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商品情報・ストアデジタル一眼カメラ αNEX-C3デザイナーインタビュー
思いを込めて写真を撮る。その喜びを、さらに多くの皆さまへ。

 

カメラ好きからビギナーまで多様なユーザーの皆さんからの支持をいただき、コンパクト一眼カメラの新しい価値を確立したNEX-3、NEX-5。発売から一年を経て、新たにNEX-3の後継機という位置づけで誕生した「NEX-C3」のデザインスタッフが、進化しさらに価値を高めたNEXの世界について語ります。
新津琢也(アートディレクション)
高橋正宏(プロデューサー)
箱田勝久(「NEX-C3」デザイン担当)
田村綾香(GUIデザイン担当)
安冨浩(レンズデザイン担当)
中村貴俊 (フラッシュデザイン担当)
宮野有子(ケースデザイン担当)

新しく、懐かしく、しかもカワイイカメラを

NEX-3の後継機と位置づけられるNEX-C3。求められたのは「誰もがいい写真を撮れるカメラ」というコンセプトの、一層の向上だった。デザインワークは、数人のデザイナーのコンペという形でスタートした。

高橋

おかげさまでNEX-3、NEX-5は、たいへん多くの方々のご支持をいただいてきました。実際にどのような方々に使っていただいているかを調べると、以前は主にコンパクトカメラユーザーだった人や、一眼レフなどメインカメラを別に持っていてNEX-3やNEX-5はサブカメラとして使う人などさまざまです。女性層も従来に比べて増えました。そのなかで、もともとNEX-3やNEX-5で狙っていた「一眼をあまり使ったことがないけれどいい写真が撮りたい」というユーザー層に対してさらに深くアプローチしていこう、という考えでスタートしたのが今回のNEX-C3です。

例えば携帯電話のカメラしか使ったことのない人でもちゃんと使える、素晴らしい画(え)づくりができるカメラ。そのためにサイズを一層小さくすること、誰もが簡単に良い写真を撮れるということ、そうした点に最大限こだわっています。

NEX-C3はNEX-3の後継という位置づけではありますが、ソニーの小型一眼カメラEマウントは、高いものから安いものまで一通り揃えてそこから選んでいただくというのではなく、潜在的なお客さまに本当にマッチする商品をひとつずつ作っていこう、というコンセプトで製品化しています。あくまで使っていただきたいお客さまを想定して作り出した渾身の一台です。

新津

NEX-C3のデザインにあたって、今回は女性デザイナーも含めた数人のデザイナーでコンペをしました。一人の担当者でやってしまうとどうしても限られたアイデアしか出てこないので、新しい感覚、新しい表現を盛り込みたい、という期待感を持って行ったコンペです。

ベテランデザイナーはカメラとしての完成度の高いデザインを出してくれて、若い男性デザイナーは、自分なりのコンパクトな一眼のありかたというものを表現してくれた。そして女性デザイナーは、自分がイメージするソニーの小型一眼カメラに対する思い、あるべき立ち姿というものを語ってくれて、それぞれがとても私の心に響きました。

それぞれのエッセンスを取り入れて、何度もスケッチを重ねて、女性を含めたいまのユーザーはこういう感じのものを欲している、という確信を持てるようになってきました。

いわゆるカワイイというキーワードについては、私の感覚は脇に置いて、女性デザイナーとできる限り会話をして咀嚼するようにしました。その中で彼女は「カワイイとはクラシカルである」と端的に言ってくれた。私自身もNEX-5のデザインをやったとき、カメラは、ユーザーにマニアの人もいれば初心者もいるけれど、共通して求められるのはカメラらしさに違いない、カメラらしさとはなんだろう、ということをずっと考えていたんです。

NEX-5では、誰が見ても高性能なカメラだということがすぐにわかり、しかもソニーらしくて新しい、という表現をしました。それに対して今回のNEX-C3は、「カメラらしくてカワイイ」というところに持っていきたかった。もっと若い層を、そして女性層を意識して、受け入れていただけるデザインを目指したのです。

箱田

触ってくださる人、使ってくださる人として想定したのが一眼初心者なので、デザインをするうえでまず考えたことは「難しそうに見えない」ということです。カメラらしさというのは、ともすればガチガチで堅い感じになってしまいます。そういうのではなくて、NEX-5が持っているカメラらしさも残しながら、フレンドリーな雰囲気にするにはどうしたらいいか、ということを常に考えていました。

そうした考えが具体的にどこに現れているか、一言でいうのは難しいのですが、あえて一つ例を上げるなら、上部のパーツの存在感がそれに当たるでしょうか。

新津

この楕円の部品には金属を採用しています。これは昔のカメラを想起させるものですが、そのまま昔のカメラのデザインを持ってきているわけでもなくて、やわらかい自由曲線を組み合わせたフォルムです。そこに硬い金属の質感のレンズがバチッとはまる。得も言われぬいい画が取れそうなカッコ良さ、でもどこか懐かしい、というバランスを追究しました。

箱田

それから、こだわったのはグリップです。コンパクトなEマウントのカメラとはいえ、“小さいから握りにくい”のでは論外です。本体は極限までのスリム化を目指しながらも、十分なグリップ感を残したい。ソフトモックをいくつも作って、グリップは徹底的に何度もやりなおしています。実は今回のグリップは、バッテリーのスペースに加え、一部あえて空洞を設けています。握りやすさのための純粋なスペースなんです。

グリップのテクスチャーは、一般的には持ちやすさを考えてドットや格子状のテクスチャーにするものですが、NEX-C3のグリップは、本体のやわらかいエレガントさを強調するようなストライプを基本にして、指が当たるところだけ格子状にしました。ファッション性と機能性を両立させるため、できる限りディテールを作り込んでいます。

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全く新しいUI「マイフォトスタイル」の誕生

誰もが画(え)づくりを楽しめるカメラとは何か・・・UI(ユーザーインターフェース)の観点からも全く新しいアプローチが試みられた。これまでのタブーに挑戦する、カード選択形式の個性的なUIだ。

田村

NEX-5とNEX-3で大きな特長だったのは、「背景ぼかし」です。NEX-C3ではそれを進化させて「マイフォトスタイル」という機能を新しく付け加えました。

マイフォトスタイルは、オート撮影時に、背景ぼかしはもちろん、色合いや明るさや鮮やかさなど、一眼ならではの画質を楽しむための機能を、カード形式で選んで使っていくことができる機能です。従来、PやAというようなモードの意味や難しい用語を知らないと使えなかったような機能を、オートだけで撮影していた方でも手軽に使えて、自分らしい画づくりをしていけるように工夫しました。

操作性やインターフェースを考えていくときに、設定したり解除したりすることをどう表現しようかと考えました。スケッチの段階で、ゲージで見せたり、数値で見せたりと、いろいろな案があったのですが、そうではなくて、カードで足したり消したりできればいいなと思い当たったんです。例えば明るさなら明るさカードを選んで設定します。鮮やかさなら鮮やかさカード。どんどんカードを足していって並べるので、いま自分が何を設定しているかがいつもわかりやすく表示されています。わからなくなったら、カードを全部消せばオートの初期の設定に戻ります。

何かを取ったり捨てたりすることで、日常でこれをやっているのは何かと考えたときに、似たような行動に「トランプ」があるなと。それをここに入れようというところから、発想を組み立てていきました。

高橋

一眼の画質やクリエイティブな写真に魅かれて入ってくるけれど、実際には、買った直後はともかく、しばらくすると結局オートだけで撮っている皆さんが多いというのが実情です。NEX-C3は、とにかくカメラを使ったことがない人が簡単に画づくりを楽しめるようにしたかったのです。

田村

オートと、P/S/A/M の中間がなかったんですね。いきなり難しい世界になってしまう。それらの間というのを意識して、まず画づくりを楽しんでもらう機能を開発しました。

高橋

ユーザーにとって「何か設定を変える」ということの壁は意外と大きくて、やり方がわからない、設定が変わっているのか変わっていないのかもわかりづらいという人は多いんです。そうした点をシンプルに、明快にしてあげる。それならカードにしようというモチーフのアイデアが田村のほうから出てきて、これはいいなと思いましたね。

色も明るさも、エフェクトも簡単に設定できます。設定をカードとしてテーブルの上に並べていくような操作性をイメージしています。 画づくりをする時、多くの方は色や明るさ、エフェクトをトライ&エラーでやっていくと思います。色も明るさもエフェクトも、設定をカードとしてテーブルの上に並べていくような操作でかんたんに追加、または取り消していくことができます。 設定を変えていないつもりでも、実は以前に変えたのがそのままになっていた、ということがよくありますよね? カードであればシンプルでわかりやすく、そのようなことは起こらないと思います。

田村

一般的にカメラの設定表示というのは、ファインダーや液晶の中の映像を重視するため、小さなアイコンが出たり消えたりするだけ、というのが普通でした。カラーのアイコンを画像の上に乗せていくのはタブーともされていましたが、わかりやすさを重視して、あえてそのタブーに挑戦しました。
ただし、画が決まった人にはアイコンが邪魔にならないよう、シャッターボタンの半押しで消えるようになっています。

高橋

直感的に設定を判断できることに徹底的にこだわりました。たとえば、設定値の増減は数値ではなく、カード自体の状態を変えることで表現しています。「色合い」だったら、カード自体の色合いが変化していきます。もちろんカメラの内部では、一眼カメラとしての繊細な制御をしていて、最高の画づくりができるようになっています。その高性能さが、本当にわかりやすく、誰でもカンタンに扱えるように表現されていると思います。

田村

試作段階で、ユーザーの皆さんに集まっていただいて、UIの使用感を確かめていただいたんですが、カードの選びかた、消し方など、皆さんにとても興味を持ってやっていただいたことで、基本的には狙った効果がそのまま支持されているんだと、自信を持ちました。カードを使って慣れた方々は、P/S/A/Mを使ってくださればいいと思います。そのために、カスタムファンクションの項目数を増やすなど、細かいバージョンアップもしています。

カードのイラストは、カードの種類と現在選択している値の表示バランスが難しいんです。例えば「色合い」と「鮮やかさ」をどのようにアイコンで描き分けるのか。さらにそのなかの個々の設定の現在値を限られたスペースでどのように表現するのか。これはかなり多様なパターンを作って試しました。「カードを配っている感じ」を出すためのアニメーションも含め、最終的に、外形のフレンドリーな印象とマッチしたデザインになったと思います。初心者にフレンドリーなカードでありながら、「かわい過ぎない」、誰にでも受け入れられることを心がけています。

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NEX-C3の価値を高めるレンズ、アクセサリーの充実

今回のNEX-C3の発売に合わせ、レンズ、そして外部フラッシュやケースなども充実。NEX-C3の価値を高めるため、デザイナー陣のこだわりが結実する

安冨

今回、Eマウントシリーズで非常にニーズの高かったマクロレンズを発表しました。この30mmマクロレンズは、カメラ好きの方、写真好きの方だけでなく、より多くの方々に、気軽に写真を楽しんでいただきたい、という思いを込めたレンズです。Eマウントのレンズは、一貫して、リーズナブルだけれども価値のあるレンズ、というコンセプトでデザインしています。マクロに関しても同様で、質感を高めながら操作性を確保するデザインを追究しました。これまで同様の金属感を踏襲しているので、ラインナップのなかの一本として所有する喜びも、十分に感じていただけると思います。もちろん画質も相当期待していただいていいと思います。

それから、レンズフードを新しく開発しました。このレンズはレンズ先端から約2.4cm程度まで寄れるため、通常の花形レンズフードだと、被写体に当たってしまう。例えばケーキを撮ろうと思ったらクリームの中にフードが刺さってしまう、という残念なことになりかねない(笑)。そこで新規に、フードを着けたままでもぶつからないような薄型のフードを提案しました。こうしたものは往々にして、レンズキャップやフィルターが付けられないと言った制約がつくものなのですが、今回はなにひとつ犠牲になっていません。

実際にビギナー層の皆さんが撮影しているところを見ていると、レンズフードを装着せず、収納時のように逆付けにしたまま撮影にしていることが多いんですね。この新しいフードなら、つけたままにして収納もできるので、ビギナー層の方でも気軽に、安心して使っていただける商品に仕上がりました。

※マクロレンズは、 2011年9月発売予定

中村

外部フラッシュもまた、NEX-5、NEX-3のユーザーからの要望が多かったものです。NEX-C3の発売に合わせて、外部フラッシュも新たにラインアップしました。ガイドナンバー20(*1)でバウンス撮影(*2)が可能なフラッシュです。この設計は、はじめAマウントシリーズ用のフラッシュであるHVL-F20AMをベースに、同機と同じような大きさのところからスタートして小さくしていったのですが、試作して付けてみると、NEX-C3の上に大きなものがどんと乗っている感じになってしまって良くない。あらためて「ソニーの小型一眼カメラEマウントの世界」というのは実にコンパクトに構成されているものなのだということがわかって、そこから、電池を本体給電に変えて、技術的に様々なことを克服して、徹底した小型化を実現しました。光学的なところ以外は全く新しいものです。

*1 ガイドナンバーは光量の単位。
*2 天井などにフラッシュ光を反射させ、自然な明るさで撮影すること。

高橋

バッテリーに関して、本体給電だとバッテリーを急速に消費するんじゃないか、充電が遅いんじゃないか、などが危惧されたんですが、そこは設計が頑張ってくれたおかげで、申しぶんないものに仕上がっています。

中村

小型化にあたっては、コンデンサーの形状を変える必要がありました。それまでのコンデンサーを使うのではなく、NEX-3、NEX-5に付属の超小型フラッシュに載せているコンデンサーを並べて使うことにして、基盤もはじめから作り直しています。バウンス撮影時にフラッシュの向きを変える可動部も新たに回転式に変更するなど様々な変更を施して、小型化を達成しました。

高橋

このフラッシュも、ビギナー層を意識して、大きさもそうなのですが、バウンス撮影がワンタッチでできたり、光量も気にせずにオートで撮れるなど、様々な考慮がなされています。

宮野

ケースは、さらに女性を意識したラインアップを展開します。本革を使用するなど高い質感を維持しながら、よりリーズナブルな価格帯でご提供できるようになっています。

企画に当たっては、一般のユーザーの皆さんからソニービルの女性スタッフに至るまで様々な方々に「どんなバッグが欲しいか」を訊ねてみたんですが、使いやすくて、取り出しやすくて、カメラのケースに見えないものが欲しいというご要望が多くありました。この「がま口」タイプのバッグなどは、そうしたご要望に応える形で企画したものです。

ボディケースは苦労したもののひとつです。今回のNEX-C3は本体のグリップに特徴的できれいな曲線がついているのですが、ケースを縫製にまわすと、その曲線がうまく出ずにかなり苦労しました。純正品のアクセサリーの大切なところというのは、本体と合わさったときにより魅力的にならないといけないんです。何度も修正を重ねて、質感も含めて満足のいくものになりました。

ネックストラップは、純正品としての安心感を持たせつつ、今までよりも細めです。カメラを持って出かけるとき、カバンもアウターも違うわけですから、そうしたときに気にならないストラップ、ということに気をつけて作りました。

全体的に、ソニー純正ならではの、シックでカメラのデザインの匂いをかすかに感じさせることを念頭に、ディテールにもかなりこだわっています。

高橋

Aマウントはシステムケースとしてがっちりしたものが主流ですが、Eマウントは、バッグ・イン・バッグも含めて、気軽に持ちはこべるやわらかいものが求められます。留め具も、面ファスナーではなく洋服のように金具を多用するなど、違うものにしたい、という思いがありました。

宮野

バッグ・イン・バッグが比較的多いのですが、今後は、女性が気持ちよく外持ちできるようなカメラバッグをどんどん作っていきたいと思っています。

バッグ・イン・バッグ。LCS-BBF
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「自由」こそソニーらしさ。新しい定番をつくりたい

それぞれの立場でNEX-C3のデザインに関わったスタッフたちに、一言ずつ、ユーザーの皆様へのメッセージを語ってもらった

  • 高橋NEX-C3は、デザイン陣を総動員し、全員で同じ方向を向いて作った、既成概念にとらわれない、本当にいいカメラに仕上がっています。日常持ち歩いて、いい写真を撮る、画づくりをするプロセスを楽しむ。そういう喜びが近くなるカメラです。ぜひ手に取っていただきたいと思います。

  • 箱田手軽にどこへでも持ち運んでください。そのために小さく、かわいくしました。どんどん画づくりを楽しんでいただきたいですね。

  • 田村いつものオートから一歩進めて、ご自分にしか撮れない写真をぜひ撮ってみてください。

  • 中村ソニーの小型一眼カメラEマウントの世界観を、アクセサリーのラインナップでもしっかり継承していきたいと思います。

  • 安冨Eマウントのレンズは、ラインナップとしての一貫性を持ちながら、レンズの適性に応じた個性を表現していきます。今後出てくるレンズにも期待していただけたらと思います。

  • 宮野カメラを生活のなかで楽しみたいし、おしゃれもしたいという女性の気持ちも大切にして、それが両立できる商品を頑張って出していきたいと思います。皆さんが街で見かけて、あれいいな、と思っていただくようなものを作って、愛着を持って使っていただけたら嬉しいです。

  • 新津新しいカメラの定番を、提案してきたい。ソニーらしく自由に作っていくことで、従来のカメラメーカーにはない思い切った開拓ができると思います。いまNEX-3とNEX-5、そしてNEX-C3と、コンパクトからのステップアップを追究していったので、これからは、逆に、従来の一眼レフユーザーでもこれ一台でいいんじゃないか? というぐらいのものも出していきたいですね。

取材後記

一層コンパクトに、さらに手軽にクリエイティブな写真表現を楽しむことができるようになったNEX-C3。取材を通して、デザインスタッフ一同がそれぞれの立場でこのカメラにとても深い愛情を注ぎ込んだことが強く伝わってきました。ユーザーの皆さまが、このカメラの価値を存分に体感していただけることを、願っています。

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αはソニー株式会社の登録商標です。