『「日本の自然」写真コンテスト』(朝日新聞社・全日本写真連盟・森林文化協会主催、ソニーマーケティング株式会社協賛)は、1983年から毎年開催されている歴史のある写真コンテスト。『いつまでも守り続けたい「日本の自然」』をテーマに、動植物や風景、人間の営みを捉えた優れた写真作品を長年に渡って顕彰してきました。そんな本コンテストも今年で39回目。2022年7月23日(土)には朝日新聞東京本社読者ホールにて受賞者を招いた表彰式が行われました。ここではその様子と、受賞者から直接お聞きした喜びのコメントをお届けします。
なお、今回の応募総数はWebで受け付けた写真データをそのまま審査するデジタル部門が2,164名・9,108点、紙に出力した写真を審査するプリント部門が896名・5,619点と、応募者数、応募点数とも過去最高を更新。新型コロナ禍でも写真にかける情熱が衰えていないことを強く感じさせる結果となりました。
新型コロナ禍の影響もあり、2年ぶりの開催となった『「日本の自然」写真コンテスト』表彰式および講評会。デジタル部門、プリント部門合わせ、のべ102名の受賞者のうち、31名のフォトグラファーの皆さんが式典に参加してくださいました。
受賞式の冒頭では、朝日新聞社ゼネラルマネージャー 兼 東京本社編集局長・宮田喜好氏が主催者として登壇。昨今の社会情勢下にもかかわらず、コンテスト史上最多の応募となったことを受け、「皆さんが感染防止に配慮しつつ、少しずつ活動の幅を拡げ、動き始めたことを実感しています」と喜びの気持ちを表しました。そして、移動が制限されている中でも美しい自然の姿を写真に収めようとする象徴的な一例としてプリント部門で特選に選ばれた大野健一さんの作品『隔たり』に言及。「いわゆる絶景や珍しい生き物を被写体に選ばれる方の多いコンテストではありますが、身近な場所でも素晴らしい自然を撮影できるのだと改めて感じさせてくださいました」と語り、逆境の中でもしなやかに広がっていく表現の可能性への期待を滲ませました。
続いて登壇したソニーマーケティング株式会社 執行役員 伊藤秀樹もこの応募者数増を大いに喜び、ソニーが今後も優れた撮影機材の開発・販売と、本コンテストのような「場」の協賛という2つのかたちで写真文化に貢献していくことを約束。そして会場には、発売前の最新有機EL/液晶テレビ「ブラビア」が受賞作品の表示用として提供がされ、その圧倒的な輝度、コントラスト、色再現性と共に「皆さまの写真作品を鑑賞するのに最適な製品だと考えております」と胸を張ってアピールをされました。
また、その上でソニーグループ全体として掲げる『クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。』というパーパス(存在意義)を紹介。「感動を写し出す写真と、それをご家族やお仲間で分かち合えるような視聴デバイス、この両面の技術を研ぎ澄ますことで、これからも皆さまの表現欲求にお応えし続けていくことをコミットさせていただきたいと考えております」と、今後のソニーの取り組みについて力強く語りました。
この後、表彰式は受賞作品を舞台上の最新ブラビアに表示するかたちで進行。次のパートでは、受賞作品の一部とそこに込めた撮影者の想いを、その後の講評会での審査委員コメントも交えながら紹介します。
「最優秀賞 ソニー4K賞」は、応募者2,000名以上、応募作品9,000点を超える、本コンテストの激戦区・デジタル部門の最高峰。ソニー 4K賞と名付けられているよう、高精細なデジタルフォトを、そのまま大画面4Kテレビで鑑賞するスタイルに相応しい壮大さ、雄大さを備えた作品に贈られます。
最優秀賞 ソニー4K賞
こんなすごい写真、よく撮れましたね(笑)。ツキノワグマは動物写真の中でもかなり難しい部類に入り、撮ろうと思ってもそうそう撮れるものではありません。そうした中、この作品はストーリーすら感じさせるほど見事に撮影されており、ズバ抜けた表現になっています。母熊はおそらくは何度か出産を経験し、子育てにも慣れているのかな?その落ち着きが、小熊にも伝わり、「おとぎ話」というタイトルに相応しい雰囲気を生み出しているように感じました。こうした写真を撮るには被写体との間にある種の信頼関係が求められます。ツキノワグマの生態を長年研究し、関係作りに時間を費やしてきた大谷さんだからこそ撮れた一枚だと言えるでしょう。(写真家・前川貴行氏)
「ソニーネクストフォトグラファー賞」は、30歳以下の若い力を開拓するために設けられたデジタル部門だけの特別な賞。その受賞には若者ならではのフレッシュな表現力とアクティブなフットワーク、そして何より、自然に対する深い畏敬の念が求められます。
ソニーネクストフォトグラファー賞
この写真は2022年1月に西穂高岳に出掛けた際のもの。極寒のテント場を真夜中に出発し、独標と呼ばれる稜線上のポイントから撮影しています。眼前に広がる真っ白で巨大な「それ」は、環境も相まって人を寄せ付けない怖さも感じましたが、それ以上に「美しい」という印象でした。星空と巨大な雪山、すべてを一枚に収めようとすると超広角レンズ以外の選択肢はなかったので、画角は14mm。予定では開放で撮るつもりでしたが、星よりも雪山のディテールを重視「したくなった」ので少し絞って撮影しています。
自分は登山が趣味です。週末になれば山に向かい、シャッターを切りますが、その被写体は「山」だけでなく、「登る人」の場合もあります。受賞作品にも登山者のヘッドライトの光が2か所ほど映りこんでおり、小さな人間が存在することで山の壮大さを表現することができたと感じています。
デジタルカメラの性能が良くなって、もはや写せないものはないという時代に突入しています。闇夜の山岳の姿をわずかな光量、わずかな時間で撮影したこの作品はその象徴とも言える作品ではないでしょうか。その上でこの写真からは、奇をてらって無理矢理自分らしさを出すような撮り方ではなく、目の前に現れた厳しい自然の姿を丁寧に捉えていこうという意識が感じられました。もちろん技術的にも卓越しており、少し絞っているのかな、山肌のディテールもシャープで空の星々も自然な点で描かれています。黄色い登山者のヘッドライトが白飛びせずに描写されているところなども含め、極めて完成度の高い作品に仕上がっていると感じました。若い方々を対象としたソニーネクストフォトグラファー賞にこうした山の写真が増えてきていることに、同じく山の写真を撮る端くれとしてうれしく思います。(写真家・福田健太郎氏)
▼▼受賞作品をクリックすると、拡大してご確認いただけます▼▼
この作品で撮影したのは、涼を求め水辺を歩くエゾシカ家族。北海道道東の短かい夏を楽しんでいるかのような姿と木々の緑のリフレクションで、見た人にもつかの間の夏を感じていただければと思って撮りました。私はふだん道東の動物写真を主に撮影、特に現在は「火山と凍れが育む生命の物語」をテーマに活動しています。現在愛用しているカメラはα7 III。瞳AFが気になり2020年に購入しました。初めてのミラーレス機で、機能的かつ軽量なところが気に入っています。次はα1を購入する予定です。
私は2013年に初代α7が発売されたのと同時にカメラを始め、今は、八甲田山を中心に活動をしています。αの魅力はコンパクトで高画質、高感度、そして広ダイナミックレンジなこと。現在はα7Sやα7R IVなど計4台のαを使い分けています。ふだんから「こういう写真を撮りたい」と事前に計画するようなことはせず、出会った風景を思うままに撮るのが私のスタイル。この写真は初めて冬の八甲田山に登ったときに撮れたものなのですが、ふだんは上の方にしかない雲海が下の方まで広がっていて、その両方が彩雲になるという、まさに彩雲日和でした。たくさん撮った中でこの1枚を選んだのは、遠くに見える岩木山など、ここが八甲田山であることが一目でわかる分かる構図で撮れたから。今の目標は、ホームグランドであるこの八甲田山で誰もが見たことがないような一枚を撮ることです。
ウミガメは大きく育つまでにさまざまな試練があり、生き残る数がものすごく少ない生物です。そんなウミガメの子供たちが旅立つ姿を写真として残せたことをうれしく思っています。ウミガメの卵は産み付けられた砂地の温度が下がると孵化するため、普通であれば昼に孵化することはありません。ただ、この日は前日に大雨が降ったことで地面の温度が下がり、偶然、そのレアな瞬間に立ち会うことができました。撮影に使ったα7 IIIはそれまで使っていたα6000と比べて全ての点で高性能ですが、特に色味の美しさが気に入っています。私は今、小笠原諸島で海洋保全の仕事をしているのですが、αで魅力的な海の写真を撮り続けることで、その豊かさと美しさを広め、多くの人にその大切さを伝えていきたいですね。
5年前に仕事で北海道に住むことになった際、たまたま美瑛で見かけた狐に魅せられ、その姿を写真に撮って残したいと思ったことがきっかけでカメラを始めました。この作品では、そんな狐の魅力の中でも、あまりほかの人が撮影していない荒々しい生態を表現できたのではないかと思っています。狐は2〜3月に繁殖期を迎え、個体同士の争いが見られるようになるのですが、流血するほどの「バトル」を見るのは初めてで、その姿をα1と望遠レンズの組み合わせで撮影しました。α1の良いところは、圧倒的なAF速度と超高画素を両立していること。実はこの写真は狐たちの全身を撮っているのですが、首周りや歯にこびりついた血を強調するためにトリミングしています。それでもなお、ここまでの情報量を保てたのはα1で撮ったからこそ、ですね。
春が近づくと美瑛の丘では雪解けを早めるために黒い融雪剤が撒かれます。雪原に現れる融雪剤の縞々模様は融雪剤アートとも呼ばれ、カメラ愛好家の格好の被写体となっています。今回の作品は、その融雪剤アートと大好きなキタキツネの組合せを撮影したいと思い、融雪剤がまかれた丘にキタキツネが現れるのを数日にわたり待ち続け撮影したものの一枚です。撮影にはα1を使用。素早い野生動物の動きを捉える高速かつ正確なオートフォーカスと連写性能、撮影後の現像における自由度を高める高画素トリミング耐性、これら全ての条件をクリアできるのはこのカメラしかありませんでした。
私はふだん、プロフォトグラファーとして風景からポートレート、ペット写真まで幅広く撮影しているのですが、個人としては野生動物、特にキタキツネを多く撮影しています。この作品で表現したかったのは被写体となったキタキツネのかっこよさ。まるでオオカミのような顔つきの個体で、なかなかこういう表情を見せてくれるキツネはいません。その性格も顔つきそのままで、私の存在を気にも留めることなく、堂々とその場に居座ってくれました。光と影のコントラストでそれを表現しつつ、暗い部分もしっかり描写することを心がけています。特に毛並みの描写、解像感にはこだわっており、そこにα7 IVならではの高解像度が活きました。
私の住んでいる土地がアカショウビンの繁殖地と近いという縁もあり、人一倍強い思い入れを持って、もう十数年その姿を写真に撮り続けてきました。去年見た個体が越冬地から帰ってくると本当にうれしくなるんですよ。4、5年経って寿命を迎えても、その子供たちが元気な姿を見せてくれます。この作品は、そんな営みの中で、親鳥が雛に給餌する姿を撮ったもの。たまたま見かけた雛が急に落ち着きがなくなってきたため、そこにエサを加えた親鳥がやってくるのだろうと予想を立てていたところ、ドンピシャでその姿を捉えることができました。使ったカメラはα1。それまでのαはハイスピードなα9、高画素なα7Rと一芸に秀でたものが多かったのですが、α1はオールマイティに素晴らしい。とりわけ色味が素晴らしく、アカショウビンならではの美しい赤色をズバ抜けた表現力で再現してくれるところが気に入っています。
私はふだん、青森県の自然風景、十和田市の自然風景(八甲田山、十和田湖、奥入瀬渓流)や動物、農業風景などを主に撮影しています。この写真は青森県八戸市蕪島のウミネコたちが力強く一斉に飛び立つ瞬間を捉えたものです。1日に数度しかないそのチャンスを狙い現地に通いました。撮影に使ったα99 II は電子ビューファインダーの色彩に加え、シャッターレスポンスの良さとその音が気に入っています。
撮影場所は北海道網走の能取岬。ここは冬になると流氷が押し寄せ、そこにオジロワシやオオワシといった貴重な野生動物がやってくるため、その組み合わせを撮るためによく訪れています。ある日、オジロワシの群れがものすごいスピードで飛び交っているシーンに出会い、それをα1で高速連写して捉えた中の一枚がこの作品です。当初はワシたちが戯れているのかなと思っていたのですが、調べたところエサを巡っての争いのようで「氷上の空中戦」というタイトルを付けました。私はふだん、風景写真をメインに撮っているため、AFはあまり使わないのですが、ここまで動きの速い被写体はAFでなければ無理。その点α1は驚くほど高速かつ精緻にピントを合わせてくれ、この一瞬を切り取ることができました。なお、α1を選んだ最大の理由は最高級の動画撮影機能を備えているから。今後は8K画質で北海道の美しい自然の姿を残していきたいと考えています。
登山者が出発する時間帯に現れた「ダブルレインボー」、まさに幸先のいいことの象徴のような光景でした。背景の山並みとのバランスがいい絶好の位置に出てくれた虹に感謝です。超広角の16mmレンズを選択して、虹の全景を写すことに専念しました。カメラ歴は約45年、ソニーのαはデジタルカメラに移行してしばらく後、2016年ごろから使っています。選んだ理由は操作性の良さと重量、そしてレンズの描写力の素晴らしさです。山登りが好きなので、主に山岳写真を撮っています。
カメラを始めたのは高校生の頃。富士山を撮り始めてからは33年が経ちました。フィルムカメラ時代からαユーザーで、デジタルカメラ移行後もレンズ資産を活かすため、αを使い続けています。この作品では彩雲がもつ色彩を表現しようとアンダー目の撮影を心がけました。
蝶などの昆虫たちが自由に飛び交い後世に命を繋ぐ事が出来るためには、豊かな自然が不可欠です。いつまでも昆虫と身近に触れあえる環境を残してほしいと願い、美しい蝶の飛翔シーンを撮影しました。初めて一眼カメラを手にしたのは8年ほど前、それ以来、ずっとソニーのカメラを使い続けています。この作品はα6000で撮影。コンパクトで軽くて取り回しが良く、連写も利くところが気に入っています。
「写真は紙に焼いた状態で“完成”とする」。そうした出力後の色味なども含めたこだわりを大切にするベテランフォトグラファーたちが集ったプリント部門には、896名・5,619点の応募がありました。今年はその中から、雄大なザトウクジラの親子をとらえた1枚が最優秀賞に選ばれています。
最優秀賞
プリント部門「最優秀賞」を受賞したと聞き、今でもまだ信じられないという気持ちです。こうした賞に応募し始めたのは去年からで、いつか取れればいいなと思っていた賞をいきなり取れてしまったことに驚き、半ば困惑しています。カメラを始めたきっかけは、もう15年以上趣味で続けているスキューバダイビングで目にする美しい海の光景を写真というかたちで残しておきたかったから。この写真ではザトウクジラの親子の結びつきを表現したいと考え、クジラを驚かせないよう、可能な限り近くで、特徴的な胸びれも含めたその姿を捉えることに注力しています。こちらから近付くと逃げられてしまうので、彼らが向かいそうな方向を予測して先回りし、彼らが気を許して自分から近付いてくれるようになるのを待ちました。これがなかなか大変で、ここ数年、やっと気を許してくれるクジラが増えてきたところです。
撮影にはα7 IIIを使っています。それまで他社の一眼レフを使っていたのですが、α7 IIIから水中撮影で重要なバッテリー寿命と連写速度が大きく向上し、乗り換えを決意。ミラーレスカメラはシャッターを切る前から撮影設定が反映された画を確認できるため、とても撮りやすく、失敗が激減しました。今後は、実際の距離だけでなく、心の距離もさらに縮めたようなクジラの写真を撮影していきたいですね。
非常に穏やかな雰囲気のある写真なんですが、実は赤ちゃんクジラを守っているお母さんクジラはかなりナーバスな状態になっています。「赤ちゃんクジラに何かあったら許さないぞ」と、そういうふうに警戒しているんですね。僕自身、何度もクジラを撮っていますが、過去に撮影スタッフが赤ちゃんクジラに抱きつき、お母さんを怒らせてしまったことがあります。その時は僕も巻き込まれ、胸びれで叩かれて気絶してしまったことがあります(苦笑)。クジラの撮影はそれくらい危険なんです。
しかし、この写真を拝見していて、そうしたお母さんクジラの警戒感、緊張感は全く感じられません。きっと、作者の平嶋さんの醸し出すリズムのようなものが穏やかでお母さんに安心感を与えたのではないでしょうか。その上で、決して撮影条件が良好とは言えない中、シャッタースピード、絞り、レンズワーク全てがハイレベルでとても素晴らしい作品に仕上がっています。文句なしに最優秀賞に相応しい一枚です。おめでとうございます。(写真家・中村征夫氏)
▼▼受賞作品をクリックすると、拡大してご確認いただけます▼▼
やや黄色みを帯びた夕方の光の絶妙な色味や、雪煙が舞う一瞬の姿、そして険しい山の様相、その全てから地球の鼓動、大地の鼓動を感じました。癒しの写真では表現できない、「来るな!」という人を寄せ付けぬ自然の厳しさ、緊張感をひしひしと感じる作品です。撮影者がこの荘厳な風景に心奪われつつも、その最高の瞬間をしっかりと収めていることを高く評価しました。野生動物写真同様、自然の風景の写真にも、ここだという「瞬」が存在します。風景写真だからじっくり撮れるということはなく、シャッターチャンスはごくわずかなのです。ぜひ、今後もそれを楽しみながら豊かな自然を撮り続けてください。(写真家・福田健太郎氏)
冬の利尻の南峰は本当に素晴らしいのですが、その場所や行き方を知っている人はほとんどいません。そこで少しでも利尻の素晴らしさを知っていただきたいと思い、撮影に臨みました。ただしカメラはあくまでも登山や自然とのつながり、写真を通じた人や地域とのつながりを体現するアウトプット手法のひとつだと考えています。αの良いところは、広角レンズが高性能で軽く、小さいこと。山へのアプローチは100gでも軽いことが望ましいので、山岳写真用のカメラという意味ではベストな選択肢だと思います。
審査で初めてこの写真を見たとき、その素晴らしい色味にまず心惹かれました。7月に撮影したとのことですが、真夏の鮮烈な光線ではなく、おそらくは曇り空、それも朝方か夕方に撮ったのでしょうか、光の具合が絶妙なんですよね。また、丘陵の曲線も見事に表現されていると感じました。良い風景写真に仕上がっていると思います。
ちなみに私には富良野に住む姉がいるのですが、彼女に言わせるとこうした地形で農業を営むのはとても大変なのだそうです。大型の農業機械は入りませんし、日当たりも悪く、肥料もすぐに流れてしまうのだとか。この写真はそうした場所で頑張っている農家の方々を表現した作品でもありますね。ミレーの『落穂拾い』に例えたら言い過ぎでしょうか(笑)。でも、お世辞抜きに私の部屋に飾りたいと思わせてくれた一枚です。(朝日新聞東京本社映像報道部長・加藤丈朗氏)
北海道美瑛町の広大な麦畑、うねりを伴う地形、綺麗なだけではない厳しい土地での農業風景を収めたく撮影。なお、写真撮影のために1年半、美瑛町に住んでいました。美しい風景で有名な土地ではありますが、農業に従事する方の営みで作られていますので、感謝と敬意は忘れずに撮影しています。
見たままの野生のイルカを撮りたくて、2009年ごろからカメラを始めました。自分が感動した光景を撮った写真がどう評価されるのかと思い、気に入る一枚が撮れたときだけコンテストに応募しています。撮影地の御蔵島へはイルカ撮影に13年ほど通っていますが、壁のような子魚の大群を見たのは初めて。撮影に当たってのポイントは、群れの壁とその大きさを対比するかのように人を配置して、御蔵島の海の豊かさを表現したところです。現在愛用しているα9は無音シャッターやローリングシャッター歪みがないこと、高速連写、ブラックアウトフリー撮影などが気に入っています。
被写体である「ハリオアマツバメ」は水平飛行最速の鳥で、その飛行速度は170km/hと言われています。また、その長い翼ゆえに一度地上に降りると再び舞い上がることができません。飛びながら寝て、飛びながら虫を食べ、飛びながら水を飲みます。高地の池などでは、高速で水面すれすれに飛び大きく口を開けて水を飲みますが、命がけの行為だと思います。その口が水面をかすめるその命がけの一瞬を水面に反射する姿と風圧で後方水面に残す筋状の波で表現してみました。α1の毎秒30コマの高速連写はハリオアマツバメが水面に口をつけた一瞬を狙うために最高の武器になりました。
普段は風景写真を中心に撮影していて、なかなか人が行かないような場所で撮影するのが好きです。今回は、海と山というなかなかありそうでない被写体の組み合わせを狙って撮影しました。迫力ある波しぶきを撮るために何度もシャッターを切っています。α7 IIIの高感度耐性の高さとダイナミックレンジの広さは表現の幅を広げてくれます。また、GMレンズの解像感の高さがとても気に入っており、撮影した被写体を拡大してニヤニヤしています。
高校生のころから写真を撮り始め、カメラ歴は早や半世紀(50年以上)になります。受賞歴は全国コンテスト約500回。主に私の住む地方の風土の中の人々の姿、生活のある風景などです。今回の受賞作品はふだん私が過ごしている環境の中での撮影ですので苦労や工夫はなく、身近にある題材をストレートに表現しました。15年ほど愛用しているα700は写友から譲り受けたもの。今ではだいぶ古いカメラですが現役で愛用しています。
ツキノワグマが山葡萄を探している時の表情を表現しようと思い撮影した一枚です。カメラ歴は約10年。始めた当初からソニーのミラーレスカメラを使用しており、現在は発売と同時に予約したα1とFE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSを愛用中。オートフォーカスのスピード、精度、軽さ、手に持った時の感触に愛着を感じております。
長らく武甲山に雪が降っている姿を撮りたくて、天気予報を見て、雪が降りそうだという日に現地を訪れ、シャッターチャンスを待ち続けました。仮に雪が降っても雲海が足下に広がりつつ、武甲山の様子がきちんと撮れるようなシチュエーションはめったにありません。撮れても数枚ということが多く、満足いく写真を撮れるまでには5年以上もかかってしまいました。α7 IIIを選んだのは、それまで使っていたα7と比べて解像度が高く、画質もグッと良くなったから。他の一眼レフやミラーレスカメラと比べて軽く、持ち歩きが苦にならないことも気に入っています。
雪山の夜が明ける直前、手前の雪や空が赤紫に染まる瞬間が個人的に一番好きなタイミングなので、その瞬間を収めようとしました。雪原の滑らかな質感と雲の動きを表現するため、長秒で撮影し、奥の浅間山を入れつつ、雪原の主張も強めにした構図を意識しました。基本的に登山して写真を撮るので、カメラは軽量、レンズも軽量であることが好ましく、αとGMレンズの組み合わせは大変重宝しています。
はじめは台風接近に伴い暗く落ち込んだ空模様と鮮やかな花の赤色の対比が、自分の不安な気持ちを表しているかのようで面白いと思いカメラを構えました。するとそこに一匹の蟻が。彼はまるで不安など微塵も感じていないかのように働いているのです。この時、これが本来ありのままの自然だということに気づかされました。自然とは今を生きるということです。それを表現したかったのです。撮影に使ったα7 Ⅳは必要にして十分な画素数で、取り回しが利き、システムがコンパクトなので大変気に入っています。
だるま朝日は夕日と違い、日の出のスピードがとても速く感じられます。例年おおよその位置は同じなのですが、この作品では沖合の磯に竿を出す釣り人を太陽の中に入れようとしたことに難しさがありました。カメラに収めることができるのは、その日、その場所で、いくつもの条件が重なり合った、一瞬のワンシーンのような出来事のみ。そんな中で最高の一枚を最後まで諦め切れないのがだるま朝日かもしれません。撮影に使った400mmレンズはシャープな表現力や美しいボケに加え、機動力にも優れているところが気に入っています。
表彰後の講評会も含め、約2時間かけて行われた第39回『「日本の自然」写真コンテスト』表彰式。その最後は全日本写真連盟総本部事務局次長 森井英二郎氏による閉会の挨拶で締めくくられました。挨拶の中、森井事務局次長は昨今、世界を騒がせている戦争などの悲しいニュースを取り上げ、「人間が美しい自然を損なうような出来事が増えている」と、コンテストの盛り上がりと反するかたちで進んでいく自然破壊を嘆きます。しかし、「そうした時にこそ写真の力が発揮できるのではないか」とも会場を鼓舞。そのためにも、このコンテストはやり続けなければならないとし、記念すべき第40回への参加を強く促し、式典の幕を閉じました。
なお、今回の『「日本の自然」写真コンテスト』受賞作品を4Kブラビアの大画面で楽しめる巡回展は現在、日本各地で開催中。
開催場所とスケジュールはこちらからご確認ください。
ソニーストアでは、ご自身が撮影した写真やお持ちの映像を、実際の4Kブラビアに映し出してご覧いただけます。
テレビで楽しむ写真鑑賞スタイルの体験などにご利用ください。
ツキノワグマの生態を、写真の力で皆に伝えていきたい
このたびは、このような名誉ある賞をいただけ、本当にうれしく思っています。
私はふだん風景写真をメインに撮影しているのですが、ツキノワグマの生態にも興味があり、いつかその写真を撮ろうと長年観察を続けてきました。そんな中、新潟のとある森で、偶然、ツキノワグマの親子に出会い、その一期一会の瞬間をうまく切り取ることができたと思っています。カメラを向けた時点で熊たちは私に気がついていましたが、30mほどの距離から電子シャッターを使って撮影することができました。野生動物は音にとても敏感なのでこの機能はもはや必須ですね。
『α7R III』は高画素ながら高感度耐性も良く、自然写真を撮影するにあたってとてもバランスの良い選択肢だと感じています。
今後、さらに多くの写真を撮影していき、絵本や写真集というかたちでツキノワグマの暮らしについて皆さんにお伝えしていければと思っています。