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音楽CDと同等の高音質を実現したリニアPCM対応が新しい録音の世界を広げる

いい音を録るための機能を具現化したマイクデザイン

デザイン担当 シニアデザイナー 宮崎 哲郎

デザイン担当 シニアデザイナー 宮崎 哲郎

業務用カメラなど多数のソニー製品でデザインを手がける。ギター(ベース)演奏を趣味とし、ユーザー目線で 今回のICD-SX800/900のデザインワークに取り組んだ。

宮崎: 企画からデザインの依頼をいただいたときに、簡単でありながらいい音ということを考えるとマイクが一番大事かなと。そうなると、マイクはある程度独立して見えたほうがいいだろうと考えました。
もちろん見た目だけでなくてより音が良くなるという意味もあります。

橋本: マイクとしては内蔵型よりも本体からセパレート化した専用のユニットとした方が性能を出しやすいんです。今回リニアPCM録音が可能になったのですが、音の入り口(マイク)が良くないとせっかくリニアPCM録音できる意味がなくなってしまいます。
もともとこのSXシリーズというのはICレコーダーであって、カテゴリーの位置づけとしてリニアPCMレコーダーではありませんでした。ただICレコーダーとしても最上位機種で、性能もICレコーダーとして最高峰のものを作りたいという気持ちがありました。この大きさにするためには回路や部品の制約が多くチャレンジではあるのですが、まず音の入り口、つまりマイクを良くするということが、録音機としての性能を良くする早道ですので、できるだけ入り口を良くするために、今回はマイクにこだわったわけです。

宮崎: 最初に出したデザインはもう少し一体感のあるものだったんです。でもデザインというものは機能を表現できることが一番いいと思っていますので、最終的には機能とデザインが融合したちょうどいい形にできたのではないかと思います。

橋本: 今回ICレコーダーで高音質のリニアPCM録音に対応するということだったので、この機種専用に内蔵マイクユニットと、その中のマイクカプセルというマイクの心臓部にあたる部分を新規で開発しました。通常こういった部分は従来ある部品を使用することが多いのですが、それでは性能を生かしきれないので、今回はどうしても新規に開発する必要があったんです。
また指向性録音用に搭載しているセンターマイクは、以前のモデルにもあったんですが、今回デザイナーが頑張ってくれたおかげで大きなマイクが入るようになったので、この機種からセンターマイクの口径を6ミリから10ミリに変更しています。これによってセンターマイクも性能がアップしました。

宮崎: それに関しては、ここに至るまでにいくつかアイデアがあった中で、その内のひとつがマイクのユニットの大きさをクリアしていました。外観も含めてベストな音、ベストな形をとブラッシュアップしていくうちに、センターマイクでもクリアに録れる形を取り入れたベストなデザインでできあがりました。
デザインのきっかけとしては「基本的にこんな技術を使います」「こんなユニットを使います」というところから出発するのですが、途中での設計者とのやり取りの中で「もっと大きなユニットを使いたい」といった声も出てきますが、デザインが壊れないことを前提にしながらなるべくいい音が録れるようにしたのがこのSXシリーズです。
企画の段階で10ミリマイクを使いたいというのは聞いてましたので、それをどこまでカタチに出来るかということが勝負だったのですが、デザイナーとしては基本的には小さく作りたいという思いがありますから、小さいながらもマイクの特徴が出るカタチを目指しました。でも正直最初は難しかったです。
そのあたりは設計の方にもマイクの入る角度なども工夫していただいてますね。設計・デザイン間で行きつ戻りつしたプロセスの結果、良いものに仕上がったと思います。

橋本: マイクの口径が小さくなってしまうと、感度が悪くなってしまったりするので、10ミリという口径は大きさ的にはこういったICレコーダとしてはベストなサイズかなと思っています。
リニアPCMという高音質録音できる機器ですから、技術者からするともっと大きいマイクを搭載したいという気持ちはあります。サイズもいくら大きくてもいいというのであれば大きくしますし、値段もいくら高くてもいいというのであればそうしたいのですが、お客様に買っていただくものですから、あまり高くてもよくありませんし、コストと性能とデザインのバランスという制約の中でベストなところを持ってくるということを考えると10ミリというサイズのマイクはいいところに落ち着いていると思います。