Vol.002三原康裕
木型
標準サイズの木型(下)をやすりで削り込んだりパテを塗ったりして、足の形を決めていく。三原さんは以前、木のブロックから木型を削り出していた。サイズのグレードを変えた木型はプラスチック製(上)となる。
プラスチック製の木型
プラスチック製の木型
木型が出来上がったらソールを決める。木型といくつかのヒールのサンプルを組み合わせて、さまざまな角度からサイバーショットで撮影。
常務の早川さんと
「MIHARA YASUHIRO」の靴を製造する早川製靴工業(株)にて。常務の早川さんと素材の選定をする。候補となる素材をサイバーショットで撮影しながら。
素材の選定
靴をデザインする前に、履く足を作る
三原さんは靴をどういうふうに作っていくのですか。
 
三原康裕三原(以下M):まずはじめに、僕は木型を削るんです。木型は(靴の中の)足をデザインするようなもので、履く人の足の形を考えて作ります。ある程度の寸法を出した木型を基に、つま先の形を変えたり、かかとを小っちゃくしたり、ふまず(*1)をえぐったり、足幅を付けたり…。メジャーで測りながら微妙な調節をしていくんです。足の骨格の流れってねじれていたり、骨格のポイントもいろいろあるので、そうしたことにとても気を使いながら。その後、どういうソールを付けるかを考えます。木型とソールという大きなベースが決まると、最終的に表面のデザインをします。
木型を作るのは、デザイナーの仕事なのでしょうか?
 
M:デザイナーの仕事ではありませんね(笑)。僕はデザイナーでありながら、職人でもあるんです。靴は履き心地が良くなければいけないですよね。痛かったらいけないし、壊れちゃいけない、長く履いていて疲れたりしてもダメとか、いろいろな制約がある。だから、基となる形がしっかりしているかどうか、というのが作る上では一番大切なんです。
ご自身の靴の特徴は、どんなところにあるとお考えですか。
 
M:靴と生産の過程が、他とちょっと違うということですね。全ての靴においてではありませんが、底を付ける製法や縫い方の製法を、自分でアレンジするんです。靴の製法というのは大きく分けて、グッドイヤー(*2)、マッケイ(*3)、セメント(*4)と3つぐらいあるのですが、マッケイを複雑にしたりとか、グッドイヤーをちょっとひねくれた使い方にしたりする。デザインのアバンギャルド性というのも、見た目としてあるかもしれませんが、製法もアバンギャルドであるべきだと思うんですよね。今までどおりの生産方法だと可能にならないことってあるので、そのために職人さんを1人雇うとか、逆に今まで簡単に通り越していた部分にスポットを当てて、そこをメインに靴を作ったりとか。新しい製法を考えることは楽しいですしね。
デザイナーの立場と別に、製造の段階を重視しているのですね。
 
三原康裕M:そこが大きいですね。職人さんとお茶でも飲みながら「これ、いいね」とか「こうやってみない?」とか言いながら、新しいことを考えたりします。物を作る考え方というのは、どんどん変わっていくものだと思うんです。昔の伝統的な製法をそのままやっていたら、職人が育っていないとか、必要な数の職人が今はいないとか根本的な問題になってくる。それを解消するためには、ある部分の技法をアレンジして作りやすくしたり。たとえば穴を開けることでも、今はドリルでスピーディーに開けられるようになったけれど、昔の手でグリグリ開けるという大変さから生まれる精密さと、ズレが大きい。じゃあ精密に穴を開けられるように、固定させる道具を作ろうとか。新しい機械、それに新しい材料とも対話して、今の時代背景に合う靴作りを考えていくことになりますよね。
*1 ふまず…土踏まずの部分。
*2 グッドイヤー/グッドイヤー・ウェルト製法…甲の部品を縫い合わせたアッパー(足の甲を覆う部分)と、中底を縫い込む製法。本格的なトラッドシューズによく用いられる。底の張り替え修理が可能。
*3 マッケイ/マッケイ製法…甲革と中底と表底を一緒に通 し縫いする製法。素材のソフトさや軽量さが特徴。
*4 セメント/セメンテッド式製法…アッパーと表底を接着剤で貼り合わせる製法。量 産が可能で現在最も用いられている製法。
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