スイッチャー

株式会社 エキスプレス 様

プロダクション

2017年2月掲載

3G-SDI対応の4K/HD大型中継車を導入。最大20式のカメラ運用が可能で、音楽・スポーツのライブ中継、収録、配信に運用開始。


新たに導入された拡幅式の4K大型中継車。車体のデザイン、配色も「未来につながるエキスプレス」という同社の映像制作ポリシーを表現したものとなっています。4K大型中継車は 同社 東京事業本部 新木場オフィスに配備され、ライブコンサートやスポーツなどの4K/HD中継、収録、配信に運用される予定です。

創業55周年を迎えた大手総合プロダクション株式会社 エキスプレス様は、新たに4K/HD中継車を導入され、2016年10月よりコンサートやスポーツなどのライブ中継・収録での4K制作に本格的に取り組まれます。

同社 大阪事業本部 技術部 映像技術グループ GL 大瀧 淳様、東京事業本部 技術部 映像技術グループ GL補佐 池田健輔様、大阪事業本部 技術部 副部長 眞鍋鶴司様、東京事業本部 技術部 アドバンスグループ GL 遠藤 譲様に、4K中継車導入の目的、システムコンセプト、選定の経緯や決め手、運用での期待について伺いました。

なお、記事は運用開始前の9月中旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。

コンサートやスポーツ中継で広がる 4K 制作への対応として導入


マルチフォーマットプロダクションスイッチャーXVS-8000とコントロールパネルICP-X7000を採用したスイッチャー卓。モニターには業務用有機ELモニターPVM-A250に加え、4KブラビアKJ-55X9000Cを3式配備し、映像素材やタリー表示を効率的に行えます。

当社はテレビ番組やCM、映画、イベントなどの映像制作、映像技術事業などを展開しており、近年要望が増えつつある4K制作についても、CineAlta 4KカメラPMW-F55などを使った運用、検証作業に積極的に取り組んでいます。

中継車を使用するライブコンサートやスポーツの中継、収録、配信でも4K制作が本格的な広がりをみせており、当社でもその対応を求められることが多くなったため今回新たに4K/HD中継車を導入することとなりました。

システムコンセプトの柱の一つは、いうまでもなく4Kならではの高精細、かつ迫力と臨場感に溢れる映像を活用したコンテンツを提供できるフルスペック4K対応システムです。また同時に、HD制作にも柔軟に対応できることも重要視しました。システムのコアとなるスイッチャーには4K/40入力、HD/160入力に対応、充実したキーヤー、ME列、リサイザー、マルチビューワー機能を搭載したマルチフォーマットスイッチャーXVS-8000を採用し、そのコントロールパネルには有機EL表示でソース名表示などが見やすく、クロスポイントボタンの配色も自由にデザインできるICP-X7000を組み合わせ、最新鋭の3G-SDI対応スイッチャーシステムとしました。

カメラシステムにはマルチフォーマットポータブルカメラHDC-4300とベースバンドプロセッサーユニットBPU-4000を選びました。B4マウントレンズ対応なのでレンズ運用の自由度が高く、幅広いライブ中継、収録に有効かつ柔軟な4K/HDカメラシステムを構築できます。さらに4K映像と比較して明るさ、コントラスト、鮮やかな色を再現できる4K HDR(ハイダイナミックレンジ)対応などの拡張性、発展性も魅力的で、当社の目的に合致すると考えました。

大瀧 淳様
大瀧 淳様

池田 健輔様
池田 健輔様

眞鍋 鶴司様
眞鍋 鶴司様

遠藤 譲様
遠藤 譲様

長期に渡って安定運用できる信頼性、快適な制作環境にも期待


柔軟な4K/HD撮影を可能にするマルチフォーマットポータブルカメラHDC-4300/ベース バンドプロセッサーユニットBPU-4000を2式導入。4K HDR(BT.2020、S-Log3)のライブ運用や、4K SDR(BT.2020、709ガンマ)、HD SDR(BT.709)との並行運用などの拡張性にも期待されています。


VE卓(写真・左)。30型4K有機ELマスターモニターBVM-X300を配備し、つねに4K映像を監視できる体制を整えているだけでなく、最大20式のカメラ運用時に対応。写真・右上は20式運用に対応できるパッチパネル。写真・右下はユーティリティースペース。

新4K/HD中継車をソニーに依頼することになったのは、4K対応機器の充実したラインアップやシステムインテグレーション能力の高さがその理由ですが、それだけではありません。サポート体制を含めて、長期間安定して運用できることも重要なポイントでした。大型中継車システムで高い実績を誇るソニーは、こうした点でも信頼感があります。実際、当社で運用中のソニー製801号/805号HD大型中継車では、性能・機能・安定性はもちろん、サポート体制についても非常に満足しています。また、今回の中継車でソニー製を採用することは、801号/805号で運用中のMVS-8000シリーズのスイッチャーやHDC-900/1000シリーズのカメラシステムなどの操作性を継承できる点も魅力です。

新中継車の設計に際しては快適な制作環境の構築も重要なテーマとなります。いかに優れた機器やシステムでもそれを実際に運用するスタッフ、オペレーターがストレスを感じることなく取り組める環境でないと意味がありません。そこで、ゆったりとした制作スペースを確保するため、車体を拡幅式とするだけでなく、発電・収録設備を別車両対応にし、内装に独特のこだわりを施して従来の中継車とは異なる雰囲気を作ったことも快適性の向上に貢献しています。

さらに、4K対応ではSDIケーブルがHDの4倍となり膨大な量になりますが、この点もコンパクトに、美しく集約する形で配線、配備が行われているなど、ソニーならではのインテグレーション能力が発揮されており、制作環境の改善にも貢献しているのではないかと思っています。

ライブコンサートの中継、収録、配信で運用開始予定

今回導入した新4K大型中継車は、2016年10月より本格運用を開始します。すでに年内に15件のライブで4KおよびHD運用を予定しており、これに加えて4K運用のご相談を多く頂戴している状況です。カメラは最大で20式運用でき、車内にはユーティリティースペースも確保しているので、コンサートの規模や開催場所の環境などお客様の要望に合わせた運用を実現していきたいと考えています。

また、最近のライブコンサートでは会場用、収録用、中継・配信用など、2ソース/3ソースと複数の映像が求められるケースが増えていますが、こうした要望にも対応できると期待しています。

そして何よりも今回の重要な目的は、4K制作を実現していくための若手スタッフの育成です。新4K大型中継車の設計から運用までを経験することによりノウハウを蓄積して、4Kさらには4K HDRならではの映像美を生かしたコンテンツをお客様に提供できるようにしていきたいと考えています。

ソニーには、今後も4K対応の機器やシステムのラインアップ強化を続けてもらうとともに、当社の要望にも柔軟に対応したソリューションを提供して欲しいと思います。