写真家 高橋良典

写真家 高橋良典

1970年、奈良県生まれ。2000年よりフリーの写真家として独立、写真事務所「フォト春日」を設立。カレンダー・ポスター等へ作品を提供。また、写真雑誌や出版物への写真提供及び原稿執筆を行う。自分が生まれ育った奈良県の撮影と並行して自然の織りなす旋律をテーマに撮影を続ける。2018年、2019年CP+ソニーブースにてセミナー登壇。
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・ソニーイメージングプロサポート会員・αアカデミー講師

春の華やかさと
儚さを切りとる

春は始まりの季節、華やかで心も晴れやかになる季節です。それとは反対に、花が咲いては散り、出会いと別れを繰り返す、儚い季節でもあります。私は、風景の中にある春の儚さを見つけながら、日々撮影しています。さまざまな角度からの視点を持つことで、被写体がどんどん見つかり、今までの風景写真にはない表現が生まれます。この春はぜひ、華やかさだけではなく、儚さにも目を向けて、春を表現してみてほしいと思います。

一期一会の
光との出会い

α7R III,  FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS,  274mm,  F5.6,  1/750秒,  ISO400

α7R III,  FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS,  274mm,  F5.6,  1/750秒,  ISO400

春は光が刻々と変化する季節。特に朝は、時間の経過とともに光の状態がどんどん変わっていきます。10分も経てば同じ写真は撮れなくなってしまうので、短い時間を有効に使って撮影するようにしています。前ぼけにした黄色いサンシュユの花を蛍に見立てて、儚さを表現しました。主役は、サンシュユの奥に佇む、一本の竹。メインになりそうな華やかなモチーフだけでなく、さまざまな角度から風景を見ることで、被写体のバリエーションを増やせます。

水面を駆ける
風のきらめき

α7R III,  FE 70-200mm F4 G OSS,  200mm,  F4,  1/750秒,  ISO400

α7R III,  FE 70-200mm F4 G OSS,  200mm,  F4,  1/750秒,  ISO400

春は、よく風が吹く季節です。強い風で湖面に立ったさざ波を丸ぼけにして、春のきらきらした感じを表現しました。望遠レンズを使うことで、背景のぼけを強調でき、圧縮効果で湖面を近くに感じさせることもできました。風景写真では、そのときの天候に合わせて撮り方を変えていくことが重要です。風は撮影の邪魔をすることもありますが、風を生かした撮影ができました。また、春らしさを体で感じることも大切。「風が気持ちいいな」と思いながら撮影することで、春の心地よさを表現できたと思います。

朝霧けむる
彼方の桜

α7R III,  FE 70-200mm F2.8 GM OSS,  84mm,  F11,  1秒,  ISO400

α7R III,  FE 70-200mm F2.8 GM OSS,  84mm,  F11,  1秒,  ISO400

朝と昼の寒暖差が大きい春は、水面に蒸気霧が発生しやすくなります。蒸気霧は、温かい水面の上に冷たい空気が流れ込んだときに発生するので、放射冷却により急激に気温が低下した夜の翌朝が、撮影のチャンスです。この作品では、相対する表現を合わせることで、お互いを引き立て合う相乗効果をねらいました。蒸気霧のやわらかい表現が、対岸にある桜の花や木の枝のシャープさを引き立てると同時に、対岸のシャープな表現が、蒸気霧のやわらかさを引き立てています。

色彩が奏でる
春のリズム

α7R III,  FE 70-200mm F4 G OSS,  200mm,  F4,  1/500秒,  ISO400

α7R III,  FE 70-200mm F4 G OSS,  200mm,  F4,  1/500秒,  ISO400

その時々の自分の気持ちに正直でいることが、撮りたいものを見つけるきっかけになる場合があります。気持ちが晴れやかなときは、晴れやかなものを撮りたくなるものです。この作品も、晴れやかな気持ちで撮影した一枚。くるくるしたススキがト音記号に見えたので、晴れやかな春にかわいらしさを添えました。背景は桃のピンク、サンシュユの黄色、木々の緑を配して、春らしさを演出。露出はハイキーにしても作品として成立すると思いますが、色をしっかり出したかったので+0.5にとどめています。

山で見つけた
季節の移ろい

α7R IV,  FE 24-105mm F4 G OSS,  24mm,  F11,  1/90秒,  ISO800

α7R IV,  FE 24-105mm F4 G OSS,  24mm,  F11,  1/90秒,  ISO800

山へ向かうと、平地では見られない春に出会うことができます。平地では桜が散ってから新緑が芽吹きますが、ここでは逆。桜はまだつぼみでしたが、真上にあった鮮やかな新緑と組み合わせて、季節の移り変わりを表現しました。花が咲いていないからと撮影を諦めるのではなく、周囲を見渡すことで新たな被写体が見つかることもあります。この作品を撮影したのは、太陽がまだ低く、山の斜面には光が回らない時間帯。やさしい表現にしたかったので、光が強くない早朝の時間をねらって撮影しています。

岩肌をいろどる
高嶺の花

α7R III,  Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA,  55mm(APS-Cモード82.5mm相当),  F1.8,  1/60秒,  ISO400

α7R III,  Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA,  55mm(APS-Cモード82.5mm相当),  F1.8,  1/60秒,  ISO400

ここは、奈良県の屏風岩公園。岩肌のかなり高い位置に咲いていた桜が、まさに“高嶺の花”だと感じて撮影しました。 左右から覆い被さるようにフレームインしている桜の枝を前ぼけにすることで、奥の桜には到底手が届かない感じを演出しています。55mmの画角で前ぼけを作るには、開放F値1.4から1.8の明るさがレンズに求められます。普通に撮影すると「きれいな風景写真」で終わってしまうシーンも、明るい単焦点レンズが一本あれば、自分の表現の限界値を上げることができます。明るい単焦点レンズをお持ちなら、撮影に出かけるとき、ぜひ持っていってほしいと思います。

使用したレンズはこちら

Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA

高コントラストと高解像を実現した
単焦点標準レンズ

Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA

SEL55F18Z

Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA
FE 24-105mm F4 G OSS

幅広い撮影領域で活躍する標準ズームレンズ

FE 24-105mm F4 G OSS

SEL24105G

FE 24-105mm F4 G OSS
FE 70-200mm F2.8 GM OSS

優れた描写性能とAF性能を備えた
大口径望遠ズームレンズ

FE 70-200mm F2.8 GM OSS

SEL70200GM

FE 70-200mm F2.8 GM OSS
FE 70-200mm F4 G OSS

高い描写力と軽量性を両立した望遠ズームレンズ

FE 70-200mm F4 G OSS

SEL70200G

FE 70-200mm F4 G OSS
FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

高速・高精度AFで被写体を鮮明に捉える
超望遠ズームレンズ

FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

SEL100400GM

FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

風景撮影に
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