スイッチャー

株式会社 熊本県民テレビ 様

放送局

2018年2月掲載

2017年7月に移転、稼働を開始した新社屋の制作サブにXVS-7000活用の最新サブシステムを導入。
自社制作番組で効率的で安定した運用、放送を開始。


熊本市中央区大江2丁目に完成した熊本県民テレビ様の新社屋。2017年7月 から、運用と放送を開始しました。 変化の激しい放送環境への適応と災害に備えるため、BCP(事業継続計画)と放送システムの強靭化をコンセプトに建設されました。3階建ての社屋棟と2階建ての中継車庫棟から成り、鉄筋鉄骨コンクリート造りとすることなどで耐震性に優れているだけでなく、熱にも強い仕上げになっています。社屋棟1階にはスタジオと制作、報道フロア、オープンスタジオを配置、2階はエントランス、電気室、MA室、制作サブを配置。3階にはマスタールームのほか、固定ラック室、オフィスフロアなどが配備されています。屋上には非常用電源装置もあります。8.2km離れた金峰山送信所への送信も安定した状態で運用されています。

株式会社 熊本県民テレビ様は、2016年11月に竣工した新社屋に移転、開局35周年を迎えた2017年7月から運用、放送を開始しました。
番組制作で重要な役割を担う制作サブにはマルチフォーマットプロダクションスイッチャーXVS-7000 / コントロールパネルICP-X7000を採用し、本格運用を開始しました。同社 技術局 技術部 主任 村上広高様と、システム選定や運用をサポートされている株式会社KKTイノベート 技術センター制作 技術部 副部長 山崎公次様*に、制作サブ更新の背景・経緯、システム導入の決め手、運用の成果と評価などを伺いました。
なお、記事は2017年9月に取材した内容を、弊社でまとめたものです。

*山崎様の「崎」の正しい表記は、「大」の箇所が「立」となります


  • 村上広高様

  • 山崎公次様*

ライブ用途での使い勝手の良さ、信頼性・安定性を求めて

新社屋建設・移転が決まり、「放送の強靭化」を念頭に仕様共通化とワークフローの効率性を軸としました。随所に社屋全体のBCPと将来の機器更新を見据えた設計をしました。より魅力的な番組を効率的に制作するだけでなく、生放送でも安定した状態で運用でき、より柔軟なオペレーションで制作を行い、視聴者に提供できることを目的としました。

新社屋2階に設置された制作サブ。マルチフォーマットプロダクションスイッチャーXVS7000とコントロールパネルICP-X7000を採用。写真・右下はシステムインターフェースユニットMKS-X7700。

そこで制作サブのコンセプトとしたのがレギュラーで制作している夕方のワイド番組「テレビタミン」で使いやすいことを前提とするとともに、スポーツや選挙などの大型番組にも対応できることでした。こうした観点で制作サブのシステムを構築する上で重要な役割を担うのがライブスイッチャーシステムです。選定時点では4K対応の前提はありませんでした。しかし現時点の放送はHDのみですが、機器確定時点で4K対応を考慮しました。

選定にあたっては、昨年のInterBEEにて、コントロールパネルを実際に見て触って、「これだ。」と決めました。コントロールパネルICP-X7000の有機ELの表示の見やすさと、操作性の良さで、ひと目で気に入りました。プロセッサーは、規模と必要な入力数を考慮し、また将来4Kに対応も可能な、マルチフォーマットスイッチャープロセッサーXVS-7000を選びました。導入にあたっては、キータッチの違うサンプルを3種類比較して、運用者の感覚に合ったものを選択しました。

以上のような評価から、今回のXVS-7000 / ICP-X7000の選定は、放送業務用のライブ制作スイッチャーシステムの運用を効率的にサポートしてくれると期待しました。新社屋からさらに魅力的な番組を視聴者に提供できるツールとして活用したいという思いも選定理由の一つでした。

期待通りに夕方のワイド番組制作の効率化、安定化に貢献

制作サブは、ワイド情報番組「テレビタミン」中心の運用を開始してまだ2ヶ月余りの段階ですが、順調に稼働しており、スタッフ、オペレーターの評価も上々です。特に好評なのが有機ELを採用したコントロールパネルの群を抜いた視認性の高さです。また、液晶の表示器とともに用途ごとに配置して複数色に点灯できる点も視認性の向上に貢献し、確実な運用をサポートしています。さらに、サブ内が暗い状態でも見やすく、オペレーションに影響がない点も好評です。

機能面では、スナップショット、マクロをうまく使用することによりコーナーでのピクチャー・イン・ピクチャーの切り替えやCGワイプなどもボタン一つで切り替えができるので、3人のオペレーターもスムーズに運用ができています。また、フレームメモリーも多用しており、CGワイプのほか、タリー連動でミキサーにスイッチャーからデマルチされたBGMを送ることもでき、タイミングがとりやすくなっている点も好評です。素材モニターにはマルチビューワーを採用していますが、管理ソフトやID 表示器の名称変更が容易にできることで非常に見やすいと好評です。

ワイド情報番組「テレビタミン」は、月曜から金曜までリハーサルを含めて毎日4時間越えの運用が必要です。運用する立場からすると、この長時間運用は負担となりますが、新スイッチャーシステムの導入で、トラブルや運用での苦労や負担もなく、順調な制作、放送を実現しています。やはりコントロールパネルの視認性の高さ、充実した機能、使いやすさのメリットを実感することができました。運用面では、ソニーの手厚いサポートも大きく貢献してくれたと感謝しています。


新規導入のスイッチャーシステムは、3ME(64入力/24出力)、8キーヤー、マルチビューワー出力2の構成となっています。2系統出力に対応したことで、ニューススタジオや他局との連携運用などにも威力を発揮しています。


制作サブのモニターに大型の液晶ブラビアを2式配備。また、送出サーバーへの伝送とともに、XDS-PD2000を3台、PDW-HD1500を1台、HDW-M2000を収録用として活用しています。

より地域の視聴者に喜ばれる番組提供への貢献に期待

当社は年度視聴率も好調です。もちろん、系列局からの番組配信の効果もあってのことですが、「テレビタミン」をはじめとした自社制作番組への地元視聴者からの支持も大きな要因となっていると考えています。新社屋への移転、新しい制作サブの機能性や運用性、使い勝手の良さをフルに発揮して、さらに魅力的な番組づくりに活用していきたいと考えています。

また、今回のスイッチャーシステムはSDIだけでなく、ネットワークで接続した各種映像機器との間でIP信号での入出力にも対応できる点にも注目しています。より柔軟で魅力的な番組制作に貢献してくれると期待感も持っています。実は、当社がソニー製スイッチャーシステムを導入するのは今回が初めてのことですが、実際に運用して性能・機能・操作性の面で非常に満足していますし、高く評価しています。今後も本格的な運用を通して、より魅力的で、地元の視聴者に愛される番組制作に貢献してくれることを期待していますし、そうした運用を続けていきたいと考えています。

また、当社では直近の課題ではありませんが、将来的な4K制作、収録の可能性にも期待しています。その際にも、ソニーの充実したサポートの継続と、4Kや4K HDRの対応機器の充実、ラインアップの一層の強化にも大いに期待しています。


制作サブでは、月曜から金曜までオンエアされているワイド情報番組「テレビタミン」で本格運用されています。リハーサルを含めると長時間の運用が必要ですが、トラブルもなく、安定した運用、制作、オンエアを続けています。


制作スタジオ「テレビタミン」のセット