2021年9月 更新

染まりゆく、秋の美を捉える

季節の移ろいを感じながら、
写真の秋を楽しむ

今回は、紅葉をより印象的に残すひとつ上のテクニックと
撮影で活躍する望遠レンズを
写真家 福田健太郎氏にお聞きしました。
あなたもαとともに写真の秋を楽しんでみませんか。

福田健太郎 五つのひらめき 〜ひとつ上の紅葉表現を解説〜

美しい紅葉風景に出会ったとき、ただ漠然と撮影してもその感動を伝えるのはなかなか難しいものです。
そこで写真家 福田健太郎氏に、より美しく印象的な紅葉写真を撮るためのアイデアやテクニックを
作品とともに解説していただきました。ぜひ参考にしてみてください。

ひらめき1 水鏡

水面の映り込みは、水辺であれば簡単にできる表現です。
公園の池でも再現でき、何気ない紅葉も華やかに残せます。

E 18-55mm F3.5-5.6 OSS シャッター速度1/50秒 F値10 ISO感度200 E 18-55mm F3.5-5.6 OSS
 シャッター速度1/50秒 F値10 ISO感度200
解説
波が静まったタイミングを狙う 水平をとって上下対称の構図に

映り込みを撮るなら
朝方や夕方

水辺は、生育環境が整っているため、状態のよい紅葉に出会えるチャンスが多くあります。そこで狙いたいのが水面に映り込む紅葉。鏡のようにクリアに映りこませるには、風が凪いでいる朝方や夕方がおすすめ。映り込む角度を見つけて、さざ波が静まったタイミングを逃さずシャッターを切ります。

シンメトリー構図で
「実像」「虚像」
どちらもメインに

実際の風景(実像)と映り込んだ風景(虚像)のどちらをメインにするかは自由です。この作品では、実像と虚像のどちらもメインにしたかったため、上下対称のシンメトリー構図にしました。シンメトリーにすると、安定感が生まれます。コツは、電子水準器やグリッド表示機能でしっかり水平を出すこと。できれば三脚を使い、画面の隅々まで確認しながら構図を決めましょう。

映り込みだけで
油絵のように表現

望遠レンズなどで映り込みだけを切り取れば、見る人の想像力を掻き立てる写真になります。シャッター速度は1/30秒や1/60秒くらいに設定し、あえて水面の揺らぎを生かすのがおすすめ。そうすると、波紋で映り込んだ像が抽象化され、まるで油絵のように表現できます。

映り込みだけで油絵のように表現

ひらめき2 光芒

光芒(光の筋)は、まばゆい光の存在感を高めてくれます。
燃えるような紅葉の華やかさを象徴するように捉えました。

Vario-Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM II シャッター速度1/50秒 F値11 ISO感度200 Vario-Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM II
 シャッター速度1/50秒 F値11 ISO感度200
解説
幹や枝葉で太陽を少し隠すと光芒が出やすい シルエットとなる幹の躍動感を表現

F11以上に設定し、
太陽を少し隠す

光芒はF値(絞り値)を大きくすると出ます。目安はF11以上。太陽は丸々入れるのではなく、幹や枝葉の間から部分的に出すと光芒が出やすくなります。ファインダー越しでは光芒の出方は分かりづらいので、何度も撮影して確認しながら、太陽の位置を微調整しましょう。

広角レンズで
幹に近づいて見上げる

こうした見上げのアングルでは、広角レンズで幹にぐっと迫ってみましょう。そうすると遠近感がより強調され、幹や枝に躍動感が生まれます。また、太陽を画面に取り込むとフレアやゴーストが出やすいので、T*コーティングやナノARコーティングが施された逆光に強いレンズを選ぶと、クリアに撮影できます。

ひらめき3 水流

スローシャッターは、静けさや穏やかさを表現できます。
ゆるやかな秋の移ろいを、水の流れとともに捉えてみました。

DT 16-50mm F2.8 SSM シャッター速度2秒 F値16 ISO感度100 DT 16-50mm F2.8 SSM 
シャッター速度2秒 F値16 ISO感度100
解説
右から左に流れる紅葉のリズムを意識 スローシャッターで水の流れをなめらかに表現

スローシャッターで
構成要素をシンプルに

スローシャッターで撮ると、水の流れが少し穏やかな印象になります。シャッタースピードの目安は1/4秒よりも遅い設定。水面をなめらかに表現し、要素がシンプルになると、紅葉や苔むした岩の姿に目がいきやすくなります。逆にしぶきが舞うような激しさを表現するならシャッタースピードは1/60秒や1/125秒くらいでOK。

真横から撮影して、
紅葉のリズムを意識

この写真は、川のほぼ真横から撮影しています。そうすることで、紅葉が右から左へ向かうようなリズムを生み出しています。川の流れと紅葉の配置、そのバランスを意識しながら撮影ポジションを調節してみましょう。

リモートコマンダーが
なければ
セルフタイマーで

スローシャッターに三脚は必須。渓流は足場が不安定なので、脚をしっかり広げて一本一本長さを調整し、撮る前にぐらつきがないか確認しましょう。また、リモートコマンダーで静かにシャッターを切ると、紅葉や岩がしっかり解像します。コマンダーが無い場合は、セルフタイマーを活用してみましょう。

ひらめき4 明暗

逆光撮影で輝度差を利用すると明暗のメリハリがつきます。
背景を落とすことで、カエデの色や形を際立たせました。

70-300mm F4.5-5.6 G SSM II シャッター速度1/400秒 F値8 ISO感度200 70-300mm F4.5-5.6 G SSM II
 シャッター速度1/400秒 F値8 ISO感度200
解説
マイナス補正で背景を黒く落とす 望遠レンズで主題と副題を切り取る

露出補正で
見せたいものを
限定させる

この作品のポイントは、引き算の美学。逆光のため、日の当たるカエデやススキ以外はすべて日陰。とはいえ、肉眼では背景の山林はしっかり見えています。そこで露出補正をマイナス1.7にすることで、不要な情報となる背景を暗く落とし、一番見せたいカエデの存在が際立つようにしています。

望遠レンズで
写る範囲を調節する

望遠レンズで写る範囲を狭めることで、要素を引き算。もし広角レンズなら周囲の余計なものが入り込み、標準レンズだと背景がもっと写り込んでしまいます。そこで、被写体からあえて離れ、中望遠の画角で限られた範囲のみを切り取るようにしています。

ひらめき5 照明

ライトアップされた紅葉は、妖艶な表情をみせてくれます。
空の青さが残る夕暮れ時に撮ると雰囲気を出せます。

E 16mm F2.8 シャッター速度5/6秒 F値8 ISO感度200 E 16mm F2.8
 シャッター速度5/6秒 F値8 ISO感度200
解説
光がきれいに当たっている紅葉を狙う 空に青さが残る夕暮れ時が勝負

完全に暗くなる前が
一番の
シャッターチャンス

ライトアップされた紅葉は、夜に撮るイメージがありますが、一番美しいのは空に青さが残る夕暮れ時。完全に暗くなってしまうと、奥行き感やスケール感が伝わりづらくなります。日が沈むまでの10分から15分くらいが勝負になるので、事前に撮影ポイントを見つけておき、素早く撮りましょう。

光がキレイに
当たっている場所を
探す

漠然とライトアップされた紅葉を撮るのではなく、しっかり光が当たりきれいに浮かび上がっている場所を見つけて撮りましょう。また、照明の種類によって照らされる紅葉の色味が変わります。赤みが足りなかったりイメージと違う場合は、ホワイトバランスを調節するのも手です。

αオーナーのひらめきをご紹介 〜十人十色の紅葉表現〜

作品を見ることは、写真上達の一歩です。紅葉の撮り方は他にもいろいろあるので、
αcafeなどで他のαユーザーの紅葉作品も参考にしながら紅葉の撮影を楽しみましょう。

αオーナーの皆様が表現された紅葉(αcafeより)
αオーナーの皆様が表現された紅葉(αcafeより)
αオーナーの皆様が表現された紅葉(αcafeより)
αオーナーの皆様が表現された紅葉(αcafeより)

αオーナーの皆様が表現された紅葉(αcafeより)

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