
取締役 技術担当
林 正美 様
劇場用映画、テレビ番組、DVD作品、各種プロモーションビデオ制作などに活躍する有限会社 蓮様では、HDVカムコーダーHVR-Z1Jを発売と同時に導入され、幅広い撮影業務にフル稼働中です。
特に「カラーコレクション」をはじめとしたHVR-Z1J独自の色のコントロール機能を駆使した魅力的なプロモーションビデオの制作で高い評価と実績をあげておられます。
同社取締役技術担当・林 正実様に、ビデオエンジニアの立場から見たHVR-Z1Jの魅力を、具体的にお話いただきました。
HDVカムコーダーHVR-Z1Jとの最初の出会いは、ある作品で一緒になったカメラマンから「非常におもしろいカムコーダーが出てきたので、使ってみようと考えている」ということで紹介された時でした。その時には概要をザッと見た程度でしたが、新しい撮影機材としての可能性の大きさを直感しました。何よりも、このコンパクトさ、機動力でHD撮影ができて、しかもDVCAM撮影も可能である点です。そしてビデオエンジニアという立場では、「カラーコレクション」というユニークな機能に注目しました。撮影時に色の調整ができる、色で遊べる非常におもしろいカムコーダーが登場したと感じました。
その後、当社でも撮影機材としてHVR-Z1Jを導入しましたので、そこでカラーコレクションをはじめとした機能面を詳細にチェックし、テストもしてみました。その結果、調整できる色の幅が予想以上に広いことが分かりました。まず「カラーコレクション」には、2色までの指定色以外をモノクロにできる「色選択」と、やはり2色までの指定色の色成分を増減できる「色補正」の2つの機能があります。これとは別に色のベクトルでいうとアンバー系からブルー系に動かすことができる「ホワイトバランスシフト」があり、さらにピクチャープロファイルで色相と色の濃さを調整すれば、かなりの種類の色を創ることができます。加えて「ワンプッシュホワイトバランス」を使えば、濃い色の照明用のカラーフィルターなどを使ってホワイトバランスが設定できる点も、このカムコーダーの大きな特長です。例えばあらかじめグリーン寄り、あるいはマゼンタ寄りのフィルターを使ってホワイトバランスを設定し、色相や色の濃さを変えていくことで、さらに色のコントロール幅を広げることができます。イメージ通りの色を網羅することができると言っても過言ではありません。

この色のコントロール幅が極めて広いという特性は、たとえばプロモーションビデオの撮影などに威力を発揮するのではないかと思いました。ですからインディーズ系のロックバンドのミュージックビデオクリップの話があったときに、早速HVR-Z1Jを使ってみることを提案しました。予算的な条件からフィルムや大型のビデオカメラを使うことはとてもできませんでしたし、撮影日数やスタッフ、照明機材、さらには複雑な編集など後処理にかける余裕もありません。 HVR-Z1Jの性能と機能、そして機動力は、こうした限られた条件下でもバンドや曲の魅力を最大限にアピールできるビデオクリップを創る機材としてうってつけの存在だと考えたからです。

赤だけを「色選択」で残して強調
今回はインディーズ系のロックバンド「KuRt」のミュージックビデオを撮影したのですが、彼らはいわゆるビジュアル系と呼ばれるロックバンドで、曲だけでなく、演奏スタイルやコスチューム、メイクなども重要な表現手段となっています。特に赤をイメージカラーとしていて、コスチュームはもちろん、赤いコンタクトレンズを使用するといったこだわりを持っていました。そこで最初の作品を制作するときに、HVR-Z1Jのカラーコレクションを使って、寄りのシーンでコンタクトレンズの赤だけを選択して、顔などのほかの部分をモノクロにして撮影して、彼らに見せてみました。すると「これはすごい」と驚くとともに、自分たちの目指すパフォーマンスに合致すると非常に気にいってくれました。

ホワイトバランス調整や「色補正」の
機能でイメージする色を実現
彼らのミュージックビデオクリップのうち、私は3本の制作に参加していますが、すべてHVR-Z1Jで撮影しています。演奏者や作品ごとに曲のイメージに合わせた世界を表現しようということで、砂漠や密林をモチーフに、あとはイメージに近い色やトーン、雰囲気を、HVR-Z1Jの機能を使って撮影現場で創っています。砂漠で演奏するシーンでは、コスチュームの赤をより引き立てる意味もあって、砂漠の色を黄色にしています。これは現場で照明用の色フィルターを使ってホワイトバランスを設定することで創り出した色です。

赤と緑を「色選択」で残した表現
また、林の中でボーカルだけが登場しているシーンでは、カラーコレクションの「色選択」で赤と緑を選んで撮影することで、まるで密林の中にいるような雰囲気を出しています。さらに、「シネフレーム30」で30コマ/秒のフィルムのような雰囲気を出したり、標準以外に2つある「シネトーンガンマ」でハイライトを調整するといった工夫も加えました。またゲインアップでノイズをわざと出して撮影することで独特の世界を表現できたと思っています。こうしたシーンは、HVR-Z1Jでしか表現できない色、トーン、雰囲気だと思います。
バンドのメンバーも、撮影しながら仕上がりに近い映像をその場ですぐ確認できるので、テンションが上がり、さらに良い演奏パフォーマンスが出るという相乗効果もありました。こんな風に撮って欲しい、こんな色にできないか、と意見やアイデアも次々に出てきますから、撮影自体が一つのセッションのように弾んで、より魅力的な作品ができるといった感じでした。
自分で言うのも変な話ですが、撮影機材はHVR-Z1Jだけ、しかも撮影日数が1日、スタッフや機材が限られた条件の中で、ここまでクオリティの高い、魅力的な映像を創ることができるというのは驚異的なことだと思います。ミュージッククリップとしての完成度、評判も上々で、ほかのバンドからの制作依頼もありました。HVR-Z1Jを設計された方が、どういう意図でこの「カラーコレクション」というユニークな機能を搭載されたのかは不明ですが、こうしたミュージッククリップで使ってみると、本当に便利な機能だったと実感します。このカラーコレクション機能は、HVR-Z1Jというカムコーダーにとって HDV撮影に匹敵するような、大きな特長といえるかもしれません。
現在、当社のHVR-Z1Jはミュージックビデオクリップの撮影だけでなく、幅広い撮影業務にフル稼働中です。4コマ漫画を原作としたDVD作品で大変に好評をいただいている「THE 3名様」でも、HVR-Z1Jの機動性が威力を発揮しました。またテレビの対談番組や医学系のWebシネマの制作、あるいはWeb配信されたライブコンサートの撮影でも、その魅力をいかんなく発揮してくれました。
ただ、残念だったのは、HVR-Z1J導入当初はHDV編集システムが今ほど進んでいなかったことです。その結果、先にご紹介したミュージックビデオクリップを含めてDVCAM記録で撮影することが少なくありませんでした。DVCAM記録の撮影でも充分に高画質に撮影できるので非常に満足していますが、やはりHDの解像度を活かした作品を作ってみたいと思っています。
最近では HDV1080i方式に対応したノンリニア編集システムが次々に登場していますし。HD-SDIコンバーターや水中ハウジングなどの周辺機器も充実してきたと聞いています。
HDV撮影の環境がここまで整ってきましたので、今後はHDコンテンツ制作には、HDCAMに加えてこのカムコーダーも活用できるように提案していきたいと考えています。結果的にWeb配信やDVDにするためにダウンコンバートされる場合であっても、元素材がきれいな方が良いことは言うまでもありません。また二次利用、三次利用を考えれば、HDV撮影のメリットはさらに大きくなります。この辺をクライアントや制作会社に啓発していくことで、HVR-Z1J が拓いてくれたHD制作の可能性がさらに大きく広がっていくだろうと期待しています。

カメラマン 川口 勝仁 様
DVカメラの機動力でHD撮影、DVCAM撮影ができる点が、このHVR-Z1Jの最大の特長であり、魅力だと思います。基本的な性能・機能、使い勝手や操作性といった面でも、細かな点では今後に期待する点もありますが、全体としては非常に完成度の高いカムコーダーだと評価しています。たとえばSN比が良いので、かなりゲインアップしてもきれいな映像が撮れます。照明機材が不十分な撮影で威力を発揮しています。またフィルターワークの自由度の高い点も、監督の要望に応える上で非常に有効です。モノクロ/カラーの切り替えができるビューファインダーも便利です。色味は液晶ディスプレイで確認しフォーカスなどはモノクロでビューファインダーを覗いて取るといった使い方をしています。機能面では、アイリス、フォーカス、シャッタースピードなどを変化させながら撮影できる「ショットトランジション」にも注目しています。テストしてみて結構おもしろい表現が可能でしたから、機会があれば実際の撮影時に試してみたいと考えています。
有限会社 蓮
1993年設立。劇場用映画、テレビ番組、ビデオなど幅広い映像制作を担うプロフェッショナル集団。主な撮影作品は、映画「すばらしき臨終」(1997 年)、「Soundtrack」(2002年)、「ロッカーズ」(2003年)、「花と蛇」(2004年)、「恋の門」(2004年)、「ナニワ金融道」(2005年)など。2005年秋には日本・中国・台湾合作のオムニバス作品「about love:tokyo」(主演:伊東美咲/チェン・ボーリン、監督:下山天、撮影:中山光一)公開予定。ほかにテレビ番組、CM、ミュージックビデオクリップなどの撮影、制作を行っています。
林 正実さんのプロフィール
はやし・まさみ●ビデオエンジニアとして数々の作品に携わる。1993年、カメラマン中山光一氏と有限会社 蓮を設立。近年は、映画「ロッカーズ」(監督・原案/陣内孝則)「恋の門」(監督・松尾スズキ)など、またプロモーションビデオではTUBE「青いメロディー」「Let's go to the sea 〜OASIS〜」「月光」、ORENGE RANGE「ロコ・ローション」などの多数の作品でビデオエンジニアを担当。