α professional style プロが語る撮影の流儀

α professional style プロフェッショナルが語る撮影の流儀

天体写真家

沼澤 茂美

愛用のボディ/レンズ α7R III & FE 24mm F1.4 GM

愛用のボディ/レンズ

α7R III &
FE 24mm F1.4 GM

α7R III & FE 24mm F1.4 GM

プロの写真家たちは、撮る道具としてαをどのように使いこなしているのでしょうか。さまざまなジャンルの写真家たちに、自身のカメラ設定、お気に入りのレンズや撮影機材などのαの使いこなし術をお聞きしました。今回は、天体写真家の沼澤茂美さんの撮影スタイルをご紹介します。

今そこにあるものと向き合う

一点の雲もない星空、地平線までびっしりと星が敷き詰められたような撮影地…。そんな理想の撮影条件で撮影することは皆無といっても良いでしょう。また、そのような条件が最良だとも言えません。状況は常に変化しています。自然界はピュアーな環境を排除する傾向があるのかもしれません。私たちは常に予測不能な事象に囲まれ、また、雑味やゆらぎにあふれた環境に住んでいることを忘れてはいけないでしょう。消えては発生する雲、整ったパターンを乱す1本の雑草、そして車の灯りや街灯など。緑色やオレンジ色のカブリとなって現れる大気光や、飛行機や人工衛星の光跡…。それらすべての環境を受け入れることが撮影に臨む第一歩であると信じています。

α7R III, FE 24mm F1.4 GM, 24mm, F1.4, 13秒, ISO1000

α7R III, FE 24mm F1.4 GM, 24mm, F1.4, 13秒, ISO1000

たとえばここに掲げる写真は、ある日、次の撮影場所への移動途中にふと車を止めて見上げた光景です。街灯に照らされた建物と流れる雲を通して輝くオリオンがなんとも印象深いシーンを作り上げていて、私は急いで三脚を取り出してシャッターを切りました。気持ちを駆り立てるシーンに出会えることは幸いです。また、逆に周到な準備をして出向いてもその期待が裏切られることも少なくありません。そんな条件の中でもその場所ならではの主題を見つけることは、写真家の真価に関わることのように思います。無い物を望まないということは、今そこにあるものをきわめて深く観察することであり、それは撮影に臨む上で最も重要なことだと言えるでしょう。

私の撮影スタイル

α7R III
α7R III (ILCE-7RM3)

過酷な環境下で
ストレスなく撮影するために

登録呼び出し1:Pモード(一般撮影)、登録呼び出し2:Mモード(星空撮影)、登録呼び出し3:動画モード、C1ボタン:ホワイトバランス、C2ボタン:手ブレ補正
C3ボタン:FINDER/MONITOR切換、AF-ONボタン:サイレント撮影、マルチセレクター中央:瞳AF、コントロールホイール下:フォーカスモード、C4ボタン:ブライトモニタリング

カスタマイズで最も重要なのは、ブライトモニタリング機能の設定です。この機能は、アクティブにするとモニター映像がブーストされ、明るく表示される機能です。F2.8程度の明るさのレンズでも天の川がほぼリアルタイムに確認できるので、日中の風景同様に正確なフレーミングが可能になります。ただ、この機能はデフォルト状態ではメニューに現れません。いずれかのボタンに設定してはじめて機能させることができるのです。私はこの機能を最も利用しやすいC4に設定しています。この他には三脚を使用した長時間露出で必ずOFFにする必要がある手ブレ補正や超望遠で月などを撮影する時に効果的なサイレント撮影機能などのボタン割り当てをしています。また、各種の撮影設定は、登録呼び出し1〜3に登録し目的に応じて使い分けています。

私の撮影現場は夜間であり、さらに冬期は手先がかじかんで動かなくなるほどの条件下で撮影することになります。このようなストレス下で撮影をスムーズに行う、つまり五感を対象に集中させるには道具の使用に関するストレスが発生しないようにすることが重要です。その点では、このαのカスタム設定をはじめとした使い勝手には大きく助けられているというのが実感です。

勝負の一本

G Master

FE 24mm F1.4 GM

FE 24mm F1.4 GM

さまざまな時間を
感情と共に凍結する

α7R III, FE 24mm F1.4 GM, 24mm, F1.4, 30秒, ISO2500

α7R III, FE 24mm F1.4 GM, 24mm, F1.4, 30秒, ISO2500

私が撮影する対象は光が何十年何千年もかけてやってくる遠方の星の光を対象としています。アインシュタインによれば光の速度で進むものは時間が停止しています。つまり私達が見ている星々の輝きは、何千年もかけて旅をしてきた光が発したときの状態を伝えています。光の本質は「凍結した時間」とも言えるわけです。

α7R III, FE 24mm F1.4 GM, 24mm, F1.4, 30秒, ISO2500

α7R III, FE 24mm F1.4 GM, 24mm, F1.4, 30秒, ISO2500

左上部を拡大。点光源の像のにじみを抑制

右上部を拡大。画面周辺の色収差の補正も良好

私達が見上げる星空の風景は星から来るさまざまな過去の時間と、私達が生活する現在の時間が同居する不思議な空間ということができます。そんな中に身を置くことは実にさまざまな感情を喚起してくれます。星空風景の魅力は、まさにその感情を味わい、それを表現することにあると感じています。FE 24mm F1.4 GMの出現は、私にとってとても大きな出来事でした。目で見た光景を忠実に再現してくれるのはもちろんですが、暗さに埋もれていた星空の異なる表情を、いとも簡単に見せてくれたのです。それは開放F値1.4の明るさと、開放でも周辺部まで色収差を良好に補正した画質、それらの恩恵と言えるでしょう。

α7R III, FE 24mm F1.4 GM, 24mm, F1.4, 30秒, ISO4000

α7R III, FE 24mm F1.4 GM, 24mm, F1.4, 30秒, ISO4000

これらの写真は、空に輝く天の川と共に水面に映る星空を写し撮っています。実は水面に映る星空は、空の星に比べてシャッター速度にして2段〜4段ほど暗いため、明瞭に写すのは難しい対象です。しかも、水面が揺れているとなかなか星は写ってくれませんし、星空は常に動いています。星空は赤道儀を使うことで星を追尾できるため長時間露出でも星を点像に写すことが可能、つまり光を1点に蓄積して暗い星まで再現することが可能ですが、水面の星はそれとは異なる動きをするために、長時間露出で光を蓄積することが困難なのです。FE 24mm F1.4 GMを使い、感度設定を通常よりも高めに設定して撮影することで、水面の星を明瞭に写し出すことが可能です。その結果、星空はややオーバー露出気味に写るのですが、そこはα7R IIIの優れた階調特性が生かされるところです。RAWデータを丁重に処理することにより、私が撮影時に感動したシーンをより明瞭に再現してくれます。そこには天上の星空と地上の星空、さまざまな時間が混在した世界が私の感情と共に見事に凍結されています。

天体写真家 沼澤 茂美

ワンポイントアドバイス

沼澤流、装備の心得

車での移動が多いので、カメラ、レンズ、小型赤道儀などをおさめた複数のカメラバッグを常備しています。多様な撮影に備えるために機材の種類は多いです。三脚は多層カーボンのものを大小7台ほど積んでいて状況に合わせて使い分けます。カメラは、2台のα7R IIIをメインとしてα7R II、α7S、α7S II、α9を携帯し、レンズは、通常の撮影では超広角から標準までの明るいレンズを使用、他に600mm F2.0といった望遠鏡を主体とした光学系を積んでおくことが多いです。望遠レンズや望遠鏡用には大型の赤道儀が必要ですので、それらの装備は常に車載されています。他には各種バッテリー、レンズ用ヒーター、GPSロガー、異なる種類のダウンジャケット、長靴などが必需品です。ソフトフィルターや特殊な干渉フィルターなどのフィルター類もさまざまな状況を考慮するとかなりの量になり、専用のバックにおさめて携帯しています。もちろんメンテナンス用の工具や不慮のアクシデントのためのロープ、スコップ、ジャンプスターターなども必需品といえます。

キャリーケースになるカメラバッグ

星空撮影に必要な機材を複数のカメラバッグにおさめ、車内に常備しています。

車を使用しない遠征などではシステムを最小限に抑える必要がある場合があります。そのようなときは、α7R IIIを2台、超広角から広角の明るいレンズを2〜3本(FE 16-35mm F2.8 GM、FE 24mm F1.4 GMなど)、スナップ用のコンパクトな標準レンズ(Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS)、そして小型赤道儀、カーボン三脚2本、GPSロガーといった装備が最小システムになります。

沼澤氏のカメラバッグの中身(車を使用しない遠征時)

  • その他
  • 小型赤道儀
    カーボン三脚(2本)
    GPSロガー

ぜひ皆さんも、
プロの使いこなし術を参考にして
自分流のαの使いかたを
見つけてください。

α7R III, FE 24mm F1.4 GM, 24mm, F1.4, 30秒, ISO1600

α7R III, FE 24mm F1.4 GM, 24mm, F1.4, 30秒, ISO1600