商品情報・ストア Feature 特集記事 Hi-Res 10 songs 下村陽子 イベントレポート 耳で、目で、心で感じるゲーム音楽だからこそハイレゾサウンドで楽しむべき
Hi-Res 10 songs 下村陽子 イベントレポート 耳で、目で、心で感じるゲーム音楽だからこそハイレゾサウンドで楽しむべき

最前線のゲーム音楽作曲家と「ハイレゾ」を聴くリアルイベント

90年代に社会現象となった対戦格闘ゲーム『ストリートファイターII』(カプコン)でその名を知られるようになり、その後もスクウェア・エニックスの『キングダム ハーツ』シリーズや、『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』、任天堂『大乱闘スマッシュブラザーズX』(一部楽曲)など、数々の人気ゲーム作品のBGMを手掛けてきた作曲家・下村陽子さん。2016年に発売された国民的RPG『FINAL FANTASY XV』では、その壮大な世界観を圧倒的な表現力で見事に描ききりました。近年は、その活躍の場をゲーム以外にも拡げており、映画『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』(2017年公開)や、テレビアニメ『ハイスコアガール』(2018年放送)などでも、“下村サウンド”を楽しめるようになっています。

そしてこの夏、下村さんが、音楽とともに生きるプロたちがハイレゾで聴いてほしい楽曲を紹介していく連載企画「Hi-Res 10 songs」vol.7に登場。合わせて、ソニーストア各店(大坂・福岡天神・銀座)にて、トークイベント&ハイレゾ試聴会が実施されました。ここではイベントに参加できなかった方にもイベントの内容や雰囲気を味わっていただけるよう、8月3日(土)にソニーストア銀座で行われたイベントの様子をお届けします。

〜イベントレポート PART I〜ゲームの音楽を作るという仕事

今回、まず驚かされたのが、会場の女性比率の高さ。下村さんが女性人気の高いタイトルを多数手掛けていることもあってか、半数以上のお客さまが若い女性という華やかなイベントとなりました。これには、イベントの司会進行を務める、ハイレゾ配信サイトmora宣伝担当キャラクター・ハイレゾマンも大喜び。これまでもお越しくださっていた熱心なオーディオファンの皆さんに加え、新しいお客さまをお迎えできたことを歓迎し、「今回は、プロジェクターも含め、なんと総額500万円以上のオーディオセットで下村さん作曲のハイレゾ楽曲をお楽しみいただきますよ!」と場を和ませていました。

そして万雷の拍手の中、下村さんがステージへ。その荘厳かつ繊細な楽曲からは想像できない、ご本人曰く「庶民派なんです(笑)」な、お人柄で、ハイレゾマンとの軽妙なトークを繰り広げます。

「下村さんは、今年、作曲家活動30周年を記念したオーケストラコンサートを実施予定ということで特に忙しそうですが、いったいいつ休んでいらっしゃるんですか?」(ハイレゾマン)

「こういう仕事なんで、やっぱり土日はないですね。とは言え、ずーっとやっていると煮詰まってしまうので、そういう時は日帰りで温泉に行ったりしてます。ただ、そこで頭を洗っている最中に急に壮大なバトル曲を思い付いちゃうこともあって……、今日も、急に帰りたそうな顔になったら、なんか曲を思い付いたと思ってください(笑)」(下村さん)

そして、まずはゲーム音楽ならではということで、映像と合わせたデモからスタート。100インチの大スクリーンで、Blu-ray Disc Music(映像付サントラ)『FINAL FANTASY XV Original Soundtrack』を再生しました。選ばれたのは中ボス戦で使われている『OMNIS LACRIMA』です。

「この曲はもともと、先行PV用に作った曲。ただ、それだけではもったいないと思ったので、ループを作るなどのアレンジを施してバトル曲に作り直しました。こういうバトル曲は派手な方がたぎりますよね、燃えますよね。でも、残念ながら、ほとんどの人が操作に忙しすぎてちゃんと曲を聴けなかったって言うんです(笑)」(下村さん)

BGM(バック グラウンド ミュージック)であるゲーム音楽ならではの悩みですが、下村さんはそれで構わないのだと言います。

「あくまでメインはゲーム。私自身は、2度目のプレイの時などに『ん? けっこう良い曲じゃん』って思ってもらえれば良いと思っているんですよ。それがBGMの基本というか、そうありたいなと思っているところです」(下村さん)

〜イベントレポート PART II〜 ハイレゾが引き出す下村サウンドの魅力制作や録音時の秘話も披露

そしてイベントはいよいよ本番。下村さんが手掛けてきた数々の楽曲の中から、彼女自ら選んだ珠玉の6曲を、ソニーストア銀座自慢のハイレゾオーディオ設備で聴取します。

「今回は、せっかくハイレゾのすばらしい音質で聴いてもらえるので、いろいろな雰囲気の曲を楽しんでもらおうと、バラエティに富んだ選曲をしたつもり……だったんですが、後で聴き直してみたら……暗い!(笑) 少しもの悲しい雰囲気の曲が多いのですが、ハイレゾの音質で、より深く哀しみ、心も涼んでいっていただければ(笑)」(下村さん)

『FINAL FANTASY XV Original Soundtrack』

『FINAL FANTASY XV Original Soundtrack』

- Somnus

「この曲を作ったのはもう十数年前のこと。実は、開場の前に客席に座って聴かせていただいたんですが、ハイレゾのせいかとても臨場感があって、まるでこの間、レコーディングしたような気分になりました。リバーブ、余韻の部分がすごく濃厚で、豊かな空気感を感じました。また、音の粒もものすごく細かいんですよね。海岸の砂がサラッサラになったような感じと言えば分かりやすいでしょうか?(笑)」(下村さん)

- APOCALYPSIS NOCTIS

「何度も言っているんですけど、めっちゃ聴いててしんどい曲ですよね(笑)。聞き終わってぐったりするというか、聴いている途中でもうぐったりしちゃう。そういうずっと押せ押せな曲で、その分、カタルシス的なものはあるんですけど、なんでこんなしんどい曲にしちゃったんだろうなぁ、なんて。ただ、作るのはそんなにしんどくなくて、自分としては珍しく〆切に余裕で間に合いみんなに驚かれました。ハイレゾで聴くことでオーケストラのいろいろな音が聞こえてきたように感じています」(下村さん)

『FINAL FANTASY XV Original Soundtrack Volume 2』

『FINAL FANTASY XV Original Soundtrack Volume 2』

- 夜に満ちる律べ

「最後のピアノの余韻が、ハイレゾだと長くすーっと聴こえてきますね……。この曲は、本来別にあるノクティスのテーマとルーナのテーマを1つにまとめたもの。自分で言うのもなんですが、とても上手くまとまったなと。私、こういう仕掛けが本当に大好きで、実は別に発注があって作ったのではなく、ノクティスとルーナへの個人的な思い入れから“勝手アレンジ”として制作した曲でした。それが2年前に行われたピアノコンサートでアンコール曲に採用され、そこからゲーム本編(2018年に発売されたDLC等をパックにした『FINAL FANTASY XV ROYAL EDITION』)にて使用されることに。コンサートからゲームに逆輸入された非常に珍しい曲なんですよ」(下村さん)

『KINGDOM HEARTS Concert -First Breath- Album』

『KINGDOM HEARTS Concert -First Breath- Album』

- Another Side

「この曲が、ここまでの3曲と異なっているのは、ホールで録音をしたこと。ホール録音では、一般的なスタジオ録音と異なり『アンビエントを録る』といって、ホールの響きだけを録音します。オーケストラの音響制作では、それぞれのパートに1つずつマイクを割り当てて、それをエンジニアさんが様々なテクニックを駆使して組みあわせ、LRの2chにトラックダウンしていくのですが、そこで、もう少しアンビエントがほしいなんて時に使うんです。今回、この曲をハイレゾで聴いてみて、そうした本当に細かなこだわりが明確にわかって感心しました。スタジオ録音とは全く異なる響きを楽しんでください」(下村さん)

- Musique pour la Tristesse de Xion

「ハイレゾで悲しみがマシマシですね(笑)。ちなみに曲のタイトルを英語ではなくフランス語にしたのは、タイトルで露骨に悲しい感じを出したくなかったから。悲しみは英語だと『Sadness』なんですが、その響きがイメージと違うというのもありました。いろいろ調べたところ、フランス語なら『Tristesse』となり、語感も悪くありません。そこで、今回は、言葉の響きが良くて、日本人には分かりにくい言葉ということでフランス語のタイトルにしています」(下村さん)

『SQUARE ENIX JAZZ Vol.2』

『SQUARE ENIX JAZZ Vol.2』

- Legend of MANA 〜Title Theme〜 Jazz Arrangement

「(原曲と比べて)大人っぽくなりましたよね。夜っぽいというか。まったりと音楽を楽しみたい時には素敵なアレンジだと思います。私は低音が好きなので、こういうベースの音がしっかり出るジャズアレンジはとても好み。デモを制作するときに、ついついベースの音を大きくしちゃうようでよく指摘されるくらいです。音がフラットに聴こえるモニターヘッドホンで自分的に良い感じに低音を上げちゃってるので、そのままのバランスだと低音が強調されることの多い一般向けのリスニング用ヘッドホンだとビックリしちゃうかもしれませんね(笑)」(下村さん)

ここで、ハイレゾマンから下村さんの音楽制作環境に関する質問も。確かに下村さんが普段、どういった機器を使って音楽を作っているのかは気になるところですよね。

「作曲時は原則としてモニターヘッドホンで音を聴いています。最後の最後にモニタースピーカーで確認することがありますが、何にせよモニターと呼ばれる機器を使っていますね。モニターとは、音がそのままフラットに聴こえるヘッドホン、スピーカーのこと。音がフラットに聴こえるので、人によっては聴き疲れしてしまうのですが、音の細かいところを確認するのならこれが最適。ほとんどの作曲家、スタジオスタッフはモニターを使っています。ちなみに私が使っているのは、ソニーのモニターヘッドホン『MDR-CD900ST』。この業界では大定番で、どこのスタジオに行っても必ずあるというもの。私ももう、何度も買い換えながら使い続けているんですよ」(下村さん)

これを受けて、ハイレゾマンが取りだしたのが、今年8月に登場したハイレゾ対応モニターヘッドホン『MDR-M1ST』。下村さんが使用している『MDR-CD900ST』を共同開発した、ソニー ホームエンタテインメント&サウンドプロダクツとソニー・ミュージックスタジオが、再びタッグを組んで開発した、ハイレゾ対応スタジオモニターです。実はイベントに先駆けて、下村さんにはこのヘッドホンを体験していただいていました。

「装着してすぐに感動したのがフカフカなこと。すごく着け心地が良くなっています。モニターヘッドホンは1日20時間とか使うこともあるものなので、実は装着感がすごく大事なんですよね。もちろん音質も良好です。さっき、モニターヘッドホンは聴き疲れすると言いましたが、すごく耳に優しい音質だと感じました。しかも、それでいて全ての音をフラットに発してくれます。なによりハイレゾ対応というのがすごいですね。聞き慣れている環境でハイレゾ音源を楽しめるのは良いなって思いました」(下村さん)

そんな下村さん、当然ながら普段はモニターではないタイプのヘッドホンも使われているそうで、今回、ソニーストア福岡天神でのイベント時に完全ワイヤレスヘッドホン『WF-1000XM3』をゲットされたとのこと。こちらは強力なノイズキャンセリング機能が気に入っているそうです。

イベントの終盤には下村さんが、会場のお客様から募った質問に答えるQ&Aコーナーも。気になる今後の活動に対する質問から、仕事にまつわるプライベートな悩み相談まで幅広い質問に、ユーモアを交えて返答をしてくださいました。

……と、気がつけばあっと言う間にイベント終了の時刻に。あまりに素晴らしい音楽と、面白いトークで時間が経つのを忘れてしまうほどでした。そして、イベントでの試聴を通じて、多くのファンがハイレゾの魅力、音質の重要さを感じてくれたことでしょう。

〜下村陽子さん イベント後インタビュー〜「ハイレゾの音の柔らかさ、滑らかさが気に入りました」

お疲れさまでした。まずは今回のイベントの感想を聞かせてください。

下村:これまでもコンサートなどで曲の合間に喋ることはあったのですが、こういうイベントをやるのは初めてでとても緊張しました。ですので、皆さんがアットホームかつ真摯にお話を聞いてくださったのがすごくうれしかったです。特に今日などは曲が終わるごとに拍手をしてくださるお客様もいて、本当にありがたいなって思いました。

今回、お客様には若い女性の方が多かったですね。下村さんのコンサートも女性のお客様が多いんですか?

下村:多いですね。いつも、とても可愛らしいお嬢さんがたくさんいらっしゃいます。ちょっと偏見みたいで嫌なのですが、ゲームをプレイする方って一般的に語られる「オタクっぽい」みたいなのを想像されることが多いじゃないですか?「え? こんな可憐な女性がゲームで遊んでるの?」って思われるかもしれません(笑)。

最終的には音楽が気に入らないとコンサートには行かないですよね。下村さんはご自身の楽曲のどういったところが女性から支持されているとお考えですか?

下村:私の曲って、感情的だと思うんです。「泣ける」とか言っていただけることも多いんですが、そういったところが女性の心の琴線に触れるのかもしれません。

なるほど! それは納得です。ところで今回のイベントは「ハイレゾ」がテーマとなっていますが、ハイレゾの醍醐味ってどういうところにあるんでしょう?

下村:仕事場にハイレゾ対応の機材がなかったので、今回の記事とイベントのお話をいただくまで、ハイレゾをじっくり聴くという機会はありませんでした。実のところ、どういうものかもイメージできていなかったのですが、実際にいろいろ聴いてみて、耳に優しいというか、柔らかい感じがとても気に入りました。特にJ-POPなんかだとボーカルの声なんかがガッと刺さるように出てくる感じがなくなって聴きやすくなりましたね。ガクガクした音の段差を滑らかにしてくれているのを感じます。

下村さんは、ご自身の楽曲をどのように聴いてほしいですか?

下村:できるだけ良い音で聴いてほしいという気持ちはありますが、どんな音をいいと感じるかは人それぞれですので、私から「これがベスト!」というのは言いにくいです。ただ、自分にとっての良い音を決めるために、いろいろな音を聴き比べてほしいなとは思います。その中で、ハイレゾがいいと思ったら、それをじっくり聴き込んでほしいです。

イベント中のお話もありましたが、音楽だけに集中してほしいという気持ちはないのでしょうか?

下村:それもまた聴く人それぞれのスタイルでいいと思っています。ゲームをプレイしながら、映像を見ながら聴いてもいいですし、目を閉じて音楽だけに集中してもらってもいい。ただ、ゲーム音楽って、聴いているとプレイしている時の想い出が蘇ってきますよね。あのボスはすごく強くて苦労したなぁ、とか。それはゲーム音楽ならではの魅力だと思っています。

最後にこの記事を読んでいる下村さんのファンにメッセージをお願いします。

下村:まずは今回のイベントにお越しくださった皆さんに御礼を。信じてもらえないかもしれませんが、私、実はものすごい心配性で(笑)、イベントがうまくいくかとても不安だったんです。SNSなどを見る範囲では楽しんでいただけたようで嬉しいです。私も楽しませていただきました。ありがとうございました!
また機会があればこういうイベントをやりたいと思いますので、残念ながら今回は参加できなかったという方は次の機会にぜひ! 私もソニーさんに声をかけていただけるよう(笑)、精進していきますので、これからもよろしくお願いいたします。


PROFILE

下村陽子(しもむら ようこ) 兵庫県出身。4歳の頃よりピアノを習いはじめ、学生時代を通じて、さまざまな楽器や音楽に親しむ。大阪音楽大学短期大学部音楽科を卒業後、カプコンに入社。ゲーム音楽の制作に従事し、『ストリートファイターII』などの音楽を担当。退社後、スクウェア(現在はスクウェア・エニックス)に入社し、『スーパーマリオRPG』、『聖剣伝説 レジェンド オブ マナ』、『キングダム ハーツ』などの音楽を手がける。2003年より、フリーランスの作曲家、編曲家として活動をスタート。その後も数多くのゲーム音楽を作曲し、2016年に発売された『ファイナルファンタジーXV』ではメインコンポーザーを務めた。現在は、アニメや舞台などの音楽も手がけるほか、国内外においてオーケストラを率いたコンサートの開催も続ける。2019年10月19日(土)には、渋谷のBunkamuraオーチャードホールにて、作曲家活動30周年を記念したオーケストラ・コンサートを予定している。

下村陽子 オフィシャルホームページ
www.midiplex.com/

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