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THE SUPER DRY FILMS 第4弾 「THE WAVE」 井坂聡監督作品

HDVカムコーダー HVR-Z1Jで撮影したTHE SUPER DRY FILMS 第4弾 「THE WAVE」、好評配信中。


「THE WAVE」のシーン

アサヒビール株式会社が気鋭の映像作家に作品制作の機会と発表の場を提供する「THE SUPER DRY FILMS」の第4弾「THE WAVE」(井坂聡監督作品、山本太郎・前田愛ほか出演、19分1秒)がWebで配信され大変好評を得ています。元水中カメラマンと伝説のサーファーの挑戦と再生を描いたこのショートフィルムは、ほぼ全編をHDVカムコーダーHVR-Z1Jで撮影しています。
撮影を担当したのは、2005年公開の「TAKESHIS'」をはじめとした北野武監督作品の撮影などで知られる映画撮影監督の柳島克己さん。デジタル撮影は今回の作品が初めてという柳島さんに、HVR-Z1Jを使った印象や評価、今後の映画・映像制作における可能性などを伺いました。

以前からデジタル撮影やデジタルシネマの手法に関心と興味を持っていたのでHVR-Z1Jを使う「THE WAVE」は良い機会だと思い快諾しました。


撮影監督・柳島克己様

いま映画の世界では、デジタルシネマが一つの大きな潮流となっています。ソニーのCineAltaを使ったジョージ・ルーカス監督の「スターウォーズエピソード3 -シスの復讐-」が代表例ですが、国内でも数多くのデジタルシネマ作品が制作されています。そのような作品を実際に観る機会がありますが、本当に進歩していると感じています。僕が所属する撮影監督協会でもデジタルシネマについての説明会や研修会が開かれ、活発な議論が行われています。合成シーンが多い作品などではデジタル撮影のメリットを全員が認めつつ、映画館での上映がフィルムで行われている現状ではフィルム撮影がまだ優位である、など賛否いろいろな意見があります。個人的には、デジタル撮影が新たに道具として加わったことで、作品世界に合わせて選べる機材の選択肢が増えたと歓迎しており、機会があったらぜひチャレンジしてみたいと考えていました。

ですから、「THE WAVE」という作品をデジタル撮影しフィルムに起こしたいとプロデューサーから話があったとき、良い機会だと思い快諾しました。テレビドラマの撮影でビデオ制作の経験は持っていますが、デジタルのHD撮影機材を使うことは初めてのことでした。映画カメラを模したCineAltaではなくHVR-Z1Jという小型カムコーダーを使うことは企画の段階から決まっていました。今回の作品ではサーフィンや船上など手持ちで撮影するシーンが多いので、このコンパクトさは有効だろうと感じました。準備期間が短かったこともあり、画質や機能面を含めた本格的なテストを事前に行うことはできませんでしたが、そうした状況でも、別段焦るといったことはありませんでした。この辺は映画に携わる人間特有の現場主義、経験主義のせいかもしれません。現地に行って撮影してみないと実際には分からないし、撮影さえできればあとは経験でカバーできる、そういう大胆な姿勢であったことは否定できません。
正直に言って、この段階ではまだHVR-Z1Jの性能や機能を過小評価していたところがありました。スタッフ・キャスト総勢30名のクルーの中に、ビデオエンジニアが含まれていないことにも、その辺がよく現れていると思います。

実際に撮影してみて、クリアで、ハイクオリティな画像に改めて実感。現地の水中カメラマンもHVR-Z1Jのコンパクトさと高画質には驚嘆していました。

当初のプランでは、全編をHVR-Z1Jで撮影する予定でした。しかし水中撮影で使う専用のブリンプの調達が時間的に間に合わなかったので、HDCAMカムコーダーと民生用のハイビジョンハンディカムHDR-HC1も持ち込み、ブリンプを付けて海の中のシーンやサーフィンの撮影で使っています。それでも芝居のシーンなどを含めて全体の約90%は、HVR-Z1Jで撮影しました。


芝居のシーンなどを含めて全体の約90%は、HVR-Z1Jで撮影しました

撮影は、基本的に1080/60iでノーマルに撮影することにしました。前述したように、テストなど事前の準備が不十分だったこともありますが、この「THE WAVE」という作品はプロジェクターによる上映ではなく、最終的に35mmのフィルム作品として上映することを目指していたからです。インターレース方式であることを計算しつつ、しっかりと撮影しておいて、必要な処理は編集時に行う方が解像度を確保しやすいと判断しました。必要に応じて照明をきちんと行い、芝居のシーンなどフィルムルックを作りたいシーンではブラックプロミストの弱いフィルターを使うなどの工夫はしていますが、基本的にはアングルをつくったり、サイズを探すという映画の撮影の本質に集中して撮影しました。


HVR-Z1Jの高画質には、ロケに同行したスタッフ・キャストも皆一様に驚いていました

こうした方針に決めた背景の一つには、HVR-Z1Jの画質が当初の想像以上にクリアで、ハイクオリティだったことがあります。画質については打ち合わせの段階でもザッと見て、きれいだとは思っていたのですが、実際に撮影し再生してみると非常に高精細・高解像度で、これなら編集時にかなりの処理を行っても画質を損なう恐れは少ないと判断できたからです。実際、仕上げのための本編集に立ち会い、フィルターを使った部分と使っていないシーンのトーン合わせなどを行っていますが、かなりの編集処理を行っても、撮影時の画の力強さが損なわれることはありませんでした。また、インターレース方式である点も、動きの少ないシーンで非常に満足のいく仕上がりになっており、動きのあるシーンではコマ落ちのように見えるカットもありますが、それがそれで躍動感のある表現となっていて、フィルム上映でも決してマイナス要因にはなっていませんでした。最近はフィルムのプリント/ポジも良くなっていることもあり、結果的に 16mmフィルムからのブローアップ以上のクオリティがありました。

このHVR-Z1Jの高画質については、ロケに同行したスタッフ・キャストも皆一様に驚いていました。南太平洋の青い海や樹木の緑が、非常にクリアが再現されていたからです。また、サーフィンなどの水中撮影には、波の動きをよく知っていないと撮影ができないだけでなく危険も伴うため、現地で活躍するサーフィン専門の水中カメラマンやサーファーがスタッフに加わりました。彼らもHVR-Z1Jのコンパクトさと高画質には驚嘆していました。それとカット数はごくわずかですが、ゲインアップをして撮影したこともありますが、ゲインアップ時の画質の良さも、このカメラの大きな魅力の一つだと思います。

撮影は1週間の予定で行われ、サーフィンシーンなどのためにさらに1週間の追加撮影も行いました。この間、HVR-Z1Jはノントラブルで運用でき、その安定性・信頼性の高さに感心しました。軽量・コンパクトで、船上やジェットスキーでの手持ち撮影が非常に楽だったことも、目論見通りでした。ビューファインダーや液晶パネルの画質や機能、ハンドルグリップのズームボタンなど、使い勝手の良さも魅力でした。細かな点では、カメラの安定感を増すための両手グリップが欲しいことなど要望点もありますが、全体としての操作性は合格点だと思います。
作品としての仕上げには満足していますが、今回の撮影ではHVR-Z1Jが持つ性能・機能のうち20%ぐらいしか使っていないのではないかと思います。シネガンマとかシネフレーム、カラーコレクションなど、非常にユニークな機能もあり、使いこなせればさらにおもしろいことができたかもしれないと思います。


船上など手持ちで撮影するシーンが多いので、このコンパクトさは有効


ホールド感を増すための特製グリップがあると便利ですね

メイキングの撮影にはすでに本格的に活躍しており、本編の撮影でも威力を発揮してくれるのではないかと期待しています。

今回「THE WAVE」の撮影にHVR-Z1Jを使ってみて、映画制作の世界でも充分に使える撮影機材だと評価しています。たとえば、現在の映画制作ではDVD化の際に特典映像用として、メイキング撮影が欠かせないものとなっていますが、この分野ではHVR-Z1Jがすでに威力を発揮しています。実はいま、ジャパニーズホラー映画のハリウッド版の撮影を行っており、メイキング映像制作のチームも現場に入っているのですが、彼らもHVR-Z1Jを使っています。コンパクトで撮影現場でも縦横に動ける機動性、そして本編にも負けないクオリティを確保できるという意味で、非常に有効なカメラだと思います。
もちろん、本編の撮影にも充分に使えると思います。今回の作品でも、HVR-Z1Jで撮影しフィルムに起こすという手法を採用しましたが、仕上がりには十分な手応えを感じることができました。


ハリウッド映画のメイキングでも使われています

これから映画の制作を目指すという、才能を秘めた若手のクリエイターは、たくさんいます。彼らが、このHVR-Z1Jを使った作品制作でその才能を開花させてくれたらと思います。彼らへのアドバイスとしては、最初からカメラの斬新な機能に頼るのではなく、ベーシックな画づくりや色づくり、アングルやサイズといったところをしっかり身につけてほしいと思います。何でもできるという環境からは、意外にオリジナリティは生まれないものです。たとえば、固定焦点レンズを使ってスチルカメラで撮影するなど、制約がある中でいろいろな工夫を重ねて培った表現力から、本当のオリジナリティが生まれると思います。そうした地道な訓練を積んでから、このカメラの性能や機能を使いこなしていけば、必ずおもしろい作品世界を創造できると思います。
「THE SUPER DRY FILMS」プロジェクトで次の機会があれば、僕自身もこのカメラを使って、ぜひもう一度チャレンジしてみたいと考えています。今度はHVR-Z1Jの性能・機能を100%使いこなした撮影を行ってみたいと思っています。

「THE SUPER DRY FILMS」について
アサヒビール株式会社がWEB上で公開しているショートフィルムプロジェクト。国内外の一流のクリエイターにより、「人々に勇気を与える」「夢の実現に向けて頑張る人を応援する」をテーマとしたメッセージ性の高い良質な作品が制作されている。
http://www.asahibeer.co.jp/superdry/superdry_films.html

柳島 克己さんのプロフィール
やなぎじま・かつみ●シネマトグラファー、撮影監督。1950年、岐阜県生まれ。三船プロダクション撮影部に入社。退社後フリーとなり、劇場用映画を中心に数多くの作品の撮影を手がける。
「3−4×10月」(1990年)、「あの夏、いちばん静かな海」(1991年)、「ソナチネ」(1993年)、「菊次郎の夏」(1999年)、「Dolls」(2002年)「座頭市」(2003年)、「TAKESHIS'」(2005年)など北野武監督作品のほか、「バトル・ロワイヤル」(深作欣二監督、2000年)、「GO」(行定勲監督、2001年)などの撮影監督を担当。1997年には、文化庁芸術家在外派遣研究員としてイギリスに1年間滞在し、ヨーロッパの映画制作や撮影技術を学ぶ。「GO」と「座頭市」で日本アカデミー賞最優秀撮影賞、「Dolls」で同優秀撮影賞受賞。

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