今日は皆さん お集まりいただきましてありがとうございます
今回 司会進行させていただきます松尾と申します
後で自己紹介しますけれども今回MDR-M1では商品企画として担当させていただいております
今日はAkihiro Nishimuraさんを招いての発売記念イベントというところでやらせていただきますけれども僕らはAkihiro Nishimuraさんのことを親しみを込めてAkiさんと呼んでいます
Akiさんは 普段ニューヨークでレコーディング・ミキシングエンジニアとしてご活躍されているんですけれどもたまたま この期間に日本のほうにいらっしゃるといったところでこういった機会を設けさせていただきました
とても貴重な機会となりますのでぜひ楽しんでいただければと思います
というところで Akiさんの自己紹介からお願いいたします
はじめまして Nishimura Akihiroと申します。よろしくお願いします
僕は 今ニューヨークに住んで20年ぐらいになります
2005年の末なのでもうすぐ ちょうど20年ですね
僕は高校を卒業してアメリカの大学に留学という形で行ってボストンのバークリー音楽大学という所でレコーディング専攻 まあエンジニアMUSIC PRODUCTION AND ENGINEERINGという学科なんですけれども
そこでレコーディングエンジニアになるための勉強をしました
その後に就活をして日本に帰ってる時にたまたまインターンしていたスタジオに
バークリー卒業のプロデューサーさんがいて彼に進路相談をしていたら“ニューヨークのエンジニアさん僕の友達 紹介するからその人に話 聞きに行きなよ”って言ってくれた縁があってその人が このAvatar Studios今でいうPOWER STATIONなんですけれどもそこに つないでくれて たまたまそこに入れたっていう形になりますね
そこで約10年間ぐらい修業しまして最初はインターンとして入ってトイレ掃除 コーヒーをうまく作る 誰かに言われたら用事を何でもこなす人っていうふうな修業時代から
アシスタントエンジニアを経てスタッフエンジニアになり2015年頃に完全に独立して
今はフリーランサー フリーランスとして何とか食べていってる状態です
はい ありがとうございます
そして もう1人がMDR-M1の音響設計を担当した潮見さんになります
はじめまして 潮見俊輔と申します
私は 2009年にソニーに入社しました
きっかけは隣に座ってる松尾なんですけれども彼が耳型職人をしておりまして
それをテレビで見かけて 私もこんな面白い仕事がやってみたいなというので実は入りまして それをきっかけに松尾と同じようにヘッドホンの設計をずっとやっております
その中で ここにお見せしているのは全部 一応レファレンスとしているようなスタジオだったりとかエンジニアが存在するヘッドホンです
それ用のヘッドホンってことですか?
ではなくて 上段のほうはリスニングのヘッドホンなんですけれど
後ほど違いは説明するんですが
マスタリングスタジオという所に合わせて作ったもので音楽を純粋に楽しむ方が楽しむモデル
そうです
フォローありがとうございます
下が 要は作ってる人用のヘッドホンということですね
このデジタルサラウンドヘッドホンはどちらかというと楽しむ向けのヘッドホンではあるんですけどこのモニターヘッドホンといわれているものは音楽を制作している方々向けの
ヘッドホンとして出してます
実は時期としてはこのMDR-Z1Rというのはニューヨークにあるソニーのマスタリングスタジオと音を一緒に作っているんですけどそこに結構行く機会があるタイミングでこちらの Sony Music 乃木坂で作ったヘッドホンもやっていました
そのヘッドホン 乃木坂のエンジニアに“実はこういうのもやってますよ”という話をした時に“ニューヨークに知り合いのレコーディングエンジニアがいるよ”“紹介するよ”っていうので紹介していただいたのがAkiさんでした
乃木坂のエンジニアっていうのはSony Music Studiosっていうのが乃木坂にありまして
彼らがよくニューヨークにレコーディングしに来ていたんですね
当時 伊藤八十八さんというジャズですごい有名なプロデューサーさんがいて彼が もともとソニーにいらっしゃる時に日本にジャズを輸入したといっても過言ではないぐらい
ジャズの名盤をたくさんソニーから売り出して彼が ソニーを辞めた後自分でレーベルを立ち上げてその一環でニューヨークのミュージシャンをレコーディングする機会っていうのがよくあって
そこにソニー乃木坂のレコーディングエンジニアさんが よく来られてて僕がアシスタントとして使わせていただいてよくそこで お互い情報交換していくうちに彼らを通じて潮見さんを紹介してくださったという12〜13年前ですかね
そうですね なので結構 長い付き合い
当時は仕事としての関係性というよりは行った時に会う…
ご飯食べて いろいろ話して
“最近こんなの作ってんだよ”“何 作ってるの?”
あまり教えてくれなかったりするんですけど
社外秘っていう感じで教えられないんですけど
いろいろ お互いに現状の報告をしたりしてそこの関係性が続いている中で
Akiさんから まだAvatar Studiosという名前の時ですけど実際にスタジオも
見せていただく機会があって
その時の印象は 結構 日本のスタジオと大きな違いを感じたのもあったので
今回 そのM1をヘッドホンとして開発する時にぜひ ここのスタジオで音を
調整してみたいなというふうに思ったのが実は そこからきっかけが始まってたりします
私の紹介をし忘れてたので私は もともと2005年にソニーに入社してイヤホンやヘッドホンの設計を数多くやってきました
その中で10年ほど前ですけどもJust earというカスタムイヤホンの事業を
社内で立ち上げましてそれを継続しています
今 その流れの中で プロオーディオマイクロホンですとかモニターヘッドホンといった
音楽制作に使うようなオーディオ機器を開発する そういうところの企画を担当しております
ちょっと話 戻るんですけれども今日は MDR-M1という新しく出たモニターヘッドホンについてのお話をさせていただきます“超広帯域再生を実現するクリエーター向け新定番密閉型モニターヘッドホン”ということで
- めちゃめちゃかっこいいじゃないですか
- かっこいいんですよ
“新定番”自分で言っちゃいますか
まだ なってもないのに“新定番”と うたうと
ここには やはり これまでソニー数多くのモニターヘッドホンを作ってきまして
多くの方々に使っていただいているというのがある中で
新たな 定番モデルになるようなものを作りたいということで
自分たちへの戒めというか
鼓舞も含めて こういった うたい方をさせていただいております
このヘッドホンを実際に商品として開発するにあたってどのように作っていくかっていうのを考えるところから始まりました
実は これの前に 2019年かなMDR-M1STというそれこそ潮見さんがSony Musicのスタジオで共同開発したヘッドホンがあるんですけれども
それと同じような考え方でワールドワイドで販売するようなモニターヘッドホンを作りたいと考えました
日本では Sony Musicの乃木坂のスタジオがあってそこのエンジニアの方と一緒に
開発をしていったんですけれどもこのM1についてはまた違ったスタジオをレファレンスとしてまた 違った方々とこの商品の開発をしていこうとその中で どこのスタジオをレファレンスにするのが良いのかというのを社内外 いろんな方たちと会話していく中で潮見さんからもお話がありましたけれども
このPOWER STATIONというスタジオの名前が挙がったというのがございます
潮見さん この辺りのPOWER STATIONを選ぶ理由というかきっかけみたいなところの話があれば
まず ここはAkiさんと一緒に話をしたほうが分かりやすいかもなんですけど
まず 日本と海外でスタジオの作りも結構違うなというのが印象としてありました
ここはPOWER STATIONのスタジオのコントロールルームなんですけど
一方 Sony Music Studios東京の乃木坂という所にあるんですけれども
そこのスタジオを見ていただくと結構 壁の材料とかスピーカーも 違うような感じで
エンジニアがコントロールルームのこの一番いい卓っていわれているコンソールの前で聴く音にも結構 差があるなというふうに感じましたね
実際 結構ありますよね
そうですね POWER STATIONの作りっていうのは本当にエンジニアさんが作ったスタジオ エンジニアさん主体で作ったスタジオなのでエンジニアが とてもやりやすいように
作られてるんですね
POWER STATIONというスタジオは1977年にもともとメディアサウンドっていうスタジオが近くにあったんですけれどもそこで働いてたトニー・ボン・ジョヴィっていうジョン・ボン・ジョヴィのおじさんがいてその人が エンジニアプロデューサーだったんですけど
彼が当時メディアサウンドにいたボブ・クリアマウンテンとかナイル・ロジャースとか
今でいう超巨匠のエンジニアさんたちがまだ20代とか30代だった頃に自分たちの小屋を持とうということでこのPOWER STATIONに来てこの すごい特徴的なのがドーム型の
ライブルーム メインルームなんですけれどもそれはメディアサウンドがもともと教会だったんですね その教会の響きっていうのを 何となく その雰囲気 響きをそのコピーじゃないけれどそこを模写して作ったのがこのメインになっているライブルームになります
だから日本のスタジオと比べて反響音がすごいあっていい感じの響きがあるのでデッドではないんですよね
そう デッドではないけど心地いい
結構 反響がありすぎるとわんわんしちゃう印象もあるんですけどそんなことはなくて
程よい残響感があるようなすごい自然な山の中のロッジにいるような感じですね 木の感じもちょうど真ん中とかも響きが良くてこういう響きを生かしたような設計が結構されているんだなっていうのを感じました
今 使ってるスピーカーもATCのスピーカーが使われてて乃木坂のほうは10MとかですかねヤマハのNS-10Mというド定番ですね
もともとNS-10もPOWER STATIONで使い始めたんですよ
ボブ・クリアマウンテンっていう人が当時は この赤いおっきいスピーカー“ラージ”ってうちら 呼んでるんですけどラージしか使わなかったんだけどボブ・クリアマウンテンっていう人がこのいわゆるニアフィールドモニターコンソールの上に置く小さいスピーカーを使い始めてこのNS-10を使い始めたのが本当 この部屋ですね
- この辺に置いてたんですか?
- そうですね
この辺 普通に置いてたんだけどそれが ボブ・クリアマウンテンが作った音楽
例えばデヴィッド・ボウイだったり
ロキシー・ミュージックだったり
それが すごい世界的にヒットしたからそれが世界の定番になったと
だから それがね 新定番を作った人って
我々も そうなっていけるといいですよね
あと スピーカーの違いであったりとか 部屋の材質
木に対して結構 布系の材料で吸音が強いのが乃木坂スタジオの特徴で音の響き感も ちょっとコントロールルームでも違うのがありますね
次 お願いします
実際に とる部屋 レコーディングルームも結構 見て分かるとおり違うんですけど
こちらは結構 響きを感じる部屋に対してSony Musicのほうは響きを計算して作ってるような感じですね
響かないですよね
- 基本 デッドめ 響きが少ない
- 天井 高くて
癖はないけど 何かこう独特の響きっていう感じはないけど
でも かっこいいスタジオですよね
赤い窓 何やねんってめっちゃ毎回 思ってるんですけど
確かに これはのぞき込めないですしね
何のために あの窓は付いてんだろうってずっと思ってるんですけど
やっぱ結構 こだわってるみたいで乃木坂駅という地下鉄が近くに走ってるんですけど
やっぱり そのノイズが響かないように地下3階分 丸々掘って そこに宙づりで
スタジオを造ってるらしいんですよ
結構こだわった設計もしているようなんですよね
音の違いはありますね
あと地下鉄会社に ちょっと頼んで線路を磨かせたみたいなことを言ってましたよ
そこまでやったんですか
滑りが良くなるようにそこだけノイズが軽減されるように
って 八十八さんとかその辺の人がおっしゃってたんです
本当かどうかは分からないですけど都市伝説です
何か ありそうな気もしないでもないですね
あと 結構 顔を合わせて演奏できるような作りになってますかね
POWER STATIONは やっぱりミュージシャン同士がすごく演奏しやすくて
実際に こうやって皆様のお顔を見て話したほうが とてもやりやすいし
ここに やっぱり何か 何て言うの窓も大きいんだけどすごい閉鎖感が感じるんですよね
乃木坂っていうのは
POWER STATIONは 本当にもう生声が聞こえるぐらい遮音性がなかったり
本当 どこにいても全ての人の顔が見渡せるそういった作りになってるので
広いんだけど すごい距離感が近く感じて音楽を作るにあたって一番大切なことは
人と一緒にクリエートする 人と一緒に演奏をするということなので
そういった意味で人と人とのつながりがすごく近く感じられるような作りになっています
あと 実際こっちは遮音をしっかり取ってそれぞれセパレーションを取ったうえで
別で とるような作り…
この戸 開けるのもガッシャーンって開けてガッシャーンって閉められるから
- 何か閉じ込められた感じになるんですよね
- 気密が取れてる感じですし
- じゃあ次 いきましょうか
- はい
今回のMDR-M1では2人のクリエーターの方たちと共創させていただいております
1人はAkihiro Nishimuraさんですけれども
Akihiro NishimuraさんにはPOWER STATIONの立場で協力 参画いただきました
もう1人がマイク・ピアセンティーニといいまして
同じくニューヨークにありますマスタリングスタジオのエンジニアになります
マスタリングエンジニアさんですね
Battery StudiosというスタジオなんですけれどもこれはSony Musicのグループのスタジオになります
実際に我々このM1の開発にあたりニューヨーク POWER STATIONに行って
そこで このマイク・ピアセンティーニやAkiさん そして潮見さんと一緒に
実際にヘッドホンの音作りをしていったといったところでちょっと その時の様子が写真に残っておりますのでちょっとご覧いただこうかなと思います
懐かしいですね 何してるんですか これは
写真 見ても全く分からないですよね 皆さんね
ヘッドホンを着けてパソコンに向かってるところがあったりとか
外して いろいろいじってるところがあると思うんですけど
まずは 先ほどのモニタースピーカーの音を聴きますと
次にヘッドホンを掛けて聴いて音を聞き比べてっていうのを私とかAkiさんも含めてみんなでやりますと
“その音の差っていうのは どう感じた?”
っていう話をここでディスカッションしながら
“じゃあ これはこう感じるよね”
“じゃあ ここは直したほうがいいね”
っていうのをディスカッションしながら
ディスカッションした後に私が白い机の所でヘッドホンを開けて穴を開けたりとか
調整する部品を交換したりとかっていうのを30分ぐらいしてましたね
そう 僕もちょっと話していいですか?
- どうぞ
- 話したいから
今回“ヘッドホンの調整にニューヨーク行くから”とかって聞かされて実際 どんなことをしてるのかって全く知らなかったんですよ
普段 ご飯しか食べてないし
普段 どういうものを作りたいとか
今回の企画になるようなたどれば お話はあったけど
実際どのような作業が調整っていうんだろうっていうのは全く知らなくて
僕もすごい興味があって
要は この右上の写真とかが一番 我々の作業風景ですね
実際レファレンスとなる音源がいくつかあって
それをまずスピーカーで聴いて
“あっ この音 私 知ってます”
“低域はこれくらいになってHighはこれくらい出るよね”っていうのがある中で
それを日本から持ってきた試作品のヘッドホンを聴いた時に
要はスピーカーの聴いた印象とヘッドホンの聴いた印象を近づけるという作業がいわゆる調整という作業になります
そこで僕らが
“いや もうちょっと何かLowがモコモコしててクリアな感じが聞こえない”とか
“すごいHighのトップが耳障りですごくうるさく感じる”とか
そういう何か抽象的なこともだし
あと“EQの周波数的にもっと500Hzがもうちょっと出たほうがいいよね”とか
“4Kがちょっと でかすぎ”とかそういうことを潮見さんに伝えると
この白い机の上に30分ぐらいこもって穴開けたり 削ったり テープで塞いだり
ちょっと訳分かんないことをやってるんですよ
その間 コーヒーとか飲んでリラックスしてもらって
僕らはマイクとか みんなと話してライブルームに楽器とかもセットアップしたので
ピアノ弾いたりドラムたたいて遊んでて潮見さんが“ちょっと聴いてください”って言って
もう1回 聞き比べたら確かにさっき言ったことが変わってるみたいな
それって何かすごいアナログな方法で本当に この耳のフォームの所何て言うんだっけ?
イヤパッド
イヤパッドを開けて 中開けて
もう本当 フィジカルに穴を開けたりしてるんですよね
こういう部品とかも いろいろあってこの通気を変えてみたりとかこのユニットの後ろにある穴とかこの辺の穴だったりとか その場で直せるものは全部直して調整をしてみました
うちらからすると空気の穴がこう抜けたら音がこう変わるとか全く分かんないんだけど
そういうことを言葉にしたことを体現してくれる音のスペシャリストですよね
かっこいいなって その時初めて思いました
ありがとうございます
行くと2〜3日スタジオにこもって作業するんですけれども当然 そこで全てが完結するわけではないのでいろいろと宿題を持ち帰ってまた数か月後に もう1回スタジオに行ってっていうのを何回か繰り返してマイクも実際この音を聴いてもらって
彼もグラミー ノミネート…
取ってるんじゃない? いろいろ
まだWinnerではないけどノミネートしてたりするぐらい
耳のプロフェッショナルなので一緒に音を聴いてもらって
実は このモデル以外でWH-1000XM6とかを
マイクには彼のマスタリングスタジオのこの音に対してのコメントと合わせるような
調整を実は やってたりするので結構 慣れてはいるんですね 彼も
音のスペシャリストですからね
マスタリングエンジニアはそういうことを毎日やってる人ですからね
ひたすら どっちかっていうとそれを調整してますもんね
なので 結構そういうのを3〜4回ぐらい出張で行きましたかね
ソニーでモニターヘッドホンといえば実は結構 機種がございまして
今 現行で 日本で購入できるものっていうのが5機種ほどあります
今回そのMDR-M1が一番新しいモデルになるんですけれども
このモデルはそれぞれ5機種ありますけれども
実は用途とか 使い道みたいな
どのように使うかみたいなところの違いがあったりします
そこの分かりやすい表がありますのでご覧いただこうかなと思ってます
まず 用途ですね
“レコーディング ミキシング マスタリング”とありますけれども
これは音楽を作る時の段階の違いになっております
Akiさん よくこれを料理に例えて話されることがあるんですけれども
“レコーディング ミキシングマスタリングって”“どういうことでしょうか?”
と聞かれると
レコーディングは実際アーティストと入ってこういう状態ですね 今
歌をとって バンドをとってるんだけど料理でいうところの素材集め
本当に いい素材を最高の状態でキッチンまで持っていく
ミックスっていう作業はレコーディングしたものを自分の作業部屋に
僕は持ってるんですけどそこに持ち帰って要はキッチンで ぐつぐつ煮たり
焼いたり おいしい料理を作るキッチンでパクッとしてももちろん おいしいんですけど
それをお客様に提供するってなった時にきれいなお皿に盛り付けて
温かいものは温かいお皿で冷たいものは冷たいお皿でっていう
その最後のひとさじの調整をしてくれるのがマスタリングエンジニアさんで
微妙に役割が違うんですね
レコーディングとミックスは同じ人とか同じジャンルなんだけど
マスタリングだけ ちょっと違うという
本当に0.1デシの差を結構 最後詰めて結構マジカルなんですよね
マイクはそういう仕事をしてます
これ 何をどこに使えばいいのかっていうのを教えてほしいんですけど
まず レコーディングも2つに分かれているのはちょっと 気になるかなと思うんですけれど
さっき言ったコントロールルーム側と奥で とる部屋 あると思うんですけど
とる部屋でボーカリストの方がヘッドホンを着けて歌う時に使いやすいのは
実はMDR-CD900STとMDR-7506というモデルになります
なんでなんですか?歌用に作られてるんですか?
歌がメインってわけではないんですけど特に歌の時に その差が分かりやすくて
歌う時 ヘッドホンを着けてこうやってしゃべると自分の声が増幅されて聞こえるような
感じになると思いますこうやってしゃべってみてもあると思うんですけど
ヘッドホンを着けて歌ってる方はマイクで拾った自分の声とか演奏をヘッドホンに返しながら自分の体内も通って 塞いだ状態で自分の声も一緒に聞こえてるわけですよね
なので結構 中低域が声分は増幅されるんですけど返しの音と合わせて ちょうどいいバランスになるような設計になってます
例えば そこの聞こえざまが普段の印象と違っちゃうと無理に声を張ったりとか
歌い方が変になっちゃったりするので結構ヘッドホンを着けて歌ってちょうどいいような聞こえになるように
普通に聞くと“下があんまりないよね”って感じるんだ
そうですね 相対的にやっぱりちょっと高域のところが目立って聞こえるようになるので
逆にエンジニアさんからするとノイズが より聞き取りやすくなったりもするので
結構エンジニアさんは そういう使い方を900STとかもされてる方が多いです
じゃあ歌の人だったり サックスとかトランペットとか吹く人は上がオススメ?
オススメですね
ギターとかベースとか我々みたいなエンジニアさんは下がいいっていうことなんですか?
普段 聴いてるスピーカーの印象に近いのでまさに ご自身の部屋に持ち帰っての
作業とかだとその印象も たぶん継続して作業もできると思いますし
ギターとかベースの方とかはコントロールルームで聞こえてる自分の演奏をどう聞こえてるのかなとたぶん気になるって言われたりしますかね
そういうところに結構向いてるのかなというふうに思います
一方 ちょっと珍しいんですけどMDR-MV1という背面開放型ヘッドホンも2023年に出したんですけれどもこちらはソニーが360 Reality Audioという立体音響をやってるんですけれども
そのミキシングにも使えるように その音が どこに配置されているかがより分かりやすいような音の設計になっていたりします
少し ちょっとここは違う感じですね
同じモニターヘッドホンといってもどの工程で使うのかどういう目的で使うのかによって
その音作りであるとかその仕様も変わってくるという中でM1はレコーディングからミキシングまで使えるということで設計させていただいております
具体的に技術的なところでどういうことをやっているかというのを
音に関わるところとあとは装着性 仕様に関わるところでご説明させていただきたいと思います
まず音のところですね
潮見さん ちょっと簡単にご説明 お願いします
まずは 仕様になるんですけれども低い5Hzから80kHzまで
普通 人の耳に聞こえるのは20kHzまでといわれる…
- 20Hzから20kHzですね
- そうですね 下は20からですね
なので結構人の聞こえるっていわれている帯域よりもより上も下も広いような帯域になってます
ちょっと ここからは難しいかもですけど
じゃあ なぜ上が聞こえたらいいのかというと
実はその帯域だけではなくて例えば普段 聴いている音を波で表すときれいな波ではなくて細かいギザギザがあるような波になっているんですね
そういうものも結構 細かく再現するためには実は高い帯域まで再生できる力がないと
普段 聴いてるような音の状態を再現できないというのがあるので
実は ここが結構“みんなは聞こえないよ”みたいな話になると思うんですけど
普段 聴いてるような音の印象にちゃんと近づくような能力を持ってるっていうのがハイレゾになります
80kHzまで鳴らせるっていうのがあるとやっぱ Highがすごいシルキー スムースで
伸びがあるように人は感じるんですよね
- そうですね
- 聞こえなくても感じると
例えば 20kHzってなった時に山と谷しか見えない状態だと
ギザギザになると普段 聴いてる音と音が違っちゃうじゃないですか
そういうところをきれいに再現できるためにはより高い帯域が必要だったりします
あとは スタジオで穴を開けたりして調整していたところは
実は こういう穴だったりするんですけれども
低音の結構モコモコするみたいな話があった時にはここを調整して よりクリアな…
それは 定番というか
業界では常識なの?
穴を開けると低音がクリアになるみたいな
穴を開けるとというわけでもなくてやはり最適な寸法感が実はあったりするので
そこがソニーのノウハウだったりします
なんでそこに開けてるとかは言えないってことね それは言っていいの?
なんで開けてるかを言うかっていうと実は そこにも音響理論がありまして
ロジックとしては ここをこういじるとこういう特性になるみたいなのがあるんですけど
その音がどういう印象かというところはやっぱり Akiさんみたいな方と会話をして
自分の中に蓄積がないと理解できないと思うので
そこは やっぱり私も積み重ねてきた…
適当に穴開けとこうじゃないんですね
- じゃないんです
- すばらしい
ぱっと見たら穴が開いているように見えるんですけれども
実際には 細かく寸法とか長さとかそういうのも含めて調整されてますね
- こだわりが詰まってるわけですね
- そうですね
あとは この専用設計ドライバーというものもありますが
あと プロモデルというのは結構10年20年 長期にわたって同じ品質で販売していく想定で設計していくので
例えば100個作って2〜3個しか いいの作れないねとか
とても難しい加工なのでこの所の工場でしか作れないね
みたいなものがあると
実は供給できなくなったりする可能性が出てきます
なので こういうプロモデルはどこでも手に入るような材料なるべく汎用品を使うように
ただ 形状としてはちゃんと細かく詰めていってその特性を再現するというようなアプローチを取ってます
特別な材料とかは使ってなくて要は 設計した人の発想力で10年後20年後も同じもので
作り続けられるようなそんなSDGsな SDGsではないか
でも持続可能性ですよね
でも実際にそこは大事で
例えば 作ってる国を変えますとかっていった時にもこの国でしか手に入らないとなると
やっぱり それができなかったりするので
やはり どういう所でも手に入りやすいものを選ぶというようなことをやったりしてます
あとは それの形状でやっぱり その特性を出すためにこのドームといわれる真ん中の形状であったりとか周りの より動きやすくするようなエッジというところの形状も詰めていってますね
あとは ボイスコイルというのも結構スタジオで使ってもらった時に
ノイズを結構 感じるっていうふうに最初…
そうですね 何かレコーディングしてるとやっぱノイズってすごい大事な要素で
マイクにノイズが乗っているのかケーブルに乗っているのか
マイクプリに乗っているのかギターアンプに乗っているのかって
それをね 作業を止めてノイズの発生源を探るってなるとクリエーティブな時間がどんどん減ってミュージシャンの意識もちょっと意識が遠のいちゃうので
そこでヘッドホンを挿した瞬間に何か“サー”っていってると
やっぱ 何かそれはすごく嫌だったんですよね
それを言ったら それは穴を開けるとかじゃないから
1回 持ち帰って 次持ってきてくれたら“サー”がなくなってるっていう
何かね 要望を聞き入れてくださり
それはコイルなんですね?
コイルという言い方もそうなんですけど
コイルの長さが変わると抵抗値が変わってくるのでそこでインピーダンスという値が変わります
抵抗値に近いものですね
そうすると結構 感度は最初 良くしてたんですけどそうすると 結構ノイズも一緒により聞こえやすくなっちゃう
特にヘッドホンによって特性が大丈夫であれば目立たない場合もあるんですけど
今回 目指した音に対しての特性でヘッドホンを作るとちょっと目立つようになってきた
っていうのがあったので
じゃあ コイルでちょっと調整してみようかというので対応してみました
続いては あれですね装着性とか 仕様のところの工夫です
イヤパッド自体も結構 音響の調整として音の調整としても厚みを変えることは結構あるんですけど今回は長時間 6時間以上着けたりもしますかね 作業とかだと
僕自体はやらないけどレコーディングしてる時のミュージシャンは長丁場になる時はあるから結構 音はいいけど重いとかいうものがすごい多くて それを潮見さんに言って
本当に着けてて疲れないで着け心地が良くて軽いものっていうのは
要望を出しましたよね
なので まさに軟らかい低反発ウレタンを使ったりとか 軽くして
あとは締めつけの圧も結構 優しくしてあげることでただ 優しくしすぎるとずれちゃったりするので
その ちょうどいいバランスっていうのを探って 追い込んでいきました
あとは それこそホームスタジオみたいなとこに持ち帰って作業したりとか
例えばカフェでも今だとラップトップPCで音楽が作れる時代なのでPCに じか挿しで音をとって聴くこともあると思います
なのでスタジオで使う時は2.5メートルぐらいの長いものは やっぱり必要なんですけど
制作環境の変化で1.2メートルがちょうどいいような使い方も存在してくるので そういう意味で2本 付けました
挿すものによってはこのプラグもやはり変わってくるので6.3ミリの標準と3.5ミリのステレオミニプラグを切り替えられるような仕様にもしています
はい これまで私たちのほうの説明を長くしてきたんですけれども
ここからは今日ご参加いただいている皆様ですとかほかの会場で参加いただいた皆様から
事前にご質問を頂いております
そこに まずは回答させていただいてその後で会場で追加のご質問を受け付けたいなと思っております
まず Akiさんに対するご質問ですね
はい “レコーディング ミックスについて”
“レコーディングやミキシングをする時に最も重視することは何ですか?”
“ミックスする時に心がけていることはありますか?”
それは やっぱりミックスやレコーディングのサウンドエンジニアという仕事は
自分1人で完結するものではないのでやはり そのアーティストさんありき
アーティストさんが作りたいものを僕らは一緒に作る
どう作っていくかっていう時にレコーディングスタジオで音 出します
この人と仕事しますっていう時に心がけてるのはその人が作りたいものを自分がどう表現できるか
その人の頭の中にどんな音が鳴っているかっていうのを常に想像してその彼らの頭をちょっとのぞき込むような気持ちですね
彼らが描いている頭の中のピクチャーが見えるとミックスしてる時もそれに合わせていくだけの作業なのでそれを探るという作業は時間がかかるんだけど道筋が見えると作業自体はスイスイ行くのでそれを常に頭の中に思い描けるようにって心がけてますね
この4つ目の質問も近いかもしれないんだけど
“ミックスダウンの際はアーティストやプロデューサーとコミュニケーションを取られると思います”
“そのやり取りをする際どのような意識をされているのですか?”
やっぱ それは彼らの作りたいものを一緒に作るという中でやっぱ一期一会な関係もあったりして
もしかしたら 初めてのレコーディングをするかもしれないし
彼らが 5年間 10年間すごい頑張ってお金をためてニューヨークに来てくれてレコーディングするかもしれないし
僕はね レコーディングっていうと本当 週2〜3やってミックスも毎日やって
何か流れ作業になりがちなんだけど
何か常に 彼らにとったら一生に1回の経験かもしれない
ここで皆さんとお会いできるのも今しかないので何か そういう 何て言うんだろうな
一期一会の精神を常に大事にしようかなと思ってます
“ストリーミングやスピーカー ライブのさまざまな環境で再生される中”
“それらの変化に対応して どこで聞いても作品の意図が伝わるミックスを”
“行うことも大事だと思います”確かに
“そうした複数のリスニング環境を意識して”
“何かミックスダウンをするうえで工夫されますか?”
しないです
その環境によって何かを変えるっていうのは現場にいるエンジニアさんがすることなので
例えばコンサートのPAさんとかはそれはすると思うんですけれど僕らはアーティストの
表現したいものを作っているのでアーティストが表現したいものが車の中だったらどう聞こえるとかこの会場だったらどう聞こえるっていうのは全然 意識しないですね
“制作環境について”
“楽曲などをプレビューするモニターにおいて大事にしていることは?”
自分の中で基準を作るってことです
ヘッドホンのいいところって本当 どこにいても同じ音が聴ける
スピーカーって誰々からオススメされてとかトップのエンジニアさんが使ってて
“このスピーカーいいよ”って言われて自分で買ってみてもその部屋の特性だったり
スピーカーのちょっとした置き場によって音って変わってきちゃうんですよね
そういった意味で ヘッドホンはやっぱ どこで聴いても同じだし
たくさん聞き込むことによって自分の中のスタンダードというか基準ができるんですよね
この音で聴いて いろんな楽曲でこう聞こえるっていうことは
Lowがちゃんと出てるよね Highが出すぎてるよねみたいな
その基準を作ることを大事にしてますね
“近年 モニタリングやリスニング環境機材の進化など”
“音楽制作を取り巻く技術が大きく変化していると感じます”
確かに
“特に変化を強く感じるポイントはありますか?”
機材は確かに変わってるし新しいテクノロジーもたくさん出てきてるけどそういうテクノロジーの部分は感じるポイントではあるけど
結局 音楽って人が作ってるものだから根本的なものは僕はあまり変わってないと思ってて
そういった意味で 強く感じる…テクノロジーは進化してるけど
音楽を作る人は変わりはないと思ってます
じゃあ 次 お願いします
“日本と海外の音楽の音の違いについてどこからその差が来ているとお考えでしょうか”
“洋楽とJ-POPの楽曲構造の違いからでしょうか?”
そうですね やっぱりアレンジだったり音の 特に声ですよね
日本語 うちらの声めっちゃ聞きづらいと思うんですけど
日本語って“さしすせそ”とか“ツィッ”とかいう音があまりないんですよね
母音が多いっていわれますね
英語は それがたくさんあって
それによって 音楽のアレンジ楽曲構造も違うのかなとも思います
さっきの教会の話もあると思うんですけど低音がしっかり聞こえるような生活環境で
生活を日本人はしてきてないですよね
してないかもね 中域だよね
どこ行っても うるさいしね
すみません 雑なこと言って
そういう違いも たぶんあって低音へのリクエストのところだったりも
日本と海外でも違うのかなという気はしますね
“自分の基準としている音質を初めて知ったのは自分から音質を作りながらですか”
“既にあった音質を聴いてからですか”
どういうことなのかな
-“基準の音って どんなの?”みたいな
-“基準の音 いつできましたか?”みたいな
それは やっぱ小さい頃から僕はピアノやったり ギターやってたり
10代の頃 たくさん音楽に触れて育って
好きなバンドとかあるじゃないですか オアシスとか
そういう音 聴いて 超かっこいい
ニルヴァーナ 超かっこいいみたいな
それが自分の中のロックの最高の音みたいなのができるので
それは自分の経験から 基準となる音
プロとなって…学生の時に 今もですけど
常に いい音って何だろうって思いながら仕事はしてるし
来年 同じ質問されたら違うこと言ってるかもしれないんだけど 模索中でもあります
AIについて“ミキシングにおいて
AIの導入が進んでいるのでしょうか”
“AIの技術の台頭を好意的に受け取っていますか?”
Ozoneなどの制作サポートシステムがどう思うかってことだね
Ozoneとか 皆様 ご存じですか?
簡単に説明するとマスタリングのソフトウエアっていう最終的な工程をするソフトウエアなんですけど
ボタンをポイって押すと勝手に その楽曲を分析してくれて全体のレベルを上げたりとか
人が聞けるような雑なミックスとかでもちゃんと聞けるように ある程度ボタン1個 10秒でやってくれるんですよ
要は その仕事の内容としては僕っていうよりそれは マイク・ピアセンティーニ マスタリングっていう作業なんだけど
実際 このミキシングでもAIの技術っていうのは だいぶ進んできてて
AIに頼んだら 例えば80点を取るのは10秒でできるかもしれないけどそこから先がなかなか上がっていかない
僕も よく使ってて
Ozoneで まずピッて押してOzoneに教えてもらうんだけど
“Lowが出すぎてるよ”とか“Highが足りないよ”って言われたらそれを狙いとして作ってたら“よしよし 俺はいい線いってるぜ”とか逆に意識してないところが“出すぎてますよ”とか言われると“そうかそうか 気をつけよう”とか思ったりします
だからアーティストに投げる前にAI 友達ぐらいの感覚で俺の どうかなっていう感じでよく聞いてますね
AIもね 彼らに投げて良くなったらそれでいいしバジェットも抑えられたらそれでいいしそれに負けないように一緒に共存できればいいかなって思ってます
“キャリア 仕事について”
“多くのアーティストと作品を手がけられましたが”
“フリーランスのエンジニアとして信頼を得るためにどのようなステップを踏まれましたか?”
“技術面だけでなく 仕事を広げるうえで大切にしてきたことを教えてください”
そうですね 僕もね インターンのコーヒー作って 掃除してってとこから始めているので
そこから やっぱりまず 誰に認めてもらうかというと同じ職場の一番近い同僚の人に
こいつは言ったら言ったことができるよねっていうところからだんだんステップアップしてきたので
常に与えられた環境で120%の力が出せればいいなって思ってるし
キャリアも 僕 20年ぐらいになってきてもっとね 人と人とをつなげたりとか
人とのつながりでやってこさせていただいたので
こういう今回 機会を頂いて人とのつながりを大事にしていけるとキャリアも上がっていくのかなっていうふうに思っています
今回も Akiさんのほうからぜひ 音楽の制作とか興味あったりとか 携わってる方と
お話ししてみたいというリクエストをもらったのでこの場が本当にできてよかったなと思います
そうですね ありがとうございます
“ヘッドホンの音質について”これは技術的なことですよね
“音質のこだわった部分ヘッドホンの音質の評価基準”“製品のアドバンテージ”などなど
乃木坂のエンジニアさんと僕の意見が一番違うところは乃木坂の人は中域を大事にしてるんですよね
M1STをやった時は 音楽の大事な要素の8割は中域にあるというふうに…
- 全くアグリーできなくて
- 乃木坂のエンジニアの方は言っていて
当然 私も両方の方とお仕事を一緒にしているので当然 差があるのは分かってます
ただ さっき言った言語の違いであったりとか
あと 音楽の その国の歴史もあるのかなというふうには感じますね
これがいいって思うところは低音が すごいクリアにタイトに聞こえて
なおかつ高音の伸びも悪くない真ん中が ちゃんと空間が見える
中域が膨れすぎると デンス…デンスって何 密度?
- ちょっと密な ぎゅっとした感じですかね
- 密な感じになって
前面に押し出されるんだけど空間が見えないんだけど
これは 生の空間が目をつぶって聴くとちゃんと聞こえるような印象ですよね
そういうアドバンテージがあって僕の評価基準は全体の空気感がちゃんと見えるところ
でも本当に軽くて着けやすいっていうのはありますよね
そういうところが すぐれています
ここからはヘッドホンそのものについての質問になってくるので
設計の潮見さんのほうから回答いただければと思います
上の“音質について”っていうのは“音質でこだわった部分”であったりとか“M1STとM1のチューニングの違い”だったりとか“M1と7506の音の違い”についてですかね
音質について こだわった部分はこだわりを捨てることですね
自分の中の音質の基準も いい音だろうと思ってるものはあるんですけど
それを持ったまま会話してしまうと自分のいいと思うものと違う時にやっぱり敵として認識しちゃうじゃないですか
対抗になっちゃうんですけど
でも それって結構よくないことでエゴだと思うので1回 それは置いて自分の基準を1回捨ててフラットな気持ちで会話をするっていうことを心がけました
それね ロン・カーターって皆さん ご存じです?
もう 超巨匠のジャズのベースの方なんですけどその人とね全く同じことを言ってました
彼はサイドメンとしてもすっごい活躍してるんだけどレコーディングとか 誰かのために
働くことにおいてセッションすることで何を大事にしているかってインタビューがあったんですよ
彼が言ったのは“Leave your ego at the door.”
“エゴをドアに置いて仕事に行きなさい”って
リーダーが作りたいものを作るとそういうことですよね
- そうです
- 巨匠の域に達してますね
実際 ヘッドホンっていうのはクリエーターの方々が音楽を作る道具であるものなので
自分のエゴで音を作っちゃうと使う方の仕事に支障をきたすんですね
なので 例えばM1STであれば乃木坂のスタジオのエンジニアのSony Music Studiosのエンジニアの方が中域にエネルギーが欲しいというようなことであればそこは大事にしないといけないと思いますし
M1であると POWER STATIONのような見通しの良いような音にするっていうところが
どっちがいい悪いではなくてどちらも基準として存在しているものだっていうふうに
フラットに捉えて設計をするという意味ではやはり そこが一番大事なところだったかなと思ってます
簡単に言うとJ-POP向きか 洋楽向きかって
そんな基準でもいいの?
そういうわけでもない?
J-POPもいろいろあるんですけど ただ 歴史として思うのは日本って歌謡曲があったりアイドルソングから80年代とかですよね 90年代とか
そこから流れで今 アニソンだったりするんですけど
結構 声が 人の声が ちゃんとよく近くで聞こえるっていうようなものが多いのかなと思うのでやはり声が大事だというふうに中域が大事だというのが 結構あるのかな
というふうに私としては思ってます
一方 やっぱり POWER STATIONのほうの音はできた時代…
ボン・ジョヴィの話もそうですけどアコースティックを大事にしてるよね
生音を大事にしてる
響きであったりとかその空気感みたいなところとか低域のパンチとかもそうですよね
結構 そういうところがあるのかなというふうに思いました
M1と7506の違いなんですけど7506は海外でスタンダードに使われている
日本で言うとCD900STのようなモデルなので結構 それも同じように ボーカリストが
着けて歌って使うことも多いモデルです
さっき言った ボーカリストが着けて自分の声が ちょうどきれいに聞こえるようにしているので歌わない人からすると高域が強めに聞こえると“刺さり”って この方が表現されてると思うんですけどそういうふうに聞こえるのかな
一方 M1のほうは スピーカーで聴いてるようなバランスで聞こえる
そこの差があるのかなと思います
あとは“ソニーのほかのヘッドホンとの違いについて”ですね
こちら クリエーター向け 使う人が やはりエンジニアの人
クリエーターの方々なので一緒に仕事をしました
一方 MDR-Z1Rというソニーの20万円を超えるフラッグシップモデルもあるんですけどリスニングモデルといってますね
それであったりとかWH-1000XM6というノイズキャンセリングの今 一番出てる最新のモデル
- そこにあるやつだよね
- そうですね
ワイヤレスのノイキャンのめっちゃいいやつ
向こう側にあるので もしよければ後で聴いていただければと思うんですけど
そういうモデルは やはり使う方が最終的にマスタリングされた音を聴くコンシューマーの方々 一般に我々が配信だったりとかCDとかで聴いて楽しむところで使われることを想定したヘッドホンに対しては
マスタリングのスタジオのエンジニアとコミュニケーションしてどういうふうにお客さんが聞こえるといいと思うかみたいな ディスカッションをして
特にBattery Studiosとかはリスニングの聞こえに近いのでそこの音と合わせて作っていくようなこともMDR-Z1Rでは やっておりました
そういうところが実際に音の違いとしては出てきますね
あと“過去のモデルから変化した部分と変化させるにあたっての技術的背景”ですけど
やはりMDR-CD900STは30年以上 販売していて
こちらのモデルもそれに続けとずっと作り続けられるような材料であったり 加工方法を選定してますが30年以上の時間がたっているので当時は使えなかったけど今は汎用になっているようなより新しい材料というものは存在しているのでそういうところの変化は
出てきているのはありますね
あとは最後ですかね
“レベル合わせ”とか“ヘッドホン アウト”
“アンプの駆動力”ですね
結構 いろんなものに挿して使われると思うんですけど
基本的に人が聴いて大丈夫な音の大きさっていうのは ある程度決まっているので
ちょっと耳が痛くなるぐらいまでちゃんと やっぱり大きくして聴いてみたりとかはしてるんですけど大抵のところでは大丈夫だとは思います
- 聞こえないぐらい大きくすると ヘッドホン…
- 壊れちゃう
壊れる前に耳が壊れる気がしますけど
- そんな大音量も出せるんだね?
- 出せます
例えばコンソールとかも ボリューム…あんまりないと思いますけど
大きい状態で放置してる場合もあるじゃないですか
そこに不意に挿した時に入れちゃって壊れちゃうとヘッドホンとしてもそれでもう 使えなくなっちゃうのである程度の大きい入力にも対応できるようにはしています
ミュージシャンは人によったらすっごい爆音で聴いてる人がいますからね
飛んじゃうヘッドホンとかもあるからそれにも耐えうると
はい そこも ちゃんと設計してます
あとは“外見のデザイン”のところですかね
やはり新しく時代時代で変化もしつつ道具として使われるので
例えば これであればLとRが 色でちゃんと外から見てすぐ分かるような設計にしていたりとか
軽い設計であったりとか
あと 着脱がしやすいように手が滑りにくくなるようなローレットといわれる
細かい形状が入っていたりとか
道具として使ううえで必要なところは維持しつつ時代に合わせて よりデザインが
変わってくるのかなとは思います
“開発の際に さまざまなクリエーターへのヒアリングを重ねられたとのことですが”
“開発初期に理想としていた音と最終的に完成した音の差がありましたか?”
実際 やはり差はあります
一番最初のプロトタイプはこういう音だったら大丈夫かなと思って持っていったんですけど
結構 そこでコメントいっぱいもらってその場で直せるものは直してというのを3〜4回 繰り返したので
最初の思ってたものと最後 出来上がったものは当然 やっぱり差は出てきてます
- それはコラボレーションってことだもんね
- そうですね
自分の好きなものだったら勝手に作ってくださいだもんね
そうなんですよ
やっぱり そこが好きなものじゃなくて
ちゃんと使えるものを作りたいっていうところがあったので
工夫というか そこが私のモチベーションというか 熱意ですね
どうせ出すなら使えるものにしないとダメだなと思うので
そこが大事なところですかね
あとは用途ですかね
“ヘッドホンのモニタリングとスタジオスピーカーのモニタリングは”
“音やバランスの感じ方に違いが感じられると思います”
どちらかというとAkiさんに聞いたほうがいいのかな
そっか そっか
“スタジオスピーカーでのモニタリング”
ヘッドホンとスピーカー違うけどどうですかってことだよね
僕は違って全然いいと思うしさっきも言ったように各自 自分の基準を作ること
ヘッドホンがその基準になればいいかなとはすごい思ってます
だから そうだね 下も“移動先で制作をするため”“モバイルヘッドホン これを活用するとしたら”
はい はい はい
ヘッドホンだとどこでも音が変わらないというところ…
よく いろんな音楽を聴いて自分の中の基準を作ってくださいってことですね はい
ちょっと駆け足で頂いた質問に答えていきましたけども
せっかくなので 今日この場で話 聞いていく中で出てきた質問等があれば伺いたいと思いますけど
どなたか ご質問ある方いらっしゃいますか?
- ご遠慮なさらず 何でも
- どうぞ
失礼します
最近 自宅でレコーディングを始めたんですけれども音楽はずっとやってて
それをやりたいと思ってトライしている状態でノイズ対策について聞きたくて
さっきもおっしゃってた ヘッドホンを着けてギターを挿してという時の“サー”という音
マイクでも ギターでも多少は入るものなのか
それとも やはり ちゃんと対策をしたら限りなく なくせるのか
また もしくはケーブルなのか ギターなのか
どこを対策するべきかをどう見つけていくかというところが
1個聞きたいなって 初心者ながら1個聞きたいなって思ったところと
あと ミキシングとかについて
プロフェッショナルになりたいわけではないんですけど
ある程度 自分のクリエーティブを形にしたい
最低限のノウハウを知るためにどうやって勉強していったらいいか
本を読むとか ネットで調べるとかどういう見つけていき方
学んでいき方があるかという2点についてお伺いしてみたいです
まず最初のノイズですよね
ノイズは やっぱり乗るんですよ
見つけ方っていうのは本当に一個一個 検証していくしかなくて
このPOWER STATIONっていうスタジオニューヨークにあるんだけど
ラジオが乗ったりとかもよくするんですね
ちょっと動かしたらなくなるとかもあって
ギターのノイズとかギターの“サー”という音とかはそれが心地よければ全然ありかなって思ってるし
最終的に楽曲 全部流した時に気にならなければいいかなって思うし
そうじゃない時は困りますけど
俺もどうしたらいいか分かんないっていう時 よくあるんだけど
ケーブル替える 場所を変えるっていうことから始めて
ピックアップを替えるとか ピックアップごと替えるとかね
モデル的にやっぱりコイルの話になるけど
ノイズが乗りやすい構造と乗りづらい構造があるので
それをちょっとずつチェンジしてみる
それが例えば ほかの場所に行って乗ってたらこっちの問題だし
自分の部屋だけだったら部屋のどこかに問題があるので
1つずつ探っていくっていう感じですね
近くに電波がめちゃくちゃ出るような場所があるとか
こういうプロダクトのエンジニアでもマイクを設計しているところとかだと
結構 悩ましいところですね何が原因かっていうのは
いろいろ試して見つけるしかないかもしれないです
ミックス どう頑張るか
今って ノウハウってYouTubeとかインスタとか いっぱい出てくるし
こうすれば いいミックスできるみたいな情報って海のようにね山のようにあると思うんだけど
でも結局やることって変わらなくて
僕が最初にやってたのは特別なプラグインを使わなくて
- EQ 分かります?
- はい
EQとパンニング 左右とあと ボリュームだけを使って まずやってみる
- リバーブは?
- リバーブは使っていいかな
リバーブは空間の後付け使うのは1個 1個だけでやってみる
リバーブを選ぶ時も 歌やってるんだったらいろんなプリセットとか試してみて
この楽曲に合うリバーブをどれかっていうのを探す
それでボリュームとEQだけでまずミックスしてみて
それで ある程度 形になるとそれは いいミックスで
それから コンプレッサーとかサチュレーションとか ひずみとかあるんだけど
それは小手先の技術で もっとアレンジ的な要素もあったりになってくるので
まずはシンプルなところから始めてあとは自分の理想とする
好きなアーティストだったりそういう音を聴いて
自分の声をどうすればその人の声に近づけるか
僕もバークリーの授業でやったのが
Sound a like.
サウンドに近い マネする授業で
昔の楽曲を昔の方法で録音して音を似せて作りましょう
僕はカーペンターズっていう曲を選んだんだけど
カーペンターズのこの曲のようにとるっていうどのようにマイクを立てたらそうなるかとか
どのようにミックスしたら そうなるかっていうのを研究して それに似せる
例えば自分の好きなバンドだったりアーティストの曲を自分で録音してみたり
打ち込んだり 歌ってみて やってみてその音に近づけるにはどうしたらいいか
これはミックスの勉強にはすごいなると思うから
そういうことを僕は やってました
後でゆっくり話しましょう
ほかにご質問を受け付けます
すいません 皆さんにお伺いしたいんですけれども
音楽制作とか 開発しているうえで音響技術でしたり ミックスの技術とかを大学で勉強されたりとかしてたと思うんですけど
それ以外に 音以外のことで何か勉強したことってあったりしますか?
私とかだったら例えば小説を読んでみたりとかして物語を考察とかしたりするんですけど
皆さんも そういうのがあったらお伺いしたいなと思います
- それは人生 全てだよね
- そうですね
人と話して 野原に行って駆け回り
そうですね 虫をつかんでとか
2人とも田舎出身なのでそういうこともやってますし
あと 実は大学では音響を一切 学んでないんです 私
会社に入ってからです
ただ それまでにやってたのは電気回路だったり 電気系 情報系とかエネルギー工学とか
いろいろやっていたので 意外にやってみると結び付くところは やっぱあります
音って やっぱり電気音響変換だったりするので基本的なところも原理としては やっぱり必要ですし
音って空気伝搬するので波の伝搬とかですよね
そもそも音響やってなくてもこれって一緒のことだなとかは理解あるんで
幅広く いろいろ興味を持って似てるなとか感じるのは結構 重要なのかなと思います
僕はエンタメめっちゃ見に行くようにしてます
音楽だけじゃなくて 演劇だったりバレエだったり アートだったり
そういうインスタレーションとかミュージアムもそうだけど
インスピレーションを受けられる場所にたくさん顔を出して人と意見交換する
そういうことを大事にしています
ライブもニューヨーク行くと一緒に行ったりとかもしますし
結構 インプットもいっぱいないと
こういうふうに聞こえると楽しいんだとか含めてですよね
昔は お金なかったけどちょっと稼げるようになったからライブ行けるようになりました
僕も そうですね
下北沢のバンドのライブハウスぐらいしか行けなかったけどちょっと高いブルーノート行けるぞとかありますね
先ほどね Akiさんもおっしゃってましたけど
一緒に仕事する相手がどういう考え方なのか
どういう思いなのかを知るっていうのをおっしゃってたじゃないですか
我々もヘッドホンを作るオーディオを作る側と音楽を作る側の人での違いがあるんですけど話をする時にいろんな切り口で話ができて食べ物の話だったりとか最近見た漫画の話とかそういう いろんなところで会話ができたりする中で人となりが分かったり
普段どういうことを考えているのか分かったりするっていうのもあるので
あまり音楽に限らず本当に“人生そのもの”ってAkiさんもおっしゃいましたけども
日頃から いろんなことに関心を持っておいてどんなことでも会話のネタにしてみるのは
いいのかなとは思いますけどね
人に関心を持つというのがたぶん すごく重要でその人と話すために自分もいろいろと
インプットをしておくというのがいいのかなと
実際に僕らも もともとはクリエーターの方たちと直接 接する機会って少なかったんですけども増えていく中で 意外とそういうところが接点になるんだなというのを感じてますね