動画でしか表現できない
春を見つける

写真家 清家 道子

写真家清家 道子

PROFILE 〉

昨年も風景ショートムービーをご紹介しましたが、この1年でさらに動画を撮る頻度が増えました。それは、ただ風が吹いているだけ、雪が降っているだけといったありふれたシーンでも、動画で撮ると作品として成立しやすいからです。
ショートムービーを作るときは、動画でしか表現できない動きのある被写体を探すようにしています。はらはらと舞い散る桜の花びらをはじめ、春は動画で撮りたくなる風景がたくさん。ぜひ、あなただけの春を探しにαと出かけてみませんか。

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α7R IV,α7C,FE 16-35mm F2.8 GM,FE 70-200mm F2.8 GM OSS,FE 100mm F2.8 STF GM OSS

九州には、森の中にひっそりと咲いている桜がたくさんあります。観光地の豪華絢爛な桜もいいけど、静けさに包まれた桜もいいなあと、あらためて思いました。九州にまだまだ残っているそんな風景をお見せしたくて、ショートムービー「春の森、九州の桜」を作りました。

ほぼすべてのカットを、地元の大分で撮影しました。撮影期間は3〜4日。何カ月もかけて撮ったものを編集することもありますが、できるだけ短い期間で撮ったほうがショートムービーとしてまとめやすいし、カットによって季節が変わる違和感も出ないと思います。

実はこのとき、写真をメインに撮るつもりだったのですが、現場に行ってみたら、鳥のさえずりや水の流れる音がとても心地よくて、結局動画のほうをたくさん撮っていました。その場に行ってみて臨機応変に考えることの大切さを、つくづく感じました。

作品解説と
撮影テクニック

「春の森、九州の桜」の中からピックアップした各シーンの解説と撮影テクニックについて、
清家道子さんにご紹介いただきました。

春の舞台は
桜が主人公

0:55〜1:03

α7R IV,FE 16-35mm F2.8 GM

ひっそりとした山奥で、はらはらと散りゆく桜。動画でしか表現できない美しさと儚さを、たくさんの人に見ていただきたいと思いながら撮影しました。オートフォーカスだと、散っている花びらのあちこちにピントが動いてしまうので、マニュアルフォーカスで手前の枝にピント位置を固定しています。あとは桜が散るのを待って、散り出したところで動画ボタンを押しました。

1:23〜1:36

α7R IV,FE 16-35mm F2.8 GM

春がテーマのショートムービーは桜がメインになりがちですが、それだと見ている人が飽きてしまうので、春の空の透き通った爽やかさを加えました。実はクイックモーションで撮影しようと思ったのですが、4K画質で残したかったので、通常モードで少し長めに撮り、編集で4倍速にしています。三脚の雲台を真上に向けながら、約10分間撮影しました。

1:54〜2:10

α7R IV,FE 70-200mm F2.8 GM OSS

ここは、山の上にある小さな分校跡。雨上がりで水たまりに桜が映っていました。この日は動画は撮っていなかったのですが、校庭の白い砂が雪のように見えてとても美しかったので、あえてこの写真を作品に入れました。動画だけでなく写真も組み合わせながら構成すると、ショートムービーがさらに楽しくなると思います。

2:11〜2:21

α7R IV,FE 70-200mm F2.8 GM OSS

春の終わり頃、標高の高いところでやっと見つけた枝垂桜です。かわいらしいピンクと背景の萌黄色を望遠レンズで融合させながら、春の優しい風をイメージして撮りました。αは、桜と背景の色がどんなふうに見えるかをファインダーで確認できるのがいいですね。ここでは三脚が使えなかったのですが、立ち位置を工夫してスローモーションで撮ると、少々のブレは気にならなくなります。カメラをパンするときは、脚を開いて上半身を回転させるのがコツです。

花々が春の
物語を彩る

0:38〜0:54

α7R IV,FE 100mm F2.8 STF GM OSS

このシーンは落花した山椿で春の訪れを表現しつつ、水面のきらめきを美しく見せることを意識しながら撮りました。長靴を履いて膝下まで水に浸かり、水面ギリギリまで近づいています。この場所も三脚が立てられなかったので、スローモーションで撮影しています。ピントを山椿に合わせてからマニュアルに切り換え、少しずつ右方向にアングルを移動し、最後は水面だけになるように、体を回転させながら撮影しています。

1:15〜1:22

α7R IV,FE 16-35mm F2.8 GM

この場所は、山茶花と桜の花びらが敷き詰められていて、とても春らしくきれいでしたね。こういう状況で撮影しているということが伝わるように、自分の足元を入れました。足元から前方へ視線を上げるカメラワークは気分が上がり、前向きな気持ちが表現できるのではないかと思います。ショートムービーを見ている人にも明るい気持ちになってほしいと思いながら撮影しました。

1:43〜1:53

α7R IV,FE 70-200mm F2.8 GM OSS

ここは夏によく訪れる滝です。春も終盤に差し掛かり、太陽の光に夏へと向かう季節の移り変わりを感じました。背景の滝つぼがキラキラと光っていたので、ファインダーでぼけ具合を確認しながら撮りました。水のきれいなブルーがはっきり出るように、PLフィルターを使用しています。ピントは手前の花に合わせていますが、花が細かくファインダーでピントを確認するのが難しかったので、まず写真を撮ってからどの花に合わせるかを決めています。

森の音色が
春を奏でる

0:01〜0:13

0:25〜0:37

鳥のさえずりや川のせせらぎなど、周囲の音を入れるのも大切なポイント。外付けのショットガンマイクロホンECM-B1Mを使用して、映像と同時に収録しています。車の音や話し声、服が擦れる音や自分の息が入ってしまうことが多かったのですが、このマイクは指向性を変えて前方の音だけを拾えるのがいいですね。音がきれいに録れるのも、このマイクが気に入っている理由のひとつ。良い音が録れたときは、別の動画と組み合わせたりして楽しんでいます。音を極めるのは難しいですが、ショートムービーがさらにリアルになると思うので、もっと勉強してチャレンジしていきたいですね。

ショートムービーを
作るためのアドバイス

構成

ショートムービーの構成を決めてから撮影することもありますが、撮りながらだんだんとできあがっていくことが多いです。撮影場所も決めないで、その日の気分や勘を頼りに。そのほうがインスピレーションが湧いてきて、いいショートムービーになる気がします。

クイックモーション/
スローモーション

クイックモーションは十分に撮ったつもりでも、「これだけしか撮れていなかった」ということがよくあるので、10分程度長めに撮っておくと良いと思います。逆にスローモーションは長過ぎると編集やシーンのセレクトが大変になるので、撮り過ぎないように注意しましょう。

テロップ

言葉を考えるのが好きだということもありますが、私にとってテロップは、自分のイメージを作り上げていくのに不可欠になっています。テロップを入れることで、自分の思いがより伝わりますし、個性も出しやすくなると思います。

BGM

ショートムービーは音が重要。環境音と同様にBGMにもこだわっています。せっかく良い動画が撮れても、BGMが合っていないと台無しになってしまいます。私は音楽ライセンスサービスで毎週届くおすすめの音楽をチェックして、気に入ったBGMを選んでいます。ショートムービーができ上がってからBGMを探すのは大変なので、自分の作風に合う音楽をあらかじめストックしておくと良いと思います。

カメラの設定と
撮影機能

清家道子さんの動画撮影時のカメラの設定と、
よく使う撮影機能について教えていただきました。

清家道子さんの動画撮影設定
フレームレートと
シャッタースピード
4K 30p:1/60秒 スローモーション:1/125秒
クイックモーション:1/2秒
絞り 広角レンズ:F16〜F18
望遠レンズ:絞り開放、NDフィルター使用
ISO感度 その都度マニュアルで設定
フォーカスモード マニュアル
ホワイトバランス 太陽光(場合によってAUTOも使用)

カメラの設定

フレームレートとシャッタースピード
動画を撮り始めたばかりの頃は「シャッタースピードはフレームレートの2倍の分母分の1」が適していることがわからず、よく失敗していましたが、最近は考えなくても設定できるようになりました。そんなに難しいことではないので、自分がよく使う撮影モードのフレームレートに合ったシャッタースピードを覚えておくといいと思います。
絞り
広角レンズで撮るときは、F16やF18まで絞り込んでいます。望遠レンズでぼけを生かした表現を楽しみたいときは、絞りを開放にしますが、明るすぎてシャッタースピードを遅くできなくなるので、NDフィルターで光の量を調節しています。
ISO感度
動画の場合は、絞りを意識してISO感度を決めます。フレームレートによってシャッタースピードが固定されるので、ISO感度はその都度マニュアルで設定しています。
フォーカスモード
風景ショートムービーを撮影するときは、ピント位置があちこち動いてしまうのを避けるため、マニュアルフォーカスに設定しています。
ホワイトバランス
ホワイトバランスは、ほぼ太陽光です。撮影してみてAUTOに設定することもあります。

撮影機能

私は編集時の画質調整は、ほとんど行いません。よりイメージに合った画づくりをしたいときは、カメラ内で色合いや明るさ、コントラストなどをコントロールできる「クリエイティブスタイル」を活用して、撮影時に調整しています。通常は風景モードかニュートラルを使いますが、ポートレートは硬さがなく、優しい雰囲気に仕上がるので、風景ショートムービーでもどんどん使っていきたいなと思っています。

機材と
必須アイテム

αcafeに投稿されたαオーナー様の春の動画作品を、清家道子さんに講評していただきました。

カメラ

α7R IVとα7Cを使用しています。

レンズ

動画の撮影では、FE 16-35mm F2.8 GM、FE 70-200mm F2.8 GM OSS、FE 100mm F2.8 STF GM OSSを使用することが多いです。特に風景動画では、FE 16-35mm F2.8 GMをよく使います。この作品の撮影には使用していませんが、新しい望遠レンズFE 70-200mm F2.8 GM OSS IIが最近のお気に入り。明るいし色がきれいなので驚きました。70-200mmのレンズとしてはかなり軽く操作も楽なので、これから風景ショートムービー撮影に活用したいと思っています。

アクセサリー

外付けのショットガンマイクロホンECM-B1Mを愛用しています。このマイクは音がとても良いので、音にこだわる私にとって無くてはならない存在です。
また、撮影時に明るさや色合いを調節したり、シャッタースピードを遅くしたりするためにグラデーションフィルター、NDフィルター、PLフィルターなどを携帯しています。

使用したレンズとアクセサリー

αオーナー様の
作品紹介

αcafeに投稿されたαオーナー様の春の動画作品を、清家道子さんに講評していただきました。

すごく上手に撮影されていますね。三脚を使っているのでしょうか、ブレがなくとても見やすかったです。カットとカットの間にトランジションを入れると、もっと見やすくなると思いました。また、桜の優しい感じが本当によく表現できています。桜のゆったりとした雰囲気に合わせて、BGMもスローテンポなものを選ぶと、さらに素敵な作品になると思います。

αユーザーの作品ギャラリー&
コミュニティサイト

αcafe

素敵なショートムービーができたら、
ぜひαcafeに投稿してください。

αオーナーの
みなさまへ

清家 道子

αは写真だけでなく、動画もきれいに撮影できますので、ぜひショートムービー作りにもチャレンジしていただきたいです。今は苦手だと思っていても、良いシーンに出会ったら動画も撮っておけば、あとで作品として残すことができるのでおすすめです。
最近は旅行や遠出がしにくくなり、被写体を見つけるのに苦労している方もいると思います。私も近所で撮影することが多くなりましたが、むしろ行き慣れている近所のほうが自分らしさを見つけられると思っています。特に動画の場合は、何気ないシーンでも動きのおもしろさを表現できます。何時間もかけて撮影に出かけるのもいいですが、これからは身近な場所でも自分だけの絶景を見つけてほしいと思います。

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