α professional style プロが語る撮影の流儀

α professional styleプロフェッショナルが語る撮影の流儀

写真家

山田 芳文

愛用のボディ/レンズ α7R III & FE 24-70mm F2.8 GM

愛用のボディ/レンズ

α7R III &
FE 24-70mm F2.8 GM

カメラの写真

プロの写真家たちは、撮る道具としてαをどのように使いこなしているのでしょうか。さまざまなジャンルの写真家たちに、自身のカメラ設定、お気に入りのレンズや撮影機材などのαの使いこなし術をお聞きしました。今回は、写真家の山田 芳文氏の撮影スタイルをご紹介します。

いい写真を撮るためには、
偶然を、必然に変えること。

僕が写真を撮るときに大切にしているのは、まず相手をよく知ること。はじめは双眼鏡だけを持って野鳥の動きを観察し、止まる場所や行動などが読めるようになってから、はじめてカメラを持って撮影するようにしています。たまたま野鳥に出会って偶然撮れることもありますが、数時間でいい写真が撮れることはほぼありません。鳥の種類によっては、何年かけても撮れない場合もあります。そのためには撮りたい野鳥の行動パターンを知り、どんな写真を撮りたいかをイメージしておくこと。僕はそれを「必然撮り」と呼んでいますが、鳥との偶然の出会いを、いかに必然に変えていくかが僕の撮りかたです。

α9, FE 100-400mm F4,5-5.6 GM OSS, 104mm, F5.6, 1/40秒, ISO400

α9, FE 100-400mm F4,5-5.6 GM OSS, 104mm, F5.6, 1/40秒, ISO400

私の撮影スタイル

α7R III
α7R III

野鳥の動きや種類から、最適なフォーカスを選ぶ

C1ボタン:フォーカスモード、C2ボタン:フォーカスエリア
カスタムキー 設定画面

僕は撮影での使用頻度が高い順にボタンをカスタマイズしていますが、C1ボタンには一番頻繁に使うフォーカスモードを設定しています。フォーカスモードは、止まっている鳥を撮るときには「シングルAF(AF-S)」、動いている鳥を撮るときは「コンティニュアスAF(AF-C)」に設定しています。リモート撮影で置きピンにすることも多いので、その際には鳥が止まる場所をあらかじめ把握しておいて、鳥の大きさに合わせた箱などを置き、AFでピントを合わせてから誤作動しないようにマニュアルフォーカスにして撮影しています。

AF被写体追従感度 設定画面

「AF被写体追従感度」は、「2」を基準値にして、鳥の種類によって設定を変更しています。たとえば、直線的に飛ぶコハクチョウなどを撮る場合には、AFが敏感に反応する「4」に設定し、獲物を探してヒラヒラと舞うように飛ぶコミミズクというフクロウなど撮影する場合には「1(粘る)」に変更しています。ハクチョウやサギなど直線的に飛ぶ鳥は動きを予測しやすいのですが、動きが不規則な鳥の場合は「1(粘る)」にした方がとらえやすい気がします。

AF被写体追従感度 設定画面
飛んでいる鳥は、「ゾーン」もしくは「ワイド」のどちらかで撮影

C2ボタンには、使用頻度が2番目に高いフォーカスエリアを設定しています。止まっている鳥を撮るときには「フレキシブルスポット(M)」、飛んでいる鳥は、「ゾーン」もしくは「ワイド」のどちらかで撮影しています。以前は測距点を決めて撮影していたのですが、α7R IIIはAFの追随性能が高いので、「コンティニュアスAF(AF-C)」にして、エリアを「ワイド」にしておけば、画面の端に被写体がいるときでも十分つかまえてくれるので、とても重宝しています。また、事前のリサーチでどこに鳥が飛んでくるのかが分かっているのであれば、その付近にフォーカス範囲を狭めておくことで、AFで鳥をつかまえやすくなります。

至近距離での撮影に欠かせない、サイレント撮影

C3ボタン:サイレント撮影
カスタムキー 設定画面

野鳥は特にシャッター音を警戒するので、「サイレント撮影」をC3ボタンに設定しています。止まっている鳥はローリングシャッター歪みの心配がないのでサイレントで撮影し、飛んでいる鳥はメカシャッターで撮影と、状況に応じて使い分けています。特に至近距離で撮影するときに、鳥を驚かしてしまうと何時間も戻って来ないこともあるので、サイレント撮影のできるミラーレスカメラは最適ですね。あと、撮影モードはマニュアル露出で、「ISO AUTO」で撮影しています。高画素なカメラは、高感度には強くないという先入観があったのですが、α7R IIIは高感度にも強く、ISO1000以上でも十分実用レベルなので、ISOの上限を自分の許せる範囲に設定して撮影しています。

広角レンズで、鳥の棲む環境まで写したい

α7R III, FE 24-70mm F2.8 GM, 38mm, F8.0, 2.0秒, ISO160

α7R III, FE 24-70mm F2.8 GM, 38mm, F8.0, 2.0秒, ISO160

野鳥をアップで撮った写真もいいのですが、ズームで寄ると鳥の色や形は分かっても、どういうところに棲んでいるのかまでは伝わりません。この川の写真は、待ち伏せ型の狩りをするゴイサギとコサギをとらえたものですが、魚を狙って微動だにせず待っている様子を伝えるために、広角で周囲の風景を入れつつスローシャッターで撮影しました。僕はできるだけ広く撮って鳥が棲む環境や風景までとらえることで、鳥のことを全く知らない人にも興味を持ってもらえる写真を撮りたいと思っています。

米国メーカーが製造している迷彩柄のFE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS専用レンズコート

米国メーカーが製造している迷彩柄のFE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS専用レンズコート

ただ、広角だと被写体が小さくなってしまうため、かなり近づく必要があるのですが、警戒心の強い野鳥には簡単には近づけません。最初はカメラの存在に慣れさせるために、遠くから400mmぐらいで撮りはじめ、カメラを落ち葉で隠したり、迷彩柄の専用レンズコートを巻いたりして撮影しています。鳥がカメラに慣れてきたらだんだん距離を詰め、最終的に広角レンズに換えてと…。何日も、場合によっては何カ月もかかります。このジョウビタキはひと冬かけて撮影しました。スズメくらいの大きさなので広めの画角ではかなり近づく必要があるので、あらかじめ鳥が止まる場所にカメラをセッティングし、太陽の位置や顔の向きを想定してフレーミングしています。自分は離れたところから双眼鏡をのぞきながら、鳥が来たらリモートコマンダーを使ってシャッターを切っています。

米国メーカーが製造している迷彩柄のFE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS専用レンズコート

米国メーカーが製造している迷彩柄のFE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS専用レンズコート

セットアップ3 画面:リモコン設定

リモート撮影の際には、「リモコン」の設定を「入」にしておきます。「切」だと一定の時間が経つとスリープモードになってしまうので、いつでもシャッターが切れるように「入」にしています。ただ注意が必要なのが、「入」にしておくとバッテリーの消耗が早くなるので、予備バッテリーを準備しておいたほうがいいと思います。

勝負の一本

G MASTER

FE 24-70mm F2.8 GM

FE 24-70mm F2.8 GM

過酷な環境だからこそ、レンズの性能が問われる

α7R III, FE 24-70mm F2.8 GM, 70mm, F8, 1/640秒, ISO200

α7R III, FE 24-70mm F2.8 GM, 70mm, F8, 1/640秒, ISO200

まだ山々に残雪が残る6月頃、ライチョウは繁殖期を迎えます。この写真は、抱卵するメスを守るために、そばの見張り台に立つオスをとらえた一枚です。普段ライチョウは天気が良いと目立つ場所にはあまり出てきませんが、抱卵の時期だけ見晴らしのよい場所に姿を現します。事前の下調べで、岩に糞が付着しているのを見つけ、ここにライチョウがくるだろうと予測して構えていました。予想通りライチョウが姿を現したのですが、この日は特に快晴で、四方八方から残雪の照り返しもあり、通常のカメラのダイナミックレンジでは拾えないレベルの厳しい撮影条件。ライチョウに露出を合わせると、普通なら残雪は白で塗りつぶしたようになってしまうのですが、撮影してみるとライチョウの羽根の質感や山並みを覆う残雪の起伏まで見事に描写してくれました。カメラの階調性能もさることながら、このFE 24-70mm F2.8 GMの高い解像力に驚きました。

拡大してトリミングした画像

このライチョウの写真を展覧会でB0(1,030×1,456 mm)サイズで展示したのですが、その大きさでも十分に鑑賞に耐えられる画質でした。条件が良いときにはカメラやレンズの性能差は分かりにくいのですが、撮影条件が悪くなるほど性能差が出てきます。特に遠くの鳥を撮るときには、鳥の輪郭にジャギーが出てきたり、白飛びしたりなど、レンズ性能が作品の質を大きく左右します。カメラの性能を十分に活かせるこのFE 24-70mm F2.8 GMがあったからこそ、このライチョウが生きる過酷な環境をリアルに描き出せたのだと思います。

写真家 山田 芳文
ワンポイントアドバイス

山田流、装備の心得

いつも撮影に持っていくのは標準ズームと望遠ズームの2本と、撮りたい写真に合わせて三脚を選んで持っていきます。あと、僕はリモート撮影が多いので、リモートコマンダーとIRレシーバーは必須アイテムです。その際に、カメラの光軸上にある離れた場所から、双眼鏡で鳥の様子を観察しながらシャッターチャンスを狙うため、双眼鏡も欠かせません。ブラインド用のワンタッチテントに入ってじっくりと野鳥を狙う場合には、待ち時間で読むための本を持っていきます。何が何でも撮ってやろうと意気込むと、鳥もその気配を感じるのか近寄って来ないのですが、本を読んでリラックスしていると、向こうも警戒を解いて近づいてきてくれるような気がします。

山田氏のカメラバッグの中身
リモートコマンダーとIRレシーバー
「SWAROVSKI(スワロフスキー)」の双眼鏡

僕の撮影ではリモートコマンダーとIRレシーバー、そして双眼鏡がないと成り立ちません。双眼鏡は「SWAROVSKI(スワロフスキー)」を愛用しています。

山田氏のカメラバッグの中身

アクセサリー

その他

  • 双眼鏡、本、雨具

ぜひ皆さんも、
プロの使いこなし術を参考にして
自分流の使いかたを
見つけてください。

α7R III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS, 400mm, F8, 1/320秒, ISO250

α7R III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS, 400mm, F8, 1/320秒, ISO250