私が初めてホームシアターを体験したとき、迫ってくるような映像の力強さに言葉も出ないほど圧倒されました。そのとき視聴したのは録画してあったテレビの音楽番組で、正直なところ歌にはライブ盤のような存在感や押し出し感はありませんでした。しかしホームシアターで再生した瞬間、映像と音に包み込まれて「こんなにも迫力と臨場感が違うのか」と驚いたんです。まるで目の前にアーティストが現われたかのような、テレビや映画館とも違う、迫力をひとり占めにするようなホームシアターならではの体験でした。

この素晴らしい感覚を自分だけでなく多くの人に知ってもらいたい、味わってもらいたいと思ってホームシアターにのめり込むようになりました。ホームシアターがどういうものかは、みなさんすでに本やウェブなどで情報としてご存知かと思います。しかし、どういうものかは知っていても、どんな喜びや興奮をもたらすのかは体験してみなければわからない。ですから、まずはホームシアターのもたらす感動を、誰もが気軽に体験できる場を提供しようと思ったんです。

フジクラデンキはAV機器だけでなく、エアコンや洗濯機も扱う街の電器屋さんです。機器の設置や接続・設定をはじめ、使いかたのご説明など密なサービスでお客さまに満足していただくことを大きな目標にしています。店内では“サイバーショット”で撮影した写真を〈ブラビア〉で表示したり、Xperia^(TM)Tabletの映像を再生したりと、お客さまがお持ちの機器から広がる楽しさをご説明したり実際に試していただいています。

お店の奥には150インチスクリーンと7.1chサラウンドを体感できる視聴ルームを設けています。スクリーンを設置している壁はお家の窓をイメージしたガラス張りにすることで、視聴ルーム内部の様子を店内から見ることもできます。お客さまからは「お店の中に部屋がある」と気にしてもらうことで、ホームシアターに興味を持っていただく入り口になっています。

窓の面側にスクリーンを置いたのはもうひとつ理由があります。日常、生活している部屋を想定してのことです。実際、部屋には壁際にクローゼットや書棚が置かれていることが多く、空いているのはベランダに通じる窓の面だけということが少なくありません。どうやってスクリーンを設置しようかと考えていた時、窓を背にすれば壁面をいっぱいに使うような大きなスクリーンも設置できるんじゃないかと気づいたんです。もちろんそのままスクリーンを垂らせば窓のサッシとのすき間から光が漏れてきますが、建具で窓とのすき間をなくすことで光が差し込んでくることを防げます。もちろんスクリーンを巻き上げればベランダへの行き来はこれまでどおりです。

ホームシアターのプランニングは、お客さまがふだんよく見るコンテンツとお部屋に合わせて、必要とする組み合わせを提案していきます。いろいろな機器を組み合わせるホームシアターは、あれもこれもと追加していくとシステムがどんどん大きくなっていきます。建具を含めれば組み合わせは膨大なパターンになるので、お客さまとの会話の中から好みを見極めて必要なものを適切に提供していくことを目指しています。地域に寄りそうお店として、またホームシアターのファンとして、シアタールームが完成したらホームシアターづくりがすべて終わりになるとは思っていません。ほかの機器を接続して楽しさを広げたり、4Kなど新しい規格に対応した機器を導入したりすることでホームシアターはさらに成長していきます。売っておしまいではないのが地域密着型のお店のいいところですし、そのよさをお客さまのやりたいことに沿って提供していけたらと考えています。

シアタールームづくりでは、照明やエアコンの施工を通じて培ってきた壁内配線の取り回しや作業のノウハウ、建具のアイデアが役立っています。大がかりな作業を行う工務店さんや、スクリーンやプロジェクターの収納家具を作る建具屋さんとも長年のつきあいがあって、意思の疎通がスムーズなこと、そしていろいろとわがままを聞いてもらえるのも助かりますね。お客さまの好みといった図面上だけではわからない要望に応えたり、実際のお部屋の環境にぴったりとあった施工ができます。

ホームシアターの感動は体験して初めてわかるものだと思います。以前、視聴ルームを使われた年配のお客さまが「今まで聞こえづらかった音がよく聞こえる。これなら音楽をまた楽しめそう」と喜んでくださいました。ホームシアターのよさをお伝えできたこと、そしてなによりあきらめかけていた楽しみがよみがえったことに、私もうれしくなりました。まずはホームシアターの映像と音を体験してみてください。視聴するコンテンツはふだん見ている身近なものが一番だと思います。見なれているはずの映像にもかかわらず、臨場感や存在感が大きく違うことにきっと驚かれるはずです。