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事例紹介

BSハイビジョン番組「亜細亜見聞録」(BS朝日)様

HDVカムコーダー HVR-Z1Jの機動力を活かして全編を取材・撮影。大人向けの、ユニークな旅情報ハイビジョン番組とうして好評放送中

2005年5月から、BS朝日で放送を始めた旅情報番組「亜細亜見聞録」が視聴者に大変好評です。デジタルハイビジョン放送ならではの臨場感でアジア各地の独特の景観や食文化、伝統芸能が楽しめる点、また一つのテーマに絞り込んだ質の高い豊富な情報を提供してくれることなど、いわば大人向けの旅番組ということが人気の秘密となっているようです。
この「亜細亜見聞録」という1時間の番組は、全編をHDVカムコーダーHVR-Z1Jを使って取材・撮影しています。番組の企画者で、自らガイド役として出演もされている石川次郎様を中心に、カメラマン・堂本昌宏様、番組ディレクター・安藤茂克様にも加わっていただいて、番組の特長やHVR-Z1Jを使った成果などを語り合っていただきました。

HVR-Z1Jというハイビジョンカメラがあったからこそできたユニークな旅番組

─ 「亜細亜見聞録」という番組の企画意図、特長や魅力、そして取材・撮影にHVR-Z1Jを採用された理由をお話いただけますか。


エディトリアル・ディレクター
石川 次郎 様

石川:通常の番組というのは、まず企画があって、スタッフや予算が決まり、機材を選んでいくということになるのでしょうが、この「亜細亜見聞録」という番組は、順序が普通とは異なります。最初にHVR-Z1Jという小型のハイビジョンカメラが登場したことが発端で、このカメラがあれば自分が考えていた旅番組ができるかもしれないと考えたのです。その意味では、HVR-Z1Jが「亜細亜見聞録」の生みの親だったと言っても過言ではありません。
経緯を簡単にお話しましょう。もともと僕は雑誌の編集が本業で、雑誌を通して読者に海外を紹介するという仕事に取り組んできました。まだコーディネーターと呼ばれる人たちがいない1960年代に「平凡パンチ」という雑誌で海外取材に先鞭をつけ、その後も「ポパイ」や「ブルータス」という雑誌で、ニューヨーク特集、イタリア特集など、主に欧米を中心とした地域の魅力を日本の読者に紹介してきました。その後、深夜番組のキャスターに担ぎ出されたり、BS放送の番組に出演することで、地上波放送やBS放送といったメディアの長所・短所を内側から見る機会に恵まれました。

そうした中で、テレビというメディアで海外の魅力を紹介してみたい、特にいま自分が最もおもしろいと感じているアジアを紹介する番組を作ってみたいと考えるようになっていたのです。地上波放送にはたくさんの旅番組がありますが、どうしてもタレントさんの個性や魅力に頼りがちで、こちらが本当に知りたい情報を詳しく紹介してくれないことが多く、ストレスを感じることが多かったのです。だったら、BSデジタル放送という新しいメディアを使って、もっと大人向けの、雑誌的に一つのテーマに絞り込んだ切り口の旅番組ができないだろうかと考えたのです。デジタルハイビジョン放送という、非常に臨場感に富んだメディアは、旅番組にぴったりです。また地上波放送に比べ歴史が浅い分、ある程度自由で実験的な番組づくりができる点も魅力でした。ただ、ハイビジョン制作での海外取材ということになりますと、カメラを含めて機材に相応のお金がかかりますから、そこが大きな障害になっていました。

そうした時に、HVR-Z1Jが登場しました。新聞で知ったとき、これだ、と直感しました。このカメラがあれば、自分が考えている旅番組ができると考えたわけです。早速ソニーに勤めている知人を訪ねて、詳細な商品情報やアドバイスを受け、また(株)BS朝日をはじめとした関係各位を回って、番組としてまとめあげたというわけです。僕はビデオカメラの技術的なことについては全くの素人ですが、このカメラの登場は非常にセンセーショナルなことだと感じました。 堂本さんたち、プロのカメラマンの間では、このHVR-Z1Jというのはどう受け取られたんですか。


有限会社 アビス カメラマン
堂本 昌宏 様

堂本:待ちこがれていたカメラでした。DSR-PD150/170というDVCAMカムコーダーがあって、愛用しているカメラマンも多いのですが、それと同じコンパクトさでHD撮影が可能なカメラが出るという話は発売前から噂になっていました。ですから、発表された時は、待望の商品がいよいよ出てきたという印象でした。あとはクオリティがどこまで確保されているか、その点に関心が集まっていました。

石川:「亜細亜見聞録」という番組では、僕自身もこのカメラで実際に撮影していますが、操作が非常に簡単で、とにかく画がきれいと印象を持っているのですが、プロの立場ではどんな評価なんでしょう。

堂本:結果から言いますと、想像以上に良かったです。撮影現場では画質を厳密に確認しておきたいという思いもあって1080i対応のモニターを使いましたが、その映像を見た段階でも、これはすごいと感じました。やはり1080iというハイビジョンスペックの力だと思うのですが、これだけコンパクトなカメラで、ここまで高精細な映像が撮れたら申し分ないと感じました。


株式会社オン・エアー
ディレクター
安藤 茂克 様

石川:具体的には、どういう所に、その画質の良さが出ているといったらいいのだろう。

堂本:たとえば「ベトナム篇」の取材で市場を撮影しましたが、たくさんの色の食材が並んでいるところでも、それぞれの色をくっきりと鮮明に再現していますし、海岸の撮影では波の泡立ちまで、ロングで撮ってもしっかり捉えています。肌の質感もよく出ていたと思います。こうした優れた色の再現性や臨場感こそ、ハイビジョン撮影ならではの魅力です。

石川:肌の質感というのは、僕も「バリ編」の撮影でダンスを撮影した時に、踊る女性達の肌が肉眼で見たままに本当にきれいに撮影できていると感じました。安藤さんは、ディレクターの立場で、このカメラの画質についてどう思っているんだろう。

安藤:すでに「ベトナム篇」第1回、「ベトナム篇」第2回、「中国篇」第1回の3本をオンエアしていますが、ハイビジョン放送としての実用的なクオリティは出せていると思っています。僕は編集室で素材の段階から見ていますが、生の素材はさらにきれいです。視聴者は、こんな小さなカメラで撮影した映像だとは思っていないかもしれません。

石川:プロの評価がそこまで高いということは、このカメラで番組を作ってみようという試みも決してピント外れなことではなかったということになると思います。

HVR-Z1Jの機動力をフルに発揮した取材・撮影

─ 取材・撮影にあたっては、どのような方針、コンセプトを採用されたのですか。

石川:初めにも申し上げましたが、雑誌的な切り口で、一つのテーマを深く掘り下げて紹介していこうという基本的な狙いがあります。たとえば、「ベトナム篇」では、日本ではニョクマムが有名ですが、ベトナムの伝統的な発酵食品である「マム」をテーマに、さまざまな角度からかなり掘り下げた話題、情報を提供しました。あとは、現地を本当によく知ったゲストの方に毎回登場していただいて、意外に知られていない名所やおいしい店を紹介するようにしている点も番組コンセプトの一つです。ほかに演出的な面から加える要素はあるでしょうか。


「次郎さんカメラ」

安藤:ドキュメンタリータッチといいますか、撮った映像を変に加工することなく、視聴者に提供したいと考えています。毎回、2台のHVR- Z1Jを使って、1台を堂本さんが、もう1台を石川さんが持って撮影するというスタイルにしています。これは石川さんのアイデアなんですが、「次郎さんカメラ」というピクチャー・イン・ピクチャーで石川さんが撮った映像を入れる工夫をしています。一人の旅人の視点、視線で、あくまで興味本位で撮ってもらうことで、視聴者の旅への憧れや共感を誘う狙いです。この石川さんが撮っている映像がきれいなだけでなく、プロのカメラマンが撮った映像にはない味が出ていて非常におもしろいと思っています。
こういう狙いから、編集でもカラーコレクションやエフェクトといった特殊なことはほとんどせず、撮った映像を可能な限りストレートに視聴者にお見せするようにしています。

石川:僕が撮影に参加しているもう一つは、この番組はこんな小さなカメラで作っています、ということをアピールする狙いもあります。おもしろい、きれいだ、と感じたらすぐに撮影できる機動力があるからできることです。もちろん、堂本さんが撮るしっかりとしたプロの画が基本にあるからできることですけど。僕の場合は、堂本さんに設定してもらった状態のままで、ただ撮影しているだけですけど、堂本さんは何か特別なことはしているのですか。

堂本:アイリス調整を含めて基本的なカメラの調整と、フィルターワークは行っていますが、特殊なことはしないで、自然にありのままを撮影するようにしています。照明機材は持って行っていますが、可能な限り現地の明かりで撮るようにしたのもそうした狙いからです。その点、HVR-Z1Jはゲインアップに非常に強いので助かりました。18dBまでゲインアップできるのですが、そこまで上げてもノイズが少なく、きれいに撮れ、特に夜に行われたダンスショーの撮影などで威力を発揮しました。
このカメラには、ほかにもフィルムのような雰囲気が出せるシネフレームとか、ガンマが選べるシネトーンガンマといったユニークな機能がありますが、前述したような狙いからこの番組では一切使っていません。ただ、ビデオエンジニアさんの方で、クロマの調整機能は使っているようです。海のシーンでは青を、密林などのシーンでは緑を、菜の花畑では黄色を強めて、撮影対象の魅力を強く出す工夫です。

石川:非常にコンパクトなカメラなので、機材も少なくて済むでしょう。それに軽いので、素人の僕にはとても扱いやすいのですが、プロはやはり肩に載せて撮影する方が楽なのだろうか。

堂本:まず機材の量ですが、カムコーダーが小さいので基本的には少なくすることは可能です。ただ、この番組ではその長所を逆手にとって、充実した周辺機材を持って行っています。これはJALの協力を得られたからできたことでもあるのですが、クレーンやレールなど移動ショットのための特機まで持ち込んで、より魅力的な画づくりを実現しています。それでも、大型カメラに比べれば、コンパクトにまとめることができますし、機動力に優れたHVR- Z1Jを使ったからできた撮影もたくさんありました。
手持ちと肩載せのどちらが楽かという点は、判定は難しいところがあるのですが、最終的には軽い方が疲労は少ないと思います。HVR-Z1Jは光学式の手ブレ補正機能を内蔵していて、手持ちでも安定した撮影をすることができたので、それもあって楽に感じたのかもしれません。

石川:このカメラでしか撮れなかった映像の代表は、モーターパラグライダーを使った撮影でしょう。広大な菜の花畑が広がる所を、現地のモーターパラグライダーのチャンピオンに頼んで、身体にこのカメラを括りつけて飛んでもらった。撮れた映像も、本当に目を見張るような素晴らしい映像でした。 6回も飛んでもらい、カメラが壊れないか心配でしたが、しっかりと働いてくれました。

堂本:そうですね。機体の軽量化のためエンジンのマフラーを外したりいろいろ苦労はありましたが、上空から菜の花畑すれすれの超低空までを飛んでもらうことで、本当に迫力のある空撮映像を撮ることができました。あの時の撮影では、このカメラが逆光に強いことも発見しました。一般的なDVカメラだったら画が潰れるか飛んでしまうような、真逆光のシーンでもしっかりと撮れていました。

安藤:あのシーンは非常に印象的で、本当に迫力がありました。コンパクトという特長のもう一つのメリットとしては、撮影する相手に威圧感を与えないということもあると思います。大型カメラで撮影すると相手はどうしても緊張してしまいますが、これだと自然な表情を撮影することができます。ベトナムの市場を撮影したときも、そこで働く女性達が手を振ったり、日常的で自然な表情を見せてくれたりしました。

堂本:1回の取材・撮影が1週間の日程で、撮影本数は60分テープで約25本。これで1時間の番組が2本できているという事実が、HVR-Z1Jの機動力を端的に示しているかもしれません。

今後のHDコンテンツ制作に効果的に使える可能性の高い選択肢だと思う

─ 「亜細亜見聞録」の取材・撮影でお使いいただいて、このHVR-Z1Jの今後のHDコンテンツ制作における可能性についてはどのようにお考えですか。

石川:非常に可能性は高いと思います。それはこの「亜細亜見聞録」という番組が証明していることだと思います。少なくとも旅番組やドキュメンタリー番組などの制作には威力を発揮するでしょうし、今後実際に使われていくでしょう。この番組の取材は、これまでにベトナム、中国、バリなど4回行い、間もなく香港取材に出かける予定です。回数を重ねるうちに気づいたのですが、使いこなしていくことで、ノウハウを蓄積していくことで、ますます魅力を発揮してくれる奥の深さも感じます。プロユースのカメラとしては、こういう点も大事だと思います。

堂本:僕も、今後のHDコンテンツ制作において、極めて有効な選択肢が登場したと思っています。石川さんもおっしゃっていますが、BSデジタル放送というのはデジタルハイビジョン放送であることが最大の特長なのですが、そのコンテンツ制作をサポートする一つのツールとして、HVR-Z1Jは活用できると思います。
ただ、HVR-Z1Jは万能ではありません。クオリティや信頼性はやはりHDCAMが、当たり前ですが、何枚も上です。スタジオ撮影やロケーションでもベースを組んでしっかり撮影したい時にはHDCAMカムコーダーを使い、HDW-750などを持っていけないような場所や、撮影条件下ではHVR-Z1J を使うといったように、目的や用途に応じて使い分ける、必要に応じてチョイスしていく、そういう姿勢が大事だと思います。

安藤:すでにHVR-Z1Jで深夜のドラマを作ったり、HDCAMカムコーダーのサブカメラとして運用しているといった話を聞きますので、 HDV1080i方式のカムコーダーの活躍が始まっているのだと思います。民生機のHDR-HC1や、その業務用モデルのHVR-A1Jの登場などラインナップが充実していることにも注目しています。また、「亜細亜見聞録」のこれまでの放送分では、一度HDCAMテープにコピーして編集を行っていますが、 HDV1080i対応のノンリニア編集システムが各社から出てきましたし、タイムコードも出力できるHD-SDIコンバーターも、サードパーティーから発売になったと聞いています。懸案だった後処理の部分も、効率的にローコストで行うことができるようになり、いろいろな番組でさらに利用しやすくなります。
今後「亜細亜見聞録」をDVDにする、あるいは豊富な素材を2次利用、3次利用するといった要望が出てきた場合でも、HDの素材がありますから、どのような要望にも高品質のままで対応することができます。こうした点も、HVR-Z1Jで取材・撮影することの大きな利点だと思います。

─ ありがとうございました。

石川次郎さん
いしかわ・じろう●エディトリアル・ディレクター。1941年東京生まれ。早大卒業後、海外旅行専門のトラベル・エージェント勤務を経て、平凡出版(現マガジンハウス社)に入社。「平凡パンチ」誌で編集者生活のスタートを切り、その後「ポパイ」創刊に参加。以後「ブルータス」「ターザン」「ガリバー」などを創刊し、各誌の編集長を歴任する。93年同社退社。同年、編集プロダクション・株式会社ジェイ・アイを設立。テレビ朝日「トゥナイト2」やBS朝日「男たちの食宴」に出演するなど、テレビでもキャスターとして活躍中です。

堂本昌宏さん
どうもと・まさひろ●有限会社アビス カメラマン。

安藤茂克さん
あんどう・しげかつ●株式会社オン・エアー ディレクター

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