いろいろな角度から、
花の美しい姿を見つけだす
α7R III, FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm,
F2.8, 1/640秒, ISO400
花の撮影でまず心がけてほしいのが、図鑑のような写真にせず、自分がキレイだと思える花のアングルを見つけることです。撮りたい花を見つけたら、上から見下ろすのではなく、まず下から“見上げて”みてください。そうすると、花弁の裏側の色や形、太陽の光で透ける花びらの模様など、これまで見たことのない花の姿が現れます。さらに、いろいろなアングルからその花の模様やカタチを観察して、キレイだと感じたら、どんどん撮影してください。そこには、その花の美しさを引き出したあなただけの作品が撮れているはずです。
ローアングルから、花を見上げる
α7R III, FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm,
F2.8, 1/1250秒, ISO1600
高い位置に咲いている花は、その下に潜り込んで、見てみましょう。このアザミの写真では、地面スレスレのローアングルからレンズを向け、空を背景にした抜けのよいアングルを見つけ出しました。
花撮影ワンポイントアドバイス
レジャーシートなどで、
アングル探しを快適に
実際の花撮影では、地面に膝をついたり、うつぶせになったりしながら、その花の美しいアングルを探しています。その際、レジャーシートや園芸用の膝当てなどを用意しておけば、服が汚れる心配なく、いろいろな体勢でアングル探しを行えます。
主役の花を決め、
空間に広がりをもたせる
α7R III, FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm,
F4, 1/640秒, ISO1600
画づくりでは、主役の花を決め、真ん中以外に配置するのがポイント。まずは、主役の花を画面の1/4の位置を目安に置いてください。そうすると周囲の状況まで写り、全体の雰囲気が感じられる写真になります。また、花が向いている方向に空間が広がるような構図を意識しましょう。人の目は始めにピントが合っている花にいき、つぎに花が向いている方向に目線がいくので、そこに空間があると写真に物語が生まれてきます。
枝を目立たせず、
花の印象を強調
枝に咲く花の場合、左の写真のように横から撮ると枝全体にピントが合い、主役の花が目立たなくなってしまいます。そんなときは右の写真のように、枝に沿うようにレンズを向けて、花の前後の枝をぼけさせれば、主役の花が浮き上がってきます。
マクロでは一部分を
大胆に切りとる
花の細部は、花びらや花弁の形や模様など緻密な美しさにあふれています。このシュウメイギク(秋明菊)の写真では、マクロレンズを使って目には見えない花びらの波打つ造形までを繊細にとらえました。マクロレンズをお持ちの方は、花の一部分に目を凝らし、大胆に切りとってみましょう。
花撮影ワンポイントアドバイス
初めての方は、
グリッドラインを活用
初心者の方はグリッドラインを利用して、空間をつくる感覚を養ってください。まず「3分割」表示の交点に主役の花を持っていくことを基本として、慣れたらさまざまな構図を試しながら、自分の好みの構図を見つけましょう。
自然の情景を取り込み、
花の世界観をつくる
α7R III, FE 70-200mm F4 G OSS, 200mm,
F4, 1/200秒, ISO400
花の姿を引き立てるためには、余白や背景に撮影場所の情景や季節感を取りこむことが大切です。このシュウカイドウ(秋海棠)の写真では、手前に色づく葉や実、木漏れ日の光を前ぼけとして入れながら、背景に早秋の渓流の様子を取りこむことで、自然の中で可憐に咲く花の世界観をつくっています。これから秋が深まるなか、紅葉をイメージさせる茶色や黄色、秋の月を感じさせる白色などを作品に入れ込めば、いっそう秋を感じさせる情緒的な作品に仕上がります。
前後のぼけで
花の群生感を表現する
α7R III, FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm,
F2.8, 1/800秒, ISO250
花が群生しているシーンでは、一輪の花にだけピントを合わせ、他の花を前ぼけや背景ぼけに使いましょう。そうするとゴチャゴチャした印象にならずに、群生感を表現できます。
花撮影ワンポイントアドバイス
キレイな背景ぼけができたら、
その背景も記録
背景ぼけのコツは、標準レンズなら、焦点距離を長い望遠側にして背景を離してあげること。また、撮影時に上手にぼけた場合は、下の写真のように背景にもピントを合わせて撮っておいてください。それを見て「背景の色や距離によって、どのようなぼけになるのか」を理解し、ぼけの感覚を体得しましょう。
自分がキレイだと思う部分に
フォーカスする
α7R III, FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm,
F2.8, 1/250秒, ISO640
一般的な花の撮影では「花芯にピントを合わせる」とよく言われますが、そんな常識にとらわれず、自分がキレイだと思う部分にフォーカスしてください。このゼフィランサスの写真では、雄しべの先端(柱頭)ではなく、その花柱の形や淡いグラデーションを美しいと感じ、ピントを合わせました。また、花芯が見えない花の場合には、いちばん手前の花びらにピントを合わせておけば、ピンぼけに見えず、主題がはっきりとした写真に仕上がります。同じ被写体でも、いろいろな部分にピントを合わせて撮影し、自分が美しいと感じるポイントを探してみましょう。
わずかなピントの差で、
全く違う印象に
左の写真は花柱の根元にフォーカスしたもので、右の写真は花びらの付け根の模様にフォーカスしたものです。このようにマクロ撮影では数ミリのピント位置の差でまったく違う表情を見せてくれるので、自分が見せたいポイントにフォーカスし、そこにピントが合うまで何度もチャレンジしてみてください。
花撮影ワンポイントアドバイス
ピント合わせには、
ピーキングが便利
標準レンズの場合には、ファインダー上でどこにピントが合っているのか分かりにくいのでピーキング機能を活用しましょう。撮影時にピント拡大を利用する方も多いと思いますが、全体の構図がわかりにくくなるので、ピント確認は撮影後に行うことがおすすめです。