動画で広がる自然風景の世界動画で広がる自然風景の世界

自然風景を中心に創作活動を続ける写真家の福田健太郎氏に、
自然を動画で撮影するおもしろさについてご紹介いただきます。
今回は、動画初心者の方も挑戦しやすい作品を新たにご用意いただきました。
その撮影術も合わせてご紹介します。

自然のかすかな変化を
捉えるおもしろさ

動画の魅力は、移ろいゆく自然の姿を伝えられることです。水や風の揺らめきで季節の移ろいが表現できますし、沈みゆく太陽や、雲間から射す光芒の動きで、時間や天候の移ろいも表現できます。動画には、自然のかすかな変化を捉えていくおもしろさがあり、心の機微まで届けやすくなるのではないかと思います。
動画で撮影しようという意識を持つと、自然のちょっとした変化にも気付けるようになり、より豊かに自然や風景と向き合うことにつながると考えます。

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私は日々、一期一会の自然との出会いを楽しみながら、写真と動画を撮影しています。そうして撮りためた動画の中から、光と風をテーマにセレクトして1本の作品にまとめたのが「春秋〜光と風」です。
動画にはさまざまな撮影方法がありますが、この作品では、風景写真のセオリーを生かしています。カメラは三脚を使って固定しているので、安定感のある見やすい画像になります。この撮影方法なら、写真を撮り慣れている動画初心者の方にも挑戦しやすいのではないかと思います。
動画の撮影テクニックを盛り込まなくても、フレーミングを決めブラさずに撮るだけで、自然の美しさが伝わる作品に仕上げることができました。眩い光や爽やかな風を感じ取っていただけたら、うれしいです。

作品解説と
撮影テクニック

「春秋〜光と風」の中からピックアップした各シーンの解説と、
撮影テクニックについて、福田氏にお聞きしました。

風の気配を感じながら待つ

00:26〜00:30 α7S III,FE 16-35mm F2.8 GM

広角レンズは広い範囲を写せる反面、被写体が小さく写るため、動きがわかりにくくなりがちです。広角レンズでは、被写体にグッと近寄ることも考えて、風や水の流れなど動きのある被写体を撮影するとレンズの特性が引き出せます。
写真の場合は、風が止むのを待って撮影しますが、動画では逆。風が吹いているときを狙います。写真撮影中に風が止むのを待つ間、動画を撮っておくのも1つの方法だと思います。
このシーンは、FE 16-35mm F2.8 GMで撮影しています。G Masterのクリアな描写で、新緑に包まれた春のすがすがしい空気まで表現できたと思います。

高解像と鮮鋭感を追求した
大口径広角ズームレンズ
FE 16-35mm F2.8 GM
SEL1635GM

数秒先の未来を想像する

00:31〜00:37 α7S III,Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA

動画では、数秒先を予想しながら撮影していきます。昆虫や鳥などの生き物の撮影では、予想通りの動きを見せてくれたときは、もちろんうれしいのですが、予想に反してもっといい動きをしてくれたときも、うれしいものです。
これは、花や葉の付き方が左右対称な1本を選び、「蜂が来てくれたらいいな」という願いを込めながら長回しで撮影したシーンです。蜂が飛び去ったあとも、しばらく撮影しておくと、編集でつなぎやすいと思います。
ぼけを生かして主題を引き立てたかったので、絞りは開放で撮影しました。滑らかな動きとなる動画を考えると、シャッタースピードはおのずと決まります。晴天下で絞り開放を選択すると明るくなりすぎてしまうため、減光効果のあるNDフィルターを装着しています。

高コントラストと高解像を実現した
単焦点標準レンズ
Sonnar T*
FE 55mm F1.8 ZA
SEL55F18Z

レンズ交換で主題を変える

00:59〜01:08 α7S III,FE 70-200mm F2.8 GM OSS
00:53〜00:58 α7S III,FE 14mm F1.8 GM

写真を撮りながら動画を撮影するときは、写真でも動画でも同じレンズを使うことが多いです。ただし、動画はアップで撮ったほうがおもしろそうだと感じたときや、動画の画角(16:9)だと横幅の広がり感がもっとほしいと感じたときなど、レンズを交換することがあります。

レンズ交換をすることで、同じ場所でも主題を変えることが可能になります。この2つのカットも、レンズを変えて撮影しています。はじめは広角のFE 14mm F1.8 GMで、海へと注ぐ水の流れを主題に撮影していました。しかし、日が落ちて水の流れに日が当たらなくなったので、FE 70-200mm F2.8 GM OSSに交換し、主題を夕日に変えて撮影しました。

00:53〜00:58 α7S III,FE 14mm F1.8 GM
優れた描写性能とAF性能を備えた
大口径望遠ズームレンズ
FE 70-200mm F2.8 GM OSS
SEL70200GM
画面周辺部まで緻密に描写する
大口径超広角単焦点レンズ
FE 14mm F1.8 GM
SEL14F18GM

きらめく光で季節をつなぐ

01:11〜01:14 α7S III,FE 70-200mm F2.8 GM OSS

これは、春から秋へと切り換わる間に挿入したカットです。「夢の中から覚めたら、突然秋になっていた」というストーリーも演出できたのではないかと思います。
このカットは、実は下のカットと同じ場所で撮ったものです。キラキラと輝いている水面を、ピントを外して撮影しています。ぼけ具合が微妙に変わるように、MFでピントリングを回しながら、ぼけ具合を調整しています。

こういった表現は写真だったら失敗ですが、動画ではアクセントのカットとして使えます。遊び心が生かせるのも動画の魅力ですので、アイデアがどんどん湧いてきたら迷わず撮りましょう。動画のセオリーに凝り固まらず、自分の発想力を生かしていくと、撮影がもっとおもしろくなると思います。

01:29〜01:32 α7S III,FE 70-200mm F2.8 GM OSS

望遠で秋の麗しさを切り取る

01:15〜01:18 α7S III,FE 70-200mm F2.8 GM OSS

自然風景では、美しいのは一部分だけということも多いものです。そんなときは、写真を撮るときと同じように、望遠レンズの引き寄せ効果で、風景の中の見せたい部分だけを抽出します。また、動きの少ないシーンも、部分的にアップで捉えることで、動きを大きく表現できます。紅葉などの撮影には、望遠レンズがおすすめです。
写真のようにフレーミングを固定して撮影した動画は、1シーンが長いと、単調に感じやすくなります。編集では、短めにテンポよく見せるとよいでしょう。

背景をぼかして美しさを際立てる

01:19〜01:23 α7S III,FE 70-200mm F2.8 GM OSS

このカットも、FE 70-200mm F2.8 GM OSSで撮影しました。G Masterは解像性能に優れているので、ススキの穂を細やかに描き出すことができ、綿毛のやわらかさまで表現できます。とろけるようなぼけ味で、背景を美しくぼかし、主題のススキを際立たせることもできました。また、G Masterは画面周辺部までしっかり解像してくれるので、テレビなどの大画面に映し出したときも、自然で見やすい動画を撮影することができます。

水面を漂う、紅葉の儚さ

01:40〜01:45 α7S III,FE 24-70mm F2.8 GM

モミジの葉が水面を漂うシーンも、ゆらゆらと動いているからこそ、儚さが伝わりやすくなると思います。たった数秒で情景をしっかり伝えられるのは、動画ならではです。漂っている葉の枚数も少なめで、写真だと画になりにくいシーンですが、動きのある動画なら作品として成立させることができます。
動画では、高倍率のズームレンズ1本で、すべてのシーンに対応するという撮影方法もあります。しかし、1カット1カットをより美しく撮りたい場合は、写真と同じようにシーンに合わせてレンズを選んだほうがいいと思います。このシーンは、黒い水面を漂う姿が儚さを感じさせたので、あえてアップにはせず、標準ズームレンズを使用して撮影しました。

ズーム全域F2.8の大口径標準ズームレンズ
FE 24-70mm F2.8 GM
SEL2470GM

スローモーションで
自然の躍動感を捉える

00:38〜00:41 α7S III,FE 70-200mm F2.8 GM OSS

現実よりも時間の流れを遅らせることで、被写体が動くスピードを遅くし、目に見えない世界を見せることができるのも、動画のおもしろさです。
このシーンはスローモーションで撮影しています。肉眼では見えない、水しぶきの様子を捉えることができました。レンズはFE 70-200mm F2.8 GM OSSを使用。G Masterの優れた解像性能が、水しぶきの一粒一粒まで描き出してくれました。昆虫や鳥などの生き物をスローモーションで捉えるのも、おもしろいと思います。

クイックモーションで
かすかな動きを強調する

01:46〜01:50 α7S III,FE 70-200mm F2.8 GM OSS

クイックモーションは時間の流れを速くする動画の表現手法ですが、ゆっくりとした被写体の動きを活発に見せるという効果もあります。このシーンは一見静止画のように見えますが、クイックモーションで撮ることで、右下の雲の動きがはっきりとわかるようになり、動画らしさを演出することができました。
どっしりとした揺るぎない富士山の姿に、儚く消えていく小さな雲を合わせることで、自然では細やかな変化が日々起こっていることを表現しました。

被写体との距離で音の録り方を変える

01:51〜02:12 α7S III,FE 70-200mm F2.8 GM OSS

「春秋〜光と風」では作品全体にメリハリ感が出るように、鳥の声が特徴的なカットを、作品の始めと終わりに取り入れています。撮影している場所で音が拾えるようなら、カメラから電源が供給できる外付けマイクが便利です。望遠レンズで撮影している場合など、撮影場所と音源が離れていて音が拾えないときは、レコーダーで音を別撮りします。このカットは、外付けマイクで音声を収録しました。ショットガンマイクロホンECM-B1Mはコンパクトで、美しい音で録音でき、指向性も3通りから選べるのでおすすめです。撮影場所のすぐ後ろは道路という状況だったので、前方の音だけを拾う指向性を選択して録っています。飛んでいる鳥の声もきれいに拾ってくれました。
音声を収録するときは、雑音などが入っていないか、現場で確認するとよいでしょう。私はイヤホンでモニタリングしながら収録するようにしています。

指向性が変えられる、高音質な外付けマイク
ショットガンマイクロホン
ECM-B1M
小型・軽量で高音質。本格的な録音が可能
リニアPCMレコーダー
PCM-A10

カメラの設定と
撮影機能

福田氏の動画撮影時のカメラの設定と、
よく使う動画撮影機能について、教えていただきました。

POINT福田氏の動画撮影時の設定

フレームレート 4K 30p、4K 24p
シャッタースピード 1/30〜1/60秒
※水の流れを撮影する場合は1/20秒や1/100秒などにも設定
絞りとISO感度 撮影イメージに合わせてその都度変更
フォーカスモード フレーミング時:AF-C
撮影中:MF
フレームレート
すばやく動く被写体が少ない自然風景では、なめらかな動きが必要とされるシーンが少ないので、フレームレートは30pや24pが適していると思います。私は4K 30pを基本にして動画を撮影しています。シネマティックな表現にしたいときには、24pを選択することもあります。
シャッタースピード
シャッタースピードは30pに合わせて、1/30秒から1/60秒を選択しています。ただし、水の動きについては別で、ブレ効果を狙いたいときは1/20秒、激しい流れを捉えたいときは1/100秒などと、通常よりも選択の幅を広げています。
絞りとISO感度
自然風景ではパンフォーカスにすることもあれば、ぼけ味を生かしたいときもあるので、絞りもISO感度も流動的になります。そのときどきの光の状況や、シャッタースピードに合わせて決定しています。α7S IIIは高感度性能に優れているので、ISO感度を上げてもきれいに撮影できるのですが、わずかなざらつきも抑えたいので、ISO感度は低めに設定することが多いです。αは撮影前にファインダーや液晶モニターで明るさが確認できるので、直感的に露出を決められるのがいいですね。
フォーカスモード
今回の作品のようにフレーミングを固定した撮影では、フォーカス位置も動かさないほうが、安定感のある見やすい動画になると思います。フレーミング時はAF-Cでピントを合わせますが、撮影時はピント位置が動いてしまうのを防ぐため、MFに切り換えています。レンズにAF/MF切り換えボタンが付いていれば、ワンタッチで切り換えられるので、とても便利です。

POINTピクチャープロファイル

ピクチャープロファイルは、プリセットのPP1とPP10を使うことが多いです。どちらもとても自然な色で、パソコンやテレビに映し出したときも違和感がなく、自然風景にマッチしていると感じています。撮影後にパソコンで調整するのではなく、撮影時に調整したいので、イメージ通りに仕上げられるピクチャープロファイルは、とても使いやすいですね。今回のように撮りためた動画を組み合わせて作品にする場合は、設定を固定しておいたほうが、編集でつないだときにシーンごとのバラバラ感が出にくく、まとめやすいと思います。

POINTスロー&クイックモーション

今、私が積極的に動画に取り入れたいと思っているのが、スロー&クイックモーションです。スローモーションは、被写体の動きがゆっくりになることで、肉眼では見えない世界を見せることができます。クイックモーションは、時間のスピードを速めて見せることができるので、太陽が昇ったり沈んだりする姿や、雲の動きなど、通常では数十分かかるようなシーンも数秒で表現できるのが魅力だと思います。

機材と
必須アイテム

「春秋〜光と風」の撮影に使用した機材を
福田氏にご紹介いただきました。

ボディ
今回の作品は、α7S IIIとα7R IVで撮影で撮影しています。メインで使用しているのが、α7S III。動画が撮影しやすいので、ついつい出番が多くなります。α7S IIIは4K 120pでの撮影が可能で、最大5倍のスローモーションが4K画質で気軽に撮れるのが魅力です。また、α7S IIIのファインダーは約944万ドットと高精細なので、緻密なピントの確認が楽に行えます。高感度性能にも優れており、ダイナミックレンジが広いので、さまざまなシーンで美しい映像が撮影できます。動画はもちろん、写真もきれいに撮影できるので、写真と動画どちらも楽しみたい方には、α7S IIIを私はおすすめします。
レンズ
レンズは主に、FE 16-35mm F2.8 GM、FE 24-70mm F2.8 GM、FE 70-200mm F2.8 GM OSSの3本を使用しています。
動画撮影ではシャッタースピードが固定になりますが、ぼけを生かした表現など、レンズの開放側で撮影すると、現場の状況次第では明るくなりすぎることがあります。そこで、市販の可変式NDフィルターを使って取り込む光を調節しています。
アクセサリー
音声の収録には、ショットガンマイクロホンECM-B1Mを使用しています。被写体との距離が離れていて、外付けマイクで音が拾えない場合は、リニアPCMレコーダーPCM-A10を使って音声を別録りします。
今回の作品のように、フレーミングを固定して撮影するときは、三脚は必須です。
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α7S III
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