岩手県盛岡市に本拠を置き、岩手県を放送対象地域とする地上波デジタル放送局、株式会社テレビ岩手。同社の看板番組の1つ「ピノキオ・サンセット」の制作に使用するため、Cinema Line カメラ『FX6』を導入されました。報道制作部 制作部 副部長 廣嶼 文樹 様ならびに制作技術部 副部長 近江 秀之 様、同部 杉本 元治 様に、その導入の目的や経緯、お使いになられての感想や成果についてお伺いしました。
ー28年続く、地域に愛される番組「ピノキオ」
廣嶼:今回、Cinema Line カメラ『FX6』を導入したのは、当社の2大自主制作番組の1つ、毎週日曜夕方に放送をしている30分番組「ピノキオ・サンセット」のメインカメラとして使用するためです。この番組は地域の美しい風景や美味しい食べ物を紹介していく番組です。日曜深夜の放送でありながら、高い視聴率を頂戴していた前身の「夢・見る・ピノキオ」を含めると、放送開始から28年もの間、地域の皆さまから愛されています。
ー風景や食べ物を「映像美で魅せる」がコンセプト
報道制作局 制作部 副部長 廣嶼 文樹 様
廣嶼:地方局のこういった番組では、リポーターがいるのが普通ですが、この番組では当初からコンセプトは一貫して変わらず、リポーターは入れずに、オールディーズの素敵な洋楽と共に「映像美で魅せる」ということをコンセプトにしています。ナレーションの量も一般的な番組の半分以下、スーパーも最小限で白文字に黒縁取り、というゆったりした番組です。私は番組の放送開始当初からこの番組に携わり、現在はプロデューサーとして関わっています。
ー「映像美」にふさわしいカメラを求めて
技術局 制作技術部 副部長 近江 秀之 様
近江:これまで、取材用のカメラとしては、XDCAM HD422 カムコーダー『PDW-F800』や『PDW-850』を使用しており、非常に満足していました。しかし『PDW-F800』の更新の時期が来たことから、後継のカメラを検討することになりました。
廣嶼:これまで「映像美」というコンセプトから、スローモーションの多用や、三脚を傾けて撮る…など、新しい撮り方にもいろいろチャレンジをしてきていましたので、新しいカメラも、それにふさわしい「美しい映像が撮れるカメラ」を求めていました。
近江:そのような中、『FX6』の評判の良さを聞き、ソニーの営業担当からも「コンセプトにマッチするのではないか」というおすすめもいただきました。早速デモ機をお借りして、制作技術のカメラマンたちにも触れてもらいました。皆から「これはいいよね」「今までにない美しい映像が撮れそう」といった反応をもらい、本格的な検討に入りました。
ー「時間をかけてでもいい絵を撮りたい」
近江:フルサイズイメージセンサーの『FX6』では、レンズ交換が必要になったり、望遠倍率に制約が出たりもします。しかし、慎重に検討を重ねた結果、「ピノキオ・サンセット」という番組は、ある程度時間をかけて取材ができる、という面があり「時間をかけてでもいい絵を撮りたい」という方が勝りました。また、ラージセンサーカメラとしては、4K番組制作用にXDCAMメモリーカムコーダー『PXW-FS7』を所有していますが、『FX6』は使い勝手が大幅に向上していることがわかりましたので、最終的に『FX6』の導入を決めました。
ールックは「S-Cinetone」で制作
技術局 制作技術部 杉本 元治 様
近江:2024年の7月に導入し、1ヵ月ほどのテストや習熟の期間を経て、8月の取材から使い始めました。8月中旬以降の放送は全て『FX6』で撮っています。
杉本:収録は、HDのXAVC-L、29.97Pで行っています。記録メディアはソニー純正『TOUGH』(タフ)シリーズのSDXCカードを用いています。ルックについては、今のところ、「S-Cinetone」で撮っています。従来のITU-R BT.709ベースのトーンと比べて、明らかな見た目の違いが得られることから選んでいます。
ーフォーカスがシビアになるフルサイズ撮影でもAFが撮影をアシスト
杉本:フォーカスに関しては、風景や物撮りが多いこともあり、基本はマニュアルでの撮影をしています。AFにはモードが2種類あるほか、感度や粘りといった調節も可能ですので撮影に適した使いこなしを学んでいきたいと思っています。
近江:番組ではときどき、インタビューもあるのですが、フォーカスがシビアになるフルサイズの撮影でも、「顔検出AF」や「リアルタイム瞳AF」が人物を追従してくれるので、人物が動いてもぴったりとフォーカスが合い続けてくれます。
ーフォーカス送りを音声マンが『Monitor&Control』アプリでアシスト
近江:私が音声マンとしてカメラマンについて取材に出ることもあるのですが、Wi-Fiで操作できるスマホアプリ『Monitor&Control』を使ってプレビューをしながらスマホ側で「タッチフォーカス」によるフォーカス操作をするようなことも行っています。例えば「料理のこの部分からこの部分へフォーカス送りをする」みたいなことが、スマホから「タッチフォーカス」で簡単に行えます。他にもカメラのさまざまな操作がアプリでできてしまうのがとても便利です。
ー高感度・低ノイズ性能の良さにより「黒が際立つ」
近江:『FX6』では、ISO800とISO12800という2つの基準感度を選べます。暗い場所でISO12800を使用することで、より高い感度でノイズを抑えながら撮影が可能です。これにより、夜間撮影や暗い室内でもノイズの少ない質の高い映像が収録できるのは魅力です。
ー電子式可変NDフィルターを活用した「被写界深度固定」も日常的に活用
杉本:内蔵されている電子式可変NDフィルターも日常的に活用をしています。私の場合は被写界深度を固定するために、基本は「F(絞り)固定」で撮影を行っています。
ーハイフレームレート撮影を多用し「美しさを引き立てる」
杉本:これまで、ENGカメラのスローは、後処理によるコマ落としのスローでしたが、『FX6』ではハイフレームレート撮影でのスローを活用しています。
廣嶼:スローの美しさは、このカメラを購入して本当に良かったと感じているところです。例えば、水の表現や天ぷらを揚げているときの油など、液体のテカリの表現が美しい。また、調理でフランベという炎がバッと上がるようなシーンのスローも抜群に綺麗です。スローモーションをもっと上手に使っていきたいと思っています。
杉本:今後は、常時60Pで撮るようなことも考えています。60Pで撮ることで、スロー前提の映像を撮る時にも、音声を同時に録ることができます。
ー映像撮影が意識されていることを実感した「G MasterⅡレンズ」
杉本:『FX6』の導入にあたっては、純正FEマウントレンズも併せて購入しました。『FE 16-35mm F2.8 GM Ⅱ』『FE 24-70mm F2.8GM Ⅱ』『FE 70-200mm F2.8GM OSSⅡ』の3本です。レンズ選びのポイントとしては「ENGカメラで使っていた広角ズームレンズ)の焦点域をカバーできるラインアップ」という観点で選びました。
杉本:実際に使い始めて感じたのは、レンズの“キレの良さ”と、軽さです。この画質でこのコンパクトさは魅力です。また、アイリス・ズーム・フォーカスの3連リングとなっているところも魅力です。絞りリングのクリック有無・無段階の切り替えができたり、AF(オートフォーカス)のON/OFFスイッチがレンズ側に装備されたりしていることも、映像撮影用として行き届いていると感じるポイントです。
ー機材もコンパクトになり、運搬もカメラワークもフットワーク軽く
近江:ENGカメラと比べて小さくなったのも魅力です。これまでの取材では、カメラはカメラケース、Vマウントのバッテリーは別のバッグに入れて持ち運んでおり、機材が大掛かりになっていました。『FX6』では、カメラ、レンズ、バッテリーを全て1つのバッグに入れて持ち歩けます。『FX6』ならコンパクトなので、狭い店内など、スペースがない場所の取材でも下がれて、手持ちでも撮れてしまいます。カメラマンを見ていても、取り回しの速さを感じています。
ー料理のおいしさが「絵から伝わる」色の良さ
廣嶼:毎週取材したものを見ていますが、とてもきれいに映ると感じています。箸上げもピントがすぐ合い、ぼけ味、スロー、色の発色もとても良いです。
近江:お肉1つ撮っても「赤身」が綺麗に撮れる。料理のおいしさが絵から伝わる、というのは本当にうれしいです。
ー「作り手の思いは伝わる」ことを改めて実感
廣嶼:おかげさまで、導入後の視聴率も非常に良い形で推移していまして、こういう風な作り手の思いは、視聴者の皆さまにちゃんと伝わるのだな…と、いつも実感しています。制作側としては、お世辞抜きに『FX6』を導入して満足です。こういう結果が出ているので、引き続き『FX6』を使い続けたいと考えています。他にも今後、古い建物を紹介する番組など、しっとりと落ち着いて見ていただきたい単発番組などに、活用の幅を拡げて行きたいと思っています。
使用機材紹介
株式会社テレビ岩手
ピノキオ・サンセット
※本ページ内の記事・画像は2024年12月に行った取材を基に作成しています。
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