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α professional style プロが語る撮影の流儀

α professional styleプロが語る撮影の流儀

写真家

並木 隆

愛用のボディ/レンズ α7R III & FE 16-35mm F2.8 GM

愛用のボディ/レンズ

α7R III & FE 90mm
F2.8 Macro G OSS

α7R III & FE 16-35mm F2.8 GM

プロの写真家たちは、撮る道具としてαをどのように使いこなしているのでしょうか。さまざまなジャンルの写真家たちに、自身のカメラ設定、お気に入りのレンズや撮影機材などのαの使いこなし術をお聞きしました。今回は、写真家の並木隆氏の撮影スタイルをご紹介します。

まだ見ぬ花の美しさを、追い求めて

これまで数えきれないほどの花の作品を撮ってきましたが、今でもシャッターを切るたびに、その魅力はますます深まっています。
コスモスやヒマワリといった身近な花でも、撮りかた次第で、これまでと違う印象を見せてくれます。
だからこそ、まだ誰も見たことのない花の美しさを追い求めて常に試行錯誤しながら撮影に取り組んでいます。
被写体に合わせた撮影のセオリーやカメラの機能に縛られることなく、自分が思い描いたイメージを追求することが、とても大切だと思います。

α7R III, FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm, F2.8, 1/500秒, +0.3, ISO400

α7R III, FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm, F2.8, 1/500秒, +0.3, ISO400

私の撮影スタイル

α7R III
α7R III

自分の心が動いた瞬間にだけ、
シャッターを切る

花の写真を撮る上でまず大切にしているのは、本当に自分が「美しい」と心が動かない限り、シャッターボタンを押さないことです。僕が表現したいのは、誰も撮っていない、その花の美しさ。だからこそ、現場で妥協は絶対にしません。僕の場合、あらかじめ撮りたい花のイメージというのがあるんです。撮影現場では、その自分のイメージを具現化できる最高のロケーションをひたすら探し出すことから始めます。もしイメージにあった場所がなければ、撮影をあきらめることもあります。また、このとき、カメラは置いていきます。ファインダーをのぞいてしまうとつい構図などが気になり、ひとつの場所に時間がかかりすぎて、現場全体が回れなくなってしまいます。そして、もうひとつ。日頃からさまざまな写真や芸術作品に触れ、それらから得たインスピレーションをもとに、作品のイメージを高めることを大切にしています。

実際の撮影でこだわっているのは、ぼけ描写です。撮影モードは「絞り優先」で、被写体となる花の前ぼけ・後ぼけの度合いを確認しながら、絞りや被写体との距離を細かく調整し、自分のイメージと重なるぼけ描写を追求しています。特にマクロの場合、開放で撮ると前ぼけが薄くなりすぎたり、前ぼけにしたい被写体に近づきすぎると向こう側が透けて見えたりするので細心の注意を払いながら撮影します。前ぼけが薄い場合は後ろに下がり、フレーミングを変えたくない場合は絞り込んでぼけ味を調整します。ただ被写体ブレの心配があるときは、マニュアルに切り替えて、シャッタースピードやISO感度を変えながら対応しています。

上面のダイヤル設定

実際の撮影でこだわっているのは、ぼけ描写です。撮影モードは「絞り優先」で、被写体となる花の前ぼけ・後ぼけの度合いを確認しながら、絞りや被写体との距離を細かく調整し、自分のイメージと重なるぼけ描写を追求しています。特にマクロの場合、開放で撮ると前ぼけが薄くなりすぎたり、前ぼけにしたい被写体に近づきすぎると向こう側が透けて見えたりするので細心の注意を払いながら撮影します。前ぼけが薄い場合は後ろに下がり、フレーミングを変えたくない場合は絞り込んでぼけ味を調整します。ただ被写体ブレの心配があるときは、マニュアルに切り替えて、シャッタースピードやISO感度を変えながら対応しています。

理想のピント位置に合うまで、
何度でも撮り直す

身体を前後にゆっくりと移動しながら、ピントを合わせる

身体を前後にゆっくりと移動しながら、ピントを合わせる

マクロ撮影では、ピントが合わないのが当たり前です。何しろマクロ等倍の絞り開放では被写界深度が1mmほどなので、カメラが0.5mmでも手前に来たら、すぐにピントがズレてしまいます。僕はMFに切り替え、ピントリングでレンズの最短まで回し、その状態で被写体に近づきながら、ピントが合ったところでシャッターを切っています。アマチュアの方がよく「ピントが合わない」と言うのですが、それは動きが早いんです。ポイントは、体感として0.1mmずつ、本当にゆっくりと前後に移動しながら、理想のピントの位置を探ること。しかし、それでも一回でピントが合うことはありません。何十回とシャッターを押すなかで、これだという会心の作品が生まれるのです。

ピーキングで、画づくりに集中する

一般的にマクロ撮影では、ピント合わせが難しいため、被写体をどんどん見やすい画面の中心に置いてしまうことが多くあります。そんな中、フレーミングに集中するために重宝しているのが、ピーキング機能です。この機能によって、ピント位置を色でしっかりと確認しながら、被写体の周りに余計なものが入っていないかなど、フレーミングに一段とこだわれるため、作品の完成度が上がったと感じています。また晴天時に、ローポジションやハイポジションで撮影するときによく使うのが、ヒストグラムです。例えば、太陽光の下で水面に咲く花を狙うときなどは、液晶画面がほとんど見えませんから、ヒストグラムで露出を確認しながら撮影しています。

つねに安定して撮るために、
ホールド感が重要

ベースプレートが装着されている並木氏のα7R III

ベースプレートが装着されている並木氏のα7R III

撮影現場では、自分のイメージに沿う花々が頭上に咲いていたり、地面すれすれにあったりする場合も多くあります。その場合はファインダーをのぞかず、液晶を自分の方に向け、カメラ本体をしっかりとホールドしながら、マルチセレクターでフォーカスエリアを動かしながら撮影しています。花の撮影では、このように被写体の位置によって無理な姿勢になることも多く、また長時間にわたって撮影することもあるため、カメラのホールド感が重要になってきます。そこで、カメラをしっかりと握れるように、ベースプレート(他社製)を装着しています。マクロ写真の成否は、粘って撮影することも大切ですので、ぜひ皆さんも快適に撮影できるよう工夫してみてください。

勝負の一本

G Lens

FE 90mm F2.8 Macro G OSS

FE 90mm F2.8 Macro G OSS

精緻な描写、ぼけ味、
さらに操作性も、すべて言うことなし

α7R III, FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm, F2.8, 1/500秒, +1.7, ISO400

α7R III, FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm, F2.8, 1/500秒, +1.7, ISO400

普段の撮影でよく使うのが、この中望遠マクロレンズのFE 90mm F2.8 Macro G OSSです。ピントが合った部分の精細な描写とぼけ具合の両立というGレンズの魅力をあますところなく発揮してくれます。例えば、この草花の作品の左右にあるぼけ描写ですが、これは手前の葉っぱの前ぼけと、後方の花の後ぼけが混じり合い、水彩画のような幻想的な雰囲気を表現できました。茎部分の二線ぼけもまったくないため、乱雑な印象になっていない点も見事です。

α7R III, FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm, F2.8, 1/125秒, +1.3, ISO500

α7R III, FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm, F2.8, 1/125秒, +1.3, ISO500

この写真は、極楽鳥花が持つ妖しげな魅力を表現しようとした作品です。この花の色気を最大限に引き出すために、マクロレンズの接写性能を利用して、クローズアップし、花の一部分を大胆に切り取ってみました。繊細でなめらかなグラデーションで質感を描写しながら、花びらの美しいラインを浮かび上がらせることで、今までにない極楽鳥花の写真に仕上がったと思います。可憐さだけでなく、花の色気を描き出したい、という僕の思いにも、このレンズは十二分に応えてくれました。

操作性も秀逸です。リングスライドスイッチを前後させて、AFとMFが切り替えられるので、レンズに手を添えたまま、効率的に撮影できます。さらに便利なのが、AFからMFに切り替えたときに、距離指標のリングと連動すること。例えば、撮影距離を変えず、MFで撮りたいときに、即時に同じ撮影距離にフォーカスが移動してくれます。

上面のダイヤル設定

操作性も秀逸です。リングスライドスイッチを前後させて、AFとMFが切り替えられるので、レンズに手を添えたまま、効率的に撮影できます。さらに便利なのが、AFからMFに切り替えたときに、距離指標のリングと連動すること。例えば、撮影距離を変えず、MFで撮りたいときに、即時に同じ撮影距離にフォーカスが移動してくれます。

α7R III, FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm, F2.8, 1/320秒, +0.3, ISO400

α7R III, FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm, F2.8, 1/320秒, +0.3, ISO400

マクロレンズは、マクロ撮影だけと思いがちですが、90mmという画角は風景も切り取れるし、ぼけが綺麗なのでポートレートにも向いています。絞れば、背景を見せられるだけの被写界深度が得られますし、被写体に近づけば大きくぼかすこともできるため、写真のイロハを学ぶにも最適なレンズだと思います。このレンズを初めて使う方は、マクロ撮影はもちろん、さまざまな撮影を楽しんでほしいと思います。

FE 90mm F2.8 Macro G OSS
G Lens

FE 90mm F2.8 Macro G OSS

SEL90M28G

FE 90mm F2.8 Macro G OSS
写真家 並木 隆
ワンポイントアドバイス

並木流、装備の心得

現場で自分のイメージに合ったシチュエーションを探し回るため、できる限り軽微な装備を心がけています。遠方での撮影には、マクロ、広角ズーム、望遠ズームを持っていきますが、近場では、ハンドストラップでカメラだけを持ち歩いて撮影しています 。また、レンズ交換の際には、ボンベ式のエアーダスターを使っています。ミラーレス機はレンズの後ろ玉とセンサーの距離が近く、ゴミが写りやすくなっているため、ボンベ式の強力噴射でセンサーとレンズのゴミをしっかりと落とします。ただ、ボンベ式のエアーダスターは、噴きはじめに気化していない液状のガスが噴射される場合があるので、注意が必要です。そして忘れてはならないのが、レンズキャップの清掃。いくらセンサーやレンズを綺麗にしても、レンズキャップにゴミが付いていると台無しなので、こちらにも念入りに噴射しています。α7の解像度を維持するためにも、入念な清掃が欠かせませんね。

愛用のバックパック「KATA」(現在はマンフロットに統合)
バックパックの中身
バックパックの中身

バンガード製のバッグパックを愛用。機材の取り出しやすさも気に入っています。

並木氏のカメラバッグの中身

アクセサリー

  • ハンドストラップ

  • メディアケース

  • ボンベ式のエアーブロワー

ぜひ皆さんも、
プロの使いこなし術を参考にして
自分流のαの使いかたを
見つけてください。

α7R III, FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm, F5, 1/200秒, +2.3, ISO800

α7R III, FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm, F5, 1/200秒, +2.3, ISO800

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