商品情報・ストアハイレゾ・オーディオサイト FLAGSHIP LOUNGE 新たな音楽、新たな体験 パーソナルリスニングの到達点 佐野元春

新たな音楽、新たな体験 パーソナルリスニングの到達点 佐野元春 新たな音楽、新たな体験 パーソナルリスニングの到達点 佐野元春

デビュー40周年を翌年に控えた今もなお、
日本のロックンロールミュージックをシーン
の最前線で追求し続けるアーティスト、
佐野元春。
そんな彼がソニー IER-Z1Rで初めて体験する、
まったく新しい音楽体験とは

PHOTOGRAPHY:GOTO TAKEHIRO TEXT:SUGAWARA GO
出典:「SWITCH Vol.37 No.4」より

今回、このソニーのウォークマンと新製品のフラッグシップ・イヤホンで聴いてみたい作品として、1970年代のもの、それから現代のものをハイレゾ音源からいくつかピックアップしました。どれも本当に素晴らしい、僕の予想を大きく超えた音質でしたが、とりわけ印象に残ったものを挙げると、まずはジョニ・ミッチェルの『ミンガス』でしょうか。1979年にリリースされたこのアルバムは、きわめてプレイヤビリティの高い、当時のトップレベルのジャズミュージシャンたちが参加した即興性の高い作品ですが、ミュージシャンたちが奏でる音のディテールはもちろん、そのレコーディングスタジオの空気までをも感じ取れる程のリアリティがありました。またそれにより、ジョニ・ミッチェルの弾くアコースティックギターと彼女の歌の素晴らしさを再認識することができた。同じく70年代の作品であるポール・サイモンの『ゴリラ』、そしてアントニオ・カルロス・ジョビンの『ストーン・フラワー』でも、やはり同様の印象を持ちましたが、どれもとても楽しく聴くことができました。
一方で現代の作品、今回はポール・サイモンの2018年作品『イン・ザ・ブルー・ライト』、そして手前味噌ですが僕の2015年作品『BLOOD MOON』の2作品を聴きましたが、こちらは正直に言って、僕にとって、これまでにないまったく新しい体験となりました。

━━ 新しい体験、とは?

その作品がレコーディングされたスタジオに居合わせていなければ聴けない音、その音と遜色ないものを、誰もがこうして聴くことができる。これはハイレゾ音源の醍醐味だと思いましたし、同時にその音からは今回使用したイヤホンとウォークマンのきわめて高いポテンシャルを確かに感じました。 ます、ポール・サイモンの『イン・ザ・ブルー・ライト』。もともとポール・サイモンというミュージシャンはレコーディングに対する高い見識と技術を持ったミュージシャンであり、単なる優秀なシンガーソングライターというだけではない、素晴らしい“音のデザイナー”であると僕は思っています。その彼の最新作を聴きましたが、各プレイヤーが弾く楽器の音表現のディテールだけではなく、使っている楽器はそれほど多くはないけれど、非常に音楽的なダイナミズムを感じることができました。まさに彼らがレコーディングしている場に立ち会っているかのような感覚です。こうした優れた最新録音を、優れたフォーマットで、優れた再生装置で聴くことの意義を実感できる体験でしたね。 そして、僕が主宰しているレーベル"Daisy Music"からリリースした2015年の『BLOOD MOON』というアルバムですが、この作品はCD、アナログ盤の他に、USB収録のハイレゾ音源も制作しました。今回はそのハイレゾ音源をソニーのイヤホンとウォークマンで聴きましたが、これは陳腐な言い方になってしまいますが……素晴らしかったです。僕はレコードを作るにあたり、自分自身がプロデューサーですから、この『BLOOD MOON』に収録されている楽曲はレコーディングスタジオで何度も繰り返し聴き、参加したミュージシャンのプレイも細部にわたるまで全て記憶しています。そしてまた、ミックスエンジニアと一緒に音をミックスした現場にももちろん立ち会っていますから、どの音とどの音がどう混ざり合い、音の空間をどのようにデザインしたかということも細かく記憶しています。その後のマスタリングを経た音も何度もチェックしています。つまり、僕はこの『BLOOD MOON』というアルバムのサウンドに関してはすべて熟知していると自負していたんです。それが今回、自分で作った音楽にも関わらず、まるで第三者が作った音楽を聴くかのように客観的に、しかも『これはいいね!』と心から楽しむことができた。これは、僕にとって初めての経験でした。

IER-Z1R 形状や外観へのこだわりで安定した装着性と高耐久性も実現
NW-WM1Z 長年培ってきたフルデジタルアンプの技術が結集したウォークマンの最高峰

━━ それは、これまで聴かれてきた音と何が違ったのでしょうか。

あらためて思ったのは、レコーディングとミックスを担当した渡辺省二郎というエンジニアの腕の確かさ、そしてマスタリングを手掛けたテッド・ジャンセンという世界的エンジニアの技術の高さです。それらをハイレゾ音源で、そしてこのイヤホンとウォークマンで聴いたからこそ、この作品を手掛けた技術者たちの非凡な才能を再認識できました。そして自分たちがどれだけ素晴らしい作品を作り上げたのかということも。それが嬉しかった。日本のロックンロール音楽の最高の音が『BLOOD MOON』のハイレゾ音源にある。これは自信を持って言えます。

━━ 繊細な音表現だけでなく、その場の“空気”をどう再生するか。ソニーのIER-Z1Rは、そこに注力して開発されたモデルです。

なるほど。今の時代、モダンなポップ音楽はサンプリング音を主体にまとめ上げられたものが非常に多くなってきている一方、スタジオで楽器を実際に鳴らし、きちんとしたマイキングでその音をその場の空気感とともに録音するというスタイルの音楽は少なくなってきています。昔はそれが普通のことだったんだけれどね。それで、どちらが良い悪いという話ではないですが、いち音楽リスナーとしては、やはりスタジオで実際に楽器を鳴らし、きちんとしたマイキングで録音された作品を良質なアナログ盤やハイレゾ音源で聴くのが僕は好きです。その時、僕たちはリスナーとして何を感じるかと言ったら、ミュージシャンの演奏やボーカリストの息遣いだけではなく、そこに響いているレコーディングスタジオの空気—— 僕らはアンビエントと呼んでいますが、その空気感までも感じ取ることができる。それは音楽体験として素晴らしいものだと僕は思います。

Profile 佐野元春 佐野元春 1956年東京都生まれ。80年にシングル「アンジェリーナ」でデビュー。2004年、自身主宰の音楽レーベル「Daisy Music」を立ち上げる。これまでに17枚のオリジナルアルバムを発表。最新作は昨年発表のセルフカバーアルバム『自由の岸辺』

━━ 音楽を聴く新たな喜びですね。

もちろん、そんな音楽体験に興味のない人もいるでしょう。音楽なんて生活に必要ないと考える人も大勢います。ただ、人生良い経験を積んだほうが、その先に楽しいことがたくさん待っているのは間違いない。僕はこの年だから言えるのかもしれないけれど(笑)。 最終的にこの話は、聴き手が音楽に何を求めているのか、というところに行き着くのだと思います。音楽はただのエンターテインメントであり、余興であり、暇つぶしに過ぎないという人には、そんな良質な音楽体験は人生に必要ないのかもしれない。しかし、音楽はアートであり、人間の魂の表現であり、文学や絵画といった他の芸術表現に比肩するものだと捉えているならば、この素晴らしい音楽体験は人生をさらに豊かにするものだと思います。

Profile 佐野元春 佐野元春 一九五六年東京都生まれ。80年にシングル「アンジェリーナ」でデビュー。2004年、自身主宰の音楽レーベル「Daisy Music」を立ち上げる。これまでに17枚のオリジナルアルバムを発表。最新作は昨年発表のセルフカバーアルバム『自由の岸辺』

良い音で聴きたい名作6選Selected by Sano Motoharu

『Gorilla』James Taylor

アメリカを代表するシンガーソングライターによる1975年リリースの6作目のオリジナルアルバム。当時数々の名作を世に生み出した名プロデューサー、レニー・ワロンカーの手による良質なポップミュージック作品。丁寧に録音された柔らかく繊細なボーカルとアコースティックギターの響きが心地良い。

『Still Crazy After All These Years』Paul Simon

サイモン&ガーファンクルで知られるポール・サイモンの、4作目となる1975年発表のソロアルバム。全米1位、グラミー最優秀アルバム賞受賞など、初期の代表作としても知られる。ジャズ・フュージョン系ミュージシャンを多く起用し、プレイヤビリティの高いポップミュージックが堪能できる1枚。

『Stone Flower』Antonio Carlos Jobim

ボサノバの祖として知られる、ブラジル音楽界の偉大なる音楽家による1970年発表作品。佐野も敬愛する70年代のレコードレーベルCTI Recordsからのリリース作で、デオダートやロン・カーターをはじめとする同レーベル所属の錚々たるアーティストがレコーディングに参加している。

『In the Blue Light』Paul Simon

2016年には74歳にして全英アルバムチャート1位を記録するなど、精力的に活動を続けるポール・サイモンの現時点での最新作となるセルフカバー作品。ウィントン・マルサリス、ビル・フリゼール、ジャック・ディジョネットら、現代ジャズシーンのトップアーティストたちの参加も話題を呼んだ。

『Mingus』Joni Mitchell

1979年リリースの11枚目のオリジナルアルバムで、ジャコ・パストリアス、ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーターといった当時のジャズ界を代表する凄腕のミュージシャンが多数参加した、即興性の高いアルバム。きわめて臨場感溢れる録音で、各楽器とジョニのボーカルが生々しく眼前に現れる。

『BLOOD MOON』佐野元春

2015年に自身主宰のレーベル“Daisy Music”からリリースされた16枚目のオリジナルアルバムであり、盟友THE COYOTE BAND(小松シゲル、高桑圭、深沼元昭、藤田顕、渡辺シュンスケ)との3作目となる。オーソドックスなバンドサウンドが持つ表現の可能性を、鮮やかに軽やかに更新していく名盤。