号の度合いよりも大きくすること(GAMMA補正)で、映像の色合いを変えることができます。GAMMA補正値を低く設定すると、 "設定後"の映像のように、赤やオレンジの花の色合いがより深く表現され、豊かな質感の映像を撮影することができます。逆に高く設定して薄い色合いの映像効果を出すこともできます。
また、手動で調整するだけでなく、あらかじめ一定のGAMMA補正値が設定されたガンマテーブルをメニューで選択することができ、フレキシブルな映像効果の設定をすることができます。

GAMMA 機能を搭載している主なソニーのカメラ
HDW-900 シリーズ、HDW-750/730シリーズ、
DVW-970シリーズ、PDW-530/510シリーズ、
DSR-450/400 シリーズ、MSW-970シリーズ
■カメラの設定方法
GAMMA(ガンマ)は、PAINT メニューのGAMMAページで設定できます。

1) PAINT メニューのGAMMA を開きます。
2) GAMMA を ON(デフォルト)に設定し、STEP GAMMA を0.35 から0.90 の範囲で設定します。
信号全体のどの範囲を調整するかが決定されます。
3) GAMMA SELECT をSTD またはFILM に設定し、GAM SEL の数値を設定します。

GAMMA SELECT では、ガンマテーブルの種類をSTD(通常:6種類)かFILM(フィルム調:5種類)から選択します。GAM SELの数値を低くすると色合いが豊かになり、高くすると色合いが薄くなります。

"設定後"の映像では、STEP GAMMA は0.45(デフォルト)GAMMA SELECT がSTD、GAM SEL(STD)が3 に設定されています。
設定値はDSR-450WSL の場合です。お使いのカメラやライティング環境によって、同じ設定でも映像の色合いなどが変わることがありますので、必ず映像を確認しながら設定を行ってください。
お使いのカメラに付属の取扱説明書などもあわせてご覧ください。
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■技術情報
GAMMA(ガンマ)とは    
カメラやモニターに入力される信号の大きさと出力される信号の大きさの関係をガンマと言い、次のグラフで表します。 一般的に、ガンマの曲線が直線(γ=1)に近づくほど、肉眼で見る映像再現になると言われています。
モニターのガンマの曲線を数値で表現すると約2.2 と言われているため、ガンマ曲線を直線に近づけるために、通常はカメラ側で0.45(2.2 の逆数)の補正をかけます。 グラフの曲線の下側は映像の黒に近い部分、中央部分が色合い、上側が映像の白に近い部分に影響します。GAMMA機能では、カメラのガンマ曲線の主に中央部分を補正しています。

ソニーのカメラのメニューには、曲線のうち補正をかけたい範囲を設定するSTEP GAMMA (ステップガンマ)、ガンマ曲線全体を調整するMASTER GAMMA(マスターガンマ)、あらかじめ数種類のガンマ曲線が設定されているガンマテーブル(STD, FILM)などがあります。例えば、MASTER GAMMAを+側に調整して映像全体の色合いを濃くし、STEP GAMMAで特定の範囲の色合いを調整し、さらにガンマテーブルのFILMを設定することで、微妙な色合いや、独特の深みを表現することができます。ただし、設定によっては色が濃くなりすぎる場合などがあるため、必ずモニターで映像を確認しながら設定してください。