西本智実(指揮者)が体験した
ウォークマン NW-ZX507
世界を舞台に活躍している指揮者の西本智実さん――。コンサートホールだけでなく世界遺産や大聖堂などでの国際音楽祭における指揮など、さまざまな音楽空間で幾多の音と触れ合い、世界を巡る“音楽の旅”を続けているマエストロに、音楽専用機のウォークマン「NW-ZX507」をステレオヘッドホン「IER-M7」とグラスサウンドスピーカー「LSPX-S2」の組み合わせで体験していただき、各機器の使い心地やサウンドを通して得られる感覚についてお話を伺いました。
世界約30ヵ国の各国を代表するオーケストラ・名門国立オペラ劇場・国際音楽祭より招聘。
世界経済フォーラム「2030年イニシアティブ」に取り組むヤンググローバルリーダー、Fondazione pro Musica e Arte Sacra「名誉賞」、広州大劇院名誉芸術顧問、大阪国際文化大使、ヨーロッパ文化支援財団(EUFSC)指名指揮者、慶応義塾大学SFC研究所上席所員(音楽科学・舞台芸術科学)ほか。
写真:塩澤秀樹
音大出身のお母様がいる家庭で幼少期からクラシック音楽を演奏する西本さんがウォークマンに出合ったのは中学生の頃……。クラシック以外の音楽も聴くようになっていた時期でもあり、自分でMIXテープを作って友達と感動を分かち合う青春時代を送られていたそうです。
「ウォークマンは世代的にもドンピシャでした。1台目を中学1年生のときに買って、それから何台か買い替え、CDウォークマン、MDウォークマンまで使っていました。ちょうどその頃、ビートルズも大好きになったので、自分で好きな曲を編集したテープも作っていたんです。楽しかったなあ! クラシックのピアノ曲なんかもセレクトして友達に“どう?”って聴かせたりもしてました。あの時代、ウォークマンの存在が、私にとっても、世の中にとっても大変革を生みだしたと思いますよ。」
西本さんは、大阪音楽大学作曲学科を卒業したあと、ロシア国立サンクトペテルブルク音楽院指揮科へ留学し、指揮者として世界的な活動を展開していくことになります。2012年には自らイルミナートフィルハーモニーオーケストラも創設しました。
「ペテルブルクに留学しながら指揮者の道を歩き、国内外のオーケストラに育てていただきました。やがて、名門オペラ劇場の指揮者として招聘されるようになりました。若手の私が指揮の場合は、演出ができあがっている状況で招聘されることも多く、最後に指揮を任されるかたちでは本当の意味での作品づくりには加われないと感じていました。「やるなら、制作の最初から一緒につくっていきたい」という気持ちが強かったんですよね。お互いが理想的な作品づくりを求めるがゆえに、長く月日をかけ舞台が実現したこともあります。京都の南座での『蝶々夫人』のコンサート形式の演奏会を機に、自らが舞台演出する機会もありました (2010年〜)。そして、こうした公演などをきっかけに、アジアの文化や今の時代の価値観というものを世界へ発信していきたい想いが強くなり、オーケストラ・オペラ・バレエ・合唱団から成るイルミナートを創設しました。音楽は答えのない問いを探究できます。人生の深淵を探究する旅を続けているのだと思います。」
2013年にはバチカン国際音楽祭より招聘され、サン・ピエトロ大聖堂のミサでも指揮を執られました。それ以降、毎年イルミナートフィルと合唱団と共にするバチカンでの演奏経験は、西本さんにとってはかけがえのないものになっているようです。
「リハーサルする場所が、かの歴史的なサンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会なんです! まさに神秘的な空間です。大聖堂天井にはクーポラ(半球形のドーム)があるので、譜面上、休符になっている箇所でも空間には残響で満たされる体感ができます。コンサートホールではなく、聖堂や宮殿、サロンなどで演奏していたベートーヴェンやモーツァルトといった作曲家たちは、こうした残響の効果までを考えて曲をつくっていたんだということが、そこで演奏をしてみてよく理解できました。一番驚いたのは、ベートーヴェンの交響曲第9番を演奏したとき……。モーツァルトやグノーのミサ曲は教会の響きに馴染みますが、ベートーヴェンの曲は違います。調和を感じられるようにあえて、不協和音やアクセントのぶつかりを音楽で作っています。たとえば第9の第2楽章を教会で演奏すれば、音が回りながら反響の時差の中に跳ね返ってきます。その状態が続くと人間は奇妙な感覚に襲われるんですよ。実際に奏でられた音とは違う、反響した瞬間に生まれる音楽の音以外の音を聴くことになるんですね。これこそ音楽の深層と私は感じています。オーケストラも合唱団もみんなその音を体験したので、そこからまたイルミナートの音楽は確実に変わっていきました。こうしたさまざまな音楽体験を通じて、見えないものを見ながら、人間は真理というものを探してるんだと思います。」
そんな豊かな音楽体験をお持ちの西本さんに、最新のウォークマン「NW-ZX507」を体験していただきました。ストリーミングサービスに対応、AI(人工知能)技術によってあらゆる音楽をハイレゾ級の高音質にアップスケーリングして楽しめるほか、リアルタイムで曲を解析して最適な高音質にアップスケーリングしてくれる「DSEE Ultimate※」機能もある最新機器です。今回は、細部へのこだわりによって、より高音質を楽しみやすくなるステレオヘッドホン「IER-M7」との組み合わせで試していただきました。
「ここまで進化したんだな、とまず驚きましたし、この組み合わせでピアノ曲を聴くと、自分自身がピアノの弦の中に入っているような感覚になりました。これまでにもハイレゾ音源を聴いたことはありましたが、この距離感、一体感は初体験に近いものでした。人間の耳に自然に聴こえる以上のものを聴かせてくれている気もします。イコライザー機能も充実していて、低音の強調など、ずいぶん細かく音のバランスを調整できるのも良いですね。自分だけの音にカスタマイズして、理想の音を求めていくという点ではふだん指揮者がやろうとしていることと重なる面もありますし、実際、いろいろ試してみたくなりました。もちろん指揮者以外でも、音を自ら調整することが好きな人にとってはたまらない魅力だと思います。ストリーミングサービスはこれまで使ったことがなかったんですが、すごく便利なのがわかりました。CDを持ち歩かずに済むので、コロナ前のように自由に外出ができるようになったら必ず使いたいです。それと、カセットテープが動いている画面を表示できるのも良かった。ウォークマン世代としてはノスタルジーをくすぐられました(笑)」
※ソニー独自のAI技術で、圧縮音源をハイレゾ相当(最大192kHz/32bit)にアップスケーリングする機能。有線接続時かつW.ミュージック再生時にはたらく。
「NW-ZX507」と「IER-M7」などの認定ヘッドホンを組み合わせると、「360 Reality Audio」も利用できます。ボーカルや楽器などの音源ひとつひとつに位置情報をつけて球状の空間に配置して、全方位から音が降り注いでいるような臨場感を味わえるようにする技術です。
「音の位置が変わったことがリアルにわかるので、すごいですね。クラシックの現場にも通じる劇場的な感じがしました。これまでも私たちは、音楽を平面的に聴いていたわけではなかったけれど、「360 Reality Audio」だとより立体的に聴けるようになるので、聴いている側の想像力も試されますよね。バチカンでは360度の音の広がりというものを実際に感じましたが、ああいう中で演奏して、音を聴いていれば、宇宙の調和にまで想いを馳せられます。音というものは、もっとも人間の想像力を増してくれるものと思っているので、テクノロジーの発達によって、また違う次元の経験ができるようになっていくんじゃないかと期待しています。そういった意味でも、さまざまな音楽体験ができるこの製品に出会えたのは良かったと思っています。」
時間や場所を問わず、高音質なサウンドを楽しむことができるウォークマン「NW-ZX507」ですが、室内ではオーディオプレイヤーとしても活躍します。自宅などではグラスサウンドスピーカー「LSPX-S2」と組み合わせることで、ヘッドホンとは一味違った音場の広がりを楽しむことができます。「LSPX-S2」は、有機ガラスが奏でる心地良い音と光のハーモニーでリラックス空間をつくりだせるという特徴があり、普段、スピーカーやカーステレオなどで音楽を聴くことが多いという西本さんにとって、この組み合わせは感動的だったようです。
「このスピーカーはすごく良い! 素晴らしいですね。今回試させていただいた製品の中でもとくに気に入りました。『NW-ZX507』との組み合わせによって生み出される高音質なサウンドだけでも十分楽しめますが、個人的にロウソクが好きだということもあって(笑)、雰囲気も含めた空間そのものを楽しめました。従来型のスピーカーは、置き方を変えると音の聴こえ方がまったく変わってしまったりするので配置に気を遣いますが、このスピーカーはどこにでも置けるのが良いですね。振動も心地良く、自分の手の中にコンサートホールがあるようにも感じられるくらい楽しい。生で演奏を聞く機会が少なくなっている現在、こうした製品を使えば、自宅で限りなく生に近い音楽を体感できるようになります。音楽だけでなく自然のせせらぎを聴いたりするのも良いんじゃないでしょうか。狭い空間でも広がりをもって音の世界を楽しめそうです。」
音楽との接し方、楽しみ方が多様化している今日……。変化していく時代の中で、私たちはどのように音楽と接することになっていくかを伺いました。
「日本にも素晴らしいコンサートホールはたくさんありますが、ヨーロッパやロシアの伝統的な劇場などでは季節によっても音の聴こえ方が変わります。そういう背景も含めて、演奏家は今のこの瞬間の最善の音というものをつくろうとしています。一方で、求められる音もまたそれぞれです。体調や気分によって欲する音も違ってくるので、自由な選択ができる環境がこれからますます求められていくのではないでしょうか。いってみれば、誰もが自分だけの音をカスタマイズできる時代がくるんだと思います。そう考えると、『NW-ZX507』のようなウォークマンは、まさに時代のニーズにあった製品ですよね。音楽には、メンタルや健康、脳に影響するという方向のアプローチもあります。私もその分野の研究もしていますし、これからどのようにテクノロジーと連携していくのかは興味深いところですね。これまで見えなかったことや聴こえなかったことが見えたり聴こえたりするようになっていけば、音楽の持つ可能性はさらに広がっていくのではないかと思いますよ。」
編集:都恋堂 取材・文:内池久貴 撮影:西田香織
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