2021年9月 更新
花には、表現の可能性があふれている 花には、表現の可能性があふれている

あなたはお持ちのαで、どんな写真を撮っていますか。
いま“自分の写真”を探し始めた皆さんに、おすすめしたいのが、花という被写体。
花は自分の視点や工夫次第でいくらでも表現が広がる被写体です。
誰もが知る花々から、自分だけの美しさを見つけることは、
撮影者の表現欲を満たしてくれるでしょう。
秋の花が咲く公園や自然の中で撮影を楽しんでみませんか。
常識にとらわれず、花の美しさを引き出すコツやおすすめのレンズを
写真家 並木隆氏にお聞きしました。

写真家 並木 隆氏

1971年生まれ。高校生時代、写真家・丸林正則氏と出会い、写真の指導を受ける。東京写真専門学校(現・ビジュアルアーツ)中退後、フリーランスに。花や自然をモチーフに各種雑誌誌面での作品発表。公益社団法人 日本写真家協会、公益社団法人 日本写真協会、日本自然科学写真協会会員。

秋に見られる主な花
  • キキョウ
    10月が最後の見頃。星のような形状が特徴です。
  • ススキ
    11月末まで見頃。風になびく穂はまさに秋の風物詩。
  • バラ
    秋バラは10月中旬が見頃。花が開ききる前が狙い目です。
  • ヒガンバナ
    10月末まで見頃。葉がなく、深紅色の妖艶な雰囲気が魅力です。
  • コスモス
    10月末まで見頃。つぼみの可憐さも必見です。
  • ダリア
    11月末まで見頃。気温が下がると色鮮やかさが一層増します。
花の美しさを引き出す、4つの撮影テクニック 花の美しさを引き出す、4つの撮影テクニック
01アングル

いろいろな角度から、
花の美しい姿を見つけだす

α7R III,  FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm, 
F2.8, 1/640秒, ISO400

花の撮影でまず心がけてほしいのが、図鑑のような写真にせず、自分がキレイだと思える花のアングルを見つけることです。撮りたい花を見つけたら、上から見下ろすのではなく、まず下から“見上げて”みてください。そうすると、花弁の裏側の色や形、太陽の光で透ける花びらの模様など、これまで見たことのない花の姿が現れます。さらに、いろいろなアングルからその花の模様やカタチを観察して、キレイだと感じたら、どんどん撮影してください。そこには、その花の美しさを引き出したあなただけの作品が撮れているはずです。

ローアングルから、花を見上げる

α7R III,  FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm,
F2.8, 1/1250秒, ISO1600

高い位置に咲いている花は、その下に潜り込んで、見てみましょう。このアザミの写真では、地面スレスレのローアングルからレンズを向け、空を背景にした抜けのよいアングルを見つけ出しました。

ハイアングルで、花を見下ろす

α7R III,  FE 90mm F2.8 Macro G OSS 90mm,
F2.8, 1/640秒, ISO1600

これは、左写真のアザミをハイアングルで見下ろして撮影したものです。同じ花でもアングルによって、花の形も背景も大きく変わります。たくさんの美しい表情を探し出しましょう。

花撮影ワンポイントアドバイス

レジャーシートなどで、
アングル探しを快適に

実際の花撮影では、地面に膝をついたり、うつぶせになったりしながら、その花の美しいアングルを探しています。その際、レジャーシートや園芸用の膝当てなどを用意しておけば、服が汚れる心配なく、いろいろな体勢でアングル探しを行えます。

02構図

主役の花を決め、
空間に広がりをもたせる

α7R III,  FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm, 
F4, 1/640秒, ISO1600

画づくりでは、主役の花を決め、真ん中以外に配置するのがポイント。まずは、主役の花を画面の1/4の位置を目安に置いてください。そうすると周囲の状況まで写り、全体の雰囲気が感じられる写真になります。また、花が向いている方向に空間が広がるような構図を意識しましょう。人の目は始めにピントが合っている花にいき、つぎに花が向いている方向に目線がいくので、そこに空間があると写真に物語が生まれてきます。

枝を目立たせず、
花の印象を強調

α7R III,  FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm,
 F2.8, 1/160秒, ISO1600

枝に咲く花の場合、左の写真のように横から撮ると枝全体にピントが合い、主役の花が目立たなくなってしまいます。そんなときは右の写真のように、枝に沿うようにレンズを向けて、花の前後の枝をぼけさせれば、主役の花が浮き上がってきます。

マクロでは一部分を
大胆に切りとる

花の細部は、花びらや花弁の形や模様など緻密な美しさにあふれています。このシュウメイギク(秋明菊)の写真では、マクロレンズを使って目には見えない花びらの波打つ造形までを繊細にとらえました。マクロレンズをお持ちの方は、花の一部分に目を凝らし、大胆に切りとってみましょう。

α7R III,  FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm,
F2.8, 1/1250秒, ISO1600

花撮影ワンポイントアドバイス

初めての方は、
グリッドラインを活用

初心者の方はグリッドラインを利用して、空間をつくる感覚を養ってください。まず「3分割」表示の交点に主役の花を持っていくことを基本として、慣れたらさまざまな構図を試しながら、自分の好みの構図を見つけましょう。

03背景選び

自然の情景を取り込み、
花の世界観をつくる

α7R III, FE 70-200mm F4 G OSS, 200mm, 
F4, 1/200秒, ISO400

花の姿を引き立てるためには、余白や背景に撮影場所の情景や季節感を取りこむことが大切です。このシュウカイドウ(秋海棠)の写真では、手前に色づく葉や実、木漏れ日の光を前ぼけとして入れながら、背景に早秋の渓流の様子を取りこむことで、自然の中で可憐に咲く花の世界観をつくっています。これから秋が深まるなか、紅葉をイメージさせる茶色や黄色、秋の月を感じさせる白色などを作品に入れ込めば、いっそう秋を感じさせる情緒的な作品に仕上がります。

前後のぼけで
花の群生感を表現する

α7R III,  FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm,
F2.8, 1/800秒, ISO250

花が群生しているシーンでは、一輪の花にだけピントを合わせ、他の花を前ぼけや背景ぼけに使いましょう。そうするとゴチャゴチャした印象にならずに、群生感を表現できます。

広角で背景が綺麗なら
たくさん入れる

α7R III,  Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS,
16mm, F4, 1/250秒, ISO400

周辺の景色がキレイな場合、その背景を入れないのはもったいないです。広角レンズをお持ちなら、このヤマユリの写真のように背景もどんどん入れて撮りましょう。

花撮影ワンポイントアドバイス

キレイな背景ぼけができたら、
その背景も記録

背景ぼけのコツは、標準レンズなら、焦点距離を長い望遠側にして背景を離してあげること。また、撮影時に上手にぼけた場合は、下の写真のように背景にもピントを合わせて撮っておいてください。それを見て「背景の色や距離によって、どのようなぼけになるのか」を理解し、ぼけの感覚を体得しましょう。

04ピント合わせ

自分がキレイだと思う部分に
フォーカスする

α7R III,  FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm, 
F2.8, 1/250秒, ISO640

一般的な花の撮影では「花芯にピントを合わせる」とよく言われますが、そんな常識にとらわれず、自分がキレイだと思う部分にフォーカスしてください。このゼフィランサスの写真では、雄しべの先端(柱頭)ではなく、その花柱の形や淡いグラデーションを美しいと感じ、ピントを合わせました。また、花芯が見えない花の場合には、いちばん手前の花びらにピントを合わせておけば、ピンぼけに見えず、主題がはっきりとした写真に仕上がります。同じ被写体でも、いろいろな部分にピントを合わせて撮影し、自分が美しいと感じるポイントを探してみましょう。

わずかなピントの差で、
全く違う印象に

α7R III,  FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm,
 F2.8, 1/500秒, ISO320
α7R III,  FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm,
 F2.8, 1/400秒, ISO320

左の写真は花柱の根元にフォーカスしたもので、右の写真は花びらの付け根の模様にフォーカスしたものです。このようにマクロ撮影では数ミリのピント位置の差でまったく違う表情を見せてくれるので、自分が見せたいポイントにフォーカスし、そこにピントが合うまで何度もチャレンジしてみてください。

花撮影ワンポイントアドバイス

ピント合わせには、
ピーキングが便利

標準レンズの場合には、ファインダー上でどこにピントが合っているのか分かりにくいのでピーキング機能を活用しましょう。撮影時にピント拡大を利用する方も多いと思いますが、全体の構図がわかりにくくなるので、ピント確認は撮影後に行うことがおすすめです。

花撮影の表現領域を広げるレンズ 花撮影の表現領域を広げるレンズ

マクロレンズ美しいぼけ描写で
水彩画のように

α7R III, FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm, F4, 1/500秒, ISO250

イヌサフランの雌しべのすらっと立つ姿に気品すら感じました。この花の特徴でもある薄紫色で画面を埋め尽くしたかったので、花が密集しているところの花びらの隙間から見える雌しべを丹念に探しながら、被写体を見つけました。マクロレンズでこれだけのクローズアップになるとピント合わせがとてもシビアになりますが、ピーキング機能を併用すれば色の変化でピント位置を確認できるので、シビアなピント合わせを確実に行えます。

α7R III, FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm, F5, 1/250秒, ISO400

曇天下の撮影を残念がる人の方が多いと思いますが、明暗差が少なくしっとりと仕上がるので、私は大好きな光の条件のひとつです。ただ、グレーの空を見た目の露出にすると写真が地味になってしまうので、プラス2EV以上の補正をして明るめに仕上げるのがポイント。マクロレンズはクローズアップ専用レンズというイメージが強いかもしれませんが、私は単焦点レンズにクローズアップ機能が追加されたレンズだと考えています。比較的小さなサイズが多い花の撮影では、背景がぼけ過ぎない90mmや100mmという焦点距離は使いやすく、万能だと思います。

Eマウントレンズ
(フルサイズ対応)

FE 90mm F2.8
Macro G OSS

SEL90M28G
レンズ

Aマウントレンズ
(フルサイズ対応)

100mm F2.8 Macro

SAL100M28
レンズ

広角ズームレンズ背景まで広く取り込み、
花が咲く情景を切りとる

α7R III,  Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS, 20mm, F4, 1/500秒, ISO800

広角レンズは焦点距離が短いので大きくぼかすことは苦手ですが、背景をたくさん取り込むことは、どのレンズよりも優れています。周囲の状況を取り込んで、花の咲いている環境や雰囲気を取り込むには最適なレンズです。実際の撮影では、被写体に近づいたり離れたりしながら、被写体の大きさやアングルを変えて背景の写り具合を変えることがポイントです。

α7R III, Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS, 16mm, F16, 1/125秒, ISO200

広角レンズのもうひとつの特徴は、遠近感の強調です。遠近感というと前後の距離感だけをイメージしがちですが、上下の高低差にも当てはまります。背丈50cmほどの花でも、地面スレスレから広角レンズで見上げるようにレンズを向けると、根元が大きく、先端が小さく写るので、見た目よりも背の高い迫力を出すことができます。このとき、茎が右に左にとクロスしているところですと、ゴチャゴチャした感じに仕上がってしまうので、できるだけ茎が同じ方向に揃って伸びている被写体を狙うとキレイに見えます。

Eマウントレンズ
(フルサイズ対応)

Vario-Tessar T*
FE 16-35mm F4
ZA OSS

SEL1635Z
レンズ

Eマウントレンズ
(フルサイズ対応)

FE 16-35mm F2.8 GM

SEL1635GM
レンズ

Aマウントレンズ
(フルサイズ対応)

Vario-Sonnar T*
16-35mm F2.8
ZA SSM II

SAL1635Z2
レンズ

望遠ズームレンズ前後のぼけで、
花の美しさを際立たせる

α7R III,  FE 70-200mm F4 G OSS, 200mm, F4, 1/125秒, ISO400

望遠レンズは前後のぼけ味をより大きく表現したいときに使いたいレンズ。70-200mm F4は軽量コンパクトで、αボディとのバランスがすごく良く、花撮影にオススメのレンズのひとつです。この写真は、渓流の両側に数百メートルに渡ってシュウカイドウが群生している場所で撮ったもの。距離感を演出したかったので、渓流の流れに沿うようにレンズを向けました。また、たくさんのシュウカイドウにピントを合わせたかったので、一番遠くにピントを合わせ、手前のボリューム感は前ぼけでカバーしています。

α7R III,  FE 70-200mm F4 G OSS, 200mm, F4, 1/1000秒, ISO320

リンドウはたくさんの花を付けるので、やや小さめにフレーミングしてたくさんの花をひとつの花として見せるようにするのがコツです。200mmの焦点距離があれば、小さくフレーミングしても背景を大きくぼかすことができ、被写体を浮かび上がらせることが可能です。ただ、小さくフレーミングすると色味も少なくなるので、手前に咲いているリンドウを前ぼけにして画面の中に彩りを加えました。

Eマウントレンズ
(フルサイズ対応)

FE 70-200mm
F4 G OSS

SEL70200G
レンズ

Eマウントレンズ
(フルサイズ対応)

FE 70-200mm
F2.8 GM OSS

SEL70200GM
レンズ

Aマウントレンズ
(フルサイズ対応)

70-200mm
F2.8 G SSM II

SAL70200G2
レンズ