グラスサウンドスピーカー「LSPX-S2」の発売(2019年3月16日)を記念して、3月17日、ソニーストア 銀座にて、開発者トークショー&体感イベントが開催されました。登壇者は商品担当の伊良皆 杏奈氏、音響設計の鈴木 伸和氏。エンジニアとしてのこだわりや開発秘話を直接聞くことのできる、またとないチャンスに参加者の方々も興味津々。開発者が語るこだわりのポイントと音のデモにじっくり耳を傾け、時間いっぱいまで開発者への質問が続くなど、熱く盛り上がりました。その様子をレポートします。
商品担当・伊良皆杏奈氏/音響設計・鈴木伸和氏
一見すると、スピーカーとは思えないデザインの「LSPX-S2」。そのスタイリッシュな外観からか、イベント参加者には女性の姿も多く見受けられました。果たしてどんな音が聴けるのか、期待が高まります。
「LSPX-S2」は2008年に発売された「サウンティーナ」の系譜を継ぐものです。透明な有機ガラス管を叩いて全面を振動させて全方位に音を広げるというのが特徴です。イベントの最初に商品担当の伊良皆氏から、「LSPX-S2」についての説明がありました。
「小型になった『LSPX-S2』は、技術の進化でベース音まで美しいリアルなサウンドが特徴です。構造は、上から高域を再生するトゥイーター、中域を再生するウーファー、低域を再生するパッシブラジエーターになっており、このデザイン形状は音のバランスを最適化するためのものになっています」(商品担当・伊良皆氏)
左が「LSPX-S2」、右が「LSPX-S1」(ソニーショールーム / ソニーストア 銀座 5階)
デモとして聴いたのは、ピアノ弾き語りの女性ヴォーカル、ギター曲、男性ヴォーカルの三種類の音源です。
女性ヴォーカルは透きとおる伸びやかな高音で、音の抑揚や息づかいまでもリアル。ピアノの音はまるで目の前で弾いているかのような印象で、ずっと聴いていたくなる心地よさです。参加者の方の中には、目を閉じて思わず聴き入っている方も。
そして、ギター曲は弦を叩く音が新鮮に耳に響き、弦をはじく響きまで感じ取ることができ、 男性ヴォーカル曲はどっしりしたベースの低音もくっきり。
低、中、高域すべてがリアルかつクリアな音で、ジャズ、アコースティック、クラシック、ボサノバ、アンビエントなど幅広いジャンルの音楽で満足できそうです。
浮遊感のある音に包まれる感覚
さらに、360度に広がる音が、これまでのスピーカーでは体験したことがない感覚で、本体の後ろのほうから聞こえてくるような、浮遊する音に包まれるようなイメージでこれがまた心地良いのです。
ライトを灯しながら複数接続を体感
また、Wi-Fi接続で最大10台まで同時接続が可能なため、今回は特別に部屋の真ん中に1台、四隅にそれぞれ1台ずつ、計5台を同時に鳴らしたところも体感。参加者は立って歩いたり、近づいてみたり、本体のまわりを回ってみたりしながら、その不思議な音の鳴り方をチェックしました。部屋全体が音に包まれていて、どこで鳴っているのかわからないけれど、近づいてみると確かに鳴っていると感じられます。通常のスピーカーは指向角度があるので真ん中がスイートスポットとなりますが、「LSPX-S2」はぐるりと一周してみても聴こえ方が同じ。また、耳当たりがよく音が会話を邪魔をしないので、音を鳴らしながら話しても話し声はきちんと聞こえます。
部屋の中を歩いて、さまざまな方向から音の鳴り方を体感
さらに、インテリアとしても素敵で、部屋を暗くしてキャンドルライトモードのきらめくやわらかな光とともに音楽を鳴らすと、ここが試聴ルームだということを忘れてしまうくらいムーディーな雰囲気に。部屋の空気がガラリと変わり、リラックスできる癒やしの空間に生まれ変わりました。「光とともにクリアな音で空間をリノベートし、生活空間を彩るようなスピーカー」という商品コンセプトにも納得です。
この透明でクリアな音の秘密について、音響設計の鈴木氏より説明がありました。
バーティカルドライブについて解説する音響設計・鈴木氏
「加振器が振動板となる有機ガラス管を叩いて、有機ガラス管全体から音を出すというソニー独自の駆動技術バーティカルドライブを採用しました。この“叩く”というのがポイントで、弦をピックで弾く、打楽器を叩くなどの動作と似ているため、質感が優れた音が出るのです。サウンティーナで使用されていた加振器から大幅に小型化し、原音に忠実な音を出せるように歪みを改善することで音質もさらに進化しました」(音響設計・鈴木氏)
この楽器と同じ駆動原理が、生っぽい音を感じさせていたんですね。
ここで、サウンティーナとグラスサウンドスピーカーで使用している加振器と、「LSPX-S1」と「LSPX-S2」の音響サスペンションの実物が提示され、参加者の方々の手に渡ります。ともにかなりコンパクトになり、目に見て大きな違いを実感できました。なかなか内部のパーツを目にする機会はないので、参加者の方々も興味深く手に取り、じっくり見ています。
さらに、2016年に発売した「LSPX-S1」からの進化したポイントの説明へと続きます。
高域については、バーティカルドライブ回路の制御システムで保護抵抗をなくしたために、音のにごりがなくよりクリアに。また、中域、高域の音の放射方向を斜め上に合わせたため、音のつながりがよくなり、中・高域の音の明瞭度が向上しています。
低域については、スピーカー全体の重心を下げる構造をとり、パッシブラジエーターを底面に配置しました。これによりパッシブラジエーターの音響グラウンドが強化され、従来に比べ音質が向上しています。さらに振幅動作がスムーズになるようにソニー独自のノッチ形状を採用したため、より明瞭に聴こえるようになっています。
パッシブラジエーターを触って、振動動作を体感
デモで体感した低・中・高域のリアルでクリアな音は、こうした音響設計の進化から生まれていたわけです。さらに、グラスサウンドスピーカーとしては初めてハイレゾに対応。BluetoothでもLDACと接続することで、ハイレゾコンテンツを楽しめるほか、「DSEE HX」「S-Master HX」も搭載し、すべて上位のものに対応しています。
次にデザインについて、商品担当の伊良皆氏から説明がありました。
生活に溶け込むデザインで、テーブルの真ん中で人と人の間に置けるということを意識されたそう。「LSPX-S1」はワインボトルほどの高さがありましたが、よりコンパクトにして、会話を遮らないサイズを意識したといいます。ダイニングテーブルに置かれた安定感のある燭台というイメージなので、食事中でも邪魔にはならなさそうです。
LEDの明るさは32段階あり、調整は無料アプリ「Music Center」で操作できます。また、一灯で明るさを拡散できるようにレンズリフレクターを使っているため、間接光で目にもやさしく省エネに。バッテリー再生は約8時間で、「毎日ごはんを食べるときに1日1時間音楽を聴いても、1週間充電せずに使い続けられるようになっています」(商品担当の伊良皆氏)。
Wi-Fi接続で10台まで接続可能かつ、Spotify Connectにも対応しているので、ダイニング、ベッドルーム、テラスなど、さまざまな場所に持ち運んで、音と光のあるリラックス空間をスマホなしでも楽しめます。
使用されているLEDは一灯のみ
そして、音楽の聴き方が変わりそうだと思った、うれしい新機能が 「プッシュ&プレイ」です。Spotify ConnectはMusic Centerのアプリで操作もできますが、スマホを経由せずに本体の音符マークのプッシュ&プレイボタンを押すだけで電源が入り、音楽が再生されます。
プッシュ&プレイボタンを触ってみる
「家に帰って音楽が聴きたいと思っても、スマホを操作して音楽を選ぶというちょっとした動作が面倒くさくて音楽を聴かなかったというケースが何度かあって、それを変えたいという思いがありました。ワンプッシュで起動し、音楽が再生されるので、使い続けてみると便利だなと私自身は感じています」(商品担当の伊良皆氏)
最後に再生した音楽、お気に入り、グラスサウンドスピーカーおすすめのプレイリストの3つからどれか登録しておけば、外出先から帰って来て、玄関を開けたら1分以内に音楽が聴けるわけです。帰宅時にスマホのバッテリーがなくなりそう、もしくはなくなっているときもあるので、ちょっとしたことですが、確かにこれはうれしい機能です。
さらに、細部にまでおよぶ心憎いこだわりも。Bluetoothの操作音は、通常の無機質なものだと合わないということで、特別にスタジオでレコーディングしたウクレレベースの音を採用したといいます。実際にやわらかい音色を聴いて、参加者たちも思わずやさしい表情を浮かべていました。
イベントの最後にはQ&Aコーナーも設けられ、開発者のお二人に直に話を聞くことができる貴重な機会ということで、みなさん熱心に質問されていました。
実際に「LSPX-S2」の音と光を体感してみて、音楽のある生活がより豊かになりそうだなと思いました。
現在、私はアナログスピーカーをメインに、キッチンではBluetoothスピーカーを使っています。この二台の切り替えが面倒に感じることもあるので、コンパクトで持ち運びができ、360度音が広がる「LSPX-S2」ならば一台で事足りそうです。
魅力的なのは、音のやわらかさ。仕事中に電話がかかってきたときは、音楽のボリュームをかなり下げるかオフにしないと相手の声は聞き取れませんが、「LSPX-S2」なら、そのまま電話に出ても問題なく聞き取ることができそうです。体感イベント中も開発者のトーク中に小さく鳴っている音が心地よく、トークの邪魔になっていなかったのが印象的で、ながら聞きに最適だと思いました。音楽を集中して聴く以外に、邪魔しない程度のボリュームでBGMをかけておく、という使い方もよさそうです。
持ち運びしやすい形状になっている
また、8時間再生が可能なので、これからの季節、バルコニーなどに持ち出して昼間は音楽を聴いて、暗くなってきたところでライトを灯したら雰囲気もよく楽しく使えそうです。さまざまなシーンでいい音を楽しめ、空間を変えてくれるスピーカー。これは欲しくなりました。
編集:都恋堂 取材・文:梅森妙 撮影:松本健太郎
初めてイベントに参加される方も多数いらっしゃいましたが、高い満足を得ていただけました。ソニーストアでは今後もさまざまなイベントを実施していきますので、ぜひお気軽にご参加ください。
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