アルファ
「α」の使命と理想
歴史の継承と発展
 
那和 ソニーがコニカミノルタの資産を引き継いで新しい事業部を発足、デジタル一眼レフカメラを開発し発展させていくことになりました。これはデジタル一眼レフカメラのユーザーである我々にとっては非常に興味深い動きです。その責任者であるお二人に、この新しい事業部発足の持つ意味というところから、うかがっていきたいと思います。まずコニカミノルタ出身の泉さんからお話いただけますか。

いま資産というお話がありましたが、コニカミノルタにはαシリーズを代表とする一眼レフカメラの歴史が30年以上あります。その伝統と資産を継承していくことは、ユーザーへの責務としてあると考えていました。ユーザーにとって最も大きい資産となるのはレンズです。特に AFシステムであるαレンズは全世界で累計1600万本も販売されており、私たちはこのレンズを所有されているお客様のお気持ちに応えるために、開発は継続しなくてはならないという思いがありました。その道を模索するなかで、昨年ソニーとの協業開始となり、そして今年になって我々がソニーに入る、ということになったのです。

津末 ソニーとしては数年前から交換レンズが使えるデジタル一眼レフカメラへの参入は考えていました。昨年発売したレンズ一体型の“サイバーショット”「DSC-R1 」の開発段階から、この R1 を発展させた一眼レフカメラなども検討課題に上がったのですが、最終的にはαレンズを継承し、両社それぞれの得意分野・技術を融合させて、新しい体制でより良いカメラを作っていこう、ということになったのです。

那和 一眼レフカメラのユーザーというのは、単体の製品ではなくレンズを軸にそのシステムの歴史全体を買うという側面があります。お二人のお話は、こうしたユーザーの視線に立って、ユーザーにとってとにかくいいモノを提供していくための最善策をとった、という印象を受けます。

泉・津末 はい、その通りです。

 
伝統の技術とアドバンテージ
 
那和 技術と技術の融合というお話が出てきましたが、ここで、おさらいという意味も含めて両社の伝統的な技術や、得意分野といったものを、ご説明願えますでしょうか。

コニカミノルタのカメラ領域での特徴的な強みは3つあります。ひとつは光学技術です。ふたつ目は AF(オートフォーカス)や手ブレ補正などに代表されるオプト・メカトロニクスの技術の蓄積です。もうひとつは、メカニズムの部分です。一眼レフカメラには、コンパクトデジタルカメラやビデオカメラよりもさらに緻密な機械技術が必要になってきます。

那和 1985年の α-7000 から AF の先駆者として業界をリードしてきた実績もありますね。では津末さん、ソニーの技術としてはいかがでしょう? “サイバーショット”「DSC-R1」はブレークスルーだったと思いますが。

津末 昨年6月、 R1 や“サイバーショット”のエンジニアが20人くらい堺のコニカミノルタさんを訪ねました。そこで両社の技術を見せ合って、我々は泉さんからお話のあった手ブレ補正や AF といった技術について学びました。一方、ソニー側の技術の強いところは、まず CCD や CMOS という撮像素子です。また、入力面の回路設計のノウハウや、リチウムイオンをはじめとする電池系統、 LCD のパネルも内製できるため、これらの技術は生かせるのではという話になりました。また、次世代の信号処理LSIも、ぜひいいものを作っていきたいと思っています。ウォークマンなどでもおわかりいただけるように、小型化の実装ができる工場もありますから、そこも有効活用したいと考えています。

那和 撮像素子が内製できるのは、デジタル時代のカメラメーカーにとってすごい強みです。技術的なブレークスルーが起きやすい部分であり、またコストダウンなども容易になりますね。

津末 おっしゃるとおりです。ソニーがこれまで他社に提供してきた撮像素子を、自社製品でも使えるようになるわけです。

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泉達郎 プロフィール
 
1974年ミノルタカメラ株式会社入社。
入社当時はフォーカルプレンシャッター開発に従事。カメラ設計の最初はCLE(ライカMマウントレンジファインダー式カメラ)シャッター担当。その後α9000メカ設計を皮切りに 一眼レフカメラ開発に従事。デジタルカメラでは DiMAGE7〜αSweetDIGITAL開発を担当。
津末陽一 プロフィール
 
1983年ソニー株式会社入社。
入社当初はビデオカメラの回路設計担当。その後、ソフトウエア開発やデジタルイメージング商品のWindowsやMacの接続技術、検証。DVD方式“ハンディカム”の開発と設計、2005年からデジタルスチルカメラ“サイバーショット”のTシリーズ設計などを担当。
那和秀峻 プロフィール
 
毎日新聞社の英文毎日記者として活躍。カメラマン兼ライターを経て現在は造形大学非常勤講師(デジタルフォト担当)。歴史的カメラ審査委員、カメラグランプリ選定委員、国際文化カレッジ総合写真展審査員、フォトマスター検定委員などに関わる。著書:「AF カメラ、お持ちですか?」(情報センター)、「隅田川」(東京新聞)、「デジカメ撮影テクニック」(毎日コミュニケーションズ)、「名機を訪ねて」(日本カメラ)など多数。
 
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