法人のお客様ラージセンサーカメラ 事例紹介 映画『父と僕の終わらない歌』

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映画『父と僕の終わらない歌』

撮影監督 柳田 裕男 様 (J.S.C.)/ カラリスト 河原 夏子 様

“魅せ場” のシーンも「撮ったまま」で光の抑揚を生かせた『VENICE 2』

2025年5月23日から全国公開された、映画『父と僕の終わらない歌』(出演:寺尾聰、松坂桃李ほか・監督:小泉徳宏)の撮影に、CineAltaカメラ『VENICE 2』(6Kモデル)が使用されました。本作品の撮影監督である柳田 裕男 様、カラリストの河原 夏子 様に撮影秘話やVENICE 2の使用感などをお伺いしました。


撮影監督 柳田 裕男 様 (J.S.C.)

カラリスト 河原 夏子 様
IMAGICAエンタテインメントメディアサービス*

*本作作業当時の所属

『父と僕の終わらない歌』

■出演者: 寺尾聰 / 松坂桃李
佐藤栞里 / 副島 淳 / 大島美幸(森三中) / 齋藤飛鳥 / ディーン・フジオカ
三宅裕司 / 石倉三郎 / 佐藤浩市(友情出演) / 松坂慶子
■原案: 『父と僕の終わらない歌』サイモン・マクダーモット著 浅倉卓弥 訳(ハーパーコリンズ・ジャパン)
■監督: 小泉徳宏
■脚本: 三嶋龍朗 小泉徳宏
■配給: ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
■公開: 2025年 5月23日(金)全国公開
■公式サイト: https://chichiboku.jp

© 2025「父と僕の終わらない歌」製作委員会

LUTで印象が大きく変わる『VENICE 2』

柳田様 近年の自分は、海外の老舗シネマカメラメーカーのカメラを中心に使っており、これまで『VENICE』を使う機会はありませんでした。『VENICE』を使わないことにネガティブな理由があったわけではなく、敢えてこれまでと違うカメラを使う必要に迫られたことがなかったのですが、『VENICE』を試してみたいとは思っていました。今回の作品のクランクインに先立ち、候補のカメラを比較するためにカメラテストを行い、カラコレして、私がこれまで使ってきたカメラに近いテイストを『VENICE』で作ってもらいました。『VENICE』はフィルムっぽく私の思い通りになりそうだ…という印象でした。LUTを当てるだけで印象が大きく変わり、監督もその映像を見て気に入ってくださったことから、『VENICE 2』(6Kモデル)を使うことに決めました。

合成シーンではメタデータも活用

柳田様 今回の作品は、Super35mmの4Kで撮影したものを、上下切りで2Kシネスコサイズに仕上げています。車のシーンは全てスタジオ撮影による合成カットですが、この際にはチルト・ロールや焦点距離mm数などのメタデータを活用しています。

“刻みの細かさ” と “レンジの広さ” が魅力の「内蔵NDフィルター」

柳田様 『VENICE 2』の内蔵NDフィルター(濃度0.3〜2.4の0.3刻み8段階)は使い勝手が良いと感じました。これまで主に使ってきたメーカーのカメラは、濃度0.3・0.6・1.2の3ステップで0.9がありませんでした。私の作品では、基本的に絞りを開放に持っていくのですが、3ステップしかないと、別にガラスフィルターで0.3や0.6を入れなくてはなりません。フレアを強調したレンズにブラックプロミスト、さらにNDフィルターを重ねるようなことをすると、ゴーストなどが増えてきます。ハイライトが入った時などは現場で角度を変えてみたりして逃げるのですが、『VENICE 2』ではそういった必要に迫られる場面はありませんでした。

“色” で「幸せな気持ち」になれるような作品に

柳田様 今回の作品は、海外での実話を元にした「認知症を発症し、進行していく父親」と、その「息子」を中心に描いた映画です。モチーフ自体は暗くなりがちですが、今回は「明るく綺麗に見せたい」という気持ちでいました。「暗い作品にしたくない」というのは、監督の要望にあったわけではありませんが、輝いて終わってほしい、むしろ「幸せな気持ち」になれるような作品にしたいと考えていました。そこで、現場に始まり、仕上げに至るまで、明るく鮮やかな色づくりを心掛けました。曇りの日の撮影をできるだけ綺麗に見せることには毎度苦労をしました。

LUTの傾向がしっかりと出る『VENICE 2』

柳田様 画づくりは、なるべく「ブラックボックスであってはいけない」という考えで、自分の現場ではLUTも入れたプレビューを監督に見てもらうようにしています。それはライティングに関しても同じです。ある意味それが完成形で、それを微調整するのがグレーディング、と捉えています。

河原様 カメラのトーンについては、柳田さんがこれまで主にお使いいただいていたメーカーと、それ以外、の大きく2種類に分けられる印象があります。前者は撮影しただけで映画のような風合いになり、『VENICE 2』は素直に出ます。フィルターの効果やLUTの傾向がしっかりとした形で出るので、評価をしやすいと感じました。

「作品に寄り添ったルック」で、世界観を表現したい

河原様 カラリストとしても1作品1作品、何か新鮮味を入れたいところがあります。作品に合わせて寄り添ったルックを作りたい。作品の世界観を色で表現したいという思いがあります。柳田さんの好みもありますので、そこに寄り添うことを心掛けつつ、「こんな風にしてみましたが、どうですか?」といった提案をしながらグレーディングに取り組みました。『VENICE 2』の画は、その素直さゆえ、少し特徴的な「新しいルック」を作りやすいカメラだと感じました。

グレーディングした時に出る違い、色が触りやすい『VENICE 2』

柳田様 今回の作品は少し高めの彩度で作っています。例えば青を足すと、これまで使ってきたカメラでは、人物の顔など、赤が引っ張られてしまっていました。しかし『VENICE 2』は引っ張られない。タングステンで照明されたところに、少し青を足すと、今まで白だったところが少し青くなる。そうすると色が2種類になり、全体的にカラフルにリッチに見えます。『VENICE 2』はそういった、色を触ることがやりやすい。グレーディングした時に出るカメラの“癖”の違い、というものがあることに気づきました。

作品に入っていけるように “いじりすぎない”

柳田様 グレーディングについては、観客が作品にどれだけ入っていけるか、想像させられるか、といったことを常に意識しています。私たちがやりすぎてしまうと、観ている人が共感できなくなったりします。色に気を取られてしまい、心が見えてこない作品にならないよう、そこまで踏み込まないことを心掛けています。

“魅せ場” のシーンも「撮ったまま」で、 “光の抑揚を生かせた”『VENICE 2』

柳田様 今回の作品は、主人公である父親が「キラキラ、カッコよく歌っている」という姿が頂点にある作品です。魅せ場となるライブシーンのグレーディングについては、いじるところがなく、ほぼ撮影したままでの仕上げになりました。

河原様 ほんとうに撮ったままです。整えてしまうのもドキドキしなくなる。明るさを整えるほど見やすくはなっていくのですが、ワクワクしなくなる。そのため、そのままの印象をライブ感として残しました。ハレーション、フレアが出ては消えていく光の抑揚も、他のカメラでは「ハイライトは少し下げて、乗り替わりで暗部は少し上げて」といった調整をします。しかし『VENICE 2』はそういったことをしなくても、しっかりとディテールが残って見えている。一番の魅せ場で、光の抑揚を生かす表現ができた。それが歌の抑揚と相まって、すごくいいシーンになったと思います。

“神様が降りてきた“ 一発撮りで挑んだ緊張のシーン

柳田様 “光”については、ライブの後の最後のカットがとても印象的でした。父親と息子のカットバックのシーンがあります。山場のシーンなので2度は撮れない。大変な緊張感の中での一発撮りです。そのシーンのハレーションはとても印象的なのですが、本当に撮ったままの偶然です。現場でのちょっとした偶然も重なり「神様が降りてきた」と思いました。スタッフも、撮りながら泣いていました。ぜひ劇場に足を運んでいただき、その目で作品をご覧いただけたらと思います。

※本ページ内の記事・画像は2024年10月に行った取材を元に作成しています

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