法人のお客様リモートカメラシステム 事例紹介 山口大学 共同獣医学部 様

山口大学 共同獣医学部 様

山口大学 共同獣医学部様は、2012年より鹿児島大学様とともに国内初となる大学教育における共同学部化に取り組まれ、教育資源や人材、そして施設設備を両校で相互補完することで、国際水準の獣医学教育を戦略的に推進されています。この度、教室設備の更新でソニーのリモートカメラやAIプレゼンテーション支援システムEdge Analytics Applianceを導入。遠隔地に所在する両校どちらからも、臨場感の高い授業を受講できるハイフレックス型に対応した教室を整備されました。獣医学科 獣医薬理学研究室の佐藤晃一教授にお話をうかがいました。

佐藤 晃一 教授

鹿児島大学との共同学部化と、遠隔でスタートした授業スタイル

デング熱やサル痘など動物由来の感染症は、昨今、我々の生活に大きな影響を及ぼしています。特にこの数十年、世の中のグローバル化により、もはや国境を越えて瞬く間に感染症が広がるリスクを日本も抱えています。また、食料としての動物肉の輸入と流通が増加した現代において、食の安全・安心を担保できるかどうかの判断は、専門性を備えた獣医師が正しい検査をし、防疫体制を整える必要があります。そのため、国際水準の獣医学教育を受けた獣医師を養成する必要に迫られる一方で、国立大学の獣医学部生の枠は小さく、教員の数も非常に限られるという問題がありました。1学年30〜40名の学生に対し、教員も30〜40名、学生対教員比で言えば恵まれているように思えますが、ペットから産業動物、感染症や食の安心・安全までと幅広い職域を考えた場合、専門教員の数が圧倒的に不足しています。簡単に教員数を増やせない中、いかに専門性の高い教育を実現させるかを考えてきましたが、専門性や得意分野の異なる大学同士が連携することで、諸外国と遜色ない教育体制が取れるという判断に至り、従来より交流のあった鹿児島大学と合意して、2012年に共同獣医学部を立ち上げました。

既存システムの課題と、功を奏した10年後を見据えた教室設備の検討

共同獣医学部設置当初のコンセプトは、すべての講義を遠隔で実施するということでした。400km離れた鹿児島には、当時開通した九州新幹線でも片道3時間弱かかり、教員が相互に移動し合うことは時間的、金銭的に続けられないと判断しました。教室にいる学生とディスプレイの向こうにいる学生を一つの広い教室に見たて、対面と遠隔地を一緒に講義する形が取れれば臨場感のある講義になると考え、ベンダーさん協力のもと、ソニーのビデオ会議システムをベースに設備を整えました。今思えば、まさにハイフレックス方式を先取りしていた訳です。
遠隔講義システムを運用して分かったことは、映像と音声がクリアでないと学生は授業に集中できないということです。特に録画した授業コンテンツは、解像度や音声品質が悪いと学生の学習意欲は高まりません。また新型コロナウイルス禍での授業を実施して、改善したい点も出てきていました。そこで、将来予算が通った時に備え、早い段階からベンダーさんと改善点やめざすべき仕様をまとめ、システムのさらなる改善、更新に向けた検討を進めてきました。ちょうど令和2年に、オンラインと対面を組み合わせたポストコロナ時代の高等教育における教育手法の具体化を図り、その成果の普及を図るという、文科省のPlus-DX事業に応募したところ採択され、システム更新が実現しました。公募から申請までの限られた時間の中で採択につながったのは、我々にはすでにオンライン講義の土台があったこと、そして10年後の教室設備はどうあるべきかを見据えて、早くから準備を進めてきたことが大きかったと考えています。

リモートカメラの高画質が、教室と学外からのオンライン接続の一体感を醸成

これまでのシステムは、学術情報ネットワーク内のセキュアで閉ざされた環境で、つまり大学の教室間に限定して運用していました。しかし、学生の出席が制限されることへの対応として、学外、例えば自宅からでもオンライン参加ができるよう、山口大学が採用していたシスコシステムズ社のWebex、鹿児島大学が採用していたZOOM、それぞれ既設の遠隔講義システムとマルチで多地点接続ができるようにしました。WebexやZOOMを使ったオンライン授業では臨場感を出すのは難しいですが、教室の学生とリモート接続の学生との一体感を醸成し、学生の授業に対する集中を促すという部分で、ソニー製のリモートカメラは映像のクオリティがとても高く、課題であった高画質化が実現でき、授業の質を高める大きな要素になっていると感じています。加えて、獣医学部独特の実習主体の授業でも臨場感を伝えるため、教材や動物を教員の目線で撮影し伝えられるウエラブルカメラを導入し、リモートであってもより学生の理解度を深めることにつながっていると思います。

教室後方に設置された教員撮影用の旋回型カメラと板書を俯瞰で捉える固定型カメラ

次に、メンテナンスやサポート工数の削減も、更新にあたって重きを置いたポイントです。今回私たちは、OSに極力依存しないシステムを採用すると共に、これまで共同学部で蓄積してきた要望やアイデアをベンダーさんに伝えることで、最適な形にインテグレーションしていただき、例えばタッチパネルの直感的な操作で簡単に授業を開始できるようになるなど多数の改善をすることができました。その結果、操作に不慣れな教員であっても、人的サポートなしで運用が可能になりました。また、教員には板書中心の人や、教科書を読み上げながら授業を行う人、PCから資料を投影する人、タブレット端末上の資料に書き込みながら行う人など、さまざまな授業スタイルがありますが、それらにも柔軟に対応できるようにしています。

直観的な操作で簡単に遠隔講義が運用可能な専用教員卓。カメラ操作も画像上に直接タッチするだけでパン・チルト・ズーム操作が可能

新しい取り組みとして導入したAIプレゼンテーション支援システム(Edge Analytics Appliance)は、教員が画面の中に入っていかにも板書や説明をしているという画像合成がクロマキーレスで簡単に行え、今後の教育効果の高いコンテンツ配信に役立つものと考えています。本格運用はこれからですが、学生も予備校などでリッチな授業コンテンツに慣れている部分もあり、我々もそれに見合った資料の作り方などを研究しながら、積極的に活用していきたいと考えています。

教員画像とプレゼン資料を合成することで、視覚効果の高い授業映像を配信可能なAIプレゼンテーション支援システム

進化の著しい最新技術を取り込み、次の10年を見据えたシステムへ

遠隔やオンライン授業を否定する意見も少なからずありますが、この10年間の共同学部運営で、学生の試験結果などを解析したところ、学修効果は対面でもリモートでも変わらないという結果が出ています。一方、学習スタイルの選択肢をすべて学生に委ねることは、生活習慣の乱れなどマイナス面があることも分かってきており、リアルタイムで開講する授業への参加をベースにしつつも、諸事情により登校できない場合には学習機会を提供できるようシステムのブラッシュアップを図っています。学術情報ネットワークも5G対応されるなど、通信インフラの高速化やそれに伴う対応機器の進化、さらに画像圧縮技術なども革新されていくはずなので、今のシステムを使いこなしながら、次の10年を見据えた次期システムの検討も進めていきたいと考えています。また、海外を含めた外部連携の拡大も今後の課題です。現在、インドネシアから多数の留学生を受け入れていますが、彼らが現地に戻り、教員として授業を行う際にリモートで我々の授業を提供したり、逆にインドネシアでないとできない授業の提供を受けたりといった交流が行えるよう、環境の整備を図っていきたいと思います。
先ほども触れましたが、獣医学で大事な動物を使った実習をリモートで伝えることは、現在のシステムでもとても難しいです。例えば、動物の臓器があたかも本物のように3Dで表示され、断面を自由な角度で見せることができたり、あたかも自分の手で動物を触って触診しているような感触をリモートで伝えられたりなど、ソニーさんが得意とされる画像処理技術やセンサー技術を用いてぜひ実現して欲しいです。近い将来において、教育のあり方を変革してくれるような斬新な提案をしてくれることを期待しています。

納入特約店: 北辰映電株式会社

※本ページ内の記事・画像は2022年6月18日に行った取材を元に作成しています

リモートカメラ
SRG-X120、SRG-300H

商品情報

AIプレゼンテーション支援システム
REA-C1000

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